北東アジアの平和構築とアジアの民主主義の強化のためのスタートに ~2日間にわたる対話にかける思いとは~

2015年3月19日

 言論NPOの工藤です。3月20日(金)、21日(土)の2日間にわたって言論NPOは「戦後70年、東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」と題した国際シンポジウムを開催します。



世界中で大きな試練を迎えている「平和」と「民主主義」

 今回、このテーマで議論したいと思った背景には、今、「平和」と「民主主義」が大きな試練に直面していると私たちが考えているからです。これは、日本だけに限ったことではなく、北東アジア、アジア全域、そして世界中で同じような現象が起こっています。

 まず、「平和」についてです。北東アジアでは3月21日に、日本・中国・韓国の外相会談が行われる予定ですが、現時点で、その会談によってこの3カ国の関係が大きく改善することは期待できない状況です。今年は戦後70年という節目の年ですが、日本と近隣国との間では非常に神経質な展開が始まっています。何よりも、北東アジア地域は、世界が懸念しているように平和で安定的な秩序すらつくれていないのが現状です。こうした問題を解決するための動きを、そろそろ私たちは始めなくてはいけないと考えています。

 次に「民主主義」の問題です。これは、日本の民主主義の行く末を懸念しているだけではありません。フランシス・フクヤマが言ったように、現在、デモクラシー自体が後退しています。特に、アジアの中でその動きが顕著に見られ、タイではクーデターによって軍事政権が樹立されるなど、アジアではこのままデモクラシーが根付いていかないのではいないか、という懸念が高まっています。
 こうした懸念は、アジアの他の国々だけではなく、日本でも同様です。私は、ポピュリズムやナショナリズムが高まる中で、政党政治が将来に向けた課題解決の力を失っているのではないか、という危機感を持っています。そうした傾向が世界の様々な国の中で、共通に見られているわけです。こうした状況に、戦後70年、私たちはどのように向かい合うべきなのか。それが私たちの問題意識なのです。


「平和」と「民主主義」を発展させるためには具体的なアクションが必要

 しかし、はっきりしていることもあります。それは、「平和」と「民主主義」は、黙っていても発展しないということです。「平和」や「民主主義」というものを何としてでも発展させていくという強い決意や思いが多くの市民の力となり、「平和」や「民主主義」を発展させる具体的な動きにならない限り、この2つの価値は発展するどころか、その基盤を壊しかねない危うい状況になってしまうのだと思います。だからこそ、私たちは、この「平和」と「民主主義」についての議論を始めたいのです。

 私たちは、この対話を始めるにあたり、有識者へのアンケートも行いました。このアンケート結果もホームページで公開していますが、その結果を見ていると、先程述べたような私の懸念を、多くの有識者が共有していることがわかります。

 例えば、「昨今、『アジアの民主主義の衰退』と言われているが、アジアの中で今後、デモクラシーはどのようになっていくか」と尋ねたところ、1割の人が「衰退していく」と回答し、3割を超す人が「どちらともいえない」と回答しており、民主主義の行く末に不安を感じていることが分かります。

 また、北東アジアの平和構築に向けて、政府間外交だけではなく、民間の力、私たちは「言論外交」ということを提案していますが、民間外交に期待する声が8割近くに上っています。さらに2年前、私たちは日中両国の民間レベルで「不戦の誓い」に合意しましたが、その「不戦の誓い」を北東アジア全域の1つのルールづくり、つまり、将来の平和環境づくりの1つの理念としてふわしいのではないか、という声が数多くいることもわかりました。


今回の対話が、今年1年かけて行う活動のスタートになる

 私たちはこうした有識者の声を背景に、3月20日、21日の2日間にわたって行われるこの対話に私たちの思いをぶつけて、そして必ず何かしらの方向性を見つけ出したいと思っています。そして、こうした動きを単なる議論だけで終わらせるのではなく、議論した結果を北東アジアの平和的な環境づくりや、デモクラシーの強化といった動きに具体的につなげていく。私たちはそのための様々な企画を、今年1年間を通じて行っていきたいと考えています。今回の5カ国の対話が、まさに私たちのそうした決意のスタートとなります。

 ぜひ、2日間にわたる対話にご参加いただきたいと思いますし、もしご参加いただけない場合でも、言論NPOのウェブサイトやインターネット(生中継を行います)などを通じて、私たちの取り組みをご覧いただければと思います。


国際シンポジウム「戦後70年 東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」概要

【第1日】 「アジアの民主主義をどう発展させるのか -インドネシアとの対話」

◇日 時:3月20日(金)14時30分~17時30分
◇プログラム:
 第1セッション 「日本とインドネシア、二つの民主主義を再考する」
 第2セッション 「アジアの民主政治のための言論と民間の役割」
◇パネリスト:
【インドネシア】
 ハッサン・ウィラユダ(元外務大臣)
 クトゥト・プトラ・エラワン(平和民主主義研究所所長)
 ラヒマ・アブドゥラヒム(ハビビセンター所長)
 フィリップ・ベルモンテ(インドネシア国際戦略研究所 政治国際関係部長)
【日本】
 明石康(国際文化会館理事長、元国連事務次長)
 鹿取克章(前駐インドネシア特命全権大使)
 川村晃一(ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター副主任研究員)
 見市建(岩手県立大学総合政策学部准教授)
 工藤泰志(言論NPO代表)

▼USTREAMにて緊急生中継を行います。放送は下記URLからご覧いただけます
 http://www.ustream.tv/channel/genron-npo-live


【第2日】 「北東アジアの平和は誰が構築できるのか―日米中韓尼、5カ国対話」

日 時:3月21日(土)13時30分~17時00分
◇プログラム:
 第1セッション 「戦後70年 北東アジアは平和へ動き出せるか」
 第2セッション 「言論外交はアジアの平和構築に寄与できるか」
◇パネリスト:
 韓国:柳 明桓(元外交通商部長官)
 中国:栄 鷹(中国大使館公使参事官、元中国国際問題研究所副所長)
 米国:ナンシー・スノー(米国社会科学評議会 安倍フェロー)
 インドネシア:ハッサン・ウィラユダ(元外務大臣)
 日本:田中均(日本総合研究所国際戦略研究所理事長、元外務省政務担当外務審議官)
    藤崎一郎(上智大学特別招聘教授、前駐米大使)
    宮本 雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使)
    工藤泰志(言論NPO代表)
  ※その他、日本側パネリスト調整中

▼USTREAMにて緊急生中継を行います。放送は下記URLからご覧いただけます
 http://www.ustream.tv/channel/genron-npo-live