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【vol.49】 塩崎恭久×林芳正×渡辺喜美『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか(1)』

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.49
■■■■■2003/10/07
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●INDEX
■ 座談会 塩崎恭久×林芳正×渡辺喜美
  『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか 第1回』

■ 論文『英国にはマニフェストをベースにした「サイクル」がある 最終回』
  藤森克彦 (富士総合研究所 主任研究員)

■ アンケート『マニフェストおよび政策評価についてのアンケート vol.4』


●TOPIX
■ 「マニフェストとその実行過程」小川是×保岡興治×村松岐夫×曽根泰教

■ 「マニフェストで日本の政治は変わるか―政治ジャーナリズムの報道対応」
  木村伊量×菅沼堅吾×芹川洋一×山田孝男×牧野義司


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■ 座談会『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか 第1回』
  塩崎恭久(衆議院議員)、林芳正(参議院議員)、渡辺喜美(衆議院議員)
                       聞き手 工藤泰志・言論NPO代表
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次の総選挙の争点はどう描かれるのか。自民党の3人の政治家が今回の総裁選や小泉
改革を評価し、マニフェスト型政治を巡る議論に参加した。派閥政治についての見解
や日本の新しいガバナンスのあり方に加え、マニフェスト政治の実現に必要な条件
や、今後争点とすべき政策の柱について、3氏それぞれの主張をぶつけ合う。


工藤 私たちは政党の政権公約の評価作業を行っていますが、自民党の「若手」議員
   の皆さんにも考えを伺えないかと思いました。先の総裁選挙の総括に加え、11
   月に予定される総選挙では何を争点にすべきか、さらにマニフェスト型の政治
   を目指すためにはどんな課題があるのか。本音ベースで話していただければと
   思います。

   まず先の総裁選挙についてです。小泉首相は結果として派閥を解体させ、「自
   民党を壊した」との解説がなされていますが、そのような評価をどう見ていま
   すか。同時に気になるのは、自民党のマニフェストの原型がこの総裁選で描か
   れたかどうかです。


●今回の自民党総裁選挙を総括する

塩崎 総裁選挙では選挙なしで小泉再選という話すら可能性としてあったと思います
   ので、その意味では、総裁選挙はやってよかったというのが最初の感想です。
   ただ、中身を見てみると、渡辺喜美さんを始め、若手から誰かを出そうという
   話があったのにそれが実現しなかった。この背景には、小泉改革はやりすぎで
   はなく、むしろまだ足りない、そうした立場から議論が必要だという思いが
   あったわけです。小泉総理はやり過ぎで、その足を引っ張るという議論しか自
   民党という政党はできないのかと言われる。そう見られるのは本意ではないの
   で、さらに改革を加速する、という立場から球を打っていく議論が必要だっ
   た。総裁選挙ではそれが抜けてしまったことが非常に残念だと思います。

   マニフェストの公約を選択するということでは、候補者がそれを意識したとい
   うことでは方向としては非常に良いと思いますが、世界的なレベルで見たマニ
   フェストと呼ばれているものと比べて見ると、内容は現実的ではなく、具体性
   にも欠けており、これでは十分な約束にならないというものが多かった。た
   だ、マニフェストの提示なくしては日本の代表には成り得ないという確認が国
   民の中でも改めて進んできていることについては、日本の民主主義として若干
   の進歩ではないかと思います。

渡辺 私は、かねてから第三の道を模索してきました。小泉改革対抵抗勢力というの
   はいわば劇場政治的な構図で、現実にこの国に必要な対立軸からはピントが外
   れている。小泉路線というものは、実は20年ぐらい前の発想で政治的な優先順
   位づけが行われているものではないかと考えています。中曽根内閣の頃に民営
   化、規制緩和、競争促進、財政再建というモデルで日本を再生しようとした。
   その発想が小泉路線にも極めて色濃いのです。一方、亀井静香さんは40年ぐら
   い前の発想をしていて、それは東京オリンピックが終わった後、日本が不景気
   になって建設国債を発行して株価も持ち直した時期の発想と同じように見え
   る。

   いずれにしても、この60年代モデルや80年代モデルでは日本の再生などでき
   ないというのが、私の基本的な認識です。今の日本は、デフレと過剰債務が悪
   循環を起こして、長期にわたる低成長経済に陥っているわけです。そこでは需
   要と供給のミスマッチが極めて膨大になってしまっている。総裁選で出された
   議論は、需要をつけるかつけないかという議論だけで、過剰な供給サイドをど
   う削減していくかという踏み込んだ議論は、高村さんが少しだけ話された程度
   で本格的な議論がなされなかった。私も小泉総理に質問する機会がありました
   ので、率直に聞いたのですが、ほとんどノーアイデアでした。これは戦略がな
   いというよりも、問題を先送りすることしか小泉総理は考えていない。名目2
   %成長を達成するのに財政による追加需要政策を採らないと言う。だとすると
   日銀マネーを今よりも供給することになり、事実上のインフレターゲット論が
   もはや既に採用されている状況だと私は思います。結局、株も上がるが、長期
   金利も上昇してしまうということになり、それが既に起こり始めている。つま
   り、過剰債務や不良債権という前門のトラが解決されていないときに、長期金
   利上昇という後門のオオカミが出てきて、トラとオオカミが一遍に暴れ出すシ
   ナリオが現実のものになってしまう可能性が出ているわけです。

