言論外交の挑戦

非公開対話「韓日関係と韓日米安全保障協力への展望」報告

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 言論NPOと韓国のシンクタンクである東アジア研究院(EAI)は9月2日(金)、韓国・ソウル市内の韓国高等教育財団において、「第4回日韓未来対話」を開催しました。午前中にはその最初のプログラムとして、非公開セッション「韓日関係と韓日米安全保障協力への展望」が行われました。


3年間の「議論の空白」を埋めるために

YKAA0280.jpg まず、開会の挨拶に登壇した韓国側主催者の李淑鍾・東アジア研究院院長は、首脳会談が3年間行われないなど、日韓関係が最悪期にある中でも市民レベルで意思疎通を行ってきたこの対話の意義を強調。

YKAA1555.jpg 続いて日本側主催者として登壇した工藤泰志・言論NPO代表は、7月に公表した「第4回日韓共同世論調査」の結果に言及しながら、「双方の国民感情は良くなってきている。しかし、両国民はまだ日韓関係の将来について確信をもって展望していない」と語り、3年間の政府間の「議論の空白」を埋めるべく、地域の平和秩序や両国の将来について議論してほしいと期待を寄せました。


国民間の「共感帯」を広げてきた日韓未来対話

030A1408.jpg 続いて、歓迎挨拶に登壇した韓国高等教育財団を運営する崔泰源・SKグループ会長は、本対話について「国民間の共感帯を広げ、認識の差を埋めるなど大きな成果を挙げてきた」と高く評価。その上で、「世界は『アジアの時代』に入っている。両国が力を合わせ共感帯をさらに広げるような対話にしてほしい」と居並ぶパネリストに語りかけました。


日韓協力の幅を広げるべき

030A1426.jpg セッションに入るとまず、朴榮潛・国防大学管理院教授が登壇し、「日韓関係と日米韓協力」と題して韓国側基調報告を行いました。朴氏はまず、東アジアの安保情勢の概観として、北朝鮮の核・ミサイル開発の高度化や中国の海洋進出と軍拡を背景として、「構造的に不安定化している」と分析。これに対するアメリカはオバマ政権下でアジア・リバランス政策に転換したものの、中国に対しては「競争と協力」という硬軟織り交ぜたダブルアプローチをしていると解説しました。

 朴氏は続いて、朴槿恵政権の安保政策について解説。就任当初に掲げた「北東アジア平和構想」が頓挫し、さらに、対北朝鮮政策の行き詰まりと、高高度ミサイル防衛(THAAD)配備をめぐる中国との関係悪化を背景に再び米韓同盟重視に転換してきたと語りました。さらに、日本との関係についても昨年12月の慰安婦合意や防衛相会談が再開したことなどから、「まだまだ関係回復の途上ではあるが、安保協力ができる環境ができつつある」と評価しました。

030A1422.jpg 一方、日本の安保政策についての解説では、2013年の「国家安全保障戦略」以降の、安全保障法制や日米同盟強化、豪、印、ASEANなどとの連携の動きに触れつつ、これを「中国に対するリスクヘッジが主眼となっており、中国をこちら側に引き込むための努力は不足している」と分析しました。

 また、対韓政策に対しては、外務省のホームページで韓国についてこれまで「我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する重要な隣国」となっていたところを、「我が国にとって最も重要な隣国」という簡潔な記述に改めたことに言及し、「韓国を過小評価しているのではないか」と苦言を呈しました。

 その一方で、日韓両国は共通の同盟国であるアメリカを介した「友好国」であり、「共通の利益は大きい」と主張しました。

 朴氏は、日韓が特に安保分野で協力していくことに対しては韓国世論の反発が予想されるために慎重な対応が必要としつつも、これまでの日韓安保協力は「幅の狭い」ものであったため、地域の平和と安定のためにはこの幅を広げ、様々な政策アジェンダを共有する必要があると述べました。

 そして、そのアジェンダとしては、北朝鮮への対応など喫緊の課題から、朝鮮半島有事の際の在韓日本人の保護の問題、アメリカの「核の傘」が期待できなくなった際の対応など様々なものを提示しました。

