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2012年12月31日

日本の政治が課題に向かいあい、解決を競い合うためのスタートに

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日本の政治が課題に向かいあい、
解決を競い合うためのスタートに

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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※テキスト部分は、一部加筆しています。


田中:工藤さん、こんばんは。
工藤:こんばんは。

田中:昨日選挙の結果が確定しまして、自民党の大勝ということだったのですが、工藤さん、この結果どのようにご覧になっていますか。


消極的な支持を本当の支持に変えるには何が必要か

工藤:ここまで非常に大きな、地滑り的な変化になるとは私も想定はしていませんでした。小選挙区制による民意が、こういう形の選挙結果にするという点では、選挙制度の問題について、非常に考えさせられました。ただ、答えからいうと、基本的に今回の民意は民主党の政治を否定したということの一点に尽きるわけですね。
 その結果、自民党を消極的に選んだ。つまり、自民党の政策なり、自民党が課題解決のために示したで色んな提案に対して支持を得たわけではない。このことは自民党の候補者、当選した政治家が恐らく一番気づいているのだと思います。テレビで、自民党の候補者が、今回は民主党が否定された結果、我々が選ばれた。それを自分たちの本当の支持に変えないといけない、ということを言っています。そういう点では今回は民主党という政党が否定され、結果として自民党が政権を持つチャンスを得た、ということだと思います。だからこれからが大変だと私は思っています。

田中:確かに、おっしゃる通りではないかと思われるのは、言論NPOが短い時間で有識者アンケートを行って、その結果が出ていますが、特に今回の選挙結果について不安を感じていると回答されている方が、けっこういらっしゃいますよね。

工藤:そうですよね。「心配な結果だ」という人が42.6%いました。
田中:どうしてこのように感じているのでしょうか。

工藤:たぶん、勝ちすぎているということですよね。
しかも、選挙戦での安倍総裁の発言が、憲法改正も含めてかなり勇ましい発言になっていました。昔、鳩山さんも逆の意味で(普天間の基地の県外移転という)マニフェストに書かれていないことを発言して、それがある意味で首相の行動を縛ってしまうのですが、今回の安倍さんの総理候補としての発言に、大丈夫かという心配がある。つまり今回、民主党を否定したのですが、自民党の少なくとも安倍さんが言っていることについて、全面的に白紙委任したわけではないということが、この結果の原因ではないかと思います。「あなたは今回の選挙で自民党の政策を支持していますか」ということを尋ねると、「支持していない」とか、「どちらかというと支持していない」という回答が合わせて6割あります。自民党は今後、公約をベースにしながら、国民に対して何を実現するのか、ということを改めて説明して、有権者に向かい合うという必要があると思います。

田中:おっしゃる通りで、民主党の大敗の理由、否定の理由というのは、国民に向かい合わなかったからだと工藤さんが前におっしゃっていたと思います。もし自民党が同じように国民に向かい合うことができなければ、また同じようなことが繰り返されるということでしょうか。


機能している民意の判断

工藤:そうですね、私たちは選挙公約や政策実行の評価を何回もやっていて、今回の民主党政権以降は3回やったのですが、はっきりわかったことが2つありました。1つは、政治は日本が抱えている課題からは逃げられない、ということです。そのため政党は自分がやりたいことをいうのではなくて、国民が直面している課題に対して答えを出さなければいけないのです。
 もう1つは、国民に向かい合う政治を行わないと有権者の信頼を失うと言うことです。まさに前の民主党政権はその典型で、しかも政党としてのガバナンスが壊れ、党内対立から政策に対する合意を形成できず、ある意味で党が壊れているのに、選挙の時期をただ延ばしていくような状況が有権者に見えてしまうと今回のように解党的な大敗になってしまうわけです。

 そう考えると、今回、選挙で問われたのは政策よりも政党のガバナンスそのもの、だったのではないか、と思います。民主党はその点で完全に否定され、第三極も準備不足で、しかも党内のガバナンスが急ごしらえで固まっていない。自民党がその中で一番安定しているように見えたわけです。

 つまり、問われたのは政党そのものであり、それが民意だったと私は考えています。
それは日本の政党政治が信頼を失い始めている、ということなのです。しかも、自民党の政策そのものが支持を得ていない、ということが問題なのです。自民党が課題に対して答えを出し、それに対して仕事をし、一方で国民に向かい合うということをやらなければ、今度はその批判が自民党に向かうと思いますね。

田中:なるほど。民意は反映されていたのですね。

工藤:民意は結果として理性的です。ただ、日本の現状を考えれば政党のガバナンスが問われるだけで済む状況ではない。だから、一方で投票率が戦後最低になったのは、今回、投票する政党がない、だから投票できなかった。それも、もう1つの民意なのです。

 つまり、民主党を否定したけれども、ではどうすればいいかということに関して、有権者は今の政党のメッセージだけでは納得できていないわけですね。そういう問題も合わせて考えなくてはいけないと思っているわけです。

田中:なるほど。それでは自民党政権に対して、有権者として私たちは何を注意してみていったら良いのでしょうか。


候補者アンケート結果からわかる各候補の課題認識

工藤:今回、衆院選の立候補者にアンケートを行って789人、つまり、半分以上の人から回答をもらいました。自民党の人たちも回答しているのですが、多くの候補者が日本の課題についてみんな認識しているということなのです。つまり、課題を認識しているけれども具体的なプランや方向を、国民にまだ示し切れていないという状況があります。
 これは自民党も同じです。現状認識についてはなされていました。それに対する当面の解決は、ある程度出されているのですが、抜本的な解決のためのプランはやはり出ていない。それは恐らく党内の支持基盤の問題とか色んな問題からできないのだと思います。今回、自民党は公明党と連立するのだと思いますが、この課題解決に進まなくてはなりません。その中で国民にちゃんと説明しながら進んでいくことが必要だと思います。だけど、進めば進むほど、どこかで壁にぶつかって、本当の意味で国民に選択を仰がなくてはいけない。そういう局面がそう遠くない時期に来てしまうと私は思っています。
 例えば、候補者アンケートを見てほしいのですが、このままでは社会保障の制度は恐らく破綻する、それから財政再建は非常に難しい、という認識を持っている人たちが自民党の中にもたくさんいるわけですね。

 つまり、そうした現状を認識しながら、それに対して具体的なプランが出されていない、という状況なのです。

 だから、今回、自民党は大勝しましたが、本当に日本の課題を解決できるかは、これからなのです。

田中:なるほど。そして、私たちにきちんと説明するということですね。

工藤:そうです。つまり、今回の選挙は結果ではなくて、スタートなのです。やはり、国民に向かい合う政治がこれから問われなければいけないし、日本の課題解決に向かって日本の政党政治が動かない限り、日本の政党政治そのものが国民の支持を失うという段階にきているわけですね。

田中:今、日本の政党政治と言われましたが、二大政党制を目指してこれまで色々な政治改革が行われてきました。今のところ、とてもその状態を維持しているとは言えませんが、この点についてはどのように考えていますか。


課題に向けた競争が行われるためにも、政党政治の建て直しは急務

工藤:私たちのアンケートにもあったのですが、自民党と民主党、これからの日本の政治を考えた場合、「民主党が立ち直って2大政党になる」と思っている人は、たったの7.9%しかいないわけです。つまり、今まで二大政党をベースにした競争を行っていたのですが、今回の民主党の完全な失敗で、非常に深い傷を負ったという状況です。

