言論NPO 対 民主党 『第1回 マニフェストフォーラム』 を終えて

2008年7月16日

マニフェストフォーラムを終えて(1)
(全 2分45秒 )

聞き手:
インターン 弓岡美菜(東京大学)


今日(7/14)、民主党の議員と言論NPOのマニフェスト評価委員を招いて第1回マニフェストフォーラムを開催しましたが、いかがでしたか。

 まず、言論NPOの評価委員の四人(生源寺眞一氏、齊藤誠氏、土居丈朗氏、西沢和彦氏)が出たのですが、やはり良い評価をしようとしていていい質問をしていました。しかも、それに対して民主党の次の内閣の大臣となる議員の人も、とても誠実に答えていた。話は一応かみ合ったし、内容は別にしてもきちんと説明しようとしていたので、僕としてはこうした民間側と政治との政策論をめぐった対話は非常に大切だと思いました。それがすごく印象的で、是非次につなげたいし、自民党ともやりたい。今日は農業、財政、社会保障、年金がテーマでしたけど、外交や安全保障もやりたいと思っています。その意味で、今日はこれからの始まりというか、きっかけの日になったと思います。


今回は、政治家と評価委員の対決とあわせて、初めての試みとしてネット会議システムを使って、ウェブ上で一般の方にご参加いただきましたが、手応えはいかがでしたか。

 僕も司会をしながらウェブ上での動きは見ていました。告知の問題もあって参加者は少なかったんですが、チャット方式や、(実験的に投入した)アンケートもきちんと答えている。また会場での政治家の話を聞きながら、それに対する質問にも答えていて、しかもそれが結構いいところを突いているんですね。やはり、政治家の政策をきちんと見ようと思っている人が今回参加してくれたのだと思います。その点でも良かったと思います。

 これをもっと広げていって、いろんな人たちが参加していけるようにしたいと思いました。

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マニフェストフォーラムを終えて(2)
(全 4分9秒 )

聞き手:
インターン 弓岡美菜(東京大学)


では、今日のフォーラムの議論の中身についてはいかがでしたか。

 やはり、今回のテーマである年金・社会保障・農業・財政というテーマは、僕たちが実施した有識者アンケートの中で、「政治が取り組むべき政策課題は何か」という問いに対する答えのうちの上位4位でした。つまり、政治に対するこれらの分野の課題解決への期待が強いと。それに対して民主党の皆さんもそれなりにさまざまな政策を検討しているのですが、ひとつ気になったのは、党としてのガバナンスがどうなっているのかということです。仮にも今回の参加者は次の内閣の大臣であり、政調会を通じて政策形成をしているのかと思ったのですが、しかし今日の民主党の参加者らの政策は、党の政策として集約されていないような印象を持ちました。つまり民主党の場合、党内で政策をまとめ上げることの大変さがわかってしまった。けれど、有権者から見れば政党なわけですから、政党は有権者に対してきちんとしたひとつの政策を提示し、実現していくという形で有権者との議論が始まるのであって、そこに関して、民主党だけではなく自民党もかもしれませんが、党の政策プロセスはどのようになっているのだろうかと疑問を持ちました。

 それから、経済政策に関しては、やはり弱いなと。今回の言論NPOの評価委員は日本の経済学者の中でも第一人者がそろっており、対談を聞いていると経済政策的な掘り下げが少し弱いと感じました。特に成長政策については、政治が出来ることとしては数値を約束するというより成長のための基盤を作ることなのですが、民主党議員の発言に、そうした視点は見られませんでした。今非常に深刻化している財政再建、赤字の問題についてそれをどうやって解決していくか、納得できる明確なビジョンは提示されていなかったですね。これらに関して、今日のフォーラムの模様は皆さんに公開しますので、是非皆さん自身で判断してほしいと思います。

 また、もちろんマーケットが機能しない社会的なゾーンがあるというのはわかるのですが、なんでも所得再分配のような議論になってしまうとよくない。評価委員の生源寺氏も言っていましたが、例えば農業の話にしても、農家の人達だけでなく消費者も農業問題に関心があるわけでね。それに対しても民主党はきちんと語らなければいけないんですが、やはり農村の特定の基盤に対する発言しかない。しかしその一方で、農業の未来を描いているわけでもない。こうした状況では、民主党は政権政党としての政策の掘り下げや展開が少し弱いのではないかという気はしましたね。

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マニフェストフォーラムを終えて(3)
(全 1分14秒 )

聞き手:
インターン 弓岡美菜(東京大学)

 あと、僕は会場でのアンケートやウェブでのアンケートも見ていたのですが、今回の民主党の政策説明に関して納得できない人が意外に多い。しかし、なぜ皆がそう思ったかというと、ある面で言えば民主党議員の皆さんが私たちの質問に誠実に答えていたからなんですね。政治家という人たちは、よく発言をごまかします。しかし、今回出席してくれた民主党の方々は、有権者に政策をきちんと説明したいという意思がかなり強かった。そのこと自体が僕はすごくうれしかったんですね。アンケートで納得できないと答えた人たちも、おそらく怒って納得できないというよりは、ちゃんと説明してくれたんだけど、まだ納得できないという感じでしたので、こうしたフォーラム作りを継続して行っていきたいなと思いました。

 このフォーラムでの議論もふまえ、僕たちは評価作業をこれから本格化させたいと思っています。

(文章は、動画の内容を一部編集したものです。)