言論NPOは参議院選投開票を前に民主主義に関する世論調査結果を公表
国民の6割は政党や国会などを信頼できないと答え
日本の政党に課題解決は期待できないとの回答が半数を超える

2019年7月16日

 非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、7月21日に投開票を迎える参議院選挙に先立ち、日本の政治や民主主義に関する世論調査結果を公表しました。この調査は、言論NPOが民主主義の傾向を把握するために世界のシンクタンクとも連携して行っているもので、今年は5月から6月にかけて実施しました。

 報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。また、代表工藤へのインタビューなどのご要請がありましたら、積極的に対応させて頂きます。

今回の調査結果のポイント

 今回の世論調査では、代表制民主主義を構成する日本の政党や国会などを、信頼している人は2割程度に過ぎず、政治が国民から信頼を失い始めていることが浮き彫りになっています。これに対し圧倒的に信頼を集めているのは皇室や自衛隊、警察などとなっています。
 また日本の将来を悲観視している人は半数近くで、政党に日本が直面する課題の解決は期待できないと考えている人は、55.2%と半数を超えています。
 こうした政治不信の傾向は20代、30代の若い現役世代に特に目立っており、7月21日に投開票を迎える参議院選挙にも影響を与えそうです。
 この世論調査は言論NPOが今年5月から6月にかけて全国の18歳以上を対象に訪問留置回収法で行ったもので、有効な標本は1000人となっています。


「日本の政治・民主主義に関する」世論調査概要

 今回の調査は、全国の18歳以上の男女を対象に5月18日から6月3日まで、訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1,000。回答者の性別は、男性が48.6%、女性が51.4%。最終学歴は小中学校卒が7.6%、高校卒が45.1%、短大・高専卒が21.8%、大学卒が22.7%、大学院卒が1.1%、その他が1.1%。年齢は20歳未満が2.5%、20歳から29歳が11.9%、30歳から39歳が14.8%、40歳から49歳が17.2%、50歳から59歳が14.6%、60歳以上が39%となっている。


主な結果は以下の通りです。

「政党」や「国会」、さらには「政府」や「メディア」を信頼していない国民は半数を超える。これに対して、国民の信頼を圧倒的に集めたのは「天皇・皇室」で「自衛隊」「警察」がそれに続く

 日本の民主主義社会の仕組みを構成する様々な仕組みの中で「政党」や「国会」を「信頼できる」と回答したのはそれぞれ22.4%、29.4%と3割に満たず、逆に「信頼できない」は67.6%、60.4%と6割を超えている。「メディア」や「政府」を信頼している人も少なく、「信頼できる」と回答したのはそれぞれ32.3%、36.4%と3割程度に過ぎず、信頼できないは56.6%、54%とそれぞれ半数を超えている。こうした傾向は特に20代に顕著で政党を信頼できると回答した20代は10.9%、国会は13.4%、政府は21%しかない。
 これに対して、信頼を集めているのは、「天皇・皇室」が87.1%と圧倒的で、続いて「自衛隊」、「警察」が77%、71.6%で続いている。


代表制民主主義自体に対しても懐疑的な見方が国民間で高まっており
 20代、30代では「信頼していない」が「信頼している」を上回っている

 選挙で選ばれた政治家が国会で議論を行い、国会で選ばれた内閣が行政を統括する代表制民主主義の現在の状況を「信頼している」と回答したのは32.5%と3割程度に過ぎず、「信頼していない」の24.4%、「どちらともいえない」の24.6%を合わせると半数になっており、懐疑的な見方が高まっている。この傾向が堅調なのは年代別では20代と30代で、現状の代表制民主主義を「信頼している」という人がわずかに20.2%、14.2%しかおらず、「信頼していない」人の26%、29%をそれぞれ、下回っている。


日本の「将来に対して悲観している」声が半数近くに迫り、その理由として、高齢化や人口減少に有効な対策が見えない、との声が8割に迫る

 日本の将来を悲観視している人は47.2%と半数近くおり、その理由として「急速に進む高齢化と人口減少に有効な対策が見えない」が79.2%と突出しており、「社会保障や年金が安心ではなく、自分の人生の将来が不安」の52.5%が続いている。


日本が直面する課題の解決を「政党に期待できない」とする国民は55.2%に達し、その理由として6割が「政治家や政党は、選挙に勝つことだけが自己目的化し、課題解決に真剣に取り組んでいない」と回答している

 日本が直面する課題の解決を、政党に「期待できない」と考えている人は55.2%と半数を大きく超えており、「期待できる」の22%を大きく上回っている。特に、政党に課題解決を期待できないという傾向が顕著なのは、これも20代と30代で、それぞれ「期待できる」はわずか13.4%と15.6%に過ぎず、逆に「期待できない」は54.6%、62.2%となっている。

