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地球規模課題への国際協力評価2019-2020
核拡散防止

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地球規模課題への国際協力評価2019-2020
各10分野の評価

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【2019年 評価】:D(やや後退した)

 2019年の核不拡散の評価をするにあたって、言論NPOがその対象としたのは、「北朝鮮」と「イラン」である。北朝鮮に関しては、首脳会談の決裂と、その後の北朝鮮の態度硬化によって、歴史的な米朝会談によって期待が高まった2018年からは「やや後退している」状況である。「イラン」についても、米国の経済制裁に対抗してイランが核合意の履行義務を段階的に停止しており、こちらも「やや後退している」といえる。
 核軍備管理の評価に関しては、INF全廃条約が失効し、新STARTの延長に向けた協議が進んでいないことなどから「やや後退している」と判断した。
 以上のことから、2019年全体の評価は「D(やや後退している)」とした。

【2020年 進展に対する期待】:D(やや後退する)

 2020年の核不拡散における期待としては、北朝鮮に関しては、金委員長の態度硬化と、トランプ大統領の関心低下などから、状況は「やや後退する」ことになるとみられる。イランについても、今後イランで反米色が強まる可能性があり、また米国も制裁の手を緩める見込みはないことから、ここでも状況は「やや後退する」と判断した。
 2020年の核軍備管理に対する期待に関しては、INF失効後、米国はアジア太平洋地域への中距離ミサイルの配備を検討しており、その動向によっては中距離ミサイルに関する軍備管理の仕組みがない状況の下、北東アジアの安全保障環境が悪化する懸念がある。また、核兵器禁止条約の(TPNW)の批准国が増加する一方で、核兵器不拡散条約(NPT)に関しては、その在り方をめぐって4月下旬から予定されている運用検討会議では激しい議論が展開されることが予想される。こうしたことから、核軍備管理に関しても改善に向けた展望は描けず、むしろ「やや後退する」というリスクを我々は重視した。
 以上のことから、全体的な2020年の進展に対する期待は「D(やや後退する)」とした。


1.北朝鮮

 2019年の北朝鮮の核開発問題は、史上初の米朝首脳会談が行われ、非核化への期待が高まった2018年からは「やや後退している」といえる。米朝間では首脳同士が2月にハノイで会談を、6月には板門店で"面会"をするなど、今年も首脳間の直接対話は行われている。しかし、米国は、北朝鮮への制裁緩和には全面的な非核化が必要と主張しているのに対し、北朝鮮は、段階的な非核化措置による制裁の緩和を求めているなど立場の隔たりは依然として大きく、2月の会談は決裂した。10月にはスウェーデンのストックホルムで実務協議が行われたが、ここでは北朝鮮側が「決裂」を主張したのに対し、米国側は「良い議論を交わした」と強調するなど、双方の立場の隔たりを改めて露呈する結果となった。そしてその後、北朝鮮は非核化交渉の期限を一方的に2019年末に設定した。
 さらに、北朝鮮は5月から11月にかけて新型短距離弾道ミサイルとSLBMを13回、大型放射法(ロケット砲)25発を発射するなど度重なる挑発を続けるとともに、金正恩朝鮮労働党委員長は12月の党中央委員会総会で「世界はまもなく、新たな戦略兵器を目撃するようになる」と宣言するなど、核・ミサイル開発を放棄する姿勢はみせていない。

 史上初の米朝首脳会談以降、豊渓里核実験場の閉鎖をしたり、寧辺の核施設放棄を持ち出したりしても経済制裁解除も体制保証も一向に進まない現状に対し、金委員長は苛立ちを募らせ、態度を硬化させている。したがって2020年、米韓合同軍事演習が予定されている春頃や、大統領選挙を控えたトランプ大統領が外交上の成果を欲する秋頃にミサイル発射などの挑発を行うことで、米朝交渉を優位に進めようと試みる可能性がある。
 ただ、米大統領選において北朝鮮問題の優先順位は低く、さらに中東情勢の緊迫化もあって、トランプ大統領自身の北朝鮮に対する関心も下がっているとみられる。こうした状況の中では、米国本土に届くような大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験でもしない限りは、米側が対北交渉に積極姿勢に転換することはないと思われる。そうなれば、北朝鮮側も核放棄に応じず、核・ミサイル開発を継続することになるため、2020年の状況はむしろ「やや後退する」ことになるとみられる。


2.イラン

 イランの核開発問題については、2019年の状況は前年から「やや後退している」といえる。5月には米国が経済制裁の柱として、イラン産原油を全面的に禁輸としたが、イラン側はその対抗措置として核合意で定められた履行義務を2カ月ごとに段階的に停止し、7月にはウラン濃縮度が核合意で定めた上限を超えた。
 イランは核合意で約束された経済的利益の保証を求めており、この要求が満たされない場合にはさらなる履行義務停止に踏み切る可能性がある。これに対し、英仏独などは2019年中に合意維持に向けた有効な対策を打ち出せず、核合意は崩壊寸前の状態のままである。さらに、そもそもの発端である米国とイランの対立は、6月にイラン側が米軍の無人機を撃墜するなど依然として出口がみえない状況である。

 ただ、ロウハニ大統領は度々、他の合意当事国がイランへの経済支援を具体化すれば合意を遵守する姿勢を示しており、度重なる逸脱は外交交渉の一環でもあるといえ、まだ後戻りできないような状況ではないともいえる。とはいえ、2020年にはイランで議会選挙が実施され、ここで保守強硬派が躍進し、反米色が強まれば譲歩することは難しくなる(注:米軍は2020年に入るとすぐにイランのスレイマニ精鋭部隊司令官を殺害したが、最高指導者ハメネイ師は説教を通じて国民の反米感情を高めようとしている)。一方の米国側も経済制裁の手を緩めるような兆しはみられない。そして、欧州の仲介も機能しないとなると、2020年も大きな進展は見込めず、むしろ状況は「やや後退する」とみられる。


3.核軍備管理

 核軍備管理においては、2019年は「やや後退している」状況である。米ロ間の中距離核戦力(INF)全廃条約が8月に失効。これを受けて、米国はロシアや中国などに対抗するためとして、これまで禁じられてきた中距離ミサイルを本格的に開発する方針を表明し、中距離ミサイルの発射実験を二度実施した。
 2021年2月に有効期限を迎える米ロの新戦略兵器削減条約(新START)については、ロシア側は新STARTが延長されるなら、開発中の極超音速兵器「アバンガルド」など最新戦略兵器を条約の規制対象に含める用意があるとしているなど、新START維持のために米国に歩み寄りを求めている。一方、米国側は、中国の核戦力増強を抑えられないとして期限延長に難色を示しているため、延長に向けた協議は進んでいない。

 INF失効後、米国は中距離ミサイルの開発と同時に、日本を含むアジア太平洋地域への配備の検討を進めている。仮に、実際に配備されるようなことがあれば、中ロは対抗措置を取るとしており、2020年には中距離ミサイルに関する軍備管理の仕組みが存在しない状況の下、北東アジアの安全保障環境が悪化する恐れがある。
 また、核軍縮に関しては、核兵器禁止条約の(TPNW)の批准国の増加は2020年も続くとみられるが、核兵器不拡散条約(NPT)に関しては、その在り方をめぐって4月下旬から予定されている運用検討会議では激しい議論が展開されることが予想される。NPT体制が即時瓦解して、北朝鮮やイラン以外からも核開発に乗り出す国が直ちに出現するような切迫したリスクまではないが、国際的な議論の動向は先行きが見通せず、全体として「やや後退する」可能性がある。

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