 民主党は、なぜ国民から否定されたのか、真剣に考えないと再出発できない、と思います。

 一方で、第三極というものもそれに代わる大きな民意の受け皿になれなかった。これも今回の選挙結果のもう1つの特徴です。
 まだ党首で持っているだけで、政党としてあまりにも準備不足です。
 国民の不安に迎合し、ポピュリズム的な風潮に乗って勇ましい発言をすることが、政党の役割だと私は考えていません。

 こういう政党政治の在り方を我々はどう考えていけば良いのか、ということも有権者に突き付けられた課題なわけですね。

 今回準備不足もあったと思いますが、民主党やその他、第三極と言われている政党も、党のガバナンスをきちんと立て直して、それから国民にきちんと向かい合うというような政党を作っていかなければいけないと思います。

 また、課題に向けた政党間の競争がきちん行われるという状況を僕たち有権者は求めているわけですから、自民党が大勝したから問題が解決したわけではありません。

 日本の政党が変わらなければ、もう有権者は選ぶ政党がない、ということになります。

田中:選択肢がなくなるということですね。


有権者が強くなり、政治を自分の問題としてとらえることこそ重要

工藤:そうです。私が注目したのは、アンケートで、「これからの日本の政治はどうなっていくのか」と日本の有識者に聞いてみました。すると、38.4%が「当面は自民党や自民党中心の連立政権が長期化する」と見ています。

 今の日本の政党を考えると、相対的に安定しているのは自民党しかない、という判断です。民主党との二大政党の復活を期待するする人はごくわずかです。

 しかし、課題解決を1つの政党にだけ任せることはできず、選択肢が必要です。こういう状況は日本の政党政治の1つの危機だと私は思います。

 私がむしろ気になったのは、それに並ぶように37.1%が「大衆迎合的なポピュリズム政治が一般化して、政治が日本の課題解決に機能せず、この国が完全に衰退の危機に向かう」と回答していることです。それから「政党政治が国民から支持を失う」など、非常にネガティブに考える人がいるわけです。

 これは何を言っているのか。この選挙を経た今も、日本の民主主義が問われている、ということなのです。

 この状況を変えるのは有権者しかないのです。

 今回、「私たちは政治家に白紙委任はしない」ということへの賛同を求めましたが、やはりそういうふうに有権者が強くならないと、今回の大きな変化を次につなげるということにはならないのだと思います。そういう意味では今回の選挙は、まさにこれから続きがあるわけです。つまり、ドラマはこれから本番に向かっていくわけですね。そういう政治を有権者がきちんと自分の問題として考えていかないと、大変なことになってしまうと私は思っています。

田中:最後に一言、言論NPOは今後どうするのでしょうか。

工藤:私たちは政治に白紙委任しない、というこの立場を貫くために、有権者が考えるための様々な議論と発言の舞台を用意して、絶えず今の政治に有権者の立ち位置で向かい合っていくという強い姿勢で、議論を徹底的に行い、日本の政治にプレッシャーをかけ続けたいと思っています。そういうことでぜひ言論NPOの動きを見守っていただきたいと思っています。

田中:はい、頑張ってください。ありがとうございました。



⇒ 「私たちは政治家に白紙委任はしない」の呼びかけへの賛同はこちらから

投稿者 genron-npo : 00:00 | コメント (0)

2012年12月15日

党の公約をどうやって評価するのか? ~公約を手に取れば党の違いが見えてくる ~

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 言論NPOは10日、今度の総選挙での各党の政権公約、いわゆるマニフェスト評価の結果を公表した。

 その詳細な内容に関しては、言論NPOのウェブサイトを見ていただくことにして、今回、ここでお伝えしたいのは、言論NPOは政党の公約の評価をどのように行っているのか、ということである。

 私たちがマニフェストの評価に取り組むのは2001年の小泉政権下の総選挙から始まり今回で5回目となる。評価は8つの評価基準に基づいて毎回行われており、各分野の専門家など約40名の方に加わっていただき、最終的には「マニフェスト評価書」として提起している。

 今回は新しい政党の合併や公約自体の提起が遅かったため、私たちの作業も公示後にずれ込んだが、徹夜作業を繰り返し、なんとか評価を130ページの評価書にまとめることができた。
 

財源を書いている公約は全体のわずか2%

 私たちが政党の公約やその実行の評価に取り組むのは、国民に向かい合う有権者主体の政治を作りたいからである。

 マニフェストはその重要な道具である。その品質が前政権で悪かったためマニフェスト自体の信頼が崩れたが、有権者主体の政治そのものを否定されたとは、私は考えていない。であるならば、道具の品質を上げることを有権者が政党に迫るしかない。評価はそのための判断材料の1つなのである。

 私たちは評価結果だけではなく、その作業過程の議論やインタビューなども全てウェブサイトで公開している。ただ、公約の評価をどのように行っているのかについては、これまでまとまって説明したことはなかったように思う。

 今回はそれを少し説明させていただくことで、皆さんが投票先を選ぶ際の何らかの手がかりになればと思っている。
 


 今回、私たちが行ったのは、全12党の公約集の"マニフェス度"を測る「基礎評価」と主要5党の11の政策分野の各党の公約を8つの評価基準で評価する、「マニフェスト評価」の2つである。

 私たちが今回初めて「基礎評価」を導入したのは政党のマニフェスト自体が形骸化し、国民との約束と呼べるものではなくなっているからである。

 テレビの政見放送を見ると党首や候補者が「約束」という言葉を連発するが、率直に言えばそれはほとんどが嘘である。公約集に書かれている曖昧な文言を、誰も読んでいないことを前提に、約束と言っているだけだからである。

 例えば、12党の公約数は合計で1957あるが、達成目標や、達成時期、さらに財源の3つが最低その公約に書かれていないと、有権者はそれが実現できたかどうか、後から判定することは不可能である。しかし、全ての公約集を見てもその2つが揃う公約さえほとんどなく、わずかに1つだけ書いている公約が198(10.1%)あるだけである。さらに言えば、財源を書いている公約は全体の約2%で、5党が達成期限を公約に全く書いていない。

 つまり、大多数の公約は政党の自己主張やアイデア、取り組む課題のタイトルであり、それらが羅列しているだけである。
 

公約評価の前に、公約集や公約の作り方を吟味

 私たちの評価作業ではその行間を読み込んで、その政策の何が曖昧なのかなどを評価基準に沿って探ることになるが、有権者が判断もできない公約を政権公約と言えるのか、という本質的な疑問がある。

 そこで今回は、政党の公約の評価にそのまま入らず、その前に公約集や公約の作り方を吟味し、そこに政権を目指す政党として国民に向かい合う姿勢があるのか、を判定することにした。それが、基礎評価である。ただチェックは有権者が誰でも簡単にできるものでなくてはならない。公約集や公約の書き方を外形的に判断する、6つの基準を導入することにしたのはそのためである。

 その基準は以下の6項目で構成されている。

 まず公約集の表紙に「国民との約束」や「マニフェスト」という記載があるかどうか。「党首の顔」を中心とした表紙になっているか、また公約集は電話帳のように公約が羅列されるのではなく、重点課題に絞られているか。しかも絞られた公約が日本の直面する課題に見合っているか。また増税など負担の公約も正直に書いてあるか、の5項目である。

