言論NPOと東アジア研究院は
「第7回日韓共同世論調査」の結果を公表しました

2019年6月12日

 非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、2019年6月22日に開催する「第7回日韓未来対話」(於:東京)に先立ち、「第7回日韓共同世論調査」の結果を公表いたしました。この調査は、言論NPOと韓国の東アジア研究院(East Asia Institute, EAI)が2013年から7年間継続して毎年共同で実施しているもので、今年は5月から6月にかけて実施しました。

 報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。また、工藤へのインタビューなどのご要請がありましたら、積極的に対応させて頂きます。

  • 日本人は、韓国に対してマイナスの印象を持つ人が増加する一方で、韓国人の日本に対する「良い印象」は過去最高になった。韓国人の印象の改善に大きな影響を与えたのは、過去最高を更新した渡航者数と若年層の改善が挙げられる。特に韓国人の20代未満では「良い印象」の方が、「悪い印象」を上回る逆転現象が見られた。日本人でも韓国人ほど顕著な違いは見られないものの、40代以下の人は全体の数値(20%)を上回っている。
  • 現状の日韓関係については、「悪い」と感じる国民は、日韓両国で昨年の調査よりも大きく増えた。2018年の調査で一旦改善したものの、両国民の意識は一昨年の悪い水準も上回った。特に日本人では、昨年から23ポイントも一気に悪化している。
  • 今後の日韓関係についても、今後も「悪くなっていく」と判断する人は、日本で3割、(昨年は13.5%)、韓国も2割弱(同13.5%)といずれも昨年より拡大しており、特に日本人に悲観的な見方が広がっている。
  • 日本人で文韓国大統領に「悪い印象」を持つ人は昨年から倍増し、50.8%と5割を超えている。一方、韓国人も安倍首相に「悪い印象」を持つ人は多く、昨年同様8割近くになっている。
  • 文在寅政権の日本に対する対応については、日本人の6割近くが「評価しない」と回答している一方で、韓国人も「評価しない」が3割を超え、「評価する」との回答を大きく上回っている。
  • 悪化する日韓関係について、「改善に向けた努力を行うべき」との回答が、日本人で4割、韓国人で7割と日韓両国で最多となるも、日本人の中で日韓関係に否定的な見解も一定数存在する。
  • 日韓関係が「重要である」との回答は韓国人で8割を越えたものの、日本人は5割と調査開始以来低い水準となっている。
  • 徴用工の判決問題とレーダー照射問題については、日韓両国民で正反対の見方に。
  • 北朝鮮の非核化に向けて、韓国国内でも懐疑的な見方が広まっている。


 共同世論調査の主な結果は以下の通りです。

日韓関係について

 ≪日本人の韓国に対する「良い印象」が調査以来最低となる一方で、
韓国人の日本に対する「良い」印象は調査以来過去最高となる≫

 日本人の韓国に対する「良い印象」は2013年の調査開始以降で最低となったが、韓国人の日本に対する「良い印象」はこれまでの調査で最高となり、日本に対する「良くない印象」は初めて5割を切った。年代別で見ると日韓それぞれで若い層に相手国への印象が良い人が、相対的に多い傾向にある。韓国人では20代以下は良い印象の方が、悪い印象を上回る逆転現象が見られます。
 日本人が、韓国にマイナスの印象を持つ理由で最も多いのが、「歴史問題などで日本を批判し続けるから」で今回も52.1%と半数を上回る。新しい選択肢に加えた「徴用工判決」と「レーダー照射」についてもそれぞれ15.2%、9%の日本人がマイナス印象の理由に挙げ、「韓国人の言動が激しいから」など韓国人の考え方や行動を、「悪い印象」の理由とする日本人が昨年よりも増加している。
 一方、韓国人が、日本にマイナスの印象を持つ理由は昨年同様、歴史問題と領土問題(独島)が半数を超えるが、今年は特に「韓国を侵略した歴史を正しく反省していない」が76.1%と昨年の70%を上回っており、歴史問題に反応している。
 韓国人が、日本に「良い印象」を持つ理由で最も多いのは、「日本人は親切で誠実だから」が69.7%で、「生活レベルに高い先進国だから」が60.3%で続いており、他を圧倒している。
 これに対して、日本人は「韓国の食文化や買い物が魅力的だから」が52.5%、「韓国のドラマや音楽など韓国の文化に関心があるから」が49.5%と、それぞれ半数近くが、韓国の文化や食べ物などを好印象の理由を挙げている。

