【対談】言論不況における雑誌言論のこれから

2001年12月27日

kohno_m011200.jpg河野通和 (中央公論新社『中央公論』編集長)
こうの・みちかず

1953年生まれ。東京大学文学部卒。1978年、中央公論社(現・中央公論新社)入社。「婦人公論」編集長として、同誌のリニューアルを成功に導く。2001年1月より、雑誌編集局長兼「中央公論」編集長として、現在に至る。

okamoto_a011200.jpg岡本厚 (岩波書店『世界』編集長)
おかもと・あつし

1954年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1977年岩波書店入社。月刊誌「世界」へ配属となり、政治、教育、軍事、環境などを担当。1996年より同誌編集長。1998年に金大中韓国大統領に単独インタビュー。

概要

「言論不況」の打破を掲げる言論NPO代表の工藤が、総合誌『世界』と『中央公論』の編集長を迎え、混迷の度合いを深める日本社会において、雑誌言論が何をなしうるか、また言論をリードするメディアとしてのあり方を、存分に語り合った。また、議論を通じ、「編集者自身が時代と格闘しながら、真剣に悩まなくてはいけない」という結論に達した。

要約

「言論不況」の打破を打ち出す言論NPO代表の工藤が、日本を代表する総合誌『世界』と『中央公論』の編集長を迎え、混迷の度合いを深める日本社会において、雑誌言論が何をなしうるか、あるいは、言論をリードするメディアとしてどうあるべきかについて、存分に語り合った。

まず、「言論不況」の現状認識については、ことに若い世代において変化がありつつあると、『世界』の岡本氏が切り出した。失業率の増加、不安定化する雇用、9月11日の同時多発テロ以降の国際情勢の流動化などがその背景にあると指摘する。『中央公論』の河野氏は、岡本氏と同じ現状認識を持ちつつ、昨年の長野県・田中知事誕生、加藤政局、そして、今年4月の小泉政権誕生という一連の流れが、人々の政治への関心を高めたことも、「言論不況」に変化をもたらした要因だと語る。

言論不況の要因は、むしろ雑誌を含む言論界にあるのではないかという認識でも両者は一致した。政治、学界、言論界のすべてが男性的な言語空間で支配され、内部者だけの言葉で語られている。それを女性を含めた一般 の人たちに開放していく努力がこれからの雑誌の使命ではないかという認識だ。

一方、小泉改革についての評価について、岡本氏は「デフレ不況は需要サイドの問題。いま財政規律を優先させると97年の橋本内閣の二の舞を演じることになる」と指摘。さらには、「ネオリベラリズム的に競争政策を優先させると、社会の不安定化を招く危険性がある」と語る。

河野氏は「かつてのような経済成長を求めない若者が増えている。だとすれば、"改革なくして成長なし"といっても、その成長のゴールがまったく違ったものになる」と述べる。

そして、最後には、雑誌は現実に起こっている現場に出て肌で感じ、変化と切り結び、時代と格闘しながら、常に世の中に問い掛ける姿勢を失ってはならないという結論につながっていく。


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 「言論不況」の打破を掲げる言論NPO代表の工藤が、総合誌『世界』と『中央公論』の編集長を迎え、混迷の度合いを深める日本社会において、雑誌言論が何をなしうるか、また言論をリードするメディアとしてのあり方を、存分に語り合った。また、議論を通じ、「編集者自身が時代と格闘