政治家を自分たちの代表だと「思わない」、政党や政治家に課題解決を期待できないとの声が多く、国民の政治不信が高まっており、特に若い層にその傾向が強いことが明らかに

2019年11月13日

2019年 11月13日
認定NPO法人 言論NPO


言論NPOは2019年2回目となる 「日本の民主主義に関する世論調査」の結果を公表しました

・政治家を自分たちの「代表だと思わない」との回答が、「代表だと思う」を上回る。
・政党や政治家に日本が直面する課題の解決を期待できないと考えている人は70.9%と7割を超える。
・政党や国会など、選挙によって自らの代表を有権者が選ぶ代表制民主主義の仕組み自体を「信頼している人」は2割~3割程度にとどまっている。
・現在の国会は「言論の府」と呼ぶに値すると「思う」という人は1割に達せず、「言論の府」だと「思わない」という人が6割を超える。
・日本の将来を「悲観的」に見る人が5割を超え、参院選前に実施した調査よりも10ポイント近く増加した。


 非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、2019年11月13日、「日本の政治・民主主義に関する世論調査」の結果を発表しました。言論NPOが民主主義に関する世論調査を行うのは、参議院選挙の前に行った調査に続き今年2回目となります。調査結果は、11月19日(火)に行われる「言論NPO創立18周年特別フォーラム」の議論でも活用されることになります。
 詳細な調査結果は、言論NPOウェブサイトで公開いたします。報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。



 今回、政治家を自分たちの代表だと思うかを尋ねたところ、「代表だと思わない」という見方が45%となり、「代表だと思う」(41.5%)という見方を上回った。さらに、政党や政治家に日本が直面する課題の解決を期待できないと考えている人は70.9%と7割を超えるなど、政治に対する国民の信頼がさらに低下する結果となった。こうした政治不信の傾向は20代、30代の若い現役世代に特に目立っている

 また、政党や国会など、選挙によって自らの代表を有権者が選ぶ代表制民主主義の仕組み自体を「信頼している人」は2~3割程度にとどまっている。
 加えて、現在の国会は「言論の府」と呼ぶに値すると「思う」という人は1割に達せず、「言論の府」だと「思わない」という人が61.2%と6割を超えるなど、国民の政治不信は高まっていることが明らかになった。

 この調査を受け、言論NPOは10月以降、東京大学大学院の内山融教授や北海道大学の吉田徹教授を中心に専門チームを組織し、代表制民主主義の仕組みを強く機能させるため、国会や選挙、政党のあり方を中心とした民主主義のシステムの診断作業を開始しています。そして、11月19日の18周年特別フォーラムでは、ラスムセン元デンマーク首相をはじめ世界各国で民主主義の改革に取り組む有力者が、この議論のためだけに東京に集まり、危機に直面する世界の民主主義の修復、そして日本の民主主義の改善に何が問われているのか、議論します。

 報道関係者の皆様には、このフォーラムの模様もぜひご報道いただきたく、取材のためのお席をご用意しています。併せてご参加くださいますよう、お願い致します。
※フォーラムの概要につきましては、こちらをご覧ください


 世論調査の主な結果は以下の通りです。

日本の将来に対する認識

日本の将来を悲観的に見る国民が6割近くに達し、今年5~6月の調査より10ポイント増加

  日本の将来に「悲観的である(「どちらかといえば」を含む)」という見方が57.3%と6割近くな
り、「楽観的である(「どちらかといえば」を含む)」という見方の25.3%を大きく上回っている。「悲観的である」は今年5~6月の調査時点の47.2%よりも10ポイント増加している。

「社会保障」「気候変動」「高齢化と人口減少」を不安視する国民が9割を超える

 13の課題を挙げた上で日本の将来を考えた際にそれぞれどの程度不安を感じるかを答えてもらったところ、特に「不安である」が多かったのは、「年金・医療などの社会保障」(91.6%)、「異常気象」(91.5%)、「急速な高齢化と人口減少」(88.9%)の3つの課題で、それぞれ9割前後にのぼっている。

 以下、「犯罪」(77.9%)、「経済的不平等、格差の拡大」(76.8%)、「財政破綻」(73.3%)、「テロ」(72.3%)、「経済危機」(72.1%)の順となり、ここまでが7割を超え、残りの5つの課題についても、「不安である」との回答は5割を超えた。


民主主義の仕組みに対する信頼

政党・政治家に日本の課題解決を「期待できない」国民が7割を超える

 現在の日本の政党や政治家は、日本が直面する課題を解決できると思うかを尋ねたところ、「期待できる(「あまり」を含む)」は20.6%に過ぎず、「期待できない(「あまり」を含む)」という回答が70.9%と7割を超えている。

 なお、設問に「政治家」を加えたため単純に比較はできないが、参議院選挙前の5月~6月に行った調査に比べて、15ポイントも「期待できない」が増加しており、政治に対する不信感が浮き彫りになる結果となった。

日本の民主主義に「満足している」が「満足していない」をわずかに上回る

 日本の民主主義の状況に満足しているかどうかを質問したところ、「満足している(「どちらかといえば」を含む)」という回答が43.7%となり、「満足していない(「どちらかといえば」を含む)」の40.7%をわずかながら上回る結果となっている。
この結果を世代別でみると、30代以下で「満足している」との回答が全世代平均の43.7%を下回っており、若い世代に日本の民主主義に満足していない傾向が見られた。

