2015年に日本に問われている課題と言論NPOが果たすべき役割 / 明石康(国際文化会館理事長)

2015年1月01日

明石康氏明石康
(国際文化会館理事長)


「健全な輿論」の形成を目指していくための節目の年に

 2015年は、敗戦後70周年という大きな節目の年と言われていますが、私は、それよりもはるかに重要な節目の年になると思います。

 国内的には、アベノミクスの「第三の矢」が成功するかどうかという大きなチャレンジが続きます。構造改革を実現し、この国の経済を抜本的に変えなければいけない問題ですから、現政権も真剣に取り組んでいくと期待します。昨年末の衆議院議員選挙が、そうした政権の決意を示すためのものであったとするならば、我々も納得できますし、政権の示すリーダーシップに括目してみたいと考えています。

 対外的にも、アメリカの庇護のもとに日本だけ孤独な平和を享受していればよかった時代は過ぎ去り、より厳しい国際政治の風にもろにさらされることになります。しかし、過剰な軍備競争に走ったりする愚かなことをしてはいけない。我々は冷厳な地政学という現実の前で、理性と節度のある抑止の姿勢を示していく必要があります。同時に、抑止の裏側には必ず対話の姿勢があることを忘れてはいけません。「抑止」と「対話」のバランスを保ちながら、隣国との平和共存にとどまらず、平和共栄を目指していかなければならない。それは可能であると確信します。

 我々は情緒的なナショナリズムに陥ることなく、理性的な対応を目指し、対内的にも対外的にもきちんとした未来向きの対応をする必要があります。そのためにも、単なる量的な意味で揺れ続ける世論の動向を追うのではなく、むしろ「健全な輿論」の形成、インターナショナリズムを目指すべきでしょう。それは、70年前、日本人が経験した全面的戦争という悲惨な過去、また、日本のみならずアジア太平洋の国々全体に不幸をもたらした過去を決して繰り返さない覚悟に繋がるはずです。

 そのためにも、国内における開かれた「健全な輿論」の形成を目指し、また一歩進めて他の国々にもそうした輿論が形成されることを促し、お互いに働き掛け合いながら進んでいく。決して、ガラパゴス現象と呼ばれるような日本的孤立主義に立てこもってはいけない。こうした成熟したアジアを実現していくためにも、2015年は「言論NPO」の役割がさらに重要になってくるに違いないし、その活動に大いに期待をかけています。