言論スタジオ

被災地に向けたボランティアの動きをどう立て直すか

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2011年6月8(水)収録
出演者:
早瀬昇氏(大阪ボランティア協会常務理事)
矢野正広氏(とちぎボランティアネットワーク事務局長)
田中弥生氏(言論NPO理事、大学評価・学位授与機構准教授)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


 6月8日、言論NPOは、言論スタジオにて早瀬昇氏(大阪ボランティア協会常務理事)、矢野正広氏(とちぎボランティアネットワーク事務局長)、田中弥生氏(言論NPO理事、大学評価・学位授与機構准教授)をゲストにお迎えし、「被災地に向けたボランティアの動きをどう立て直すか」をテーマに話し合いました。



第2部 ボランティアを動かすため何が足りなかったのか

工藤:それでは、話を続けていきます。今、色々な形で課題が見えてきているのですが、その中で気になっていることから始めたいと思います。確かに、ボランティアに行きたいけれど、現地の人から信頼を得るということは、非常に時間がかかる。しかし、それは今回だけではなく阪神淡路大震災の時も同じだったと思うのですが。


この3か月で被災地の住民との信頼関係はできたのか

早瀬:阪神淡路大震災の時には、私たちが震災の3日後にボランティアセンターを開きました。最初の頃は、被災者のところに出向いても、「何や、お前ら、見物に来たんか?」という調子でした。当然、試行錯誤もありました。「何かすることはありませんか?」と伺うところを、「どなたかこの近くで困っておられる方、ご存知ありませんか?」という言い方をすると、「それやったら、俺も困ってる」ということを言って下さるようなプロセスの中で、少しずつ進めて行けました。

しかし、土地柄的に、色々な人が出入りするようなことが当たり前の神戸・西宮の地域と、観光客以外は基本的にみんな仲間だという地域とは、ちょっと違います。

工藤:さっき田中先生が学生の話をしていましたが、結局は、どこの地域でも基本は同じで、地域の人達とつながりをつくって、信頼関係ができて、で、具体的な取り組みに向かう、ということになります。そうした関係は東日本の場合、震災から3カ月でつくられてきたのか。十分でないとしたら、どこに課題があるのか、です。

矢野:私は、村的な助け合いの中でのコミュニケーションの仕方と、それから都市的な新しい共同体か何かの関係との違いは、「流儀」の違いだと思います。田舎に行くと、こういうことは年柄年中あって、素早く信頼関係をつくる方法は、継続して同じ場所によそ者が行って、1軒の家でもいいからやり切ってくると、信頼が生まれ、よその家からも、うちもやってほしい、と声が上がってくる。

工藤:つまり、信用ができてくるということですよね。

矢野:ところが、今回の場合、ボランティアセンターは、地元の社会福祉協議会を中心にしてやりますから、今までの社会福祉協議会と住民の関係がそのまま反映されるところがあります。そうすると、住民にある程度のお上意識というのがある場合には、ほかには頼まない。ある意味、1軒でも(ボランティアの受け入れを)やると、他の家もやらなければいけないので、見ないフリをしたりするところがあります。それが、(ボランティアは)必要が本当にあるのですかという雰囲気になってしまう。

工藤:結局、ボランティアを増やすには、ボランティアを集めて届けて、地元のニーズにつながる、ということが有機的に動かないといけない。それが、この3カ月で、だんだん尻上がりに増えてきたのか。逆にうまくいっていないのか。

矢野:私は、今、ある1つの手法であるボランティアバス、ということをやっています。私たちが阪神淡路大震災の時にやったのもボランティアバスで、多分、それが日本で初めてだと思います。こういう手法がみんなに浸透してくると、送る方は何とかなります。しかし、今度は、受け入れる方がパンクする場合があります。要するに、ある程度、一貫してそのことができるようなことがないと難しい。

 一方で、送り出す側の地域でも、ボランティアを送り出せるような基盤やネットワークができていないと、送り出すこと自体もできないという側面もありますよね。
ただ、これを機に、今からがんばるだとか、次の時にもがんばるということでやっていかないと、災害に強い社会にはならないと思います。

工藤:田中さんどうですか。


受け皿は「社協」だけでよかったのか

田中:受け皿という点では、文化的な問題もあるのですが、私は少しだけ気になっていることがあります。というのは、今回、政府はボランティアに関しては積極的で早かったと思います。辻元清美さんがボランティア担当補佐官になり、連携室も直ぐにできました。そこで、辻元さんはボランティアは社協のルートでやります、ということをまずメディアでかなりおっしゃいました。それで、何となく個人のボランティアは社協ルートを通じて、団体はNPO関係でというような棲み分けができてしまった。
アエラなどのメディア報道を見ても、そういう分け方で説明してしまっているのですね。実際に、現地のNPOにしても、ボランティアは社協さんなので、うちは団体の受け入れをやりますということで、個人ボランティアは自分たちと関係がないというか、社協にお任せしようという感じになってしまっている。NPOが、社協以外の受け皿になってもよかったのかもしれませんが、そこが弱いような気がします。

