「議論の力」で強い民主主義をつくり出す
特定非営利活動法人 言論NPO ・ 東アジア研究院
【調査協力】
日本:世論総合研究所 韓国:Hankookリサーチ / 2013年5月
日韓両国民の直接交流の度合い
相手国の情報への関心度や情報源
日韓両国民の相手国に対する印象
この一年間の相手国に対する印象の変化
相手国に対する印象の理由
基礎理解の現状
相手国の「社会・政治体制」の認識
相手国の国民性をどう見ているか
現在と今後の日韓関係をどう見ているか
日韓関係の発展を妨げるものとは
日韓関係の重要性をどう見ているか
中国と比較した場合の日韓関係の「重要性」と「親近感」
日韓首脳会談の評価と議論テーマについて
相手国への訪問についての認識
民間交流に関する日韓の世論の意識
歴史問題に関する日韓両国民の認識は
首相の靖国神社参拝問題
世界をリードする国・地域
2030年の相手国の影響力について
日韓の経済関係
アジアは1つの経済圏となるか
10年後の朝鮮半島について
日韓間の領土紛争について 軍事的脅威と東アジアでの軍事紛争に関する認識
日韓に報道や言論の自由は保障されているのか
自国のメディア報道は客観的で公平か
インターネット上の世論は日本、韓国の適切な民意なのか
この調査結果は、両団体が日韓両国の関係改善を目的に5月に創設する、新しい日韓の民間対話(「日韓未来対話」)の場でも報告され、対話と連動する形でこの調査が使われることになる。共同の世論調査を実施し、それと連動し調査結果を基に対話を行う方式は、言論NPOが、2005年に立ち上げた日本と中国の民間対話である「東京‐北京フォーラム」で導入しており、今回の対話でも同じ方式を採用することにした。
日本側の世論調査は、日本全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に3月30日から4月15日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。回答者の最終学歴は小中学校卒が10.5%、高校卒が45.1%、短大・高専卒が20.8%、大学卒が19.7%、大学院卒が2.5%だった。
これに対して韓国側の世論調査は、韓国全国の19歳以上の男女を対象に3月25日から4月15日まで調査員による対面式聴取法により実施された。有効回収標本数は1004であり、回答者の最終学歴は小学校以下が5.5%、中学校卒が8.7%、高校卒が39.5%、大学在学・中退(専門大学を含む)が11.6%、大学卒が33.2%、大学院卒が1.4%だった。
なお、この世論調査と別に、言論NPO及び東アジア研究院は日韓の有識者へのアンケート調査を4月上旬から中旬にかけて両国国内で実施した。日本側は、過去に言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の有識者など2000人に質問状を送付し、うち575人から回答をいただいた。これらの回答者は日本及び韓国社会の平均的なインテリ層の姿を表していると考えられ、日韓の世論の調査結果を比較することで、一般的な日本人・韓国人の認識に補完しようと考えた。
有識者の回答者の職業は、会社役職員が20.7%、メディアが3.3%、国家公務員が3.0%、地方公務員が2.1%、政治家・党関係者0.9%、学者・研究者が33.6%、NPO・NGO関係者が5.9%、各団体関係者が5.7%、学生が5.4%、自営業が3.1%、その他16.3%である。韓国側も同様に韓国国内の有識者を抽出し、393人から回答を得た。韓国の有識者の職業は、政治家が3.8%、教授が36.1%、研究者が18.3%、会社役職員が6.6%、公務員(公共機関の勤務者を含む)が11.5%、ジャーナリストが7.6%、NGO職員が2.8%、弁護士・会計士・医者などの専門職が6.9%、その他が6.4%である。
ここでは日韓両国民の相互の直接交流の程度と相手国についての認識を形成する際の情報源について尋ねた。日韓は隣国として近年相手国の文化に触れる機会が増えたにもかかわらず、依然、両国民間の直接交流は進まず、双方の自国のメディアで両国の情報を知る程度であることが示されている。
世論調査で浮かび上がったのは、日本と韓国が歴史的な交流が長く地理的にも近い隣国であり、かつ日本人にとっては近年韓流ブームで韓国の文化に触れる機会が増えたにもかかわらず、直接的な交流は思ったほど進んでいない点である。
