【vol.208】 総選挙最終盤でマニフェストを考える(2)

2009年8月25日

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■■■■ 言論NPO ニュースメールマガジン
■■■■ Vol.208 (2009年8月25日発行)

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【特集】2009年総選挙を考える(2)

みなさまいかがお過ごしでしょうか。
本日のメールマガジンでは、前回お届けした代表 工藤のメッセージの第2話を
お送りします。
メディアでは、あたかも選挙の結果が出てしまったかのような報道が行われて
いますが、「日本にこそ根本的な変化が必要」と主張する工藤は、真に問われて
いるのは私たち有権者であり、日本の民主主義そのものではないかと語っています。

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★INDEX★
【1】 衆議院選挙最終盤―工藤が語ります(第2話)
【2】 「マニフェストの読み方」を解説します
【3】 「自民党×民主党 政策公開討論会」をもう一度見てみませんか
【4】 マニフェスト評価専門サイト「未来選択」はもうご覧になりましたか?

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【1】 衆議院選挙最終盤―工藤が語ります(第2話)
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聞き手:田中弥生氏(独立行政法人大学評価・学位授与機構准教授)

●今回の選挙は本当の「変化」へ向かう第一歩
田中:
工藤さんは支出計画という言い方をされましたけれども、政府が何でもサービスを
提供してくれる社会なのか、私たちが自分のことは自分でやっていかないといけない
社会になるのか、そのあたりが、個別の政策を見ていても、どっちなんだろうと。
見えてこないですよね。

工藤:
今の田中さんのおっしゃったことで言うなら、日本の政治はぜひそういう説明をして
ほしいですね。全ての政党の公約を見ると、選挙という事情もあるでしょうが、
社会保障の機能強化に向けて政府が責任をもつという社会もあるわけです。
ただその場合は、負担の議論を政治は避けてはいけない。自分でやれというのであれば、
では政府の役割は何か。政府は最低限何を行うのかと。どちらも説明不足です。
これでは、国民は自分たちの将来について安心できないし、日本の政治がどういう進路を
描こうとしているかわからないわけです。
私は政権交代に反対というわけではありません。国民は本格的な変化を求めています。
しかし、政権交代はあくまでも手段であって、政権交代の結果、どういう社会に変えて
いくのかが大事です。そのための合意の形成こそが、選挙の中で行われるべきなのです。
政治の約束が有権者との間で問われる。そういう緊張感のある政治に変えていかなければ
ならない。今回の選挙がその第一歩だとするならば、有権者自身が、日本の未来を自分
たちで考えるという覚悟を固めないと、本当の政治の変化は始まらないと思います。
そのためにも、いい加減な約束を見抜けるような眼力が、有権者側にも求められている。

田中:
変化とおっしゃいましたが、「チェンジ」という言葉は、日本でも特に政治家の間で
流行っている言葉だと思いますけれども、目指すべき将来像があっての変化ですから、
まだそこまでには至っていないということですよね。

工藤:
そうです。言論NPOは今年初め、麻生政権の100日評価を行った際に、有識者を対象に
アンケートを実施しました。その結果を最近思い出したのですが、「今の日本の政治状況を
どう考えているか」という質問に対して、最も多かったのは「既存政党の限界がはっきりし、
新しい政治に向かう過渡期にある」という回答で、半数以上ありました。
それから「政権交代によって日本の政治を一度壊さないといけない」という回答も半数近く
ありました。つまり、今の2つの政党の中で、「片方がだめだからもう片方」という二大
政党が実現しているというような判断はほとんどありません。私は、この有識者の声が
今の日本の政治状況を見事に説明していると思います。今回の選挙で政権が変わっても
それは始まりに過ぎないのであって、これから日本の政治がどう変わっていくかという
ことが問われる局面になっていると思います。
そのときに一番重要なのは、私は今年の正月に「日本の根本的な変化が必要だ」と言い
ましたが、そうした変化、つまり「チェンジ」を行うのは有権者だということです。
有権者なり市民が、自ら未来を選択して政治を判断するというふうに頭を切り替えないと
いけない。政治が提供するものをただ選ぶというだけでは、政治は変わらない。
日本の未来が問われているときに、政党がサービスだけを競っている。これでは、政治家は
「有権者はサービスにしか関心がない」と考えているとしか思えない。
つまりサービスしか票にならない。しかもサービスには必ず負担がある。それを明らかに
しないで、「今回の選挙では負担は言わなくていい、将来世代が考えればいい」という
のでは、有権者がバカにされていると言っていいと思う。
有権者も、そうした扱いでいいのかを考える必要があります。自分たちで自分たちの未来や
国の未来を判断できるような力をつけないといけないし、そういう気迫が日本の政治を強く
していくのだと私は思っています。