政治家への信頼度は2割に満たない結果に。「政党」「国会」への信頼も2~3割台

 民主主義を構成する12の機能を挙げた上で、それらに対する信頼度を尋ねた。
その結果、「信頼している(「とても」と「ある程度の合計」)」という評価が最も多かったのは「司法」で61.1%の人が信頼を寄せている。次いで、「大学(高等教育機関)」(55.7%)、「新聞・テレビ」(53.9%)の順となり、ここまでが5割を超えている。

 逆に、「政治家」に対する信頼度は20.1%と2割にとどまりこれが最も低い。そして、その「政治家」が属する「政党」(29.6%)、「国会(議会)」(36.2%)の信頼度も2割から3割台にとどまっている。他に信頼度が低かったのは「インターネット、SNS」で30.2%だった。なお、「有権者」の自らに対する信頼度は38.3%だった。

政治家を自分たちの「代表だと思わない」国民が45%に達する

 政治家に対する人々の信頼の低さが浮き彫りとなる中、調査では次に政治家を自分たちの代表だと思うかを尋ねた。その結果、「代表だと思わない(「どちらかといえば」を含む)」という見方が45%となり、「代表だと思う(「どちらかといえば」を含む)」という見方の41.5%を上回っている。

 この結果を世代別でみると、30代以下で「代表だと思う」との回答が全世代平均の41.5%を下回っており、若い世代に政治家を自分たちの代表だと思っている人が少ない傾向が見られた。

 その理由として最も多いのは「政治家が有権者を意識するのは、選挙の時だけだから」という理由で、37.8%だった。以下、「国会で真面目な議論が行われず、何をしているのか分からないから」(19.8%)、「政治家や政党をそもそも信頼していないから」(18.2%)の順となり、それぞれ2割近くいる。

国会を「言論の府」だと思う人は1割未満

 現在の国会は「言論の府」と呼ぶに値すると「思う」という人は9%と1割に満たない。そして、「言論の府」だと「思わない」という人が61.2%と6割を超えている。


民主主義改革に対する見解

民主主義を機能させるために改革が必要な分野は、「議会」「行政」「政党」が4割前後

 民主主義を機能させるために改革や立て直しが必要な分野を選択してもらった。
その結果、「議会/国会の活性化」(41.5%)、「行政の能力と管理」(40.7%)、「政党の規律、能力」(38.8%)という3つの回答が4割前後で並んでいる。「有権者の主権者意識」を選択した人も32.7%と3割いる。

民主主義自体に懐疑的な見方が4割弱に達する

 その結果、「民主主義はほかのどんな政治形態より好ましい」という回答が39.8%で最も多く、「民主主義は望ましい政治形態ではない」は3%にすぎない。ただ、「国民が満足する統治のあり方こそが重要であり、民主主義かどうかはどうでもいい」という人も33.8%と3割いる。

低投票率の問題に対し、何らかの制度改革が必要と考える国民が4割

 国政選挙・地方選挙問わず常態化している低投票率の問題について、「一票の格差や民意を適切に反映できない現行の選挙制度自体を見直すべき」という回答が20.8%で最も多い。これと「低投票率の結果、選挙区によってはわずかな得票で政治家になれる可能性があり、最低投票率の上限を上げるなどの公職選挙法の改定を検討すべき」という回答が20.1%で並んでおり、この2つを合計すると、日本人の4割は現行法制度の何らかの見直しが必要だと考えていることになる。

 さらに、「この状況は望ましくなく、投票の義務化を検討すべき局面」とより踏み込んだ改革を求める人も16.8%いる。

 ただ、「よい候補者を立てることができない政治の問題であり、低投票率もやむを得ない」という人も19.9%いる。

政治改革自体が誤りという見方と、改革の方向性は正しくさらなる改革が必要との見方が拮抗

 1994年に行われた一連の政治改革を経て導入された小選挙区制と政党助成金は、その掲げる当初の目的を果たしていない状況にある。

 そこで、この評価について質問したところ、「小選挙区制導入自体が誤り。小選挙区制は止め、政党助成金も見直すべき」と改革自体を誤りだとみる回答が32.8%で最も多い。

 一方、「小選挙区制導入で始まった政治改革が、その後とん挫していることの方が問題。政党のガバナンス改革や政治資金、国会に関する改革などを徹底的に行うべき」が25.9%など、改革の方向性自体は正しく、それが貫徹されていないことや、運用上の問題があるにすぎないとの見方も合計すれば3割ある。



「日本の政治・民主主義に関する世論調査」概要

 日本全国の18歳以上の男女を対象に9月7日から28日にかけて訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000。最終学歴は、中学校以下が5.7%、高校卒が49.3%、短大・高専卒が20.6%、大学卒が21.7%、大学院卒が1.1%である。年齢は、20歳未満が2.4%、20~29歳が11.9%、30~39歳が14.7%、40~49歳が17.5%、50~59歳が14.5%、60歳以上が39.0%となっている。

【言論NPOとは】  言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。

 また、2017年3月には、日本で初めてグローバル課題の解決を目指す、世界的な議論のプラットフォーム「東京会議」を立ち上げ、議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり上げました。


本件に関するお問い合わせ:言論NPO事務局 宮浦・西村
TEL:03-3527-3972 FAX:03-6810-8729  MAIL:forum@genron-npo.net