 これは順に言えば公約集の約束度、党のまとまり度、絞り込み度、誠実度、正直度を見るためのものである。意外に単純で驚いた人もいると思う。が、その1つひとつはこれまで10年近くの評価経験から私たちが得た、重要な項目なのである。

 「党首の顔」は、党のガバナンスを測る極めて単純な物差しである。表紙に写真がなかったり、2人の顔があるような表紙は党のガバナンスが固まっていない、と疑って間違いない。日本が直面する課題は、言論NPOが9月に行った2000人の有識者アンケートを参考に判断している。選挙の際に政治が国民に示すべき課題としてほとんどの有識者が選んだのは、原発・エネルギー、経済成長、社会保障、財政再建、外交・安全保障、そして一票の格差などの政治分野の改革である。

 さらに「正直度」は消費増税をしっかりと書いているかを見ている。

 私はこの増税は実施の時期の議論はあっても争点にすることはおかしいと考えている。高齢化が驚くべき速さで進む中で、毎年1兆円以上、社会保障の関係費は増加しており、国の債務も発散的に累増している。

 この認識があるなら、負担や給付減を触れない政治家は間違いなく正直ではない。消費税の増税が嫌なら他の負担に言及すべきで、前の政権が失敗したように、どこかに埋蔵金や無駄があるという聞こえがいい説明に、もう騙されてはいけないのである。

 この5つの項目を私たちは表紙の項目の配点を満点3点、その他を満点2点として計12点の半数の6点を取れたところをひとまず"合格"としている。
 

横柄な態度を取る政党の公約に限って生煮えで、党内の合意すらえられない

 しかし、これだけでは公約集が国民の約束になるとは言えない。そこで、この6点以上を得た政党の公約をさらにチェックして、最低でも目標や期限、財源の1つでも書かれている公約が全公約の10%を上回っていることころを、基礎評価の"合格政党"としたのである。

 その詳細は別途示させていただいたが、この6つの項目をクリアできたのが、民主党と自民党、公明党、日本未来の4党である。

 この4党ともぎりぎりの合格であり、もし先の測定可能な公約の比率の10%を引き上げると、該当する政党はいなくなる。本来、国民との約束というのなら、30%程度が最低だと私は判断している。しかし、残念ながらそうした政党はこの国に存在していない。

 日本の政党の公約がここまで曖昧になったのはいくつか理由がある。民主党の政権のマニフェスト失敗の反動があるのは事実である。しかし、政党はそれを言い訳にして公約の内容の無さを曖昧にしているだけである。ある党首は、「できることしか書かない」と言い、「有権者になぜそこまで説明しなくてはならないのか」と開き直る党の代表もいる。

 公約はできることを書くのではなく、やるべきことを書くのであり、有権者に説明をしない人間は、有権者の代表となる資格はない。そういう有権者に横柄な態度を取る政党に限って、その公約を見ると、そのほとんどは生煮えで、党内の合意すら得られないでいる。

 政党は日本が直面する課題に向かい合い始め、そうした公約も多くなったが、こうした不誠実な態度が続く限り、政党政治が信頼を取り戻すことは不可能だろう。こうした政治を有権者主体に変えていくためにも、曖昧なままのマニフェストを認めるわけにはいかないのである。
 

シングルイシューで勝負する政党に対する考え方

 評価の説明に入る前に2つ説明しておきたいことがある。

 マニフェスト評価とは政権公約であり、政権を競うための公約を評価することが目的である。しかし、政党には別の考えも存在する。例えば政権を競うことは無理だが、政権党が暴走しないように抵抗勢力として存在する、あるいはシングルイッシューで勝負する政党もあり得る。私自身は多様な民意の代表としての政党の役割があってもいいと考えている。

 だが、こうした政党も全て課題解決のプランの妥当性が問われるとなると、点数は極めて低くなり、その党の存在を否定してしまう可能性もある。ただ実質的には全ての政党が政権を目指しておらず、点数の違いはそういう事情も考慮して判断していただけたらと思う。

 もうひとつは、評価団体自体のガバナンスの問題である。選挙とは有権者が自分たちの代表となる政党や政治家を選ぶことであり、その際に政党のマニフェストを判断して有権者は投票し、次の選挙ではその実績に対する評価を投票という形で行うことになる。こうした民主主義のサイクルが回ることが、私たちが希望することである。

 そのため評価もそのサイクルに合わせて行うことが必要となる。言論NPOの評価は選挙時の公約の評価にとどまらず、政権を取った政党の政策実行の評価を国民との約束の観点から定期的に行っており、評価の検証も行っている。

 しかし、選挙時には様々な団体が評価を行うが、残念ながら自分たちの評価が結果的にどうだったのか、実績結果を報告する団体は皆無である。前回の民主党政権時に高い評価を出した団体がその後、政権の役職や業務に加わるなどの例があったが、評価する団体は中立でなくてはならず、特定の利害に関係したり、その政権に協力するなんてことはあってはならない。

 自分のことを言うのは少し気恥ずかしいが、言論NPOの活動は中立で特定の利害から独立しており、その外部評価の結果をウェブサイトでも毎年、公開している。評価団体の信頼も確立しなければ、民主主義のサイクルも実現しないのである。
 

基礎評価をクリアした4党+「維新」を評価

 今回、私たちがマニフェスト評価を行ったのは、先の基礎評価を一応リアした4党と、日本維新の会の5党である。

 日本維新の会の公約はこの基礎評価をクリアできず、国民との約束とはいえないものではあるが、党首の個性などで高い支持率を得ていたことから、有権者の参考として評価を行うことにした。

 評価は11の政策分野ごとに8つの評価項目で行い、その平均を5党の総合点として公表している。

 では、どうやってこの評価を行うのか。それを一言で説明するのは難しいが、私たちは04年の総選挙で初めて評価をやった時以来、同じ評価基準に基づいて評価を行っている。これは2つの要件で構成されている。

 1つは、公約を約束としての整っているかを判断する形式的な要件である。これは先の基礎評価にも一部関係するが、評価項目はさらに詳細となる。例えば評価項目は、その課題に取り組む理念や目的、明確な目標設定、達成時期と財源の裏づけ、そして目標実現までの工程や政策手段が説明されているかである。これは1つひとつの公約を読みながら採点していく。そのすべてが満たされた場合40点となる。

 そして2つ目は、その公約の中身を実質的に評価するもので、その公約が課題解決のプランとして適切か、また課題解決に向けた実行する体制や党のガバナンスが整っているのか、などが判断される。配点は60点である。
 

マニフェスト評価で重要なのは各分野の「評価の視点」

 今回、主要5政党の公約のマニフェスト評価は最高点でも100点満点で39点と40点を下回っており、一般的には合格といえる水準ではない。その最も大きな理由の1つは、公約の約束としての形式的な項目がこれまでになく曖昧になっていることだ。

 これは09年の総選挙10年の参議院選挙の際の私たちの評価と比べると一目瞭然である。民主党と自民党の形式要件の合計の平均点は40点満点で09年が30点、そして10年が20点、そして今回は約16.3点にまで下がっている。

 私たちが今回の公約で唯一プラスに評価できるものがあるとしたら、多くの政党が公約の中身を日本の課題に合わせ始めたことだ。だが、その答えを国民に十分に提起しているわけではない。