≪現在の日韓関係を「悪い」とみる国民は、日韓両国で6割を上回り、
今後の日韓関係については、日本人に悲観的な見方が広がっている≫

 現在の日韓関係を「悪い」と見る日本人は、昨年(40.6%)から23ポイントも増加して63.5%、韓国人でも昨年の54.8%から11ポイント増加して66.1%と、両国で6割を上回る事態に至っている。現状の日韓関係を「良い」と見る人は、日本人で6.1%、韓国で3.7%しかいない。
 今後の日韓関係についても、今後も「悪くなっていく」と判断する人は、日本で33.8%(昨年は13.5%)、韓国も18.7%(同13.5%)といずれも昨年より拡大しており、特に日本人に悲観的な見方が広がっている。

≪相手国の首脳に対して「悪い印象」を持つ人は日本人で5割、韓国人で8割を越え、文在寅政権の日本への対応について、日本人の6割が「評価しない」とし、韓国人も「評価する」を上回る≫

 日本人で文在寅大統領に対して、「悪い印象」を持つ人が昨年から倍増し、50.8%と5割を超えている。韓国人でも、安倍首相に「悪い印象」を持っている人は多く、昨年同様8割近い。
 文政権の日本に対する対応を日本人の57.3%と6割近くが「評価しない」と回答している。韓国でも「評価しない」が35.4%と3割を超え、「評価する」と回答する韓国人の21.5%を上回っている。日本人には韓国に対する安倍政権の対応を尋ねたが、評価が分かれている。

≪日韓関係が「重要である」と考える人は韓国では8割を超えたものの、
日本では5割で調査開始以来最も低い水準になった≫

 日韓関係が「重要である」と考える人は、韓国では84.4%と8割を超えているが、日本では50.9%となり、2013年の調査開始以降で最も低い水準となった。
 日韓関係が「重要である」と思う理由で日本人に多いのは、「隣国」や「同じアジアの国」であり、一般的な認識にとどまる一方、韓国人ではそれらに加えて、経済・産業面での相互依存や貿易面から日韓関係の重要性を見ている人が多い。米国との同盟を通じて安全保障上の共通の利益があることを重要性の理由に挙げたのは日本人で22.4%だが、韓国では9.8%にすぎない。

≪困難な日韓関係を「改善に向けて努力するべき」との回答が最多となるも、
日本人の中に否定的な見解も一定数存在する≫

日韓関係の困難な現状に対して、「改善に向けた努力を行うべき」と考えている人は、韓国人では7割なのに対し、日本人では4割にとどまっている。ただ、日本人の半数は、今後の韓国との付き合いは、「対立の自制」と、「未来志向で克服すべき」と考えている。

日韓間に横たわる問題と、朝鮮半島の将来

≪徴用工の判決問題とレーダー照射問題については、日韓両国民で正反対の見方に≫

 日本企業に対して元徴用工へ強制労働の賠償を行うよう命じた韓国最高裁の判決について、韓国人の75.5%と7割超は「評価する」と回答したが、日本人の58.7%と6割近くは「評価しない」と答え、「どちらともいえない」が33.6%で続いている。
 この徴用工問題を解決するためには、韓国人の6割近くは判決に従って「日本企業が賠償を行う」すべきだと考えているが、日本人では判決に従うべきと考えている人は1.2%にすぎず、「仲裁委員会、国際司法裁判所」や「韓国政府による補償」によって解決を図るべきだと考えている人が多い。 
 さらに、被告の日本企業の資産差し押さえや売却が行われた場合に、日本政府が対抗措置を取ることを55%の日本人が容認している。
 日韓両国民の6割が、レーダー照射事件では「自国政府の主張が正しい」と判断している。日本人で「韓国政府の主張が正しい」と判断している人はひとりもいなかった。