日本人のうち、韓国への訪問経験が「ある」と回答した人は21.4%で、韓国人も23.8%で2割程度に過ぎなかった。訪問の目的は「観光・旅行」が日本人が89.3%、韓国人が84.1%と圧倒的であり、「仕事の関係で長期居住(1年以上)」や「留学」など相手国に長期間滞在する人は日本人も韓国人も1%程度しかいない。
また、日本人で韓国人に「親しい友人・知人」、または「多少話をする友人・知人」がいる人は22.0%、そして韓国人の場合は9.7%程度しか存在しない。両国民の8~9割が「相手国の国民に知り合いはいない(いたことはない)」と回答している。
一方、今回、世論調査とは別に両国で有識者のアンケートを実施した。この結果は世論調査とは異なり、日本人で68.3%、韓国人で82.7%が相手国に訪問した経験があり、韓国人あるいは日本人の「親しい友人・知人」、または「多少話をする友人・知人」がいる日本人は75.1%、韓国人は61.0%も存在しており、高い直接的な交流の経験を持っている。
日本人と韓国人の相手国に対する認識は、「自国のメディアを通じて相手国を知る程度」と回答したのは日本人が70.2%であり、韓国人も80.8%と8割を超えている。「相手国のメディアやインターネットを見たことがある」は日本人で20.8%と2割あるが、韓国人で13.2%と1割程度である。
このため、相手国を知るための情報源は、両国民ともに「自国のニュースメディア」と答えており、日本人は91.2%、韓国人は94.0%もの人が情報源として、「自国のニュースメディア」を選んでいる。この「ニュースメディア」を取り上げた人の中で「テレビ」を挙げたのが日本人で82.1%、韓国人で74.6%と圧倒的で、両国民ともに相手国の認識を「テレビニュース」により多く依存していることが分かる。ただ、韓国では「インターネット」を挙げる人は20.0%あり、特に30歳未満では40%程度に高まっている。
このほか、日本人の21.7%が韓国に対する情報源として「韓国のテレビドラマ・情報番組、映画作品」を選んでおり、近年の韓流ブームによる韓国が制作したコンテンツが韓国に対する認識に影響を与えていることがわかる。
韓国でも日本に対する情報源として、「韓国のテレビドラマ・情報番組、映画作品」を挙げる人は37.5%と高く、さらに「家族や友人、知人の経験」も30.3%とそれぞれ3割を超えている。
これに対して有識者は、相手国への関心や情報源がより深く、かつ多様になっており、「相手国の文化に直接触れたことがある」日本人は48.3%、韓国で39.9%、「相手国のメディアあるいはインターネットを見たことがある」との回答は日本で45.9%、韓国で36.4%と相手国の情報にかなり高い関心を示している。
まず、相手国に対する印象について、韓国に「良い印象を持っている」と回答した日本人は、「どちらかといえば良い印象を持っている」を合わせても31.1%しかおらず、さらに韓国では、12.2%に過ぎない。逆に、相手国に「良くない印象を持っている」との回答は、「どちらかといえば良くない印象を持っている」を合わせると日本人で37.3%、韓国人については76.6%も存在しており、韓国人の8割近くが日本人に良くない印象を持っている。
ただ、相手国への渡航経験や直接交流を持つ割合が一般世論に比べ大幅に高い両国の有識者と比較すると、日本の有識者の53.4%、韓国の有識者の59.5%が、相手国に「良い」印象(「どちらかといえば良い」を含む)を持っており、一般の人ほど悲観的になっていない。
日本人、韓国人ともに多いのが「特に変化していない」でそれぞれ52.9%、49.7%と半数程度あるが、「どちらかといえば悪くなった」あるいは「非常に悪くなった」と回答する日本人は39.6%、韓国人は46.7%も存在している。
では、こうした両国民の相手国に対する印象の悪さはどこに原因があるのだろうか。
相手国に対してマイナスイメージを持っている人にその理由を尋ねたが、日本人の中で最も多いのは、「歴史問題などで日本を批判するから」の55.8%で、「竹島をめぐり対立が続いているから」が50.1%で続き、この2点が半数を超えている。ただ、「韓国人の言動が感情的だから」(24.7%)、「スポーツに政治問題を持ち込んでくるから」(22.8%)、「韓国人の愛国的な行動や考え方が理解できないから」(20.9%)と現状の韓国人の行動にマイナスナスイメージを抱いている回答数が、単純に加算すると、6割を超える。