 その差が実質的な要件での採点の差につながっている。この評価は評価委員らの主観が入りこむために、複数の委員に点数を出していただき、議論などを踏まえて最終的にそれを一本化している。その際に評価委員が議論の前提にするのが、各政策項目の「評価の視点」である。
この「視点」は、この分野の課題解決で政治は何を国民に示さなくてはならないのか、を明らかにしており、この視点を元に、評価委員が公約の妥当性を判断している。

 例えば、社会保障の項目には、「高齢化と家族形態、就業形態など社会保障制度を取り巻く諸環境の変化を的確に捉え、必要に応じ、制度の再構築を目指しているか。その再構築プランは、財源の裏づけ、実現に向けた工程の両面からみても妥当性があるか。さらに、医師不足や偏在に対して政治は具体的にどう対応すべきか、も課題となる」と書いてある。

 こうした「視点」は、事前に言論NPOが行う、有識者2000人へのアンケートや政策当事者のヒアリングなども踏まえて形成し、評価委員がまとめている。

 その全てをここでは紹介できないが、この「視点」を定めることが、この評価では決定的に重要な作業になっている。言論NPOの選挙専門サイト「未来選択2012」ではその視点や評価結果を全て公開しているので、そこを参考にしていただけたらと思う。
 

この国を本質的に変えるのは有権者の覚悟

 さて、私たちの評価の仕方はこれである程度は、説明させていただけたと思う。皆さんも公約を手にして、その中身を考えてみれば、いろんなことに気が付くことになるだろう。少なくてもテレビの政見放送での政治家の発言に騙されることはなくなるに違いない。

 もちろん、私たちの評価だけが全てだとは考えておらず、評価の世界にも当然、競争は必要である。しかし、それ以上に大事なのは、有権者がこうして政党の公約を厳しくチェックすることなのである。

 私たちはこの9月から「有権者は政治家に白紙委任をしてはいけない」というメッセージに賛同を求めるキャンペーンをウェブ上で行っている。私たち有権者がそうした覚悟を決めれば、間違いなくこの国を本質的に変ることができるだろう。
 
 今回の選挙こそ、その第一歩にしなくてはならないのである。
 

本原稿は、下記ダイヤモンドオンラインでも公開されています。 
 http://diamond.jp/articles/-/29412

投稿者 genron-npo2 : 16:23 | コメント (0)

2012年12月13日

マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

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マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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※テキスト部分は、一部加筆しています。


マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

田中:工藤さん、こんばんは。
工藤:こんばんは。


候補者に何を実現するのか、緊急アンケートを行っています

田中:投票日まであと4日になりましたが、現在、言論NPOではどんな活動をされているのでしょうか。

工藤:各党のマニフェスト評価は、一応完成しまして、130ページの評価書が出来上がりました。それを色々なところで普及しています。またインターネットからも見られるようになりました。それから、自民党と民主党の公約が分かりにくいので、私が政治家に話を聞きに行ってきたのですが、その動画を、今日から公開しています。

 そして、今、スタッフ全員で立候補者に電話かけをしています。候補者に緊急アンケートを行い回答してもらおうと思っています。政党の評価はある程度行ったのですが、政治家が今の日本の課題に対してどう考えているのか、ということをもっと表に出そうと思っています。それが間に合うかどうかギリギリのところなのですが、可能であれば、投票の前に全部オープンにしたいと思っています。

田中:先ほどの130ページ余りのマニフェスト評価書ですが、時事通信日経新聞毎日新聞など、かなりメディアでも取り上げられて話題になっていますね。


マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

工藤:それ自体はうれしいことなのですが、取り上げられ方には納得がいっていません。結果として点数はつくのですが、それよりもこの評価書に書いてある一番伝えたいメッセージは、国民との約束を軸にした政治をどうしても取り戻さなければいけない。そのためにも、自分たちでマニフェスト、公約を手にとって、それを自分たちで評価するための手法を、きちんと伝えているわけです。その手法をやってみた中で、私たちが今度専門的に評価すると、発表したような点数になる話です。つまり、マニフェストというのは政治が国民に向かい合うための道具なのですね。これを生かすも殺すも、僕たち有権者側にかかっています。

 今のマニフェストはあまりにひどくて、約束になっていません。それに対して、きちんとマニフェストを読みながら、政党を選んでもらうための1つの手がかりを私たちは提供しています。そういう風にマニフェスト評価を見ていただければいいと思いますし、言論NPOのホームページを見てもらえればと思います。

田中:それは、政治側に対する要求でもあるのですが、有権者も、あるいは報道機関もだと思いますが、単純に点数だけ並べて、それで短絡的に選んでしまうのではなくて、なぜこの点数になったのか、どうしてこういう判断が必要なのか、というところを考えることが重要なのですね。

工藤:そうですね。既に公開している工藤ブログでかなり話をしているのですが、なぜこの点数になったのか、ということに1つひとつに意味があるのですね。結果的に似通った点数になったとしても、その後ろにある理由は全然違うわけです。特に、「評価の視点」というのを読んでほしいのですが、社会保障や財政政策など、いろいろな政策課題の中で、政治は国民に何を伝えなければいけないのか。それに対して、誠実に、真剣に伝えているところが結果として点数がよくなっています。また、それを実行できる仕組みがあれば、さらに点数は良くなっています。そういうことがあって、相対的な点数になっていくわけです。


公約に基づく約束になっていない、政治家の「約束」

 ただ、それ以前に、今回の約束が、本当に国民に対する約束になっているのか、ということが非常に気になっています。私もテレビで政見放送を見ていて、政治家が、これを約束しますとか、「約束」という言葉を多用するわけです。しかし、それは率直に言って嘘だと思うわけです。つまり、彼らが「約束」と言っていることを、その党の公約集に戻って見てみると、ほとんど約束にはなっていない。だけど、話をするときは「約束」になったり、非常に勇ましいことを言ってしまう。だから、こういう風なことに騙されないためにも、このマニフェスト、公約という存在が、改めて重要になってきているのです。だから、今回こそ、ぜひ公約集を手に取って読んでほしい。一方で、国民に分かるようにしっかりと、マニフェストに書いてもらうような政治に、これを機会に作り直していかないと、危ういなということを感じています。

田中:おっしゃる通りで、私も毎朝、政見放送を見ていますが、非常にスローガン的で、ワンワードで、単なるコマーシャルにしか見えません。政策課題について、きちんと議論してほしいのに、そこがないというのは、これまでと比べてかなり後退したと思いました。また、新聞を見ていても、賛成と反対とか、短絡的な説明に陥ってしまっていますよね。

 でも、工藤さんの今の話によれば、マニフェスト評価も単に点数だけを見て判断するのでは、同じ問題に陥ってしまうということですよね。


政治と有権者の間に、緊張感ある関係を作り出すためのマニフェスト評価

工藤:そうですね。つまり、僕たちがなぜ評価を行っているのか、ということにもかかわってきます。この評価は2004年の頃からやっているのですが、有権者が主体の政治をどうしてもつくりたいと思ったからなのですね。つまり、政治は色々なことを言っても何も実行しない。そういう政治をただあてにして、お任せするような社会ではなくて、有権者が主体的に今の課題に対して考えて、政党が出す公約に対して、それは違うよとか、プレッシャーをかけるような強い民主主義をどうしてもつくりたいと思って、評価をやっています。だから、私たちの評価は、やはり厳しくなってしまいます。新聞には「辛口評価」と出るのですが、有権者側からすれば、今のマニフェストや公約の中身に満足したらまずいと思います。あまりにも内容がない、という状況です。そういう緊張感を作り出すための僕たちの評価なので、その評価の中身を読んでいただかないと、表面的な結果だけになってしまうと、非常に残念だな、と思うところもあります。