 日本が直面する課題解決を政党に期待できない、と回答した人に理由を尋ねたところ、最も多かったのは、「選挙に勝つことだけが自己目的化し、政治家や政党が課題解決に真剣に取り組んでいない」が60.5%と最も多く、「政党や政治家に日本の課題を解決する能力を感じない」が42.6%で続いている。


「現状の自分自身の生活」に6割近くが満足している一方で、
「現状の日本の政治」に満足していないは6割を超え、正反対の傾向を示している

 現状の自分自身の生活に満足しているか、との問いには57%と6割近くが「満足している」と回答しており、「満足していない」の37.9%を上回っている。年代別では現在の生活に満足している人は20代未満(18歳、19歳)が60%、60代以上が63.8%とこの2つの層で相対的に高くなっている。

 ただ、この「生活の満足感」と、「政治に対する満足感」が異なる傾向を示している。
 国民の65.7%と7割近くが、日本の現状の政治に「満足してない」と回答しており、年代別では30代(69.6%)以上の、40代(65.1%)、50代(69.2%)、65代以上(65.3%)にその傾向が強い。20代未満には現在の政治に満足している人が32%、と相対的に多い。


参議院選では、日本の将来、を争点とすべきとの声が34%と最も多いが、それを強く求めているのは30代以上の層であり、20代や20代未満の若い層は、何が争点か「分からない」という回答が最も多い

 今度の参議院選は何が問われるべきなのか、を聞いたところ、最も多いのは「日本の将来」の34%であり、「消費税」や「安倍政権の評価」が20.3%、19.3%で続いている。「アジアや世界における日本の立ち位置」は5.7%だった。「日本の将来」の全体の34%を上回った年代は30代(35.8%)、40代(36%)。50代(35.6%)でその年代では最も多い回答となっている。若い世代である20代未満(28%)や20代(30.3%)では、「分からない」が40%、33.6%と最も多い回答となっている。


日本国民の7割は、民主主義は「必ず守るべきもの」であり、または「その機能のために不断の改善や見直しが必要」だと考えているが、日本が「民主主義の国」かでは「どちらとも言えない」「そうは思わない」が合わせて4割もあり、日本国民の2割程度が日本の民主主義は「機能していない」と考えている。こうした懐疑的な傾向は20代、30代に目立つ

 日本人の69.1%と7割近くは民主主義の基本的な価値を重視し、民主主義は「必ず守るべき」(23.2%)、あるいは「民主主義の機能のためには不断の改善や見直しが必要」(45.9%)と考えているが、「日本は民主主義の国か」と尋ねたところ、民主主義の国だと考えている人は52.1%と、半数はいるが、31.5%が「どちらともいえない」と感じており、8.3%は民主主義の国ではない、と回答している。この懐疑的な傾向は20代と30代に目立っており、「そうは思わない」、あるいは「どちらともいえない」との回答を併せると20代で47.1%、30代で48.6%とそれぞれ、民主主義だと考える層を上回っている。

 日本の民主主義は機能しているかとの問いには、「機能している」が55.5%と半数を超えているが、「機能していない」も19.8%と2割程存在する。20代未満や20代は「分からない」がそれぞれ4割以上あり、相対的に関心の薄さが浮き彫りになっている。


AIやデジタル技術の発達が、民主主義の未来に与える影響についてはまだ判断がつきかねているが、「民主主義の機能が制限される」「民主主義が否定される」という負の影響を心配する見方が3割を超えている

 AIやデジタル技術の発達によって民主主義の未来がどう変わるか、では「わからない」(34.3%)との回答が最多となったが、「民主主義機能が制限される」(29.9%)、さらに「民主主義が否定されていく」が5.4%と、合わせて35.3%と3割を超える人が負の影響を心配している。民主主義と調和する形で機能していく」(18.6%)との楽観的な見方は2割程度である。

⇒ 全文(日本の政治や民主主義に関する世論調査結果)はこちら


【言論NPOとは】

 言論NPOは、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2004年から、政党のマニフェスト評価や政権の政策評価を定期的に行い、試練に直面する民主主義についてアジアや世界のシンクタンクと連携して議論を行っています。2005年には日中間のハイレベルな民間対話「東京-北京フォーラム」を立ち上げ、その後、一度も中断せずに14年間継続し、今では日中を代表する民間外交の舞台になっています。2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本から唯一選出され、それ以来、世界を舞台に活動を展開しています。2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、世界のルールベースの自由秩序や多国間主義や民主主義を守り発展させるための事業に取り組んでいます。


本件に関するお問い合わせ:言論NPO事務局 宮浦・佐藤
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