日本の有識者も、韓国人の現状の行動がマイナスイメージの原因とする見方が多く、「韓国人の言動が感情的だから」が46.2%と半数近くになっている。
これに対して、韓国人は「独島問題があるから」が84.5%、「侵略した歴史について正しく反省していないから」が77.0%と領土をめぐる紛争と歴史認識問題を挙げる人がそれぞれ8割と圧倒的に多くなっている。
この構造は、韓国の有識者も同じである。加えて、韓国の有識者の場合は、「日本の『右傾化』が気になるから」という回答も28.3%と3割近く存在する。
反対に、相手国にプラスの印象を持つ国民にその理由について尋ねた。
まず、日本人で最も多いのは「韓国のドラマや音楽など、韓国の文化に関心があるから」が52.4%と半数を超え、「韓国人はまじめで努力家で積極的に働くから」が27.0%、「同じ民主主義の国だから」が22.8%と続いている
これに対して、韓国人は、「日本人は親切で、まじめだから」が59.8%と6割近くで最も多く、「生活レベルの高い先進国だから」が46.7%で続いている。「同じ民主主義の国だから」は16.4%しかなかった。
日本の有識者では「韓国人はまじめで努力家で積極的に働くから」が40.4%で最も多く、韓国の有識者では「日本人は親切で、まじめだから」が7割(69.7%)近くになっている。
「韓国と聞いて何を連想するか」という問いに対して、日本人で最も多いのは「韓国料理」の59.1%である。また、「韓流ドラマ、K-POP」を挙げる声も47.2%存在し、韓国文化を挙げる見方が根強い。ただ、昨年の竹島・独島をめぐる日韓の対立から、「竹島問題」を挙げる世論も56.7%も存在し、「反日感情、反日デモ」が32.0%である。
これに対して韓国人の場合、「独島問題」が84.4%、「従軍慰安婦問題」が61.5%と圧倒的に多い。領土をめぐる対立、歴史問題の2つの課題が韓国人の日本に対する主要な理解となっており、日本料理、高品質の工業品、富士山、桜、マンガ・アニメなどを挙げる韓国人はいずれも1割程度しかいない。
「知っている日本・韓国の歴史上の出来事や事件」を尋ねた設問では、日本人は「女性大統領の誕生」が72.4%とトップで、それに「ソウル五輪」の71.1%、「日韓ワールドカップ」が70.0%と続いており、より多くの日本人が韓国併合などの歴史よりも比較的近年の出来事を挙げる回答が多い。
一方韓国人は半数を超える人は「壬辰倭乱(文禄・慶長の役)」(80.6%)、「広島・長崎への原爆投下」(74.8%)、「太平洋戦争」(55.4%)、「韓日強制併合」(49.9%)などを選んでおり、第二次世界大戦前・大戦中の出来事が占めている。
また、「知っている日本・韓国の政治家」では、日本の場合は「金大中」が75.7%と最も多く、次いで前大統領の「李明博」が65.5%、そして3番目に現在の大統領である「朴槿惠」が51.9%と続いている。
韓国人は、現役の総理である「安倍晋三」が66.2%と圧倒的に多い。靖国神社の参拝などで韓国からも批判された小泉純一郎元首相も43.7%と続いている。ただ、この2名を除いて、他の日本の首相を挙げる韓国人のはいずれも1割程度しかおらず、すべてを知らないとする人も22.3%いる。
次に、相手国の社会や政治体制に対する認識である。
日本人は「韓国の社会・政治体制のあり方」について、「民族主義」が43.3%と一番多く、次いで「軍国主義」(31.3%)、「資本主義」(31.2%)、「国家主義」(29.4%)となっている。
韓国を「民主主義」と考えている日本人は28.3%に過ぎなかった。
日本の有識者については7割(70.3%)が韓国を「民族主義」と回答しており、圧倒的である。
これに対して、韓国人も、現在の日本は「軍国主義」であるという回答が50.3%と半数を超えており、最も多い。次いで「資本主義」が46.9%、「民族主義」が34.6%で続いている。日本が戦後世界に主張してきた「平和主義」は8.8%、「国際協調主義」は3.5%と1割にも満たず、「民主主義」の国という理解も24.1%しかなかった。