田中:報道もそういう感じになりがちですが、私たち有権者としては、点数の背後にある情報を言論NPOのサイトから読んでみることが必要ですね。

工藤:そういうことです。ただ、一言言うと、僕たちの評価はかなり難しいというのも事実です。そこで、今回は、公約を手にとって簡単に見る方法も提供しています。例えば、項目が重点的に絞られているとか、課題に対してきちんと答えを出しているとか。

 僕も、昨日、テレビで政党の党首の討論会を見て、気になったことがあります。消費税を増税するかどうかが争点みたいになっているのですが、僕は、それはおかしいと思います。消費税の増税はもう決まっていて、経済的な問題でやるかどうかの時期の議論はあると思います。しかし、消費税の増税をやらないというのであれば、逆に、増税分のお金をどのようにして捻出して、急増する社会保障費や累増する国債残高に関してどうするのか、ということについて代替案を示さなければいけないですよね。

 やはりもっと正直な議論を政治側もしてほしいし、私たち有権者も既に気づいているとは思いますが、今回みたいな重要な局面の中で、選挙をやっているということを、改めて認識してほしいな、と思います。


マニフェスト評価自体の問題点とは

田中:マニフェストの可能性については、今お話いただいたのですが、あわせて限界といいますか、問題点はないのでしょうか。

工藤:2つあると思っています。つまり、マニフェストというのは、政権公約ですよね。つまり、マニフェスト評価は、政権を競い合い、いろいろな課題解決をやっていくためのプランを評価するものです。でも、ある政党においては、別に私は政権を競わないけど、ある程度の役割、つまり政権党が暴走しないためにチェックをする、というような役割の政党があってもいいわけです。そうなると、私たちが全ての政策の評価を行ってしまうと、結果として政権を目指さない党は、点数がかなり低くなってしまう可能性があるわけです。私は全ての政党が未来に向けて競争すべきと、基本的に思っていますが、多様な民意の代表としての政党の役割も否定していません。むしろそうした党の存在そのものを否定してしまうということになると困ります。

 マニフェストの評価は、政権を選ぶための評価だ、ということを皆さんも十分にしっていただいて、判断してほしいと思います。

 それから、評価団体側の問題もあります。言論NPOにも意見があれば寄せてほしいのですが、基本的に評価の作業とは有権者側に立って民主主義のサイクルに連動しなくてはなりません。有権者がまず自分たちの代表を選び、代表が有権者の代表として仕事をする。その仕事の評価を次の選挙で表明する、というサイクルが民主主義のサイクルです。しかし、選挙の時だけ評価する団体が出てくることがよくあります。私のところにも選挙になると、評価を一緒にできないか、と言ってくる人がいます。

 しかし、自分たちがやった評価がどうだったのか、ということを検証していかない、また、評価した政権が続いた場合、その実績をきちんと評価しない評価団体というのは、かなり無責任で問題だと思います。

田中:評価する側にも責任があるということですね。

工藤:そうです。言論NPOは04年から選挙時、それから選挙が終わった後の政権の実績評価をやって、自分たちが行っている評価の検証もいるのですが、残念なのは、実績を評価する団体があまりないということです。

 今回も私たちは、マニフェスト評価の前に、民主党政権の実績評価を行い、選挙時に国民に約束した公約がどうなったのか、当時の評価と比べて分かるようになっています。

 しかも、評価する団体は中立でなくてはなりません。特定の利害に関係したり、評価団体が高い評価を出した後に、その政権に協力するなんて、ことはあってはいけないのです。しかし、前回の選挙後、そうした団体やシンクタンクもかなりあるのです。

 言論NPOは中立で全ての利害から独立しており、それを外部評価にも出してその結果を公開しています。評価団体のガバナンスも問われなければいけないと思っています。

 そういうことを乗り越えて、有権者に向かい合う政治というのを作らなければいけない。そういう意味で、このマニフェストの役割は非常に重要です。また、それをきちんと評価し、議論するという市民社会がどうしても必要だと思っています。

田中:有権者もレベルアップしないといけませんね。

工藤:知的武装をして、政治に騙されないようにしないといけない。メディアも色々やっていますが、そのための判断材料を私たちも出していきますので、最後まで付き合ってほしいと思っています。

田中:ありがとうございました。



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投稿者 genron-npo : 14:11 | コメント (0)

2012年12月 9日

マニフェスト評価を通じて見えてきたこと
 ~日本の政党は国民に本気で向かい合っているか~

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マニフェスト評価を通じて見えてきたこと
 ~日本の政党は
    国民に本気で向かい合っているか~

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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田中:工藤さん、こんにちは。
工藤:こんにちは。

田中:ちょうど、来週が投票日ということで、恒例の言論NPOのマニフェスト評価の結果の公表を、まだかまだかと待っているのですが、いかがでしょうか。

工藤:一応、さっき完成して、今、製本しているという状況です。100ページぐらいの、きちんとした評価が完成しました。

田中:実は、私も参加させていただいているのですが、前に比べて、何が大変かと言えば、党の数がとても多いということで、単純にマニフェストを読むだけでも大変な作業だったと思うのですが、今回はどのような方法でこの作業をされたのでしょうか。


日本の政党は国民に本気で向かい合っているか

工藤:党も多いし、急に合併したり色々なことがあって、作業が少し混乱しました。ただ、評価をしてみると、明らかに政策の質が悪化しています。僕たちがやっている作業は何なのかと言うと、国民に向かいあう政治をきちんとつくろうということです。マニフェストはそのための道具なのですが、その道具としてきちんと機能しているのか、ということをこの評価に織り込みたいと思いました。

 そこで、私たちは全政党のマニフェストを評価する前に、全政党が国民に向かいあう政治を実現するための、約束を提供しているのか、また、提供する姿勢があるのか、ということを基礎評価として、まず6項目について評価をしました。まさにマニフェストが国民との約束として意識されているのか、それをまず全政党でチェックしようと考えたわけです。例えば、日本の課題に対して、重点的に絞り込んで政策を書いているのかとか、党のガバナンスはどうなっているのか。それから、公約の作り方だけではなくて、公約そのものが、公約と言っても有権者がチェックするためには財源やいつまでにやるのか、目標というものがはっきりしないと評価できないわけです。その1つでもいいから、公約に書かれていて、それが全公約の最低10%ぐらいないといけないと思っているわけです。10%だけ入っていればいいのか、という批判はあると思うのですが、最低10%ぐらいなければいけないということを織り込んで、まず絞り込みを行いました。

 そうしたところ、4党まで絞り込まれました。本来、今言ったようなことは、全政党がクリアしないといけないのですが、ちょっとハードルを上げてしまうと、日本の政党の公約が、ほとんど国民との約束とは判定できない、となるわけです。その基礎評価で4党に絞り込んで、もう1党を加えて、5党の公約をマニフェスト評価の対象にして、評価は財政、経済、原発など11の政策分野について、8つの評価基準で全てを評価し、公表することになりました。

