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「民主主義に今何が問われているのか」 /「東京会議2018」非公開会議(10日)報告

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 「自由で開放的な経済やリベラル秩序の評価とG7の役割」をテーマとする非公開会議は10日午前、東京・青山の国連大学で開かれました。


トランプ大統領の一挙手一投足に注目が集まる

 前日の非公開会議同様、この日のテーマにもトランプ大統領の影が差します。トランプ氏は、「本物の戦争ではない、貿易戦争はいいものだ」と発言しているものの、パネリストの一人は「現在は多くの国でナショナリズムがある。それがぶつかった貿易戦争が、世界で見られる。一方で、本物の戦争は、銃口が外に向いているが、報復に出ると、貿易戦争の銃口は内にも向いて、自滅することもある」と警告します。

 「トランプ政権の直接の影響はまだない」という東南アジアからのパネリストは、周囲からの脅威に対抗するために途上国同士の経済統合を強固なものにしてきたが、「ASEANがより自由貿易、市場開放に関与するようになるには、トランプ大統領のTPPからの脱退は、他国との貿易の上で大きなマイナスと考えられている。トランプ自身はTPPにある程度オープンであり続け、戻ることもありうる、と言っているようだが、それが何を意味しているのかはまだ分からない」と疑心暗鬼に包まれている状況を語りました。

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 地域の経済統合が勢いを増し、世界の他の国々にも好影響を与えてほしい、というパネリストは、「トランプ大統領が示している、開放貿易、市場開放とは逆のマイナスのイメージが、貿易投資など、これからの交渉を困難にするのではないか」と述べ、これまでにはなかった新しい状況がトランプ大統領によってもたらされる点を危惧していました。

 さらに、「トランプが選挙に勝ったことで、誰よりも賢い、という考えにつながり、自分で何でもやる、政策決定をアドバイザーに何ら相談していない状況が生み出された。例えば、ティラーソン国務長官は、トランプ大統領が金正恩と会うことを、何も聞かされていなかった。これは驚くべきことだ」と述べ、トランプ大統領の親しい人ばかりで側近を固め、専門家のアドバイスを求めない態度が一番、問題だと語りました。

 「貿易政策に関してトランプは措置を講じているが、成果を出せるのか、確信がない」と述べ、そもそもアメリカの貿易赤字の要因は、マクロ的な要素、特に貯蓄率が低いという要因、為替の課題、また公的な赤字が非常に大きいというもっと根本的な問題が存在していると本質的な疑問を述べるパネリストもいました。

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台頭する中国とどのように向かい合えばいいのか

 次に注目を集めたのは中国です。中国の成長は、世界にどんな影響を与えるのでしょうか。「中国とは、地域として一定の均衡を保ちたい。ASEANには、欧米との長いつながりがあり、米政権にはしっかりとした予見可能なリーダーシップをとってもらいたいが、過去1年間はそうではなかった。私たちは、貿易投資などで中国との関係を見直さざるを得ない」と、その大きな影響力を話しました。また、「大国とは、互恵的な関係を築く必要がある。1960~70年代のような過去に経験したことを繰り返さず、対立や抗議を避ける形でやっていこうということが必要で、対中関係により力を注ぐようになっている。ASEANとしての対中国、対アメリカのアプローチは今後1年間の動きで変わっていく可能性がある」と指摘する声も上がりました。その上で、①将来のルールはどうなるのか、②ASEANとしてより包摂に根差した発展、開発が重要であり、個々の国が、今まで20年間地域で享受してきた成長を、持続可能なものにしていけるかが鍵、③ASEANとしては、ルールを制定し、包摂的に取り組んで、地域全体のレベルでICT(情報通信技術)を世界の他地域並みに進展させたいとして、東南アジアは三つのことを中心に動いていくと予測しました。

 中国で企業研究しているパネリストが語ります。「中国は、経済大国だが、まだ途上国でもあり、一人当たりのGDPは低く、農村も多く存在している。中国の近年の発展は、グローバル化と関連が深いが、発展は不安定だ。まず、中国自らがしっかりと発展し、そして世界の経済の発展にも貢献すべきだ」との見解を示しました。そして主な目標として、習近平・国家主席を中心として、胡錦涛時代からの目標である脱貧困を数年以内に達成することを挙げ、同時に、2020年までに小康社会を構築するための3つの課題として、まずは系統的に不動産バブル、金融システムのリスクの解決、貧困支援、大気汚染などの環境問題を挙げました。

 一帯一路イニシアチブは、「発展途上国の要請を受けて、30年前からインフラ整備をしてきており、道路、通信を繋げ、それに伴って経済の有効需要を増やすことも大事で、工業などの発展のチャンスで、中国は他国と共にマルチな貿易のシステムを作っていきたい」と熱く語るのでした。

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中国が進める一帯一路へ

 一帯一路の構想については、他のパネリストから質問が続きました。「この話は途上国から出たと言ったが、この資金はどこから出るのか。地図上で線を引くのは簡単だが、実際に線引きするのは難しい」と、スリランカでの中国の事例も挙げながら問題点が指摘されました。また、一帯一路を巡っては、非常に大きな成長の機会があると見られ、我が国も何とか一帯一路に協力しようという声がある一方で、そこには中国の地政学的な意図も存在するため、他国が主要資産のコントロールを失うのではないか」という声もあります。さらに、「ある程度の紛争調停メカニズムも必要になり、これは中国が現在のグローバルルールや調停制度に挑戦するのではないか、という不安の声や、中国がこの分野における主要ポジションを取りに行くのでは」との警戒する声もあり、さまざまな意見が出されました。

 こうした疑問に中国側は、中国の基本的な考えは、皆の認める国際ガバナンス、ルールには従い、問題があれば議論していく、ということだと説明。投資については、スリランカなど債務消化能力があるかどうか。一帯一路は意義があるかどうかだけでなく、それをサポートしようとする企業、国の能力も考慮しなければいけない。それによって意義が損なわれることはない」と語るものの、中国は発展途上の大国で、経験値が浅く、実践を積んでいく必要性を強調しました。

 こうした中国側の"弁明"を聞いて、次のような意見もありました。「自分たちは第三世界というかもしれないが、大国、世界的に力を持つ国が"まだ途上国だ"という時に、どのような強国の役割、責任を期待すべきなのか。そのような国は、一人当たりGDPが低いが、途上国の定義自体も再検討が必要だ」、「国と国、という議論ではなく、NPOやNGOの役割に、より焦点を当てて話さなければいけない。G7の枠組みの中でも非政府の役割について議論すべきだ」、「中国は実際に、自由貿易にコミットしていると言い、WTOのルールに従っている。ただ、ルールに徹することは不十分ではないか。なぜなら、中国は国際組織から巨大な黒字をあげている。もし中国が本当にコミットメントするなら、WTOでしっかり対応して、ペナルティを米に求めるべきだ」と語るなど、2日目の非公開会議はアメリカと中国の話題に話が及びました。

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