ここでは、日韓の世論に「親切か/傲慢か」、「勤勉か/怠慢か」、「平和的か/好戦的か」、「柔軟か/頑固か」、「信用できるか/できないか」、「正直か/不正直か」、「創造的か/模倣的か」、「協調的か/非協調的か」、「利他主義か/利己主義か」、「集団主義か/個人主義か」、の10の項目で相手国の国民性を判断してもらった。
まず、日本人は全10項目のうち6項目で「どちらともいえない」という回答が半数以上を占めており、韓国人の国民性についてはっきり判断できない回答が多い。その中でも、韓国人の国民性について、「勤勉」であるという認識が57.7%(「やや勤勉」を含む)で最も多い。この他、3割以上の日本人が選んでいるのは、韓国人が「頑固」47.6%であり、「利己主義」(37.0%)、「集団主義」(34.3%)、「非協調的」(32.0%)ということである。
一方、韓国人は日本人の国民性に対して、半数以上が選んでいるのは、「勤勉」が最も多く78.5%、次いで、「親切」が69.2%、「利己主義」が55.2%である。この他、韓国人の3割以上が日本人の国民性として選んでいるのは、「創造的」が43.9%、「信頼できない」が39.5%、「正直・誠実」が35.2%、「非協調的」が34.8%、「頑固」が33.9%、である。
日韓関係は、2012年末より竹島・独島をめぐる対立から大きく悪化した。今回の世論調査では現在の日韓関係と今後についての認識を尋ねた。
現状の日韓関係について、「良い」(「非常に良い」と「どちらかといえば良い」の合計)と見ている日本人はわずかに11.3%に過ぎない。同じく韓国人の場合も、「良い」という回答は3.4%と極めて低く、現在の日韓関係を「良い」と見る国民は日本でも韓国でも非常に少ない。
逆に、日韓関係を「非常に悪い」、あるいは「どちらかといえば悪い」と認識している日本人は55.1%と半数を超えており、韓国人については67.4%と7割近くが今の日韓関係を「悪い」と考え、両国民ともに日韓関係の現状を深刻に見ている。
こうした日韓関係に関する悲観的な認識は、両国の有識者も同様であり、日本の有識者で、「非常に悪い」、あるいは「どちらかといえば悪い」と認識している人は50.1%、韓国の有識者は61.8%である。
次に、「この一年間で日韓関係は変わったか」という設問では、日本人でこの一年間で日韓関係が「悪くなった」(「非常に悪くなった」あるいは「どちらかといえば悪くなった」の合計)と認識する日本人は、66.3%と7割近くになっている。同じく、韓国人でも「悪くなった」との回答は53.9%と半数を超えている。
最後に、「今後の日韓関係についてどう考えるか」を尋ねた。日本人の34.6%、韓国人の59.5%が今後の日韓関係について、「変わらない」と見ており、こうした認識は両国民に最も多い。昨年一年間で悪化した日韓関係が今後改善することはないとより多くの両国民が共に考えている。さらに、日韓関係は今後さらに「悪くなっていく」(「どちらかといえば悪くなっていく」を含む)を考える日本人は18.2%、韓国人で26.6%となっている。「良くなっていく」(「どちらかといえば良くなっていく」を含む)と考える日本人は23.1%、韓国人は14.0%であり、どちらかといえば韓国人に悲観的な見方が多い。
ただ、有識者の場合は、日本人で42.4%が「良くなっていく」(「どちらかといえば良くなっていく」を含む)と回答している。韓国人も有識者については「良くなっていく」という割合が35.2%と3割を超えており、世論とは異なり前向きに日韓関係を考えている。
それでは、両国民が考える日韓関係の発展を妨げるものは何だろうか。
両国民ともに最も多く選んだのは、「竹島・独島問題」であり、日本人の83.7%、韓国人の94.6%と圧倒的に多い。ただ、そのほかの理由については、日本人と韓国人で意見が分かれている。日本人で2番目に多い要因は「韓国国民の反日感情」が55.1%と半数に及んでおり、次いで「韓国の歴史認識と歴史教育」が33.8%、「韓国メディアの反日的な報道」が25.3%と続いている。
韓国で2番目に多かったのは、「日本の歴史認識と歴史教育」(61.1%)と半数を超えており、「日本の政治家の反韓感情を煽動する発言」が31.1%、「日本国民の反韓感情」が24.7%と続いている。
日本と韓国の有識者も日韓関係を妨げる問題として、「竹島・独島問題」がともに多いが、それ以外では、日本側の有識者では「韓国の歴史認識と歴史教育」と「韓国国民の反日感情」が多く、韓国側の有識者では「日本の歴史認識と歴史教育」と「日本の政治家の反韓感情を煽動する発言」が多かった。