田中:
そうすると、「サービスはおねだりをするけれども負担はしたくない」というのではまさに
55年体制から変わっていないということですから、それは政治家も発想が変わっていないし、
有権者も下手をするとそこに引っ張られてしまうということですね。

●問われているのは日本の民主主義
工藤:
私が気になっているのは、日本の政党は民主主義の弱いところを微妙に突いてきていること
です。それを日本のメディア報道があおってしまうという構造もある。民主主義の弱さと
いうのは基本的に、選挙が人気投票になってしまう可能性があるということです。
でも政権選択の歴史的な局面で、人気投票の域から出られない政治でいいのか、ということ
を考えないといけません。
人気を得るためには、負担よりもサービスのほうがいい。だから負担は隠してします。
それから、誰か敵をつくり、それをあおることで人気を得ようとする。日本の官僚主義と
いうのは、確かに目に余るものがありますが、官僚だけを批判すれば何かが変わるわけでも
ない。既得権益を改善するなら、政官財、全てのしくみが問われることになります。
政党のあり方、業界と族議員との関係、政治とカネの問題、官僚の天下りの問題、全てが
日本の政治の中では、まだ構造化している部分が残っているのです。
でもそういうことを抜本的に変えるために政党が競おうとしているわけではない。
ただ、官僚の天下りを問題にしているだけです。
2005年の選挙のときも小泉劇場というものがあり、刺客を送ったりしていました。
あのときと同じような選挙のパターンになっているところが今もある。
民主主義の弱さが突かれているわけです。でも、そういうところで決まる民主主義は非常に
薄っぺらです。もっと強い民主主義をつくらないといけない。政策をきちんと見て判断して、
有権者が日本の政治を変えていく。それがマニフェスト政治の眼目だったわけです。
今回の選挙は、日本の未来にとって第一歩にすべきです。そのためにも、この選挙を、
日本の民主主義をもっと強いものにしていく契機にしなくてはならない。
選挙まであと一週間。日本の政党には日本の将来の課題から逃げないで説明してほしい
のですが、でも本当に問われているのは私たち有権者自身の方だと、私は思っています。
私たちはこの国の未来から逃げられるわけではない。そうであるなら、有権者が日本の
政治をもっと良いものにしていかないといけない。日本の政治を本当に変えるには、
そうした覚悟が必要だと思います。これからまたこの一週間で政治の議論は進化していくかも
しれませんが、この間の選挙戦を見て痛感したのは、そういうことです。

田中:有権者自身も力をつけないといけないということですね。

工藤:
有権者がこれからの未来を決めるのです。だから私たちはこの時代から逃げてはいけない
と痛感しています。このような状況では、どこの政党に投票すべきか、内心悩んでいる人も
多いと思います。しかし、この一票から始めるしか方法はないのだと、私は考えています。

田中:今日はありがとうございました。

(完)

