課題解決に挑む市民の新しい変化を「見える化」する 
―「第3回エクセレントNPO大賞」応募開始

2014年8月20日

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課題解決に挑む市民の新しい変化を「見える化」する 
―「第3回エクセレントNPO大賞」応募開始

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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8月21日より「エクセレントNPO大賞」の募集が始まります

田中: 今回はエクセレントNPO大賞について、工藤さんにお話を伺いたいと思います。いよいよ応募が始まるそうですが、詳細を教えていただけますか。

工藤:今年で3回目となる「エクセレントNPO大賞」を8月21日から応募受付を始めます。市民賞、課題解決力賞、組織力賞の3つの賞で競っていただき、その中から今年のエクセレントNPO大賞を決めます。1回目はエクセレントNPO大賞が出ませんでしたが、昨年の2回目で初めてエクセレントNPO大賞の受賞団体が選出されました。
いま日本の市民社会では、様々な市民の方だったり、非営利組織が活躍されていますので、ぜひエクセレントNPO大賞を目指して欲しいと思っています。


優れた非営利組織を「見える化」していく

田中:今年で3回目ということですが、昨年までの応募の状況はいかがですか。

工藤:1回目は初めての取り組みでしたが約140団体の申し込みがあり、2回目の昨年は170団体とかなり増えました。

実をいうと田中さんにこの賞の評価基準のデザインをしていただきました。私たちは市民社会の中に大きな変化を起こしたいという思いからこの賞を創設しました。その背景にあったのは、日本の市民社会に非営利組織はたくさんあるにもかかわらず、「市民に向かい合っていない」とか、本当の意味で「課題解決の成果を上げていない」とか、「組織に刷新的な力がなく、持続的な発展性もない」という問題意識がありました。そうしたことをしっかりと実践できる非営利組織を目指してほしいということで、非常に大きく、多様で、体系的な基準をつくり、評価基準として採用しているわけです。

応募をする人はその基礎的な項目にチャレンジしなくてはなりません。応募に際して自分たちの組織を自己点検してその評価を提出して頂きます。非営利組織にとっては自分たちの活動を見直す非常に良い機会になると思います。

応募するわけではありませんが、言論NPOも毎年、自己評価にチャレンジしています。スタッフみんなを集めて、「ボランティアに対してお礼を言っているか」などの項目について、一つひとつ確認しながらですから、しっかりやろうと思うと4時間くらいかかりました。だから、この賞に応募するということは、自分たちの組織を本当にしっかりとしたNPOにしたいという、一つの大きな力や、思いがないとできないと思います。それを乗り越え、活用して、昨年は約170団体から応募があったことに、私は非常に驚きました。この評価基準をもっと広めて、日本社会の中に非営利組織の活力ある変化を起こしたいと思っています。

そういう意味でも、第3回目を今回開催するという運びになって本当に良かったと思っています。

田中:この賞は市民賞、課題解決力賞、組織力賞の3つの部門に分かれていて、そこから各々賞が選ばれて、この3つの受賞者からさらに大賞が選ばれるというかたちになっています。また、エクセレントNPOの評価基準は33基準あるのですが、その中から16基準に基づいて、自己点検、自己評価をしてもらって、その結果を送っていただく。そして審査員も同じ基準で審査し、その過程も全部公開するということになっています。しかも、受賞団体に対して細かくその理由を書くと同時に、ノミネートされなかった方たちにも簡単ながらフィードバックをさせていただいています。

過去2回の審査員をさせていただきましたが、1回目でノミネートに外れた団体がリピーターとして応募しており、そうした方が結構いらっしゃったのは驚きでした。

工藤:「応募してよかった」という声が表彰後たくさん寄せられてきました。

非営利セクターが自分たちを自己革新していくプロセスそのものを賞の意味に据えているというのは、日本の社会では初めてだと思います。だからこの賞は非常に面白い取り組みだと思います。

また、企業のCSRや助成財団、市民のみなさんもそうなのですが、どのようなNPOに参加したり寄付したりすればいいのか、わかりにくい状況があります。例えば、震災などが起こると多くの寄付が集まるのですが、「この人に夢を託したい、作業を託したい」という人がよくわからないわけです。そういう状況は日本の市民社会にとって改善するべき点だと思うので、エクセレントNPO大賞という形で優れた非営利組織を「見える化」していく賞ができたというのは非常にいいことだと思っています。

田中さんは今回も審査員になりますが、市民賞、課題解決賞、組織力賞の中でどれに関心がありますか。


市民性を育む場としての非営利セクターの役割

田中: 私は市民性について2つの理由で関心があります。1つは「教育」であり、もう1つは「研究」という視点です。「教育」という点についてですが、最近OECD諸国、あるいは産業界では人材育成の議論がとても頻繁になされています。その中で、教育機関に対する要望としてどのような人材が欲しいかということなると、まさに社会人基礎力があるだとか、市民性があるとか、公共性がある人材が欲しいという声が出てくるわけです。そうした結果、最終出口である大学にかなりプレッシャーかかっているのですが、私が観察するところでは、市民性というのは、大学において座学で学ぶよりは、NPOでボランティアやインターンをした方がうまく育まれるだろうと直感的に思っています。

