マニフェスト選挙のどこを間違えたのか  ―「好き嫌いの政治」からの脱却を/安嶋 明(日本みらいキャピタル株式会社代表取締役社長、事業再生実務家協会 常務理事)

2011年9月07日

安嶋 明(日本みらいキャピタル株式会社代表取締役社長、事業再生実務家協会 常務理事)

日本興業銀行を経て、2002年2月事業再生ファンド運営会社の日本みらいキャピタル株式会社を設立、現在に至る。事業再生実務家協会常務理事。経済産業省早期事業再生研究会委員他を歴任。日本エッセイスト・クラブ会員。


 先日の民主党代表選を見ていて、「こんなものなのか。」とあらためて考えさせられた。各候補とも情緒的な話がほとんどなのである。
 すっかり有名になった野田新代表(総理)のドジョウ演説は確かに聞かせるものであったし、政治家であれ誰であれ、人間は所詮感情の動物と醒めた眼でみればそれまでなのだが、この危機的状況の中で、国の舵取りを担うリ-ダ-を選ぶ際、まず聞きたいことは彼らの生い立ちでもなかろう。
 民主党が二年前のマニフェストをどう総括し、どのように修正するのかしないのか、
各候補者はあえてその議論を避けていたように思う。その結果「ノ-サイド」と言っても、党の中で根本的に相矛盾する考え方をかかえたままでの船出である。
 現状況下で解散などしている場合ではないという意見はもっともだが、3月11日以降無駄に費やした時間を振り返ると、さらに迷走が続くようであれば、多少の空白期間ができたとしても選挙で信を問うべきという考え方は当然でてくるであろう。
 民主党マニフェストの本質的な問題点は、いわゆる3Kと呼ばれる基本政策について、予算分配のやり方を変えるだけで実現できるとしたことにある。そのために、霞が関官僚から予算編成権を召し上げ(?)、派手なパフォ-マンスで事業仕訳を行ったが、結果的に必要資金は捻出できなかった。
 野田新総理は、東日本大震災が起こったことによる政策優先順位の変更と述べているが、
仮にあの悲劇がなかったとしても、当初述べていた形での予算手当はできなかったのである。おそらく新総理はそれを十分認識しているはずだが、公党としてまずはその点を総括すべきだったのではないか。
 翻って、マニフェスト選挙推進してきた我々にも反省すべき点は多い。何より思うのは、個別の政策論に目が行き過ぎて、「中長期的にこの国をどうしたいのか」というビジョンを問いかけることが疎かになったことである。世の中の環境がこれだけ激しく変化する中で、個別の政策実行はむしろ臨機応変に見直しながら進めなくてはならない。旗を揚げたら最後一切変えてはならないなどという硬直性は排除すべきである。
 一方で、経済、財政、外交(防衛)、教育、地方自治等に関わる基本的なビジョン、それに基づく具体的ゴールと期日については明確にコミットし、多少のことがあろうとぶれない姿勢が求められる。同時に、そこがぶれていない限り、国民は忍耐強くプロセスを見守るべきであろう。
 先日、某大新聞社で長年政治記者を務めた人から、「そうは言っても、政治の世界はビジョンや理念で動くのではなくて、打算と嫉妬の世界だよ。」と聞かされた。だが、それを許しているのは我々であり、被害を受けるのも我々自身であることを忘れてはならない。

 先日の民主党代表選を見ていて、「こんなものなのか。」とあらためて考えさせられた。各候補とも情緒的な話がほとんどなのである。
 すっかり有名になった野田新代表(総理)のドジョウ演説は確かに聞かせるものであったし、政治家であれ誰であれ、人間は所詮感情の動物と醒めた眼でみればそれまでなのだが、この危機的状況の中で、国の舵取りを担うリ-ダ-を選ぶ際、まず聞きたいことは彼らの生い立ちでもなかろう。