≪北朝鮮の非核化に向けて、日本人の半数近くが非核化に疑問を呈し、
韓国国内でも懐疑的な見方が広まっている≫

 日本人の47.4%と半数近くは非核化の実現は難しい、初めから実現しないと思っていた、と見ている。これに対し韓国人でも、実現は難しい、あるいは最初から実現はしないと思っていた人が34.5%となり、「実現する」の31.4%を上回っている。昨年の調査では短期間に実現する、時間がかかっても最終的に実現すると考えていた人は59.3%と6割近くになっており、この1年で韓国でも期待が大きく減少した格好となっている。
 一方、北朝鮮の金正恩委員長の非核化への意思については、日本人の8割、韓国人でも7割が信頼していない。

≪10年後の朝鮮半島について、韓国人の間で、北朝鮮との関係が改善するとの見方は昨年から大きく減少し、不安定な状況が続く、対立が深まるとの見方が大幅に増加している≫

 10年後の朝鮮半島について、日本人では、「わからない」が40%(昨年34.3%)で最も多く、これに「現状の不安定な状況のまま」という見方が38.4%(昨年34.4%)で続き、日本人の8割近くは明るい見通しを持てないばかりか、展望を見失っている。韓国人では「韓国と北朝鮮は関係を改善する」が4割で最も多いが、昨年の62.7%からは22ポイントも減少している。代わって、「現状の不安定な状況のまま」が34.5%(昨年14.7%)、「対立が深まる」が10.4%(同4.3%)と昨年よりも大幅に増加しており、朝鮮半島の将来に不安が戻り始めている。

≪朝鮮半島の平和プロセスへの日本の貢献について、韓国人の中で見方が分かれる≫

 朝鮮半島の有事の際、在韓米軍を助けるために自衛隊が関わることの是非について、日本人の72.3%と、韓国人の57.5%が「反対」している。ただ、韓国人では「賛成」も42.1%いる。
 朝鮮半島の平和プロセスへの日本の貢献については、日本人では「貢献すべき」が49.5%と半数近くになり、「貢献すべきでない」は1割に満たない。韓国人では「貢献すべき」が39.5%と4割いるが、「貢献すべきでない」も35.7%と意見が分かれている。

≪日韓の経済協力の必要性について、韓国の方が積極的な意見が多い≫

 日韓の経済関係に関して、日本人の4割が韓国の経済発展は日本にとっても「メリット」であると認識しているが、その割合は昨年から減少している。韓国人でも日本の経済発展を「メリット」と感じる人は4割を超えているが、「脅威」であると感じている人も3割強おり、見方が分かれている。
 日韓の経済協力の必要性については、韓国では「必要だと思う」との見方が8割を超えているが、日本人では4割強であり、逆に「必要だとは思わない」が2割強も存在する。

【言論NPOとは】
 言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2005年に発足した「東京-北京フォーラム」は、日中間で唯一のハイレベル民間対話のプラットフォームとして14年間継続しています。また、2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。
 また、2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、会議での議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり出しました。

【東アジア研究院(EAI, East Asia Institute)とは】
 東アジア研究院は、地域が抱える問題について政策提言を行うことを目的に、独立シンクタンクとして創設しました。研究者セミナー、フォーラム、教育プログラム、そして多様な出版物を通じて影響力のある成果を生み出しています。東アジア研究院の調査活動は、外交安全保障プログラム、ガバナンス研究プログラムの二本柱から成り、これらのプログラムが5つの研究センターよって行われています。また、研究タスクフォースを用いて、喫緊した重要な問題にも取り組んでいます。卓越した研究者と政策立案者が協働し、東アジア研究院は革新的で政策論議を反映した研究成果を想像する中心に立っています。韓国で卓越した研究所の一つとして、米国、中国、台湾、その他多くの国々との共同研究を通じ、北東アジアにおける知識ネットワークを創造しています。