「第7回日韓未来対話」を終えて
工藤泰志(言論NPO代表)×孫洌(東アジア研究院院長)

2019年6月23日

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 日韓関係が戦後最悪と言われる中で開催にこぎ着け、無事閉幕した「第7回日韓未来対話」。2日間の議論を終えて、韓国側主催者の孫洌氏に、言論NPO代表の工藤が聞きました。


kudo2.jpg工藤:今日の「第7回日韓未来対話」の成果は何だと思いますか。
 
 
0B9A9304.jpg孫洌:今回はたくさんの成果があると思うのですが、やはり大きいのは、「日韓の関係が最悪だ」とマスコミが言っているにもかかわらず、成功裏に開催できたことです。もちろん「関係が悪い」というのは政府間の関係が悪いということであって、民間まで悪化しているわけではないということです。もちろん、日本でも世論が悪化していると言われていますが、私が懸念していたよりも悪くはないという部分に安堵しましたし、それに対して希望を持ちました。

工藤:今日の議論をインターネットで見ている人は、「日韓関係は全然悪くない」と思ったと思うのです。つまり、こんなに本気で考える人たちが存在している。間違って解釈されたら困るのですが、我々は困難を克服するために集まったのです。そのことについて、我々は一般の社会に対してきちんとメッセージを出さないといけないと思っているのですが、孫洌さんがこの対話を見た市民にメッセージを出すとすれば、どういうメッセージを発したいですか。


地域の秩序形成という役割を果たすため、
     日本と韓国の協力がかつてなく重要になっている

孫洌:今回伝えたいことは二つあります。まず一つ目に、若い人、特に韓国の若い人においては、日本への好感度が非常に高いということです。それは反対に、若い人の間では反日感情が弱くなってきていることを意味します。それを日本の皆さんは知るべきだと思います。そして、韓国の政治指導者たちも、そうした韓国社会の変化を知って、政策を立てていくべきだと思います。韓国社会において変化が起きていて、そして日本の社会でも、若い人を中心にこういう変化が起きている、というメッセージを、一つ目に伝えたいと思います。

 二番目のメッセージとして、今回、専門家たちの議論がいろいろとあったのですが、国際情勢の観点から見てみると、若干、黒い雲が垂れ込めていると思います。それは何かというと、アメリカと中国の競争が激化しているということです。この中で、日本と韓国は協力して、アジア太平洋、もしくはインド太平洋地域のルールベースの秩序をつくる、という重要な役割を果たさなければならないと思います。だからこそ、日本と韓国の協力が、いつにも増して必要になっています。
歴史問題を巡って、日韓双方の政府が顔を赤くしながら喧嘩をしている、というのは、もう時代の流れに合っていないと思います。そうした協力の当然性、必要性が増してきているということが、私の二番目のメッセージです。


市民社会から政治を動かす大きなうねりを作るため、
     日韓の主催者間で協力の幅を一層広げていきたい

工藤:最後の質問になります。今回の対話では、新しい展開がありました。つまり、我々は日本の市民社会に、この対話の運命を委ねたのです。「私たちはこの対話を実現したい。応援してくれ」と呼びかけ、その結果、多くの寄付者の支持で、今回の対話が成功したのです。これは非常に大きなことです。つまり、学者同士、専門家同士がただ議論していても、ほとんど意味はないのです。社会を変えるためには、政府側から提案するか、市民が大きな行動を起こし、その行動が政治に影響を与えるか。その二つになると思うのですが、この対話はやはり市民の支持を得るべきだと思うのです。私は、将来、よりインパクトのある、日韓における新しい対話をつくるという思いを持っているのですが、孫洌さんは私のパートナーとして、この対話の未来についてどう思っていますか。

孫洌:良い質問です。今、日本の社会では、やはり反韓の感情がありますので、言論NPOが難しい立場に置かれていることは十分に認識しています。今回の「第7回日韓未来対話」を、このように成功裏に開催して終えることができたということで、言論NPOの皆様方に、お祝いと、そして敬意を表したいと思います。私ども東アジア研究院(EAI)としては、日本の市民社会のために、助けられることはもちろん助けたいと思っていますし、反対に、EAIとしても、EAIの市民レベルの活動に言論NPOが積極的に協力していただく、ということで、双方の協力の幅をもっと広げていけたらいいな、と思っています。

工藤:どうもありがとうございました。


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