現在の日韓関係を「悪い」と見ている両国民は半数を超え、今後の二国間関係についても悲観的な見方が多い中でも、日韓の国民はどちらも7割以上が日韓関係を重要だと判断している。
日韓関係を重要と思っている日本人は、74.0%(「重要である」、「どちらかといえば重要である」を合わせる)、韓国人も73.6%と両国民ともに7割を超え、最も多い。有識者に至っては日本人が81.2%、韓国人が90.3%と圧倒的な水準にある。「重要ではない」という回答は、「どちらかといえば重要ではない」を含めても、日本人の7.1%、韓国人の6.0%しか存在しない。
今回の調査では、日韓の相手国に対する重要性に加え、東アジアの大国で両国が歴史的にも深い関係を持つ中国との関係の重要性や親近感を比較する設問を設定した。
まず、両国世論に自国の将来を考えるにあたり日韓(韓日)関係と日中(韓中)関係はどちらが重要かと尋ねた。
日本人の49.6%、韓国人の55.0%とどちらも半数程度が「どちらも同程度の重要である」と回答しているもの、日本人、韓国人ともに、「対中関係がより重要」という回答はそれぞれ日本が20.0%、韓国が35.8%も存在している。
また、日本人は「日韓関係がより重要」という回答が13.9%存在するのに対し、韓国人の場合は「韓日関係がより重要」という回答は9.3%とわずか1割に満たず、特に韓国側の方が中国との関係をより重要視する見方が多い。
この構造は、日本と韓国の有識者も同じで、韓国の有識者で対中関係の方が韓日関係よりも重要と見る有識者は45.5%と半数近くになっている。日本の有識者で対中関係がより重要と考える有識者は31.1%である。
加えて、日本と韓国、そして中国に対する親近感の比較についても尋ねた。
ここでも両国民間でお互いの親近感に対する見方の違いが鮮明になった。
日本人の場合、「韓国により親近感を感じる」と回答する人は45.5%と半数近くに及んでいるが、「中国により親近感を感じる」は5.9%と1割未満しかなかった。
しかし、韓国人は、「日本により親近感を感じる」との回答はわずか13.5%しかなく、「中国により親近感を感じる」人は36.2%と3割を超えている。韓国では対中関係を対日関係より重視する見方が多いのに加えて、中国に親近感を覚える人が日本に親近感を覚える人よりも3倍も多い状況になっている。
ただ、韓国では日本と中国の「どちらにも親近感を感じない」と回答する人が38.0%と最も多い回答となっており、日本と中国のいずれにも親近感を覚えない人が40%近くいることには留意する必要がある。
この傾向は、日韓の有識者では多少異なる。日本の有識者は、「韓国により親近感を感じる」が40.9%で一番多く、「中国により親近感を感じる」の11.1%を大きく上回ったが、韓国の有識者も「日本により親近感を感じる」が27.0%と「中国により親近感を感じる」の18.6%を上回った。
日韓両国は、隣国として近年政府及び民間での交流が活発になってきた。ここでは、まず、2004年以降、日韓間の課題を話し合うために日本と韓国の政府が実施してきた首脳外交(シャトル外交)の評価と議論すべきテーマ、そして民間交流についての意見を尋ねた。
日本と韓国間で行われている首脳会談(シャトル外交)の必要性に関しては、日本人が70.2%、韓国人が84.9%と、両国民の7割以上が「必要である」、あるいは「どちらかといえば必要である」と回答している。
その中で、首脳会談で議論すべき課題について尋ねたが、日本人の43.9%、韓国人については76.8%が「竹島・独島問題」を挙げて、両者ともに最も多い意見である。
また、日本人はこのほか、現在緊迫している北朝鮮情勢から「北朝鮮の核問題」を挙げる人が2番目に多い37.1%、「拉致問題」が17.5%で続いている。しかし韓国人の場合は、「北朝鮮の核問題」(31.3%)よりも「歴史問題・慰安婦問題」を挙げる世論が40.9%と4割を超えており、ここでも「歴史認識問題」の解決を求める声が多くなっている。
まず、相手国に「行きたい」と回答した日本人は47.7%、韓国人は58.0%と、両国民の約半数が相手国への訪問に興味を示している。ただ、日本人の33.9%、韓国人で29.5%とお互いに3割程度が、「行きたくない」と答えている。