早瀬:国際ワークキャンプのNICE(ナイス)のように、一般にボランティアを募集しているNPOはあります。

田中:3百数十の団体が現地に入っていますけど、ボランティアを受け入れるためには、それなりに体力がいるのですが、それが出来ているのは50を切っています。

早瀬:海外協力系のNGOはボランティアと一緒にという感じはなく、専門スタッフでやろうとしていますね。

田中:そうですね。宗教系の団体とかYMCAなどが一生懸命ボランティアを受け入れているのですが、それ以外は、自分たちでやるので精一杯なってしまっています。

工藤:先程もあったように「まとめて届けて」、「受け止める」というそれぞれの力が、今、問われているわけですよね。まずまとめて届けるという点では、それをどう乗り越えて行けば、何かが変わる、という状況なのでしょうか。

早瀬:出欠を厳しく取るような時代に、学校の授業期間中に学生がどれだけ現地に行けるのか、という問題がありますが、1つは企業がボランティア休暇制度を活発にしています。経団連では、ボランティアバスではないけれど、ずっと走っています。それから、東京都のボランティアバスも走っています。そういうパイプは沢山できてきているわけです。1つの期待はそれなのだと思います。

工藤:矢野さんのところは、栃木で2万人を送ろうとやっていますよね。それはどうなのですか。ボランティアを送る、という点に関しては、かなり盛り上がってきているのですか。

矢野:私たちの会から、大体2400人ぐらいを送っています。それで足りないから2万人と言っています。つまり、職場あるいは学校、飲み仲間とか家族で行ってもいいです、という言い方で、電話をかけて何人行ってきました、と報告だけしてくれればいいです、ということにしています。

工藤:それはどんどん浸透していますか。

矢野:浸透しています。それで、プロモーションビデオをつくって、今度6月あたまに公開することになっていましたが、少し延びています。

工藤:この前、NHKでやっていましたよ。沿道に手を振っていたりしてましたね。

矢野:そうです。そういうプロボノではないですけど、そういう応援の仕方もあるし、そういう中から、みんなで盛り上げていくみたいなことも、1つの支援ですよね。

工藤:つまり、今のボランティアを「まとめて、送る」というところの動きは、そういう意識を持っていかないと、なかなか動かないという状況なのですね。


現状のNPOに「送り、届け、受け入れる」力はあるのか

矢野:そうですね。それから、送る側にもう1つ、必要な能力は何かと言うと、ボランティアと共に、年がら年中その団体が運営されているのかということが一番のポイントです。

工藤:それは決定的に重要ですね。

矢野:そうです。NPOとして、専門スタッフがお金集めや行政からの受託事業だけでやっている団体では、それはできないと思います。

工藤:今のお話は非常に大きな問題で、つまり、阪神淡路大震災以降、NPO自体が市民やボランティアを巻き込むような形で成長していたかということが問われている、ということをおっしゃっているわけです。田中さん、どうですか。

田中:そうですね、おっしゃる通りで、それは私も6年ぐらい言い続けているのですが、寄付を集めていないNPOが4万団体の内、5割です。そして、ボランティアが全くいないと回答したところは2割いました。で、どうしてそうなるかというと、おっしゃったように、行政からの委託事業とか、ビジネスに走り過ぎていて、寄付やボランティアは、自分たちとはあまり関係ないし、それは昔の古いチャリティー団体のものだという風な認識があるからです。これは、実は政策的にもそれを支える動きがあったのですが、それを真っ当に受けてしまったがために、いざボランティアを送り出したり、受け入れようと思っても、とても難しいわけです。NPO側もそれができなかったという問題は真摯に受け止めて、反省するべき点ではないかと思っています。

工藤:今回、命を救うということで、お医者さんを始め、色々な人達が被災地で動きました。阪神淡路大震災の時には、自分たちの能力や人間関係を使って、被災地のために何かがしたいという、非常に純粋な大きなエネルギーがありました。今回もそういうエネルギーは強いのですが、今おっしゃったように、NPO自体がちゃんとした動きができていないという問題があります。

早瀬:そうです。実際には、ボランティアと付き合うことをしてきたかどうか。現地の中で言うと、社会福祉協議会のボランティアセンターだけでした。NPOにもあったのかもしれませんが、非常に少なかった。かつ、社会福祉協議会の中でも、例えば、福島県の中には49の市町村があるのですが、ボランティアセンターがあったのは2つだけでした。逆に言うと、その中でよくやっていますよ。そういう体制だったのだけれど、今は一生懸命がんばっていて、みなさん、この間で非常に鍛えられたわけです。NPOの方に、もうちょっとボランティアと協働しながら進める団体がもう少し多ければ、違う展開があったのではないかと思います。


NPOは市民とつながることの意味を再考すべき

工藤:そういうことが必要だという認識は出てきているわけですよね。つまり、市民とつながっていくという組織運営が本来必要だった。それは、逆に言えばそこにニーズがあるということですよね。そうした問いかけや大きな変化が始まっている、ということなのでしょうか。

