「第4回日韓未来対話」にあたって

2016年9月01日

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「第4回日韓未来対話」にあたって

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 言論NPO代表の工藤泰志です。今、私は韓国・ソウル市内のベルエッセンスホテルにいます。今日から私たちの「第4回日韓未来対話」が始まります。


「過去対話」から本当の意味での「未来対話」へ

 私たちはこの対話を、日本と中国の対話「東京―北京フォーラム」と連動させて行ってきました。特に、日本と韓国の間には歴史認識問題や領土問題など様々な問題がありますが、私たちはそういうことも直視しつつ、日韓の未来のために、この地域に平和的な秩序をつくりたいという思いから、この日本と韓国の対話を「日韓未来対話」と名付けたわけです。

 しかし残念ながら、この3年間、私たちの対話は未来について議論したいと思いながらも、毎年「過去対話」になってしまっていました。それほど歴史問題や安全保障に対する様々な疑念というものが、日本と韓国双方の間にはあり、それは世論調査でも浮き彫りとなっていましたし、対話本番でもそういう形での議論が多かったわけです。

 今回、私たちのこの対話では、私たちは本気で未来を議論しようと考えています。私たちがこの未来を議論しようと本気で決断した背景には、7月に発表した「第4回日韓共同世論調査」の結果があります。私たちが日本と韓国の未来をきちんと議論してこなかったその空白の間、両国で多くの国民がお互いの将来的な発展を確信できていない。そういう実態を招いていると私たちは世論調査結果から判断したからです。



「中国」に対する認識の違いをしっかりと直視した上で議論する

 今年の世論調査で私たちは、韓国人の意識の構造の中に中国の存在が非常に大きいという実態を目の当たりにしました。この中国の問題というのは、今までの世論調査結果にも表れていました。ただ今回、新たに「自国の将来を考えるにあたり、世界の中で最も自国との関係が重要だと思う国や地域はどこか」という設問を入れたのですね。その結果、日本人の回答は当然「アメリカ」だったのですが、韓国人の1位は「中国」でした。

 昨年来、高高度ミサイル防衛(THAAD)をめぐる様々な米韓の動きが中国を刺激し、中韓間で非常に大きな対立が起きています。その中で、一昨年の世論調査と比較すれば、中国に対してかなり肯定的な評価をするという韓国世論の動きにはブレーキがかかっているのですが、しかしそれでも中国に対する認識は、日本と韓国の間でかなり食い違いが見られるわけです。

 私たちが目指すこのアジアの平和は、中国なくしては実現できません。経済的には中国の力はかなり巨大なものとなり、韓国にとっても日本にとっても重要な存在になっています。しかし、安全保障も含めて、その中国という国を巻き込んだ形で平和的な秩序をつくるということは、生半可な動きではできないわけですね。それでも将来、この地域の平和を実現するためには、この問題は避けては通れない。日韓世論の中国に対する認識の違いという問題を私たちは無視をせずに、きちんと正面から議論をする時期に入っていると思っています。


日韓は本当に「同じ側」に立っているのか

 今回の私たちの対話は、まさに両国にとって、お互いがなぜ大事なのか。そして、北東アジアの平和や未来にとって、お互いは本当に必要なのかということを議論します。そして、もう一つ大きなテーマがあります。本当に日本と韓国は、自由と民主主義という価値を共有し、アメリカという共通の同盟国を介して「同じ側」に立っている国同士なのか。本当に共通の利益を背負っている国なのか、ということです。私たちは今まで当然の前提だとされてきたそのタブーに挑んでいって、議論を尽くして、日本と韓国との対話の軸、基盤というものをつくり上げていきたいと思います。

 今日、これから日本と韓国の間で外交・安全保障に関する非公開の会合が行われます。その中で私はこれまでお話しした問題意識を率直に参加者にぶつけます。そして、明日行われる「日韓未来対話」の公開の本会議で、アジアの将来、日韓の将来について本気で議論したいと思います。その結果は改めて皆さんにご報告申し上げます。以上、ソウルから工藤でした。