韓国に「行きたくない」と回答した日本人にその理由を尋ねると、「渡航するほど魅力を感じない」が56.9%で最も多く、次いで「反日感情が強いから」が42.8%となっている。一方、日本に「行きたくない」と回答した韓国人の場合は、「福島原発事故後の放射能汚染が心配だから」(40.9%)が最も多いが、「日本が嫌いだから」が29.4%、「日本との間で様々な問題を抱えているから」も27.7%と3割程度存在する。
次に、民間交流の重要性について尋ねた質問では、日韓の民間交流について、「重要である」という認識が「どちらかといえば重要である」を含めると日本の世論では74.7%、韓国では75.2%と7割以上となっており、民間交流の重要性に関しての認識は両者ともに高い。
この上で、民間交流を進めるべき分野について尋ねたが、日本人、韓国人ともに「文化面での民間交流」(それぞれ34.0%、43.5%)が最も多い。日本人の場合は、次に「留学生の受け入れ」で22.7%、「メディア間の交流」で22.2%と続いている。韓国人の場合は、「民間企業間での人材交流」が37.7%、「メディア間の交流」が35.8%、「学者・研究者間の交流」が27.8%となっている。
ここでは、竹島・独島問題と並ぶ日韓関係において常に最大の課題である「歴史認識問題」について両国世論の認識を尋ねた。
日本では、「両国関係が発展しても、歴史認識問題を解決することは困難」が32.1%と最も多い。ただ、「歴史認識問題が解決しなければ、両国関係は発展しない」が25.9%、「両国関係が発展するにつれ、歴史認識問題は徐々に解決する」が23.6%、3つの認識がそれぞれ3割程度存在し、見方が分かれている。
韓国の場合、「歴史認識問題が解決しなければ、両国関係は発展しない」が41.5%と最も多く、あくまでも歴史問題の解決が重要だという認識が4割以上も存在する。「両国関係が発展するにつれ、歴史認識問題は徐々に解決する」という回答は29.2%と3割程度である。
次に、日韓間で解決すべき歴史問題の課題についてだが、日本人は、韓国人の歴史問題に対する過剰な反日行動や韓国の反日教育や教科書問題を挙げるのに対して、韓国側では日本側の歴史問題に対する認識や謝罪不足を挙げる声が多い。
日本人の場合、解決すべき問題に関して「日本との歴史問題に対する韓国人の過剰な反日行動」が55.2%、「韓国の反日教育や教科書の内容」が54.8%が多く並んでいる。
これに対して、韓国人の場合は「日本の歴史教科書問題」の72.4%が最も多く、次いで「侵略戦争に対する日本の認識」(51.1%)、「日本人の従軍慰安婦に対する認識」(42.0%)、さらに「過去の歴史に対する反省や謝罪の不足」(35.4%)など、過去の戦争時の日本側の行為に関する日本人の認識を課題に挙げており、お互いに見方が異なっている。「日本との歴史問題に対する韓国人の過剰な反日行動」を選んだ韓国人はわずか3.6%であった。
ただ、日本側にも「侵略戦争に対する日本の認識」(26.8%)、「日本人の従軍慰安婦に対する認識」(24.1%)など、自国の認識を問題だと考える人は少なくない。
先般、麻生副総理をはじめとした日本の国会議員が靖国神社を訪問し、それに対して韓国政府は日韓外相会談を中止するなど、今もなお日本の政治家の靖国神社参拝問題は日韓関係に大きなマイナスのインパクトを与えている。ここでは首相の靖国参拝の是非についても日本と韓国に尋ねた。
まず、首相の靖国神社参拝について日本人は、「参拝しても構わない」と容認する人が47.8%と約半数である。これに「私人としての立場なら、参拝しても構わない」の27.4%を合わせると75.2%と7割を超える日本人が参拝を容認していることになる。
しかし、これに対して韓国人の60.0%が「公私ともに参拝すべきではない」と回答し、日韓の世論で大きく認識が異なっている。韓国の世論の場合は、「参拝しても構わない」が5.2%、「私人としての立場なら、参拝しても構わない」が34.4%と合わせても容認は4割に満たない。
これからの設問では、日本・韓国の両世論に世界やアジアの将来について、そして相手国の将来や影響力についての意識を尋ねた。
「これからの世界政治をリードしていく国や地域はどこか」に関して、日本人の51.3%、韓国人の74.8%が「米国」を選んでいる。ただ、日本人の場合、「G8」が24.7%、「G20」が19.3%と続き、「中国」は18.7%の日本人しか選んでいない。