   こうした場合には、日本経済の病気がさらに悪い段階に進んでしまうことにな
   りかねないため、やはり小泉改革はピント外れだなという感じがしています。


                          ──次号へつづく──

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■ 論文『英国にはマニフェストをベースにした「サイクル」がある 最終回』
  藤森克彦 (富士総合研究所 主任研究員)
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●マニフェストを実現させる体制づくり

政権を獲得すると、内閣がマニフェストの実現に責任をもつ。第一次ブレア内閣の顔
ぶれをみると、「ビッグ4」と呼ばれる党の実力者はそろって入閣した。このため、
内閣と与党は一体となって構造改革を推進する体制になる。また労働党のマニフェス
トの作成には、党幹部が直接関与し、しかも総選挙前に党員から承認を得ている。こ
れも、党内に「抵抗勢力」を生まない役割を果たしている。
また、年に一度、内閣改造が行なわれるが、その際の重要な基準となるのが、マニ
フェストの進捗(しんちょく)状況である。進捗状況が悪い大臣は、首相によって更
迭される。いわばマニフェストの進捗状況が各大臣の成績簿となっている。

ちなみに日本では、政治家と官僚の関係において、「官主導」となってしまう点が問
題にされている。英国でも同様の傾向はあるが、日本との比較においては、英国の大
臣がリーダーシップを発揮して、官僚をコントロールしている。これは、英国の大臣
がマニフェストを携えて役所に入っていくためだと考えられる。大臣は、官僚にその
設計図を実現するように指示を出し、官僚組織を使っていく。例えば、七九年の総選
挙で、サッチャー保守党は従来のケインズ主義的経済政策を放棄して、通貨供給量を
管理するマネタリズムをマニフェストに掲げて政権を獲得した。政権交代に伴う政策
の大幅な変更によって大蔵省は多忙を極めたが、当時の大蔵省事務次官は「ここにい
る(大蔵省内の)すべての者はケインジアンです。しかし政府の方針に沿うよう全力
を尽くしました」と語った。大臣がリーダーシップを発揮できるのは、「なすべき政
策の設計図」を予め自分達で用意しているためである。


●民意を反映しながらのマニフェストの法案化

選挙で議論されたとはいえ、マニフェストの内容はいまだ政策の大枠にすぎない。大
臣の指揮の下、官僚の協力を得ながら法案化する。ここで注目したいのは、マニフェ
ストの内容を法案化する過程でも、「緑書」「白書」と呼ばれる政策提案書が発表さ
れ、民意を反映する仕組みがある点だ。

緑書とは、議論のたたき台となることを目的にした政策提案書の草案である。例えば
年金制度改革であれば、改革の背景、内容、年金の将来像などを内容とする122ペー
ジにわたる緑書が社会保障省から発表され、その後、金融機関、非営利法人(NPO)、
大学研究者、シンクタンクなどから意見書が提出された。こうした意見書も報道され
るので、国民は対立点などを把握することができる。

白書は、集められた意見を参考に修正された提案書であり、法案に近い文書となる。
個別政策ごとに出される提案書であり、年に一度発表される日本の白書とは異なる。

さらにブレア政権ではマニフェストの進捗状況について「年次報告書」を発表した。
例えば99年に発表した年次報告書によれば、マニフェストに掲げた177の公約のう
ち、90の公約が既に達成、85が現在進行中、二つが未着手という状況であった。

そして次の総選挙前になると、与党はマニフェストがどの程度達成されたかを発表す
る。例えばブレア労働党は、入院待機患者数は12万4千人減少したので、「10万人削
減」という公約を達成したと主張した。これに対して保守党は、診察を待つ患者数は
逆に増加したと批判した。また、マスコミやシンクタンクも、マニフェストの達成度
について検証を行なった。

有権者はこのような議論から、政権党のマニフェストの達成状況を知る。そして各党
が示す新しいマニフェストも考慮しながら支持政党を決めるのである。


●選挙で問う体制整えよ

このように英国には、「マニフェストの提示」から次の総選挙前の「達成度の検証」
まで一連のサイクルがあり、これが構造改革を推進する基盤になっている。

日本にはこのサイクルがない。日本の政党が掲げる公約の多くは具体性に乏しく、構
造改革の設計図になっていない。このため個別政策について政党間の政策論議が深ま
らないのである。

また、達成度の検証もなされない。結局、国民はフリーハンドで政策決定を政治家に
委ね、さらに政治家は官僚に委ねるという構造がある。

構造改革という「大手術」をなすには、国民が十分な情報を得た上で、治療法を選択
できる体制にすることが必要だ。そのためには、次期総選挙で各党がマニフェストを
提示して、政党間で活発な論争を展開することが必要である。また、政府には、個別
政策について、緑書、白書を発表して、民意を反映しながら改革を進めること求めた
い。

