【論文】市民の視点から小泉改革の本質を問いたい

2001年12月27日

hasegawa_t020327.jpg長谷川徳之輔 (明海大学教授)
はせがわ・とくのすけ

1936年生まれ、1959年東北大学法学部卒。建設省、(財)建設経済研究所常務理事などを経て、1995年より現職。2000から2001年までケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員として、『80年代と90年代の不動産金融危機』の国際比較を研究する。主な著書に『東京の宅地形成史』『不動産金融危機最後の処方せん』等。

概要

公共事業の改革や道路四公団の合併民営化、都市基盤整備公団と住宅金融公庫の廃止、民営化など小泉改革の具体策がようやく見え始めた。しかし、これらの改革が狙う目標、本質はまだよく見えていない。小泉改革の本質は組織の改組にあるのではない。その背後にある、戦後の国の財政政策の転換を国民に説明し、自己責任の覚悟を求めるべきなのである。

要約

公共事業の改革や道路四公団の合併民営化、都市基盤整備公団と住宅金融公庫の廃止、民営化など小泉改革の具体策がようやく見え始めた。これらの方針はかなり評価できるし、対立の図式もわかりやすいが、改革を阻む者が誰かということだけが注目され、これらの改革が狙う目標、本質はまだよく見えていない。ただ、財政が破綻状況だからというだけではなく、公共事業については国民に社会資本整備のあり方、公共事業の哲学を明示する必要があるだろうし、都市住宅についていえば、なぜ住宅への国の直接的な援助が必要ではないのか、そもそも持ち家政策を続ける必要があるのかなどを説明する必要がある。つまり、小泉改革の本質は組織の改組にあるのではない、その背後にある、戦後の国の財政政策の転換を国民に説明し、その覚悟を求めるべきなのである。住宅金融公庫の廃止も、この点でいえば、国民に住宅建設への自己責任の自覚を問うものでなくてはならない。


全文を閲覧する(会員限定)