日本の課題を考える

【論文】ポピュリズムと小泉政治

このエントリーをはてなブックマークに追加

yamazaki_m020222.jpg山崎正和 (評論家)
やまざき・まさかず

1934年生まれ。56年京都大学文学部哲学科卒業。京都大学大学院美学美術史学博士課程修了。関西大学、大阪大学教授を経て、現在東亜大学学長。劇作から文芸評論、社会論まで活動領域は広範囲。主な著書に『柔らかい個人主義の誕生』『大分裂の時代』『歴史の真実と政治の正義』等。

要約

「ポピュリズム」には共通した性格がある。人々の怨恨、嫉妬を刺激して、その支持に乗って、より恵まれた階層を攻撃するという形をとり、参加民主主義というか、草の根階層の声を政治に直接反映するという形式をとることだ。こうした歴史的な経験から、ポピュリストの政治手法をまとめると以下のようになる。

■ ポピュリストに共通した政治手法

第1に、彼らは民衆の感情を刺激し、理性よりも情念に訴えるという形をとり、しかも、その情念は反感、あるいは嫉妬という点に絞られ、その対象として敵を必要とする。

第2に、ポピュリストが勝利をおさめていくとナンバーツーたたきという形をとる。そして、ポピュリズムが勝利をおさめたうえで、法的、制度的な改編を行って、勝利の結果を永久化するとファシズムになる。

第3に、ポピュリズムはその形成過程において、その目的を実現するための手続き、過程、制度というものを無視するやり方をとり、あらゆる制度、手続きというものを、むしろ目的の敵として攻撃する。

■ 民主政治とポピュリズム

このポピュリズムというのは、皮肉なことに民主主義、あるいは民主的政治制度の鬼子だともいえる。民主主義というものに、本質的な問題構造が秘められているためだ。

私たちはこの民主制度そのものの中に根源的な危険が潜んでいるということを知って、それにブレーキをかける仕掛けをつくることが大切である。その意味で、直接民主主義、案件ごとに国民投票を行うという政治は極めて危険で、まさにポピュリズムに道を開くものと考える。政治的な議論の場が防波堤 私は、直接民主主義とはまったく違う意味で、古代のアゴラやアメリカ建国期のタウンミーティングのような政治的制度、あるいは仕掛けが必要だと考える。要するに人々が集まって自分の感情形成を行う社交の場をつくるということだ。お互いに語り合い、批評や反論をしあいながら自己を形成していくというのが本来の健全な姿だが、現在の民主制度の中では、そういう場所が用意されていない。政治的対話のフォーラムが生まれ、それが知的に洗練されていくことが、ポピュリズムに対する最大の防波堤になる。小泉政治はポピュリズムか 小泉内閣に対する非常に大きな支持というのは、私は必ずしもポピュリズムの現れだとは見ていない。むしろ、今度の小泉現象というものはポピュリズムではなくて、国民の自己嫌悪が一転しただけのことである。

これまで日本のジャーナリズムはあまりにも長く、継続的に自国の政府は悪いもの、自国の指導者は愚かなものというイメージを定着させてきた。森総理に至っては、人格的な否定を受けるほどの攻撃があり、その結果、国民は自国の政府、あるいは指導者といえば悪いものというイメージを持ち続けた。

できることなら自分が属している国家の指導者はまともな人間であってほしいと、どこかで国民は願っていたはずだ。それに強力なサインを送ったのがジャーナリズムで、今回はなかなかよさそうだという報道をした途端、今までの自己嫌悪が手厚かっただけに、その感情は一気に逆転して賛嘆というところまではね返った。

しかも、彼が言っている構造改革ということの中身は、十分に中身のある話であって、この政策を進めていく過程の中で、小泉人気はどこかに軟着陸するはずだと見ている。

ただ、近年、いくつかの知事選挙を見ていると、そこにはポピュリズム的な萌芽があったことは否めないし、われわれがしかるべき対策をとらなければ小泉人気にもその傾向が強まったり、われわれが知らない次の指導者がポピュリストとして現れてくる可能性はあると考える。

そのためにも、私は言論NPOでの議論に期待している。


全文を閲覧する(会員限定)

このエントリーをはてなブックマークに追加

言論NPOの活動は、皆様の参加・支援によって成り立っています。

寄付をする

Facebookアカウントでコメントする

Facebookアカウントがない人はこちらからご投稿下さい。

コメントする

初めての方へ

「日本の課題を考える」の考え方、活動例

財政破綻の回避や急速な少子高齢化への対応といった日本が直面する課題に対して、今の政治は本質的な解決策から逃げている状況です。言論NPOは、政治家を選ぶ有権者の側が、この国の未来に対する当事者意識を備えなければいけないという考えのもと、政権や政党の政策が課題に向かい合うものになっているかどうかを定期的に評価し、有権者に判断材料を提供しています。

また、日本の将来像を見据えた政策を有権者の立場に立って議論し、政治に提案する取り組みの実現を目指しています。

アクセスランキング

  1. 3/3(日)開催 世界10カ国で米中対立の行方と国際秩序の今後を議論する「東京会議」オープンフォーラム
  2. 北東アジア地域に多国間対話の舞台をつくり出す一歩に~「日米中韓4カ国対話」報告~
  3. 戦後70年を経て疲弊したシステムを日米両国が再構築し、主権国家としての責任を果たす局面に~「日米対話」第1セッション報告~
  4. 北東アジアの平和秩序実現に向けて、足元を固めつつ将来にも目を向けた議論を~「日米対話」第2セッション報告~
  5. 「第6回エクセレントNPO大賞」表彰式 報告~大賞は「がんサポートコミュニティー」

言論NPOは多くの方のご支援や協力に支えられています

カテゴリー一覧

ソーシャルでつながる

言論ブックショップ

未来選択:マニフェスト評価専門サイト

東京-北京フォーラム公式サイト

エクセレントNPO


ページトップに戻る