マニフェストには、政党を政策理念、基本原則の下に結集させると共に、政党の政策
立案能力を高める効果も期待できる。マニフェストを突破口にして日本の政治構造を
変えていくことが、今日本に求められている「もう一つの構造改革」である。


●上記の記事はウェブサイトにも掲載されています。
http://www.genron-npo.net/debate/contents/030926_a_01.html

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■ 言論NPO政策評価委員会
  アンケート『マニフェストおよび政策評価についてのアンケート vol.4』
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言論NPOでは、政策評価プログラムの一環として、会員・一般の方々から広くアン
ケート調査を実施します。調査は全5回(予定)に渡って行われ、結果は今後の議論
形成や、「政策フォーラム」「ネット会議」の連動コンテンツに反映されます。


──道路公団問題について

 Q13 道路公団の民営化問題に対してあなたはどうのように評価していますか。


──不良債権処理と産業再生について
小泉内閣は、2001年6月の骨太方針第一弾で不良債権問題の解決を日本経済再生の第
一歩と位置付け、不良債権の最終処理(オフバランス化)促進の数値目標を設けまし
たが、この間不良債権残高は一段と増加したことから、2002年10月には竹中新金融
担当大臣の下で策定された「金融再生プログラム」(注)の実施を通じて2004年度末ま
でに大手銀行の不良債権比率を2001年度末の8.4%から2004年度末にはほぼ半減さ
せることを目標に掲げ、不良債権問題の2年以内の終結を目指しています。

また、産業・企業再生については、不良債権処理と一体的に進めるとの基本方針の
下、RCCの機能強化、産業再生法による支援に加えて、産業再生機構の創設による取
り組みが始まっています。

(注)金融再生プログラムでは、(1)金融機関の資産査定の厳格化や繰延税金資産の
 算入の適正化、公的資本注入行に対する経営のガバナンス強化を柱とする金融規
 制・監督の強化、(2)産業再生機構の創設による企業・産業再生の枠組み構築、
 (3)新法制定による公資本注入制度の創設検討が謳われています。


 Q14 あなたは、過去2年余りの小泉内閣の不良債権問題への取り組みを
    どう評価しますか。


 Q15 2003年5月のりそな銀行に対して預金保険法102条が発動され、
    2兆円の公的資本投入による実質国有化がなされましたが、
    あなたはこれをどう評価しますか。

 Q16 金融再生の裏側としての産業再生に対する小泉政権の取り組みを、
    あなたはどう評価しますか。


──経済活性化と規制改革、雇用創出への取組みについて
小泉内閣は、骨太方針第二弾で6つの戦略と30のアクションプログラムから成る「経
済活性化戦略」を打ち出しました。その主な対象分野は、科学技術政策、ベンチャー
育成、IT、人材育成・教育、税制改革、競争政策・規制改革、司法制度改革など多岐
にわたっています。また、小泉政権は規制改革を経済活性化の手段と位置付け、「構
造改革特区」をスタートさせています。さらに、雇用面ではセーフティーネットの拡
充の他、新規分野を含むサービス分野において5年間で530万人の雇用創出を図るこ
とを目標に掲げています。

 Q17 このような小泉内閣の経済活性化および規制改革、
    雇用創出への取り組みを、あなたは全般的にどのように評価しますか。

 Q18 「構造改革特区」をはじめとする小泉内閣における
    規制改革への取り組みを、あなたはどう評価しますか。

 Q19 雇用の創出に対する小泉内閣の取組みについて、
    あなたはどのように評価しますか。


○回答はこちらでお願いします。
https://www.genron-npo.net/forum/policy/031001.html

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●TOPIX

■ 座談会「マニフェストとその実行過程」
  小川是(日本たばこ産業(株)代表取締役会長)×保岡興治(衆議院議員)×
  村松岐夫(学習院大学法学部教授)×曽根泰教(慶應義塾大学大学院教授)
http://www.genron-npo.net/debate/contents/031002_c_01.html


■ 座談会
  「マニフェストで日本の政治は変わるか―政治ジャーナリズムの報道対応―」
  木村伊量 (朝日新聞)×菅沼堅吾 (東京新聞)×芹川洋一 (日本経済新聞)×
  山田孝男 (毎日新聞)×牧野義司 (ジャーナリスト)
http://www.genron-npo.net/debate/contents/030930_c_01.html

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  ┏━━━━━━━━━━━━ 会員募集 ━━━━━━━━━━━━━┓
   言論NPOは、ウェブサイト以外に、出版、政策フォーラム、
   シンポジウムなど、多様な活動を展開しています。

   ●言論NPOの3つのミッション
   1. 現在のマスコミが果たしていない建設的で当事者意識をもつ
     クオリティの高い議論の形成
   2. 議論の形成や参加者を増やすために自由でフラットな議論の場の
     形成や判断材料を提供
   3. 議論の成果をアクションに結び付け、国の政策形成に影響を与える

   この活動は、多くの会員のご支援によって支えられています。
   新しい日本の言論形成に、ぜひあなたもご参加ください。
   http://www.genron-npo.net/guidance/member.html
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