それから「研究」の視点ですが、昨年、一昨年と公益法人、社会企業家、NPOに対して、エクセレントNPOの基準を使って調査を行いました。その調査結果を、市民性という基準で見てみると明らかに組織の違いが分かります。組織の生態を知るという意味で、この市民性という基準は1つのカギを握っているのではないかと思っています。その2つの理由から市民性に関心を持っています。

工藤:いま言われている市民性の話ですが、私の価値観では、市民が強くなっていかないといけないと考えています。つまり、社会の課題に対して自発的に課題解決に挑んでいくとか、参加していくとか、そういう動きが尊重されるような社会が、政府なり政治というものを強くし、民主主義というものを本当に強く機能させることになるのだと思います。先ほどの田中さんの発言には、非営利セクターがそういう市民の大きな受け皿になっているか、それから市民がボランティアなどで加わることによって市民として成長できるような舞台に非営利セクターがなっているか、ということが今の市民性にとって大事だと言っているわけですよね。

田中:その通りです。ただ、市民が参加するためには、参加を受け止める土台が非営利セクターに備わっていることが必要なわけです。つまり、きちんとした目的、ミッションに基づいて課題解決に取り組んでいるということがしっかりと整っている必要があります。また、その母体の組織もしっかりしてないと、せっかくボランティアに来てもらってもその人たちをマネージできないわけです。そういう意味では市民性、課題解決力、組織力というのは3つがうまく機能して初めて、それぞれうまく機能することになります。


課題解決に挑む新しい変化が、日本の市民社会で始まっている

工藤:私は今の日本の社会が内向きで閉塞感があるような感じがしています。このままでは、課題を解決していく、成果を出していくということに向かっていかないと、いま直面している課題に誰も答えを出せず、今の状況をただ維持していくだけという状況に陥ってしまうと思います。若い人たちとも話をしますが、単に議論するだけではなく、やはり成果を出したいという声があるわけです。

昨年、一昨年とエクセレントNPO大賞の受賞式を見ていて感動したのは、本当の課題解決に挑んで成果を出している人たちが日本の市民社会にもたくさんいるということでした。そういう人たちがなかなか社会の中で知られていないという現状があります。しかし、昨年受賞した、あるいはノミネートされた人たちがその後、いろいろなところで有名になっています。ということは、彼らの取り組みが社会に伝わることによって、多くの人たちから評価されるという土壌が日本にはあるのだと感じています。だから、私は3回目の賞に、どのような人たちが応募してきてくれるか楽しみでなりません。まさに日本の社会の中でこの閉塞感を打ち破って、課題解決に挑んでいくような新しい変化が始まっている気がしてたまらないのです。そういう意味で私はこの第3回目のエクセレントNPO大賞がどうなるのか、非常にわくわくしています。田中さんどうでしょうか。

田中:おっしゃる通り、今の日本の市民社会はワンボイスあるいはボイスレスになってしまっていて、おとなしい感じがしています。実際、若い人たちと議論をしていても、前よりもおとなしくなったと感じています。では発言したくないのかというと、そんなことはないわけです。

私は、エクセレントNPO大賞にいらっしゃる方のエネルギーを「言葉の重さ」で感じています。自分で実践し、課題解決に着手し、その腹の底から湧き上がる言葉というのは、いろいろな表現方法があると思いますが、非常に訴えるものがあります。だから、声を出したいのだけど、出すためには自分が納得するもの、自分が獲得するものがなければ、なかなかボイスになっていかないのだと思います。そうした実践している人たちの魅力をこのエクセレントNPO大賞でクローズアップすることができたらと思います。

工藤:日本だけではなく、世界的にもワンボイス化という現象があります。本当は多様な声が尊重される社会というのが強い社会なのですが、その社会を担うのは市民です。市民が課題解決に挑んでいくという努力が、重い言葉になるのだと思います。そういう元気な声を日本の社会でつくっていかないといけないし、公共のゾーンの中でそうした市民側の動きをもっともっと元気にしないと日本の社会は変わらないと思います。

そういう意味では、この賞はまだ3回目ですが非常に大きな役割を果たす可能性があると感じています。ぜひこのブログを見ている人たちも含めて、多くの方々に応募していただきたいと思います。応募する方は、私たちの評価基準に向けて自己点検することになるのですが、それを通じて必ず何かの変化があると思います。言論NPOでもこの自己点検を行い、自分たちの組織で弱い部分を発見するなど、たくさん悩むことがありました。ただ、自分たちの組織を見つめ直すことで新たな発見があったり、この賞を通じて、市民の多くの人たちが非営利セクターの努力を知ることになると思います。8月21日から募集が始まりますので、ぜひ皆さんに応募していただきたいと思っています。田中さんも審査員は大変だと思いますがぜひよろしくお願いします。

田中:はい、がんばりましょう。