 朴氏はさらに、日韓の枠組みだけでなくアメリカを含めた「日米韓」の枠組みの重要性を強調しましたが、それだけでなく長期的には中国も巻き込んだ「日米中韓」による安保対話の必要性を指摘し、今年東京で予定されている日中韓サミットなどを協力の機運醸成の好機とすべきとの認識を示し、基調報告を締めくくりました。


真に信頼し合えるパートナーとなるために

030A1443.jpg 日本側の基調報告に登壇した中谷元・衆議院議員は、8月3日まで務めていた防衛大臣時代には、日韓の実務者レベルでは様々な意義深い交流があったことを紹介。しかし、4年ぶりに実現した日韓防衛省会合に対して、韓国メディアでは過去に囚われた批判的な論調が大勢を占めていたことを振り返り、「日韓協力を未来志向で進めるためには、日韓の底辺にある不信感、警戒感、嫌悪感の払拭に努めなければならない」と語りました。

 中谷氏はその上で、日韓安保協力の必要性を強調し、協力が進まないことの代償として、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)と物品役務相互提供協定(ACSA)が締結できなかったことにより、北朝鮮のミサイル発射の際、日韓で効率的な情報共有ができていないという現実を示しました。

 中谷氏は続いて、北朝鮮の核・ミサイル開発の高度化や、中国の軍拡と海洋進出の動きなど、アジアの安全保障環境の変化について指摘した上で、日本の安全保障政策についての説明に入りました。まず、昨年9月に成立した安全保障法制については、「日本の防衛において、あらゆる事態に切れ目のない対応ができるようにすることが目的である。また、現行憲法の範囲内で、専守防衛で、自国の防衛のために必要である限定的な集団的自衛権を行使できることによって、日米安全保障条約における在日米軍の抑止力を強化したが、これは激変しているアジアの安全保障環境にしっかりと応えるためのものだ」と述べました。さらに、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定についても、「平時からの日米同盟による共同対処行動によって日本の防衛や地域の安定のために実施できる能力を充実させた」と語り、激変するアジアの安全保障環境に対応するために不可欠であると強調しました。

030A1447.jpg 一方、「朝鮮半島有事の際、自衛隊が韓国内で活動するのではないか」といった韓国人の懸念に対しては、「日本が韓国で単独で行動することはあり得えない。常に、日米、日米韓、国連で協議をすることが前提であり、韓国の了解を得てから行動するような設計になっている」と答えました。

 中谷氏は最後に、これからの日韓協力のあり方として、中国に対する両国民の認識がやや異なる中、現状変更的な動きを続ける中国への対応をどうすべきかについて、まずしっかりと協議すべきだと指摘し、さらに、共通の同盟国アメリカを含めて「真に信頼し合えるパートナーとして協力を前進させるべきだ」と韓国側に呼びかけ、基調報告を締めくくりました。

 続いて、ディスカッションに入りました。


世論を意識し、市民レベルの目線に立った議論を

 各パネリストは、日韓の安保協力拡大の必要性については認識が一致。防衛産業間での協力や、東南アジアにおける海洋安全保障のためのキャパシティ・ビルディングなど様々な協力分野のアイデアが提示されました。

 また、「日米韓」という枠組みで課題に取り組んでいくことの重要性に言及する意見も相次ぎ、これらの点では両国でコンセンサスが得られました。

030A0169.jpg 一方、中国に対する対応では認識の差が見られる場面がありました。また、韓国側からは、協力の前提となる環境整備として、日本側の慰安婦合意の誠意をもった着実な履行を求める声や、日韓安保協力に対して根強い世論の反発・懸念があることの指摘など、センシティブな課題も残されていることが改めて浮き彫りとなりました。

 これに対しては、韓国側からGSOMIAの失敗の二の舞にならないように、無知、偏見、誤解を正していきながら国民レベルの議論を喚起すべきとの意見が寄せられると、日本側からも、午後の公開セッションでは、専門家にしか通じないような高度な議論ではなく市民レベルの目線に立った議論を心がけようとの呼びかけがなされるなど、世論を意識した発言が相次いだところで、非公開対話は終了しました。

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