 実を言うとかなり徹夜続きになりましたが、今日、ようやくまとまりました。後、1週間しかないという状況での発表になり、有権者の皆さんには申し訳なく思っているのですが、ようやく発表できることができて、ホッとしているところです。

田中:なるほど。今のお話は、なかなか複雑な内容だったと思いますので、若干繰り返しになりますが、12の政党をすべてに関して、マニフェストを国民との約束として、あるいは国民と向かい合うためのツールとして、外形的なものをチェックし、そこから5つの党に絞り込み、この5つの党については、11の政策について評価を行った。その時の評価の基準が、全部で8つあるということですね。
その5つの党というのは、具体的にどの党ですか。

工藤:12党全部やったのですが、結果として残ったのが自民党、民主党、公明党、未来の党の4つが残りました。ただ、党首の個性もあり、日本維新の会が今回の選挙の中で非常に話題になっていますので、維新の会も評価に加えました。。

田中:では、いよいよ中身についてお伺いしたいのですが、評価結果はどのようになりましたか。

工藤:さっきの8基準で11分野を評価し、それぞれ100点満点で点数を出しました。それを合計して平均点で総合点を出しました。その結果、最高点が39点でした。40点に届かなかったという状況です。新党は相対的にかなり評価の低い結果となっております。

田中:党別に点数を教えていただけますか。


最高点は100点満点で39点

工藤:自民党が39点、民主党が33点、公明党が28点、日本未来の党が7点、日本維新の会が16点という結果となり、非常に差が出ているという状況です。
では、なぜこのような低い点数になっているのか、ということなのですが、まず、1つの大きな要因は評価の仕方の問題です。私たちの評価は、大きく分けて2つの軸で評価をしています。そこに8つの評価基準があります。その2つの軸のうち、1つは約束として外形的な要件が整っているか。例えば、目標とか理念とか実行するための工程とか、政策の体系がきちんとできているか、ということを形式的に評価します。そして、その後、その政策が課題解決の手段として適切なのか、また、その課題としての認識が正しいのか、その政策を実現するための党内運営なり、党の体制があるかということを全体的に評価します。

 まず、1番初めに引っかかったのが、マニフェストの形式的な要件として、マニフェストが約束としてチェックできるような項目が、今回、非常にあいまいになってしまっています。この5党で、公約は685個あるのですが、財源をどうするか、いつまでやるのか、どういう目標があるのか、ということをたった1つでもいいから書いてある項目が、88しかありません。だから12%ぐらいですね。少なくとも国民との約束という点では、どの党も非常に悪い結果でした。

 これは、時価軸でも見ることができます。例えば、自民党と民主党に関しては、2009年の総選挙と、2010年の参議院選挙で同じような評価をやっています。それを見ると、この形式的な公約に対する点数が30、20、16点、どんどん下がっているわけです。つまり、形式的に見ると、マニフェストの形骸化が大きな問題になっているということになると思います。もう1つは、新しい政党が、シングルイシューとまではいかないまでも、全体的な課題解決のプランニングを出し切れていないだけではなく、課題認識自体もあいまいで、政権を争って課題を解決するというレベルには至っていないという状況がありました。
それだけではなくて、公示前に合併したり、党首が書かれている政策を否定していくとか、党内のガバナンス上、大きな問題があった。前の民主党政権もそうでしたが、それを実行する仕組みがないと、我々は安心して信頼できないわけですから、そこでかなり低い点数になってしまう。それが、全体の平均を押し下げているという問題もあります。


日本が直面している課題に集約し始めたマニフェスト

 全政党とも前の政権のようにばら撒いたりするのではなく、日本が直面している課題に問題意識は集約し始めている。例えば、原発・エネルギー、社会保障、経済成長に財政再建、外交・安全保障。それから、一票の格差の是正。今回の選挙は違憲状態で行われるわけですあら、それを政治改革としてどう考えていくのか、という課題に焦点は絞られてきています。これはプラスの点です、ただ、答えを出し切れていない。考える方向を正直に示していれば、私たちの評価としては高くなるのですが、それも非常にあいまいなところがあるので、直面している課題に問題は集約しているのにかかわらず、点数が大きく伸びない。だから、結果として30点台になった。

 ただ、田中さんはご存知のように、今までの評価から見ると、実質的基準は少しだけ良くなっている。それは課題に対する認識が集約し始めているということだと思います。

田中:なるほど。主要な課題にどの政党も着目しているということについても、私もマニフェストを読んでいて、同じように感じたのですが、他方で、政党の考え方の違いみたいなものが、あまりよくわからないという印象を受けたのですが、この点はどうでしょうか。

工藤:確かにその通りです。例えば、エネルギー・原発の問題で言えば、原発リスクは国民のコンセンサスになっている。ですから、原発に依存するようなエネルギーの構成はもう無理だ、ということは政党間ではほとんどコンセンサスになっているわけです。しかし、その中で、脱原発とか卒原発とか、30年後、10年後とか差を見せているように感じるのですが、政策評価をすると、別に10年、20年後に向けて答えを出してたわけではないわけです。これから3年間かけて道筋を考えるとか、再生可能エネルギーの投入を必死でやってみるとか、方向は示したのですが、プランとしてはまだこれから考えなければいけないという状況になっているわけです。

 ということは、答えを出し切れていない中で、威勢のいいことだけをマニフェストに書いてしまうという傾向が出てしまっているわけです。「○○には反対する」とか、「これは脅威だから対応しなければいけない」などですね。ただ、実を言うと、こういう勇ましい言葉を出すのが政党の役割ではありません。政党は国民の中に広がっている不安に対して、適切にその課題を認識して、答えを出すことが政党の役割なのですが、そこにはまだ至っていません。ただ、僕は、すごく失望しているわけではなくて、課題に対して向かい合ってそれに対して競争が始まる、1つの前兆は出てきているのではないかと思っています。しかし、今回のマニフェストは理想からすると、まだ不十分です。しかし、その党の姿勢に関しては、マニフェストを手に取ってみれば、かなり党の違いが見えると思います。ですから、まずその姿勢を見てほしい。何回も選挙をやっていくことで、日本の政治が約束に基づく政治になっていくような可能性は感じます。

田中:まさに、今の工藤さんの評価基準というのは、どういうふうに課題を認識し、論理的に分析をした上で、解決策としての政策、公約を導き出しているかという論理的な思考、知的なものがどこまで組み込まれているかということが論点のように思いました。

 少し、各論についてお伺いしたいのですが、例えば、経済政策、財政再建の辺りは、どのようにご覧になっていますか。


各党の経済政策、財政再建の評価は

工藤:やはり、今、財政再建ということは非常に重要です。これは国際公約でもありますし、世界のマーケットがこれを見ていると思います。しかし、その手順としては、今、景気が後退して、経済そのものをもっと筋肉質にしていく、生産性を上げていくという方向を目指そうというところでは、各党でほぼ同じになっていますが、そのプランニングができていません。マーケットとのコミュニケーションということはわかりますが、で対応することがあります。今、どこかの党首が発言をかなりしているみたいに、いろいろな形でマーケットが変化することがあります。しかし、本当に経済の生産性を上げるためには、その経済構造の基盤をどういうふうにして変えていくのか、ということに踏み込まない限り、日本経済は人口が減少して、労働者が減ってくる状況ですから、生産性を上げない限り駄目なわけです。そこに関する方向感は出ているのですが、答えは十分ではない。一方で、それよりも大型の公共事業で、とりあえず、経済を底上げしなければいけない、という論調がかなり出てきているわけです。ということになると、その裏側で、財政再建という問題が矛盾してしまうので、財政再建の点数が経済成長より小さくなっています。日本の債務残高GDP比が200%を超えて、世界のマーケットがそれを非常に気にしている状況の中で、国際社会に対しても、日本社会に対しても、財政の規律をきちんと守っていくという姿勢をこのマニフェストでも出していないと、非常に不安定な政治を招きかねないと思っています。

