2007年 日本の言論には何が問われているのか?vol.4 / 横山禎徳氏

2007年1月08日

2007年 日本の言論に問われていること
    ― 言論NPOのアドバイザーはこう主張する vol.4 ―

yokoyama_060104.jpg横山禎徳(社会システムデザイナー、言論NPO理事)
よこやま・よしのり

1966年東京大学工学部建築学科卒業。建築設計事務所を経て、72年ハーバード大学大学院にて都市デザイン修士号取得。75年MITにて経営学修士号取得。75年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、87年ディレクター、89年から94年に東京支社長就任。2002年退職。現在は日本とフランスに居住し、社会システムデザインという分野の発展に向けて活動中。言論NPO理事

『2007年 日本の言論には何が問われているのか』

私は、小泉改革は評価すべきであって、それ自体に問題があるとは思っていません。ただ、小泉改革は、まずぶっ壊さなきゃいけないというのが先にあって、「壊す構造改革」であった。今後はギアチェンジをして「組み立てる構造改革」をしっかりと行わないとならない。そういうフェーズに入ったと思うわけです。

ぶっ壊すためには、いろいろ理屈でないこともやらなきゃいけなかったし、それでやれた部分もあります。しかしながら、例えば道路の特定財源の議論においても、本当に日本は道路が十分あるのかないのかという議論はされていないわけです。

別に私は道路族ではありませんが、まじめで責任感ある官僚の人たちと話をすると、ドイツと日本を比べたら、日本は高速道路が本当に足らないといまだ言っています。要するに、議論が尽くされていない部分はかなりあるわけです。

ファクトが十分理解されていない部分もあります。例えば医療改革で、人口の高齢化によって医療費が増えていくから、経費を抑えるための改革はしなきゃいけないという議論はありますが、実は、人口の高齢化によって医療費が上がるというのは、統計的に有意な証拠はまず世界的にないのです。要するに、高齢化と医療費の高騰は関係ない。それにもかかわらず、高齢化で医療費が増え続けるという議論がされている。なぜ高齢化が進んでいるかというと、健康な人がふえたから高齢化しているんだから、死ぬ直前の数ヶ月にかかる医療費が増えるわけはないという単純なことが理解されていないのです。だから、その程度のレベルのファクトベースはまずおさえて議論をしようとまず言いたいわけです。

これから組み立てる構造改革をやるのであったらこうした議論が極めて大切になります。まずファクトは押さえ、それを共有すること。それから、ある種のロジックをちゃんと使いながら議論する、ということが必要です。

勝ち組、負け組という議論はほとんどロジックがないわけです。宮内さんが発言されているように、負け組といっている人の中にそれは嫉妬もあるのでしょうが、誰かが勝ったから誰かが負けたのではない。では、負けた人が努力するかというと、結構怠惰な人たちもいるわけです。そうしたある種のファクトをちゃんと共有し、ある種のロジックをきちっと使ってやらないと、情緒的マスコミと余り変わらなくなる。

言論NPOがそうした議論と違うのは、しっかりとファクトが押さえてあって、ある程度のロジックがちゃんとある。そういうことが必要だし、そういう言論NPOであるべきだと思います。

 言論NPOアドバイザーの方々に「2007年 日本の言論には何が問われているのか?」をテーマに発言していただきました。今日は横山禎徳氏の発言をご紹介します。