▼動画を見る(工藤ブログへ)
 → https://www.genron-npo.net/kudo/podcasting/003610.html

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【2】 「マニフェストの読み方」を解説します
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言論NPOでは独自の評価基準に基づいて政党のマニフェストを評価しています。
全8項目の評価項目は新サイト「未来選択」で公開されていますが、マニフェスト
が真の「約束」となるためには何が必要なのか、代表の工藤自らが「マニフェスト
の読み方」を解説します。

「マニフェストを評価するには、2つの視点からマニフェストを読み込む必要が
あります。ひとつはマニフェストが約束としての体裁を整えているのか、ということ
です。これを私たちはマニフェストの『形式要件』と呼んでいます。
しかし、より重要なのは中身を吟味する、つまり、政策としての妥当性を判断する
ことです。つまり、マニフェストを体裁ではなく、実質的に評価するということに
なります。この妥当性についても、基準を明らかにしたうえで評価をしています。
たとえば、政策目標と手段の整合性や、目標自体がその課題解決としてふさわしいのか、
などかなり専門的な視点がそこでは必要になります。
その点で言えば、『未来選択』はまず政策を評価するにあたっての『視点』を明らかに
し、そのうえで評価の結果を公開しています。
つまり、言論NPOの評価は、政策の背景がよくわかるようになっているのです。
背景を理解したうえで、皆さんも一緒に評価を考えてみよう、という構成になって
いるわけです。」(一部抜粋)

▼工藤による解説の全文はこちらからご覧になれます(工藤ブログへ)
 → https://www.genron-npo.net/kudo/podcasting/003609.html

▼言論NPOの評価基準をみる
 → http://genron-manifesto.net/index.php?option=com_content&view=article&id=424:20090809kijyun&catid=40:evaluationstandard&Itemid=111

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【3】 「自民党×民主党 政策公開討論会」をもう一度見てみませんか
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言論NPOでは、評価作業の一環として、政党との討論会や、有識者との座談会、
アンケートなどを行っており、評価結果だけではなく、これら評価に至るまでの
プロセスを全て公開しております。

7月初めに開催された「自民党×民主党 政策公開討論会」では、両党から政調
会長代理を始めとする政策責任者や閣僚経験者、ネクスト大臣ら19名が参加し、
「将来ビジョン」「社会保障」「外交・安全保障」など9テーマをめぐり
5日間にわたって、白熱した議論が行われました。
選択の日を前に、どの党に投票すべきか、各党の主張をどう判断すればいいのか、
迷っている方も多いのではないかと思います。
自民党と民主党の主張の違いはどこにあるのか。もう一度見てみませんか。

・討論会1日目 テーマ:「党の将来ビジョンと政権担当能力」
<出席議員> ※肩書きは当時のものです
園田博之氏(自民党政務調査会長代理)
長妻昭氏(民主党政策調査会長代理)
福山哲郎氏(民主党政策調査会長代理)

▼議論の内容をみる
 動画でみる→ https://www.genron-npo.net/0907/003521.html
 文章でみる→ https://www.genron-npo.net/0907/003510.html

▼2日目以降の議論内容もこちらからご覧になれます
 → https://www.genron-npo.net/manifesto/news/003496.html

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【4】 マニフェスト評価専門サイト「未来選択」はもうご覧になりましたか?
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言論NPOでは今月より、マニフェスト評価専門のサイトである「未来選択」を
立ち上げました。
このサイトでは言論NPOの評価基準や評価結果だけではなく、政治家との討論会や
座談会での議論内容など、評価に至るプロセスが政策分野ごとに全て公開されています。

8月30日の、皆さんの「選択」にぜひお役立てください。

▼「未来選択」はこちらからどうぞ
 → http://genron-manifesto.net/

▼「なぜ『未来選択』なのか」―工藤の発言を読む
 → http://genron-manifesto.net/index.php?option=com_content&view=article&id=471:2009-08-13-12-16-55&catid=41:kudo&Itemid=82

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  今後の改善に役立ててまいりたいと思います。
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