田中:結果、どの辺りの点数が高かったのでしょうか。

工藤:私たちの評価では、自民党の評価が高い結果となりました。ただ、評価が高いと言っても50点でした。つまり、自民党の場合は、経済成長をするための規制緩和とか、構造改革とか、それから「日本経済再生本部」をつくって、経済政策を、時間を区切って一気にやっていくという点では、かなり政策の体系が整理されています。ただ、その問題と財政の問題が連動していないと見えるので、財政の評価は低くなっています。

 民主党は、今の政権はやっていることをそのまま書いている状況になっていて、日本が抱えるデフレや円高を克服してやっていくということについて、まだ力不足、まだ説得力がない状況があります。また公明党の場合は、防災をベースにするのですが、公共事業に非常に力を入れていますから、そうなってくると、財政をどうなのかと見ていくと、一番最後のページに少しだけ出ていまして、債務残高比率を安定化させるとあるのですが、どうやって安定化させるのか、ということが全く見えない状況にあるわけです。後、他の新しい政党も、財政再建とかについては、基本的にテーマを言っているだけで、具体的な政策体系になっていない、ということで点数が低くなっています。


消費税を争点にすること自体が問題

田中:工藤さん、税と社会保障の一体改革がこれまで争点になってきたわけですが、今回のマニフェスト評価で、社会保障の政策についてはどうでしたでしょうか。

工藤:基本的に、3党合意で消費税を上げるということになっていて、そのほとんどを社会保障に当てるということになっています。ただ、選挙戦を見ると、消費税を上げる、上げないという話がでてきているのは、私たちにとっては不可解です。確かに、経済条項があって、経済が悪化すれば上げるかどうかを考えないといけないわけですが、上げないという話になってくると、いろいろなことが壊れてしまいます。上げるか上げないか、ということを争点にすることは、僕は非常に問題があると思っています。であれば、社会保障をどうするのか、ということの答えを対案で出すべきだと思います。社会保障の争点はたった1つです。お年寄りが増えて、高齢者がかなり増えた結果、若い世代がそれを支えられない。つまり、現行の年金制度、医療保険制度は持続可能性については、黄色信号がともり、非常に難しいということが私たち国民も分かっているわけです。それに対して、どういうふうに立て直すかということに関しての提案が出ていないわけです。

 逆に、日本維新の会の方が、初めて高齢者の給付制限をするとか、負担や給付の問題に踏み込んでいます。ただ、これはアイデアのレベルです。だから、第一段階として、これは実現する。しかし、中期的にはこういうことをやらないと世代間格差とか、今の社会保障の問題について答えを出せないという説明をすればいいだろうし、例えば、医師の偏在の問題を含めて、どういうところに偏在があって、どうやって解決するのか、ということなど、もっと突っ込んだ議論を期待しています。やはり政策が課題に合わせて深化していない、という感じを受けます。こういうところは、私たちの評価では低くなっています。

田中:興味深いのは、公明党が38点、民主党が37点、自民党と維新の会が29点となっていますが、この差は何でしょうか。

工藤:これは、次元がそれぞれ違います。まず、民主党はまさに政権党でして、彼等は既存の仕組みでは持続不可能で、新しい仕組みを導入しなければいけない、と主張して3年前に政権交代を果たしたわけです。例えば、誰でも受け取れる7万円の基礎年金とかを主張したわけです。しかし、そうした政策を実現するためには、さらに消費税を上げなければいけないことがわかり、結局、失敗したわけです。にもかかわらず、公約にはそのまま出しています。やりたいのであれば、訂正すればいいのに、できなかったことをそのまま出してしまうから評価が低くなるわけです。

 自民党や公明党は、今の問題に関しては的確な視点はあるのですが、元々、今の年金や社会保障の制度は以前の自公民政権の時にできた仕組みなのですね。その矛盾に関して、どうするのかという案を持っていないわけです。だから、それぞれのポジションが違う中で、点数だけが似通ってくるわけです。

 維新の会は、持続可能ではないという問題意識から、積立方式を含めた抜本的なアイデアを出しています。しかし、アイデアの域を出ていない。アイデア的には私たちと同じような認識を持っているところもあったのですが、やはり政策論としては評価は低くなってしまいます。


政党間で差が出た震災対応

田中:原発に関しては、課題は認識されているけど、どこの政党も答えを出し切れていないので、あまり点数差がついていないのだろうな、と拝見しました。他方で、震災対応もマニフェストの表紙ページによくでていますが、ここについては、政党間で点数に差が出ているのですが、この辺りも解説していただけますか。

工藤:私たちは、被災地の市長さんたちにヒアリングをしました。どういうことが、今問題なのか、ということになった時に、現場の課題はスピード感がないということでした。今の復興庁を含めた動き方が遅い。復興庁そのものに特別な権限があるわけではなく、各省庁のバランスを調整する仕組みの中で、復興計画を進めている。そのために、現行法の調整でやるという状況になっているわけです。すると、いろいろな問題がでてくるために、その調整で手間取る。課題に対して、スピードが追いついていないのですね。それから、がれきの処理についても広域的にどこかに移転するということがあるのですが、地域内にきちんとやって早く移行しようとか、土地の収用とか高台移転とか、もっと強制的にやってくれないとなかなかスピード感が出ない、ということを地元の市長さんたちは言っています。こうした課題に、自民党の公約は体系的に取り組もうとしています。被災地の事情を知らないような公約も目につきます。それでも、一般論の中で復興こそが日本にとって重要である、と主張する党もあります。ですから、震災対応については、差がついてしまったということです。

田中:今のように、解説を頂きながらマニフェストの採点表、あるいは中身を見て行くと、確かにみんな同じような政権公約、マニフェストに見えますが、中身は随分違うということが分かってきました。来週、いよいよ投票日になりますが、有権者のための言論NPOですから、最後に有権者の人達に一言お願いします。


今度の選挙では、有権者が問われている

工藤:私たちが一番気にしているのは、「選挙とは何なのか」ということです。それは、やはり有権者が自分達の代表を選ぶということなのですが、本当にそういう気持ちで、僕たちは向かい合っているのか、と思います。やはり代表を選べないということで、悩んでいる人達も多いと思います。少なくとも有権者主導の政治ということを、理解している政党でないと、いくらその人に期待しても、民主主義ということが深まらないと思います。

 この政策の中身に関しては、田中さんがおっしゃったように、よく読めばある程度、見えてきます。本来なら、一般の人達でもわかるマニフェストをつくらなければいけないのですが、公約の書き方だけでも政党の違いが見えてきます。なので、今回は、自分でマニフェストを手にとって欲しいと思います。意外に、そこに政党の違いがあるので、そこから政党が今、どういう状況にあるのか、ということを考えていただいて、自分達がこれは本当に自分たちの代表になれるな、という政党や政治家を自分達で見つけるしかないと思っています。その手がかりは、マニフェストの中にあると思っているわけです。多分、今回だけで答えをだすのではなくて、これから何回もこうした選挙での取り組みは続くと思います。つまり、課題解決に対して、日本の政治が国民を代表して競争できるような社会をつくるためにも、マニフェストが必要なのです。我々もまだまだいろいろな情報を提供していきたいと思いますので、そういう風なことを考えながら、今度の選挙に向かい合って欲しいと思います。

