言論外交の挑戦

「第12回 東京-北京フォーラム」2日目全体会議 報告

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 9月28日、「第12回 東京-北京フォーラム」最終日のプログラムがホテルオークラ東京で開かれました。全体会議前半の基調講演では日中から各二人が登壇、それぞれ日中関係への思いを語りました。

海空危機管理メカニズムの早期運用では合意したが、
南海については、首を出さぬように釘を刺す

YKAA2616.jpg まず中国側から、前日の安全保障分科会に出席した軍事科学院中米防務関係研究センターの姚雲竹氏が登壇し、「フォーラムへの参加は4回目だが、毎回、ある種の感動を覚えている」と話し始めました。その中で姚氏は、「中日間にはまだまだ意見の相違や懸念があるが、一方で、双方の努力があれば、深い溝を乗り越えることができる」と語りました。一方で、G20後の中日首脳会談で、防衛当局間のホットライン、定期的協議の場の設置や、双方が遭遇した際の将兵の連絡方法といった海・空域での危機管理メカニズムで合意したのは大きな進展だったと指摘。「中日の衝突やミスリードを阻止して、危険な状況を回避し、事態がエスカレートするのを防止する」ために、今後の早期の運用の必要性を示しました。さらに姚氏は、「すでに、人民解放軍と自衛隊は、PKO(国連平和維持活動)で協力しているように、災害・遭難救助や地域の平和・安全面で協力の余地がある」と将来の協力拡充への期待を込めました。

030A1313.jpg 一方で、姚氏は南シナ海の問題について、「日本はなぜ、南海の問題に首を突っ込んでくるのか。これは中国と南海を取り囲む国々との海域の境界、領域主権の問題であり、当事国ではない日本がいろいろ言うのは、ただ中国に反対したいからではないのか」と口調を強め、危機管理の面で、新たな問題が出ないようにすることが重要だ、と日本側にクギを刺しました。その上で姚氏は、「南海を、静かな、穏やかな海にし、この地域の難題にならないように願っています」として講演を締めくくりました。

アジアで新しい秩序形成の議論を日中間で開始すべき

YKAA2658.jpg 続いて元外相の川口順子氏(明大国際総合研究所特任教授)は、中国交流団の一員として敦煌、西安などを訪問した時の感想から、ネパールで生まれた仏教が、伝来したインド、中国、日本でそれぞれ固有の宗教の影響を受けて変容したが、多くの国々で共通の思考、枠組みとして仏教の教えがあったのではないか、と述べ、「仏教がアジアをつなぐ、まとめる力だった」との見解を示しました。その上で、「現代に共通の思考、考えの枠組みはあるのだろうか」と聴衆に問いかけました。

 さらに川口氏は、平和的な環境があったからこそ、日本、韓国、インド、インドネシア、中国といったアジア諸国が経済成長を続け、世界経済に大きな活力を与えたと指摘。その結果、アジア太平洋地域間の経済はネットワーク化され、相互依存が進み、各国は貿易自由化の恩恵を受けてきたとの見解を示しました。しかし、近年、アジアでは安全保障に関しての信頼醸成が進まず、各国の防衛費が大きくなったことで、地域格差、所得格差は社会保障など国民への恩恵の妨げになっている、と主張しました。

YKAA2662.jpg そして、川口氏は、今後も、従来の経済発展を進め、アジアをより高い平和・安定・繁栄へと押し上げるためには、アジアの中でも大きな経済力を持つ日中両国の安定的な協力が必要不可欠だとの見解を示し、日中両国が世界で、どのような役割を果たしているのか、もっと客観的に判断すべきだと語りました。その上で、アジアで新しい秩序の必要性を示し、日中両国が互いにどんな共通ビジョンを持っているのか、アジアをまとめる力は何かとの議論を両国が始めることの必要性を訴えました。

急速に高齢化が進む中国で、日本の医療保険事業などは大きな強みに

YKAA2684.jpg 続けて、中国の経済人を代表して傳成玉氏(中国石油化工集団元董事長)が登壇しました。傳氏は、日本の多くの企業と仕事をした経験を紹介した上で、日中企業の協力の勢いは長く続かず、既に衰退しているところが数多くあること、その原因の一つは、日本の中国に対する投資が、発展と転換に対して迅速ではなかったために、中国の経済構造の変化に追いつけなかったと指摘。新常態(ニューノーマル)になってからの構造転換についていくのは難しい問題で、時間をかけて調整するしかないと説明。

 こうした状況は、日本の車業界を例に出しながら、最も早く中国に参入した日本が、現在では欧米に逆転された理由として、「技術上の問題ではなく、日本の古い伝統観念によるビジネスモデルが変化を阻んだのだ」と、日本側に厳しい見方を紹介しました。

YKAA2695.jpg その上で、「日中両国は移動のできない隣人同士であり、現在の問題にも挑戦し、理性的に取組んで解決しなければいけない。たとえ嫌いな国であっても、中国の発展は妨げられない。日本など域外の国は、発展の阻害をするのではなく、これに便乗し、中国の発展の恩恵を得ること」が重要ではないかと指摘。今後、中国が新しい海外権益の確保を拡大し、市場モデルを変容させていることが日本のチャンスだ、日本側に呼びかけました。

 そして、傳氏は、日本側の強みとして、サービス業、特に老人への医療保険事業を挙げ。日本を追いかけるように、高齢化が始まっている中国は、65歳以上が全人口の10%、1・3億人を数える巨大な市場であり、日本は豊かな経験とノウハウを持っているだけに、「この大きなビジネスチャンスは世界的に見ても、日本には非常に有利であり、中国は、日本企業にこの分野で協力することを歓迎します」と、日本側にエールを贈りました。

アジアにおいては、大国同士の自己抑制が極めて重要

YKAA2727.jpg 基調講演の最後は、日中国交正常化の1972年に代議士となった衆議院議員の野田毅氏が登壇しました。野田氏は、現在の日中関係について、「なにも努力しなくてもいいハネムーン時代の友好から、お互いが努力し、協力しなければならない熟年時代の友好へ変わらなければいけない」と、巧みな例えで笑いを誘いました。さらに、これまで日中友好に尽力してきた野田氏は、「日中の友好関係は1985年までは良くて、親日・親中が75%もあったものの、今は極めて厳しく、天と地の開きがある。こうした国民感情をどうやって乗り越えていくのか。中国が共産党政権であっても世論の反発を受けては成り立たないだろう」との見立てを紹介しました。

YKAA2762.jpg こうした日中関係の現状に至った理由ついて野田氏は、「お互いの国が変化したからだ」と指摘。中国はすでに大国であり、経済、軍事面で大きな変化があった一方で、日本は経済大国になったが、慢心してしまい、今、その反動を受けている、と紹介。中国にもいつかそうした壁が来るので、「慢心すべきではない」と忠告。さらに野田氏は、今、世界でナショナリズムが台頭しているが、「アジアにおいては特に、大国同士の自己抑制が極めて重要であり、極東において、中国も日本も大国であり、両国が自己抑制し、同時に国民も抑制していかなければいけない」と語りました。

 そして最後に、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」との言葉を紹介し、「日本は稲穂の国であり発展するにつれ、頭を下げ周囲から尊敬されるべきである。日本と中国の文化の原理は同じはずであり、そうした思いを共有したい」と述べて、基調報告を締めくくりました。


 その後、休憩を経て、27日の5分科会の中核メンバーが登壇し、分科会報告と共同声明である「東京コンセンサス」が公表されました。

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