世界の課題に挑む

フランスでのG7首脳会議に向けたメッセージ

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 私たちは3月3日、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランスのG7加盟国の7カ国に、インド、シンガポール、ブラジルを加えた世界10カ国からのシンクタンクからの参加者が東京に集まり、今回で三回目となる「東京会議2019」を行った。

世界を代表する10のシンクタンクが東京に集まるのは、戦後世界の繁栄を支えた個人の自由や民主主義、法の支配や、人権の尊重という価値、規範が動揺し、リベラルな世界秩序がさらに不安定化しているからである。

 そして、今、世界では多国間での国際協力が多くの分野で暗礁に乗りかけ、国際社会が分断に向かう可能性すら高まっている。

 そうした重大な局面に、これらの価値を共有する10カ国のシンクタンクはこれまで以上に力を合わせ、議論を行い、世界に声を上げようと考えた。

 私たちの強い問題意識は、ルールに基づく自由秩序と多国間主義の価値に基づく世界を守り、さらに発展させることにある。個人の自由や人権が尊重される世界こそが、私たちの希望なのである。

 今回、私たちは米中の対立を議論の柱に据えた。これは米中対立の行方が、世界経済やそのシステムに緊張を与えているからだけではない。世界は今、国際秩序の未来を決定づける一つの岐路に直面している、と考えたからである。

 この二日間、私たちは議論を行い、多くの点で共通の理解を得た。

 一つは、現在、深刻化する米中関係は、世界の政治経済システムの分断をもたらすべきではない。むしろ、より強いルールに基づく秩序の実現に向けてG7各国がリーダーシップをとらなくてはならない。中国をルールベースの国際経済システムの方向に向かうよう働きかけを続けるべきである。

 そして、何よりも私たち10カ国は、国際関係に自由主義的で、多国間主義に基づく価値や規範をより強く機能させるためには、現在、統治の機能や市民の信頼で多くの困難に直面している民主主義自体をより強靭なものにし、より競争力を高めなくてはならない。

 そして、難民や地球環境、貧困や感染症、大量破壊兵器の管理や軍縮、など多国間主義に基づく国際協力なくして解決できない課題にも対応しなくてはならない。今こそが、その努力を本格的に始める時なのである。


 東京会議における議論の結果として、今年8月にフランスで行われるG7首脳会議に向けたメッセージを出すことにした。G7こそがこの自由と多国間主義、そして民主主義という規範を尊重し、これらの価値や規範を実現するための強いけん引役になるべきと考えるからである。この「東京会議」に集まった10カ国のシンクタンクは各組織の規定の範囲内でこうした議論に参加することで、合意している。
この立ち位置から私たちは、以下の5点に焦点を当てた。

 第一に、G7各国は、個人の自由と民主主義、法の支配および人権やマイノリティーの権利の尊重といった価値の重要性を再認識し、その下での結束をさらに強化すべきである。G7が重視すべきは、ルールに基づく自由貿易と多国間主義に伴う国際協力を機能させることであり、個人の自由を基盤とする民主主義を支持することである。それがいずれも困難に直面していることを認め、より強いリベラルデモクラシーを世界で実現するための作業に共同で取り組むべきである。

 第二に、G7各国はルールに基づく自由貿易を堅持するため、現在、表面化する米中間の対立を既存の国際機関の進化を迫る歴史的なショックとして受け止め、より高いルールベースの経済秩序に向けた努力を開始すべきである。

 そのため、日米欧の三極で協議が進むWTO改革が実現するように結束して取り組み、非市場経済的な行動を制約し、デジタル経済の進展に見合うように、通商ルール自体の高度化を図るべきである。また、G7各国は、個人の権利と自由を保護し促進するためのデジタル技術とAIの適切な使用を提唱すべきである。

 第三に、G7各国はグローバル化やデジタル化の進展を世界全体の包摂的で持続的な成長につなげるためにも、不平等や国内の所得格差の課題に積極的に取り組むべきである。個人生活の安定や個人の自由の拡張、不平等の縮小はわれわれが発展させようとする秩序の土台として尊重すべきものである。

 第四に、G7各国は民主主義自体の競争力の向上に向け、より強靭な民主制度の再構築を急ぐべきである。ポピュリズムや強権政治に陥らず、民主政治に市民の信頼を取り戻すためには、民主主義の機能の意思決定を迅速化するとともに、新しい市民参加の方法を促進し、民主政治自体が課題解決に向かうサイクルを取り戻す必要がある。

 第五に、G7各国はリベラルな国際社会への支持を固めるために、グローバル問題に対して多国間主義に基づく解決の仕組みを標榜するG7以外の民主主義国や個人の自由と多様性を尊重するこれらの国の多くの市民とより連携を深めるべきである。また考えが異なる国々とも連携・協調する方法を模索するべきである。自由な秩序を守り、世界の課題に立ち向かうG7を中核とする取り組みは世界のより多くの人の支持に支えられ、守られるべきものである。

2019年3月3日
                        「東京会議」参加一同
 
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