安倍政権4年実績評価 専門家コメント【外交・安保】

2016年12月28日

私も評価に協力しました

添谷芳秀
慶應義塾大学
法学部 教授

神谷万丈
防衛大学校
総合安全保障研究科 教授

その他、氏名の公表はご遠慮させていただきますが、 2名の専門家の皆様にご回答いただいています。

国際協調主義に基づく積極的平和主義を積極的に実践する


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏
言葉が独り歩きしており、具体的成果がみえない
神谷万丈氏
4.5
全体的には、日米新ガイドラインや平和安保法制などの新たな制度的枠組みに基づき、着実な実践が進み始めていると評価できる。地球儀を俯瞰する外交により、積極的平和主義に基づく日本の外交方針への国際的支持をとりつける努力が引き続き行われているのもよい。ただ、積極的平和主義の実践に必要な投資が十分に行われているかどうかについては、問題なしとしない。安倍政権が、国際平和への日本の軍事的貢献の拡大に必要な防衛費を政権発足以来増額してきたことは評価できるが、伸び率は鈍い。また、非軍事的貢献の拡大につながるODAを2016年度に17年ぶりに増額したのは画期的だったが、2017年度予算での伸びはわずか8億円と報じられている。より積極的な増額が必要ではないか。
匿名A氏
地球儀を俯瞰する外交を積極的に実行するとともに、安保法制の制定などで国としての態勢も整備したから
匿名B氏
それが可能な仕組みが出来上がりつつあるが、いまも米国以外への武器輸出は実現せず、駆け付け警護などの自衛隊任務による貢献はこれから。
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日米同盟を基軸に、戦略的利益を共有する韓国をはじめ、中国、ロシアなどの近隣諸国との関係改善の流れを一層加速する


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏
日米韓協力は前進。中国との関係は停滞。ロシアとの北方領土問題は1993年の「東京宣言」より後退。
神谷万丈氏
日米が、中国の自己主張の強まりを前にルールを基盤とした既存の国際秩序の維持・強化のために連携し、力による現状変更のいかなる試みにも反対する姿勢を明確にしてきたことは適切であった。韓国との関係は、韓国内政の混乱により最近不透明感が強まってはいるが、2015年末の慰安婦合意から2016年11月のGSOMIA署名に至る安倍政権による関係再構築の努力は高く評価できる。中国との間には軋轢が目立つが、2014年11月の4項目合意以降の、少なくとも首脳会談が行える状況は維持されている。対ロ関係については、関係改善への努力は認められるが、強い意欲が前のめりになり過ぎないことを望みたい。
匿名A氏
日中首脳会談、日ロ首脳会談、日米首脳会談を実現するとともに、日米防衛協力のための指針を策定するなど、必要な施策を次々に実現した。
匿名B氏
韓国とのGSOMIAは大きな成果。そのために歴史論争を控える姿勢は正しい。他方、中国との関係改善が進んでいない。また日米同盟を前提としたとき、いま日本が西側諸国のなかで突出してロシア大統領を重視する合理的理由が見当たらない。中国との間にくさびを打つ、あるいは領土問題といった利益が語られてきたが、最初からその実現可能性を示す確たる根拠はなかった。自立した国家としての外交を望むあまり、都合の悪い情報が検討されていなかったのではないか。これについては、マスコミを含む日本全体の議論も同様。
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オーストラリア、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州など普遍的価値を共有する国々との連携を強化する


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏
概して可もなく不可もなし。これら諸国との間にマルチの協力を組み上げる外交は不在。
神谷万丈氏
日本がリベラルなルールを基盤とした秩序を守る上で主導的な役割を果たすことを強調することにより、安倍政権は、普遍的価値を共有する国々との連携強化に概して成功してきた。ASEAN諸国との連携は、国により濃淡はあるが全般的には進展をみせており、特に、能力構築支援にみるべきものがある。インドとの関係は、2016年11月にモディ首相が訪日し原子力協定が締結されるなど引き続き順調に進展した。これら諸国はしたたかであり、万事が日本の望む方向に動いているわけではなく、たとえば豪州との間には次期潜水艦開発事業をめぐり不協和音があったが、安倍政権によるこれまでの成果は評価できる。
匿名A氏
ASEAN諸国との積極的な外交を進めるとともに、NATOやNATO諸国との外交も積極的に推し進めている。
匿名B氏
上(前問)と同様な理由で疑問がある。日本が脅威と思う中国を相手に欧米から協力jを得たいのなら、日本も欧米での懸念を共有する姿勢をとるべき。
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安全保障法制の施行に伴い、あらゆる事態に切れ目のない対応が可能な体制を構築する


