世界の課題に挑む

世界のシンクタンクは5つのグローバル課題をどう見ているのか ~CoC年次総会報告~

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⇒ 世界25ヵ国の頭脳が評価した「国際協調進展の通信簿」
最優先課題はテロとの戦いと国際的な武力衝突の防止 ~CoCレポートカード総論~


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 5月7日から3日間、アメリカ・外交問題評議会(CFR)が主催し、世界主要25カ国26団体のシンクタンクが参加するシンクタンクの国際ネットワーク「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」の第6回年次総会がワシントンD.C.で開催され、日本を代表して言論NPO代表の工藤泰志と、大和総研金融調査部主席研究員で言論NPO客員研究員も務める内野逸勢氏が出席しました。

 今年の年次総会では、米欧で保護主義が台頭し、大きく揺れ動く「グローバルな貿易体制」や、イギリスのEU離脱を受けてクローズアップされた「EUの今後」、現在の日本もその脅威に直面している「北朝鮮の核・ミサイル」、新たな安全保障分野として注目されている「サイバー空間」、そして、アメリカのシリア空爆によって新たな局面を迎えた「中東安定化」という5つのグローバルイシューが議題として取り上げられ、世界のトップシンクタンクの代表者らによって活発な議論が交わされました。


TAAだけでは解決につながらず、所得格差是正にも取り組むべき

IMG_8930.jpg このうち、工藤がパネリストとして登壇した「グローバルな貿易体制」に関するセッションでは、各国政府は自由貿易に対する国内的な支持をどのように取り戻すべきか、について話し合われました。

 その中で工藤は、輸入増加の影響を受けた国内企業や雇用者を支援し、新たな産業構造への適応を促進することを目的とする貿易調整支援(TAA:Trade Adjustment Assistance)強化の必要性を指摘しました。また同時に、「TAAの充実だけで人々の不満を抑えられるだろうか」と問題提起し、特に先進国内で顕著な所得格差の拡大について、「これが国民の反発につながっているが、ポピュリストはそうした反発につけ込んでいる。そうして巻き起こったポピュリズムはナショナリズムにつながりやすいが、それが世界中に伝染すれば保護主義がさらに加速することになる」とし、「TAAだけではなく、所得再分配を本格的に考え、グローバリゼーションの問題を真剣に考える段階にきているのではないか」と居並ぶ参加者たちに問いかけました。

⇒ 工藤の発言全文はこちら


IMG_8915.jpg そして、トランプ政権については、「アメリカが保護主義政策をとるのは何も今回に限ったことではないが、それでもこれまでの大統領はリベラルな経済システムや、多国間主義に基づく国際協力の枠組み自体は尊重していた。しかし、トランプ大統領は多国間主義に基づく国際協調に疑念を抱いている。そのことを世界のシンクタンクは懸念すべき局面なのではないか」と主張しました。


中国、ロシアが参加しての制裁の枠組み強化が不可欠

 もう一つ、工藤が登壇した「北朝鮮の核・ミサイル」に関するセッションでは、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するためにどのような外交・経済・軍事のツールを用いるべきか、などについて話し合われました。

IMG_8931.jpg その中で工藤は、「北朝鮮問題は、核をミサイルに搭載しようとしている点で、今までの中東での核問題とは全く異なる。そうした中、北東アジアはトランプ大統領の行動が予測できないことで緊張が高まっており、その緊張にどこまで耐えられるかという段階に来ている」との現状認識を示した上で、「北朝鮮問題ではこれまで誰もリーダーシップを取ってこなかった中、トランプ大統領の行動はある程度評価できる」と語りました。

 しかし同時に、「これを機会に一気に実効性のある、経済制裁に向かうべきだ」と主張。「これまでの国連の制裁だけでは限界があるし、本気で制裁に取り組んでいない国も多い。かといって、軍事行動のコストは高いため、トランプ大統領ができるのはせいぜい国境封鎖ではないか。そこで中国の石油禁輸などの取り組みに期待したい。さらにロシアの役割も重要である」と述べ、北朝鮮問題の解決は、制裁の枠組みを強化できるかどうかにかかっているとの認識を示しました。

⇒ 工藤の発言全文はこちら


 その後、「EUの今後」に関するセッションでは、「EUを救う価値はあるのか?」といった刺激的なタイトルの下、EUの制度改革や、各国で台頭するポピュリズムにどう対処すべきか、「サイバー空間」では、強固なグローバルガバナンスを構築するために国際社会は何をすべきか、「中東安定化」では現実的かつ実行可能な短期的目標をどう設定するか、などについて議論が交わされ、各シンクタンクからはその国内や地域の事情を踏まえた独自の視点から様々な問題提起がなされました。

 今年の総会では、5つのセッションのほかに、2日間にわたってディナーも行われました。初日にはマイク・アレン氏(AXIOS Media共同設立者、前Politicoチーフポリティカルレポーター)、エイミー・ウォルター氏(Cook Political Reportアメリカ政治アナリスト、元 ABCニュースポリティカルディレクター)をゲストに迎えて、「トランプ大統領就任100日」に関する意見交換を行い、2日目にはオバマ政権下でアメリカ通商代表として、2013年から2017年までTPP(環太平洋経済連携協定)交渉を担当したマイケル・フロマン氏による基調講演が行われました。

 そして、最終日には昨年に引き続き、2017年版のレポートカード(国際協調進展の通信簿)が発表され、総会が閉幕しました。

 評価結果についてはこちらをご覧ください。


 工藤は閉幕後もアメリカに滞在し、在米のシンクタンク、財団などアメリカの有識者と意見交換を行う予定です。報告記事は随時、言論NPOのホームページでお知らせいたします。

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