民主主義を強くする

私たちは政治家に白紙委任はしない ―No More Carte Blanche to Politicians―

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 日本では、総選挙が間近となり、政党の動きが慌ただしくなっています。
 言論NPOはこのタイミングに合わせて、新しい挑戦を行うため、多くの人に「私たちは政治家に白紙委任はしない」という新しいメッセ-ジを伝えたいのです。

私たちが2001年から訴えていたこと

工藤

 実は、このメッセージは私にとって新しいものではありません。
 私が言論NPOを立ち上げた時に、つまり今から11年前の2001年にこのメッセ-ジを社会に伝えて、私はこの活動を始めたのです。その時の日本の首相は国民に人気が高い小泉首相でした。
 ある日、私は直接小泉首相の面前で、日本の未来は1人の政治家に期待するのではなく、有権者が自分で考え、判断するものだと主張したことがあります。その時の決意から、2003年、言論NPOが現在も定期的に実施しているマニフェストの評価が始まったのです。

 私は、民主主義が機能するためには、民主政治のサイクルが回ることが必要だと考えています。国民が自分たちの代表を選び、選ばれた代表は国民のために仕事を行う。そして有権者は次の選挙でそのパフォーマンスを評価する。そして、このサイクルを有権者が監視するために、私たちのマニフェスト評価作業があるのです。しかし、それから10年近くも経ちましたが、日本の政治でこのサイクルが回っているかと言えば、回っているとは言えません。


今の政党政治では日本の課題解決は実現できない

 このサイクルを壊したのは、国民の信を問うことを避け続けてきた今の政権です。
 しかし、私たち有権者にもはっきり分かったことがあります。それは、日本の政党自体が、政治を行う存在として機能不全に陥っていることです。政党は単なる烏合の衆でしかなく、選挙に当選するために集まっているだけの互助会に過ぎないということです。これでは、政治サイクル以前の問題で、選ぶべき政党が無いということになってしまいます。そして、そうした政治に、ただ一方的に変革を期待するだけでは、日本の政治は本質的に変わらないのです。

 

 政治は、社会的な課題から逃げることはできません。今、政治が混乱を深めているのは、そうした課題の解決を今の政党政治の器では実現出来なくなったからなのです。

 先週、私たちは言論NPOに登録する有識者2,000人にアンケートをお願いしました。
 その結果、意外な結果*が明らかになりました。今度の選挙が日本の変化のきっかけになると期待している人はわずかに14%、そしてどこの政党に投票するのかについて、確信を持てないという人が半数を超えていたのです。有権者が代表を選べず、どこの政党を推したらよいのか確信を持てない。つまり、ここで問われているのは、私たちの民主主義が危ういということなのです。


有権者が変わらなければ政治は変わらない

 少し前の話ですが、今年3月、ワシントンで外交問題評議会の議論に参加した私は、会場の冷たい視線に驚いたことがあります。
 日本とアメリカの政府の間に、大きなコミュニケーションの空白があることを指摘した私に対して会場からこんな質問が飛び出したのです。「そうした状況を誰がつくったと思いますか」と。かつて沖縄の米軍基地で働いたことがあるという、その女性が投げかけたのは、日本の政府への批判ではないことがすぐに分かりました。
 つまり、そうした政治を容認しているのは誰なのか、という問いかけなのです。政治とは有権者が選んでいるものであり、有権者が変わらないと政治は変わらないということなのです。それが民主主義のあたりまえの規律なのです。

 今度の選挙では新しい政党の動きも出始めました。しかし、私たちが肝に命じなければならないのは、こうした政治の動きをただ期待するだけでは、何も変わらない、それどころか事態を悪化させてしまうということです。
 急速に進む高齢化と財政問題について政治側に解決案が提起されていません。未だに答えが出されていないこうした政策課題の解決策をめぐって政治家や政党が競いあうことを私たちは求めているのです。
 次の選挙で、私たちが着手しなければならないのは、民主政治の機能を立て直すことです。そのためにも、まず、有権者と政治の間に緊張感を取り戻すことが必要です。
 そして、私たち言論NPOは一つのメッセージを言い続けたいと思っています。「私たちは政治家に白紙委任はしない」-有権者みんなでこの国の未来を考え、そして政治を選ぼう、と。
 言論NPOは、そのための議論をつくり、政治家の回答を求め、多くの判断材料を広く提供する予定です。

2012年9月18日

言論NPO 代表 工藤泰志





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この記事に[ 1件 ]のご意見・ご感想があります

投稿者 / 熊谷直2012年9月19日 16:06

軍事評論家熊谷直 松田学氏の意見に近いことを考えている。衆院には地方や団体の利益代表のような人も必要だと思われるので、政党もそのような団体のひとつと位置づけて、自分たちの利益に関係があることを主張させ、選挙に臨む制度にしては。総理大臣はそのときの国内外の情勢に応じて国の方針を決める調整役としての機能を重視し、出たい人より出したい人を中心にして選出した参院議員から選ぶようにしてはどうかと思っている。参院議員は有識者議員と位置づけ、利益団体とは切り離すものとする。ただし総理大臣は国防や災害などでリーダーシップを発揮する必要があるときは、大統領のような大きな権限を与えられるものとする。戦前の日本の総理の機能が弱かったのは、明治憲法上、総理が調整機能しかなく、天皇に統治権があったからであろう。昭和天皇は英皇室にならってリーダーシップを抑制的にしか発揮されなかったため、総理大臣の権限が弱いこととあいまって政治の中心がぼやけてしまった。現在の象徴天皇の制度の下では、私が言うようにしても問題はあるまい。なお道州制が問題になっているが、現在の県の区切り方には藩政時代以前からの歴史的な意味がある。特に地形が関係している。利益はそのような区切りに基づく県またはそれに準ずる地域の代表としての意味を無視してはなるまい。東日本大震災のとき東北が州としてまとまっていたら、小さい市や町は、道庁に何か要望するにも足がないということになったのではないか。私が地方の利益代表というものをここで述べているのは、そのような意味も含んでいる。アメリカのような大きな州は日本にはなじまない。この場合、単純な人口比例で代表議員数を決めるのではなく、アメリカの大統領が州を代表する投票者によって選出されるように、県の面積や産業力の大小、歴史的な経緯なども考えて選出議員数を決めるべきであろう。1票の格差が問題になっているが、便利な東京だけ議員数が多くなり、不便で対策を必要としている地方の議員が少なくなるのは問題であり、地方切捨てにつながる。必要な場合は憲法改正も厭うべきではない。

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