矢野:始まっているのではないでしょうか。

早瀬:一般のボランティア活動への参加希望者は増えています。さすがに、私のところは大阪なので、みんなが被災地に行くということにはなりにくいのですが、地元で何かをしたいという人の数は増えています。それは、完全に風向きが変わって来ている面はあると思います。

工藤:なるほど。田中さん、今、課題はかなり見えてきたのですが。

田中:私は、どんなプログラムができてくるのかということについて、まだ様子を見ています。政府とNPOの連絡会のメーリングリストで、毎日数十通のメールが流れてきます。最初見ていると、自分たちの活動を現地で受け止めてもらうことで精一杯だったのですが、ようやく今、「ボランティアを募集します」という案内が増えてきています。しかも、そのプログラムの内容に多様性が出てきているので、私はいい兆しが出てきていると思っています。

工藤:次は受け皿の問題です。ボランティアを受けるような団体が、被災地の中にどんどん出てきているという状況なのでしょうか。


現地の「受け皿」は疲労し、新しいサポートが必要な段階

矢野:逆に、現地のボランティアセンターで、よくやっているところは、もう疲れ切っています。だから、疲弊しています。だから、逆に、こっちから添乗員みたいな人を連れて行って、それをサポートするとか、そのぐらいやらないと、現地での受け入れはできないと思います。逆に言うと、やり方そのものは、先方がわかりますから、それにのっかって、あっちに行ってくれ、こっちに行ってくれとやれば、できてしまうと思います。私たちも更に現地にとちぎ専用のコーディネーターを置くことにしています。もう1つは、こういう大量に、泥出しのボランティアが必要なのは梅雨の間だけだと思います。つまり、あと1カ月ぐらいしか、あの活動はできないのではないかと思います。それを越すと、暑くて仕事ができないし、更に伝染病などの心配もあります。ただし、時間が限られている中で、できるところまでちゃんとやらなければいけない。これは予断を許さない状況にあると思います。

早瀬:もっと言えば、本当は梅雨の前がいいですけどね。

矢野:泥出しでキャンペーンをやっているのは梅雨の間だけだと思います。次には、仮設住宅への移行で、仮設での見守りという活動になってくる。阪神淡路大震災の時には、仮設に定期的に行って顔見知りになって、信頼関係をつくって、御用聞きをしたりして色々なことをするというのが仕事でした。定期的に訪問し、顔見知りなることが大切なので、遠隔地からはなかなかできにくい。そうすると、外からボランティアで行くのではなくて、宮城県や福島県、岩手県の沿岸部ではない人たちが応援するような形にならなければいけないし、そうした作業のサポートは僕たちはしなければいけないと思っています。


早瀬:仮設住宅が中心になる段階はまだ先の話です。今の話でいうと、確かに、疲れ切った部分とかは、おっしゃる通りなのですが、一方で、気仙沼の地域(大島)に、また新たにボランティアセンターがつくられたりしています。今の段階から、更にボランティアセンターをつくろうという動きもあり、一部の地域では閉め始めているところもある。進行が全然違います。

一部の地域がボランティアセンターを閉め始めているから、ボランティアは全体としていらなくなってきたとは思わないで、逆に、新たにボランティアセンターをつくり始めているところがある、ということをぜひ知っていただきたいと思います。

田中:そうですね。
工藤:そうした動きに支援が必要なのですね。
田中:あと報道の力も必要です。
矢野:だから、色々な見方をして、立体的に見ていかないと何とも言えませんね。
早瀬:被災地は広いですから。

矢野:そもそも阪神淡路大震災の時にはボランティアセンターはなくて、自分たちの周りのところが、一般の人たちを受けいれました。つまり、色々なところに何カ所もボランティアセンターができたのと事実上同じなのです。
つまり、各市町村にボランティアセンターが1つと決めたのは、あくまでも便宜的な話であって、それでは地震の場合には足りないはずなのです。だから、私がずっと言っているのは、地震と水害は違うから、水害と同じタイプのボランティアセンターが必要なのではないか、ということです。

田中:どんどん、自分たちでボランティアセンターの機能をつくってしまえ、ということですね。

矢野:そうなのです。あるいは、避難所そのものが、自分達でボランティアを集めて、ボランティアセンターの役割を担っていくとか、それを仮設でもやっていくなどが必要だと思います。ただ、やり方を一度覚えれば、みなさんできますので、そういう形がどんどん増えていくと、1カ所にボランティアが集まって疲弊していくということはなくなるかもしれません。

報告・動画 第1部 第2部 第3部

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この記事に[ 1件 ]のご意見・ご感想があります

投稿者 / 熊谷直2011年6月20日 10:15

volunteerとはもともと志願兵のこと。運送業者や医療関係者などを組織として自衛隊の後方専門予備自衛官にしておけば、それで解決する問題が多い。外国に比べて少ない自衛隊の予備自の中から象徴的に一部を出してもあまり意味がない。平時から組織をつくっていくらか訓練しておけば緊急時に役に立つ。

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