「未来の目指すべき共通項」から、 日中両国間の対立や疑念を埋めるきっかけづくりを ~「第11回 東京-北京フォーラム」の事前協議を振り返って~

2015年4月15日

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「未来の目指すべき共通項」から、 日中両国間の対立や疑念を埋めるきっかけづくりを
~「第11回 東京-北京フォーラム」の事前協議を振り返って~

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工藤:言論NPOの工藤です。今、羽田空港に着きました。

4月11日から15日まで「東京-北京フォーラム」実行委員長の明石康さん(元国連事務次長)、同フォーラム副実行委員長の宮本雄二さん(元駐中国大使)、山口廣秀さん(元日銀副総裁)、そして私の4人で北京を訪れ、今年の「第11回 東京-北京フォーラム」の事前協議を行い、その他にも中国側の政府関係者とも会談を行ってきました。


日中両国が自国の将来、目指すべきアジアや世界の将来について語り合う場を

「東京-北京フォーラム」は今年で11回目を迎えるわけですが、今年のフォーラムは「次の10年」に向けての第一歩ということで、この対話をどのように進めていけばいいのか、ということで議論してきました。会議ではいろいろな議論が行われましたが、結果として、「第11回 東京-北京フォーラム」を北京で10月下旬に行うことが正式に決定しました。

私は、今回のフォーラムでスタートする「次の10年」ということを考えた場合に、「日本の将来」、「中国の将来」をお互いが語り合う中で、目指すべきアジアや世界の将来像や、それに向けた議論を開始しないか、ということを呼びかけ、中国側も基本的に同意しました。

では、私たちがなぜ、こうした将来に向けての議論をしようと考えているのか。それは、現在の日中関係の不透明さや、様々な対立の背景には、中国の台頭に伴い、中国が軍事的にも経済的にも、かなり大きな展開を始めていく中で、中国が将来、アジアの中でどのような国を目指しているのか、ということが非常に見えにくいために、日本の多くの国民不安を募らせていることがあると思います。一方で、日本は「積極的平和主義」と言っていますが、アジアや世界の中で、どのような社会や平和国家を目指そうとしているのか、ということが中国には伝わっていないというのが現実なのです。


将来の目指すべき共通項から、今の問題点を埋めることはできないか

日中両国はお互いに、「過去を踏まえながら、未来に向かい合う」とは言うのですが、よく考えてみると、日中両国の「未来」を誰が、どこで議論しているのかが見えないわけです。だからこそ、私たちがそれを議論しようと考えたわけです。そうした議論を行っていく上では、時には激しい議論になるかもしれません。しかし、本当の意味での「未来」を議論することで共通項が出てくれば、その「未来の共通項」から今を振り返り、現在、日中両国の間にある様々な対立や疑念を埋めるきっかけをつくれるのではないか、という思いが私たちにはあります。こうした話をしたところ、中国側からも、日本がどのような戦略を持ってアジアや世界の中で生きようとしているのかが見えない、という意見が出されました。つまり、日中両国共に、お互いがどのような国を目指しているのかがわからず、互いに不信感を強めている状況が存在するのです。

 ですから、私たちはこうした将来像に向けた共通テーマを背景に、お互いの世論をベースにした政治や外交、安全保障、経済、メディアなどの議論を行う予定です。加えて、今年は、特別なテーマについても議論を行う予定で、併せて5つの分科会を設定することを確認しました。5つ目の議論に関しては、私たちは少子高齢化や原発などをテーマにすることを提案しましたが、中国はまだそこまで具体的なテーマについての議論にはなりませんでした。5つ目のテーマについては、これから詰めることになると思います。

 そして、7月ごろには、両国の世論調査を発表することになります。こうした調査を踏まえながら、私たちは国民に向かい合ったオープンな対話を行っていきたいと思っています。


言論NPOが行う対話の目的は、「東アジアの平和的な環境づくり」

 私たちのこの対話は、今や日本と中国にとどまらず、世界の中でもかなりインパクトを持ち、影響力のある対話に成長しています。私たちは、こうした対話を通じて、お互いの国民が日中関係について考えるきっかけになればいいな、と思っています。また、今年は、戦後70年という節目の年です。こうした節目に、私たちが日中関係やアジア、世界の未来に向かい合う議論を行うことは、非常に意味あるものだと考えています。多くの人たちに、この対話を見てららえるような仕組みも作っていきたいと思っています。

 さて、今回の事前協議を通じて、私たちが今年行う「東京-北京フォーラム」の骨格が、ようやく固まりました。言論NPOは、この中国との対話の他にも、6月には日韓との対話、ドイツとの対話を予定していますし、日中韓米のマルチの対話も準備しています。こうした対話を通じて、私たちはこの北東アジアに平和的な環境を実現することにあります。そのための努力をこれから始めていきたいと思いますので、ぜひ皆さんも注目していただければと思います。

 ということで、羽田空港から工藤がお届けしました。