【論文】自民党改革と政策的部分連合への提言

2001年12月27日

kato_k011200.jpg加藤紘一 (元衆議院議員)
かとう・こういち

1939年生まれ。64年東京大学法学部卒、同年外務省入省。ハーバード大学修士課程修了。72年衆議院議員初当選。78年内閣官房副長官(大平内閣)、91年内閣官房長官(宮沢内閣)、95年自民党幹事長。著書に『いま政治は何をすべきか―新世紀日本の設計図』。

概要

小泉改革の中間総括と自民党改革の意味、首相主導体制の構築のために最近、議論を呼んでいる政府提出法案の「与党審査と容疑拘束廃止」の議論について、加藤紘一前自民党幹事長が寄稿した。同氏はそのなかで、小泉改革は総体的に日本の座標軸を動かすことに成功していると評価し、自民党改革は党の存在意義自体への国民の疑問が原点にあると主張した。また、首相主導体制の問題に関連して、国会での政策的部分連合の実験を提案した。

要約

今の日本が直面している問題を考えると、(小泉改革は)そのスピードが遅い、あるいは戦略化されていないという論者はいるが、小泉氏の改革手法では、着地点よりもずっと先の目標を独特の言い回しで提起し、党内で反発や抵抗が出ても、その真ん中で落とせば通常手法の着地点よりもずっと前に行くという手法をとっている。だから、言ったほどの目標には到達していないのは当然だが、明らかに改革は前に向かって動いている。この手法が、国民の支持も得て続くかぎり、全体として日本の座標軸を変えることになる。

自民党がこれまで果たした役割は、国家統制経済的な政治体制のなかで、行政・官僚組織がつくりあげてきた計画を無修正に迅速に通す、その代わりに予算の配分権、国家のリソーシスを自分たちの手で配分することによって票を獲得し、権力を持ち続けることだった。もちろん、その前提は、その行政がやっていることが歴史の流れ、国家の目標、国民の意識に間違いなく合致するものでなければいけなかったが、その目標意識を自民党がもたなくなったときに、国民の大部分が自民党のシステムを嫌だと感じ始めた。

世界的な大転換の時代に日本が対応するためには、政治の意思決定のスピードをより速めなくてはならない。首相と抵抗勢力の対立という図式のなかで、首相主導を強めるために政府提出法案の与党の事前審査や党議拘束をやめようという議論も出ているが、これらは議論としては興味深いが、日本が議院内閣制をとっている以上、これはかなり大きな話で、戦後の日本政治の根本に手をつけるかどうかの話である。

今の政治システムが国民の意向を吸収できなくなってきたところに、この議論の原点があり、私自身は首相主導や国会の議論を活性化させるために、こうした与党審査や党議拘束をある部分では外していくほうがいいことだと思っているが、それにはいくつかの前提がある。まずは、クロスボーディングで、党議拘束のない投票を国会で年間、10本程度はやってみて、政策的な部分連合を国会内で模索する。そうした経験を踏まえて、与党審査や党議拘束を外すという形にならないと、議論が現実のものにならない。


全文を閲覧する(会員限定)