韓国人は、世界をリードする国として、「米国」に並んで「中国」が71.7%と非常に多い。韓国の国民は今後の世界政治をリードする国は「米国」及び「中国」の2カ国(G2)であると考えているのがわかる。
なお、世界政治をリードする国として相手国(日本/韓国)を挙げた人はわずかである。韓国を選んだ日本人はわずかに1.2%、日本を選んだ韓国人も4.7%しかない。また自国を選ぶ人も、日本人が9.9%、韓国人で5.5%と1割にも満たない。両国ともに自国あるいは相手国が今後国際社会でイニシアティブを取って世界政治を主導していくと考えている国民は非常に少ない。
次に、日本人、韓国人に「相手国の2030年の影響力」について予測してもらった。
日本人は、韓国の2030年の影響力について「よくわからない」との見方が32.8%と最も多く、将来の韓国の影響力について判断しきれないという人が3分の1を占めている。次に、「中程度だが影響力の非常に強い国」(21.3%)、「小国だが影響力の強い国」(14.9%)と韓国をミドルパワーとして見る回答も多い。日本の有識者は韓国の2030年を「中程度だが影響力の非常に強い国」が34.8%と一番多い。
一方、韓国人は、日本の2030年を「世界第3位の経済大国のまま」と見る人が34.1%となり最も多い。次いで「中程度だが影響力の非常に強い国」(29.6%)が続いている。ただ、韓国の有識者では、日本の2030年は、「中程度だが影響力の非常に強い国」(36.4%)と、「中程度だが、何の影響力もない国」(30.5%)が最も多く、「世界第3位の経済大国のまま」の21.6%を加えて見方が分かれている。
次に、相手国の経済発展が自国にどのような影響を与えるのか尋ねた。
日韓間の経済関係について、「日本にとって韓国の経済発展はメリットであり、必要である」との見方を持つ日本人は45.0%(「どちらかといえば」を含む)と半数近くが日韓の経済はWin-Winの関係であると捉えている。
これに対して韓国人は、「韓国にとって日本の経済発展は脅威である」(「どちらかといえば」を含む)との見方を半数(47.6%)が支持しており、「メリット」(31.6%)よりも「脅威」を捉える見方が多い。
加えて「アジアは将来、EUのように一つの経済圏として統合していくと思うか」という問いを尋ねたが、日本人の52.8%、韓国の41.7%が、アジアは将来一つの経済圏にはならないと考えている。ただ、日本人で「そう思う」と回答したのはわずか4.8%であるのに対し、韓国人の21.4%は「そう思う」と答えており、経済統合に対して前向きな見方をしている人は日本人よりは多い。
今回の調査で両国民に10年後の朝鮮半島の姿についても質問した。
まず、日本人は「予想できない」が47.1%と半数を占めており、先の「韓国の2030年の影響力」同様に、韓国の将来の姿について判断できない意見が圧倒的に多い。ただ、「現状のまま」(20.7%)と、「北朝鮮との対立が激化する」(20.4%)と悲観的な見方が強く、「南北の統一に向けた動きが始まる」という楽観的な見方は11.0%と少ない。
当事国である韓国でも39.8%と4割が「予想できない」と回答しているが、「南北の統一に向けた動きが始まる」が22.9%と楽観的な見方が、「現状のまま」の21.7%、「北朝鮮との対立が激化する」(15.4%)を上回っている。
これに対して、両国とも有識者は、「南北の統一に向けた動きが始まる」というシナリオを選ぶ人が、韓国は52.9%と半数を超え、日本でも31.3%と最も多い回答になっている。
ここでは、常に日韓関係の発展を妨げ、両国国民の相手国に対する感情に大きなダメージを与える竹島・独島問題をはじめ、北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の軍事増強とそれに伴う周辺国との軋轢により緊張が高まる東アジアでの軍事・安全保障について質問した。
昨年末より竹島・独島をめぐり日本と韓国の間で対立が激化したが、この問題について、日本人の69.2%、韓国人の82.7%が両国間に領土紛争が存在していると回答しており、どちらも同じ認識である。
次に、「領土紛争が存在している」と答えた方に、どのようにしてこの問題を解決していくべきかを尋ねたが、日本と韓国の世論で認識は大きく異なった。
