世界の課題に挑む

カナダでのG7首脳会議に向けたメッセージ

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 私たちは3月10日、G7加盟国のアメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランスの7カ国に、インド、シンガポール、ブラジルを加えた世界10カ国からのシンクタンクの代表者を東京に招き、「東京会議」を行った。
 世界を代表する10のシンクタンクが、東京に再び集まったのは、自由や民主主義、法の支配、人権の尊重という、戦後世界を支えた共有された価値、規範が動揺し、リベラルな世界秩序が不安定化し、それがどこに向かうのか、未だに見えない状況が続いているからである。そうした局面だからこそ、自由と民主主義、そして多国間主義の価値に基づく世界を目指して、10カ国のシンクタンクが力を合わせなくてはならないと考えた。
 米国の現政権は依然、アメリカ第一主義であり、多国間主義に伴う国際協力や自由貿易の前途に不安を与えている。権威主義的な傾向を強める国も存在する。国際社会は、難民、地球環境、感染症、大量破壊兵器の拡散など国際協力無くして解決できない喫緊の課題にも対応しなければならない。
この二日間、私たちは議論し、多くの点で共通の理解を得た。

 一つは、自由と民主主義が持つ今日的な重要性である。
 個人の自由や権利を守りながら、世界の利益を各国内のより多くの人に包摂的につなげることは、人類の使命であり、人類の財産となる。グローバリゼーションと技術の急速な進歩は、世界の共通利益でありながら、雇用の不安や格差の拡大という課題を生み出している。そうした時だからこそ、個人の自由と平等、多様性を尊重する民主主義の今日的な意義を問い直し、その促進に努めるべきである。
 もう一つは、世界はもはや自国第一主義や、ゼロサムでお互いに悪影響のある重商主義的な勢力拡大の過去に戻ることは許されないということである。
 世界の相互発展のためには多国間主義に基づく国際協力、自由でルールに基づく開放された経済こそが必要であり、その中でグローバリゼーションと国内の利益を調和させる努力が今、各国政府に求められている。
 
 私たちが今年6月にカナダで行われるG7首脳会談に向け、議長がメッセージを出すことにしたのは、G7こそがこの自由と多国間主義、そして民主主義という規範を尊重し守るための実効性のある強いメッセージを世界に発信し、その実現のけん引役になるべきと考えるからである。
 もちろん、これらの規範を支えることを、政府に期待するだけでは不十分である。知識層やジャーナリズム、そして市民と力を合わせて、今直面する自由と民主主義の試練に真剣に立ち向かい、行動すべきである。
 この「東京会議」に集まった10カ国のシンクタンクは各組織の規定の範囲内で議論に参加することで合意している。
 この立ち位置から私たちは、以下の5点に焦点を当てた。

 第一に、G7各国は、自由と民主主義、法の支配および人権の尊重という共通価値の重要性を再認識し、その下での結束をさらに強化すべきである。
 さらにG7は、多国間主義に基づく国際協力の枠組みを守り、国連や様々な国際組織がこれまで築き上げてきた国際秩序を維持する根源的な役割を積極的に支えながら、同時に規範に基づく国際秩序を追求すべきである。

 第二に、G7各国は、保護主義的な行動が報復的な行動を招くなど、世界経済、国際秩序に取り返しのつかない影響をもたらしかねないことを重視し、公平な競争条件や質の高いルールに基づく自由貿易をさらに発展させる努力を行うとともに、あらゆる形態の保護主義には対抗する姿勢を示すべきである。

 第三に、G7各国は、グローバリゼーションが、世界全体の包摂的な成長や持続可能な成長につなげるために、当面の主要国の金融政策の動向などにも注意しながら、成長の促進と分配の両面で足並みを揃える必要がある。我々は新たな大きな変革を伴う技術革新が、できる限り健全な社会に貢献できるよう、努力しなければならない。

 第四に、北朝鮮の核開発は世界の平和やNPT体制への決定的な脅威であるとの認識の下に、北朝鮮の非核化と平和的解決に向け、G7は結束して取り組む必要がある。米朝首脳会談の動きを歓迎するのはその目的のためであり、北朝鮮の核保有を容認するいかなる声にも賛同はしない。

 第五に、G7各国は、ルールに基づいた世界のリベラル秩序を維持し、持続的で包摂的な世界の発展を作り出すためにも、世界の利益と国内利益を、バランスを持って考えられる強靭な民主主義を作り上げることが重要である。規範を守り、課題に真摯に立ち向かう政府の不断の取り組みは、市民社会との対話を通してより多くの人の支持に支えられるべきものである。

2018年3月10日
       「東京会議」
         


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