田中:各政党のマニフェストはホームページからダウンロードできますが、合わせてぜひ言論NPOのマニフェスト評価採点表、あるいはその詳細説明版もご覧頂ければと思います。

工藤:最後に、現在、私たちは政治家一人ひとりにアンケートを行っています。ギリギリ間に合えば、政治家が何を考えているか、ということについても公表していきたいと思いますので、言論NPOのサイトを見ていただければと思います。

田中:ありがとうございました。



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投稿者 genron-npo : 23:34 | コメント (0)

2012年12月 3日

有権者から政治にマニフェスト逆提案を

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有権者から政治にマニフェスト逆提案を

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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「白紙委任しない」の賛同者は千人超えたが、まだまだ足りない

田中:工藤さん、今晩は。いよいよ、選挙に向けた動きが明らかになってきたのですが、以前から、言論NPOでは、「私たちは政治家に白紙委任はしない」という呼びかけを行ってきています。その賛同者が1000人を超えたということですが、今後、どのように発展していくのでしょうか。

工藤:1000人超えたことに本当に感謝していますが、まだまだ数が足りないと感じています。やはり、より多くの人達に、僕らの呼びかけに賛同して欲しいと思います。今の日本の政治に対して、有権者が怒らなければいけない。約束しても途中で変えてしまう。変えるのはいいのですが、何の説明もない。今日も、衆議院の予算委員会を見ていたのですが、変更が当たり前みたいになってしまい、政党が国民に向かい合うという視点を全く感じない。

 しかし、民主主義というのは、まさに有権者が政治を選ぶ仕組みですから、ここで有権者が「これからは政治家に騙されたくない」し、「自分の判断で政治を選んでいく」ということで、全国の多くの人達が名乗りを上げていかないといけない。さもないと、政治側からすれば、全く怖くない。だから、この呼びかけにはやはり数が重要で、いろいろな人達が発言する輪がどんどん広がることによって、政治側が「有権者の声を聞かなければいけないな」と思うようになってくれたらいいな、と思っているわけです。それがゴールではなくてスタートなのです。

 選挙がいよいよ始まりますから、我々は次に向けて準備を開始しなければいけない。そう考えているところです。



田中:確かに、そろそろ選挙が行われるかな、という感じが強くなってきたのですが、言論NPOは、選挙に向けてどのような活動を行っていく予定ですか。


約束になっていなかったマニフェスト

工藤:まず、マニフェストというものが大事です。これは、私たちが有識者を対象に行ったアンケート結果からも明らかでした。確かに、民主党のマニフェストはいい加減だったし、ほとんど実現できなかったけれど、しかし、国民に向かい合う政治をやっていく、国民との約束に基づいて政策を、責任を持って実行していく、ということはどうしても大事なのです。しかし、マニフェストがきちんとした形で有権者との約束になっていないと、私たちは誰に投票すればいいのかが分からない。だから、まず、第1に政党側に、「マニフェストをこういう形で提起して欲しい」ということを呼びかけようと思っています。

 それだけではなくて、今、私たちがどうしても考えなければいけない政策を7つぐらいに絞り込んで議論を始めています。それをベースに、政治家が必ず選挙で国民に明らかにしなければいけない点を列挙して、それを政党だけではなくて、政治家自身に問いかけようと思っています。そして、その内容を全部、有権者に公開していく。つまり、我々は、あくまでもそのチェックをしていかなければいけないということです。そういうことをやるための準備を始めました。

田中:言論NPOのマニフェスト評価は小泉政権の第1期から行われてきましたけど、今までより一歩踏み込んだ感じがしますね。これまでは、政党が出したもの、あるいは政党が行ったものを有り体に評価してきましたが、これからは、マニフェストのつくり方、それから、政策で押さえて欲しい点について、こちら側から提示するということですね。

政治と有権者の間の緊張関係を作り直す

工藤:そうですね。政党政治がきちんと機能して、政党の中でガバナンスがしっかり働いて、政策を決めて、国民に提起して、その実行に対して責任を持つ、という循環が政党の中にあれば、我々は政党のマニフェストを評価するだけでよかったのです。しかし、自民党政権の時にもあったのですが、民主党政権を見ていると、政党が国民に約束をしても政党の中で意見が違う。そういう中で十分に政策の実行ができないということになってくると、政党のガバナンスそのものが非常に脆弱だということになります。そういう状況で選挙になると、我々有権者は、政党の公約を信じて投票しても、それを実現できないということになる。それでは自分達の1票が活かされません。

 なので、私たちは、今の日本が抱えている課題に対して、政治は何を約束するのか、ということを逆提案していかなければダメです。そういう形で、日本の政党政治と有権者との間の緊張関係をもう一度つくり直そう、ということを考えているわけです。

田中:わかりました。政策の質と共に、先程おっしゃいましたが、政党のガバナンスについても問いかけたいということですね。

工藤:そうですね。やはり、日本の政治は答えを出さなければいけない。アジアでは尖閣問題があり、日本の財政も非常に厳しい状況になってきました。今の国会論戦も、今の政党が出している政策も、何をやりたいとか、何の目標を実現するために、どういう方法を用いてやっていくのか、ということが、アウトカム、つまり実現した後の姿を明示した形での問いかけには、まだ全然なっていません。こういう状況では、有権者は政治を選べないから、皆さん困っている。それを変えていくことが、今回、言論NPOの大きな役割ではないか、と思っているところです。

 11月29日に言論NPOの11周年パーティーがあるのですが、そこに向けて、有権者が怒っていく。今度からは自分達で政策を考えるぞ、という呼びかけの輪をどんどん広げたいし、その次には、そういう風なアクションに踏み出していかないといけないかと思っています。


政党の議論をすべて有権者に明示する

工藤:今度の選挙で、言論NPOは、日本の民主主義を活かすために徹底的に取り組もうと思っています。

田中:そういった慌ただしい中で、先程もおっしゃいましたが、11月29日に10周年パーティーではなく、11周年パーティーをやるとのこと。「言論NPOと次の日本を語る会」を開催するそうですが、どんな催しになりますか。

工藤:日本の将来や、民主主義の状況、それから世界の中で日本が何をすればいいか、ということを、きちんと考えていかなければいけない局面にきています。ですから、言論NPOは、そういう議論のプラットフォームとしての役割をきちんと果たしたい。そのためには、我々がいろいろな人達と議論したり、言論NPOそのものがもっと大きなものになっていかなければいけない、と思っています。

 日本の民主主義を強いものにするためにも、我々は皆と対話するような場を作りたいのですね。今度のパーティーにはいろいろな人達が参加する予定になっているので、そこでみんなと意見交換ができないかな、と思っています。

田中:参加型をめざしているということですね。
工藤:そうですね。
田中:お忙しいと思いますが、がんばってください。期待しています。


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⇒ 言論NPO11周年パーティー「言論NPOと次の日本を語る会」概要はこちらから

投稿者 genron-npo : 11:00 | コメント (0)