日本で最も多かったのは、「国際法での解決をめざし、国際司法裁判所に提訴する」が60.7%と圧倒的に多い。逆に韓国は「領土を守るために実効支配を強化するべき」との回答が37.7%と最も多くなり、「軍事的な対応も辞さない」が20.4%ある。
ただ、韓国でも平和的な解決を目指す声も少なくなく、「対立の激化を避けて、平和的な解決を追求する」が26.7%、「日本の国際司法裁判所の提訴には同意すべき」も15.1%ある。
韓国の有識者も「実効支配の強化」を約6割(57.6%)が解決方法として挙げている。
日本、韓国ともに最も大きな軍事的な脅威とみなしているのは「北朝鮮」であり、それぞれ8割(78.9%、86.7%)が、脅威に挙げている。
日本人の場合は、この「北朝鮮」に次いで「中国」を挙げる世論が多く、60.1%と6割に及んでいる。韓国も「中国」は北朝鮮に続いて、47.8%と半数近くが脅威を感じているが、それに並ぶ形で43.9%が、「日本」を脅威と見なしている。韓国を脅威と見なす日本人は1割(12.2%)程度しかいないが、韓国人の場合は日本も中国に匹敵する軍事的な脅威だと考えている。
東アジアの大国である日本と中国において、近年尖閣諸島をめぐる対立が激化しているが、今回は日本人、韓国人に東アジアの海洋において、日中間で軍事紛争が起きるのかという質問をした。
まず、日本人で「数年以内に起こると思う」、あるいは「将来的には起こると思う」との回答は26.9%であるのに対し、韓国人は66.5%も存在し、日本と中国との間での軍事紛争を懸念する見方が多い。また、日本の場合、「起こると思う」との回答(26.9%)よりも「起こらないと思う」(41.4%)との認識が上回っており、日中間の軍事紛争の可能性について冷静な意見が多い。
日韓両国民ともに、相手国に対する認識の形成や情報の入手を自国のメディアに依存する傾向が高いことが前の設問で示された。ここでは自国のメディア報道、そしてインターネット上の世論に関する意識を聞いた。
49.1%の日本人は、韓国では「報道や言論の自由はない」、あるいは「実質的に規制されている」と認識している。この傾向は、韓国人も同様で、日本では「報道や言論の自由はない」、あるいは「実質的に規制されている」と回答した世論は51.7%と約半数存在する。ただ、韓国については日本を「情報の規制はなく、報道や言論の自由はあると思う」と回答する声も45.9%存在し、意見が分かれている。
次に、自国のメディアが、日韓関係の報道に関して「客観的で公平な報道をしている」と思うかについて質問したところ、「そう思う」と回答する日本人は31.3%、韓国人で33.0%とそれぞれ3分の1程度しか存在しない。これに対して、「そう思わない」と自国メディアの日韓関係に関する報道の客観性や公平性について疑問を呈する日本人は26.2%、韓国人に至っては41.6%と4割を超えている。さらに、両国の有識者については、「そう思わない」という意見が一般の世論より多く、日本では51.7%、韓国では56.5%と半数以上が自国のメディアが客観的で公平な報道をしていないと考えている。
最後に、両国民が相手国を知るためのツールとして利用する機会が大幅に増え、日韓の世論形成に大きな影響を与えているインターネットについて、このインターネット上の世論が両国の民意を適切に反映しているのか尋ねた。
まず、日本では「反映していない」と思っている日本人は(「あまり適切に反映しているとは思わない」と「適切に反映していない」の合計)が41.7%と4割を超え、「適切に反映していると思う」は11.2%とわずか1割にとどまった。ただ、「どちらともいえない/わからない」が46.9%と半数近くを占めている。
一方、韓国人は、約4割の39.5%が民意を「適切に反映している」と回答しており、「反映していない」という韓国人(「あまり適切に反映しているとは思わない」と「適切に反映していない」の合計)の45.4%と並んでいる。韓国の世論の方が、インターネット上の意見について民意を適切に反映していると感じている割合が高い。
日韓の民間交流も大いに結構だと思います。
しかし交流する人々に対しては詳しく相手国の実情を知らせて、交流を図るべきだと考えます。相手国が自国と同じような国だと思って交流すれば、たいへんな悲劇になるからです。
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