「東京会議2019」の評価と、来年の会議に向けて何が必要か

2019年3月04日

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日英のような民主主義の国が協力し、米中の仲介役を果たすことが重要

_DZB1832.jpgレスリー・ヴィンジャムリ氏
(イギリス/王立国際問題研究所(チャタムハウス)米州プログラム責任者)

工藤:今回の東京会議に参加して、どのような達成感を持っていますか。

ヴィンジャムリ:大変素晴らしい経験をすることができました。世界中の主要なシンクタンクから、これほど多くの人たちが集まって議論するという、他ではない経験です。今後のリベラル秩序について本当に素晴らしい議論ができたと感じています。もちろん、日本は重要なステークホルダーの一つでもあります。また、言論NPOも、これまで主要な、他を率いるような立場からビジョンを掲げて、この重要な課題における議論を引っ張ってこられたと思います。日曜日にもかかわらず、200人規模の聴衆が集まるというのは、この課題がそれだけ重要であることを示していると思いますし、将来のグローバリズムや国際的な課題を考えるにあたって、重要な鍵だと感じています。

工藤:今、世界は、アメリカと中国という巨大国家のディールに支配されるのではないか。また、市民よりも国家というものが非常にクローズアップされています。その中で、我々シンクタンクはどういう役割を果たすべきなのでしょうか。

ヴィンジャムリ:シンクタンクが担っている役割は非常に重要で、むしろ過去と比べても重要になってきていると思います。特に、政府にいる人間、これは特に米国を指して言うのですが、なかなか、こういったインターナショナリズムとか重要な課題について正直な議論ができない状況にあると思います。しかし、こういったシンクタンクが働き掛けることで、そこでの活発な議論を続けていくということが、まさに行われていると思っています。シンクタンクでのそのような議論を通して、米国の同盟国や友好国のエリートに対して影響を与え続けていると思います。したがって、シンクタンクという場を通して、非常に知的かつ堅牢な議論が行われていて、それはもちろんエビデンスベースのものであり、協調的なものであり、まさに、今議論すべき大切な内容について議論が行われていると思います。

工藤:私は、イギリスが戦後の冷戦構造下において、米ソのバランサーとして大きな役割を果たしたことに非常に興味を持っています。日本は今、同じように米中間のバランサーを務めようとしている。私はその役割を果たしたいのです。

ヴィンジャムリ:まさにその通りだと思います。特に、対立のメインプレーヤーではない、より規模は小さいけれどもリベラルな国、強い経済を持ち、強い民主主義がある国同士が話し合い、協力し合い、そして仲介役を務めることが重要だと思います。そして、説得をしたり、必要なものを導入したり、という形に持っていけると思います。

工藤:日本とイギリスはそのために協力できるし、シンクタンク間の協力がその点で行われるべきだと思っています。チャタムハウスと言論NPOももっと協力していきましょう。

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