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏
基本的に自国の領土防衛である尖閣問題に関しては一定の成果あり。集団的自衛権の行使問題に関しては具体的検討の気配すら感じられない。中東の安全保障に本腰を入れそうな気配のあるトランプ次期政権が、中東危機を日本の存立危機事態とみなし集団的自衛権の行使を求めてくる可能性すらある。
神谷万丈氏
初動には、平和安全法制の内容を実践していこうとする政権の強い意志が感じられる。だが、同法の施行からまだ9ヶ月にしかならないので、そのような体制がどこまで構築されるかはこれからの課題である。
匿名A氏
従来全く不可能と思われた新たな制度をしっかりと確立した。
匿名B氏
進展をしていると理解しているが、この点について深い知見を持っていない。
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自衛隊の人員・装備の増強など防衛力の質と量を拡充・強化し、統合機動防衛力の構築を目指す


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏

-
神谷万丈氏
厳しい財政状況の中で防衛予算の増額傾向を維持したことは、防衛力の質と量を拡充・強化するための大前提であり、評価したい。2017年度予算案が南西諸島方面等の海空域の安全確保に重点を置いていることも妥当である。ただし、同予算案での防衛費の伸びは、中期防対象経費については0.8%にとどまっている。「過去最大」とはいっても、防衛費の減少が始まった小泉政権期と比べるとあまり増えていない。有効な統合機動防衛力を構築するのに十分な人員や装備が整備できるかについては、今後の取り組みを見守りたい。
匿名A氏
方向性としては良い方向へ向かっているが、十分な予算が与えられているかと言うとまだまだである。
匿名B氏
進展をしていると理解しているが、この点について深い知見を持っていない。
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尖閣諸島周辺海域での外国公船への対応、遠方離島周辺海域での外国漁船の不法行為に対する監視・取り締まり体制の強化など、海上保安庁、水産庁の体制を強化するとともに、遠隔離島における活動拠点の整備などを推進する


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏
-
神谷万丈氏
尖閣諸島周辺の領海への中国公船の頻繁な侵入などに対処するために、2016年12月に「海上保安体制強化方針」が決定され、海上保安庁の予算と定員が顕著に拡大され、大型巡視船、海洋調査船、尖閣専従巡視船への映像伝送装置といった重要な装備の増強が進む見通しとなったことなど、具体的な行動がますますとられつつあることを評価したい。
匿名A氏
海上保安庁の能力充実はもっと強力に、かつ速やかに行うことが必要。
匿名B氏
海上保安庁の態勢強化には時間を要するものと考えている。中国の活動活発化に見合う速度で強化が進むかは、まだ分からない。
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北朝鮮の挑発行為に対して、制裁措置の厳格な実施とさらなる検討も含めて対応する。拉致問題は、米韓との連携強化や国連への主体的働きかけなど、あらゆる手段を尽くして被害者全員の即時帰国を実現する


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏
現実に核武装を進める北朝鮮に対して、核放棄に向けた中長期的な構想が不在。拉致問題は全く展望がみえない。
神谷万丈氏
3.5
北朝鮮による相次ぐ核実験などを受けて、安倍政権が2月と12月に日本としての独自制裁の強化を打ち出したことは妥当であった。ただ、北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの問題の解決は中国次第のところがあり、日本の動きだけでは効果に限界があることも事実である。また、拉致問題についても、「被害者全員の早期帰国」が実現するかどうかは北朝鮮次第であり、日本だけでできることは少ないのが現実である。
匿名A氏
努力をしていることは認めるが、望ましい結果が実現するかは誰も分からないのではないか。
匿名B氏
明らかに拉致問題の解決が可能な状況が生まれていないが、将来的にも難しいように思われる。
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新ガイドラインに沿って、日米安保体制の下での抑止力の維持・強化に向けた努力を不断に行う。沖縄などの基地負担を軽減するため、日米合意に基づく米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設を推進するとともに、米海兵隊のグアム移転など在日米軍再編を着実に進める


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
添谷芳秀氏
-
神谷万丈氏

4.5

日米同盟の強化は安倍政権発足以来顕著に進んでおり、5をつけてよい。沖縄の基地負担の軽減についても、普天間飛行場の辺野古への移設について、決定済みの方針を実行しようとしなかったこれまでの政権とは異なり実行する勇気を示して行き詰まりを打破しようとしてきたことや、沖縄本島の米軍の北部演習場の半分以上の返還を実現したことなど、掛け声だけでなく具体的な成果を挙げてきていることは、途半ばとはいえ大きな前進である。
匿名A氏
普天間飛行場の計画通りの移転が実現できるか否か、見通しは暗いのではないか。
匿名B氏
長年の約束を実行しつつある。しかし沖縄対国という対立軸にされないよう、住民への直接的な働きかけなど、いっそうの努力が必要。

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評価コメントは以下の基準で執筆いただきました

・すでに断念したが、国民に理由を説明している
1点
・目標達成は困難な状況
2点
・目標を達成できるか現時点では判断できない
3点
・実現はしていないが、目標達成の方向
4点
・4年間で実現した
5点
※ただし、国民への説明がなされていない場合は-1点となる

新しい課題について

3点

新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目的や目標、政策手段が整理されているもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの
(目標も政策体系が全くないものは-1点)
(現在の課題として適切でなく、政策を打ち出した理由を説明していない-2点)