世界の課題に挑む

世界25ヵ国のトップシンクタンクが評価した「グローバルイシューに対する国際協調の通信簿」
-2019年の最優先課題は「気候変動への対応」

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本評価は2018年12月時点の内容です。
総論写真(気候変動).jpg
 5月7日(米国東部時間)、アメリカ・外交問題評議会(CFR)が主催し、世界25カ国の主要なシンクタンクが参加する国際シンクタンクネットワーク「カウンシル・オブ・カウンシルズ(以下、CoC)」の第8回年次総会がワシントンDCで開催され、代表の工藤泰志が参加しました。今回の総会では、2015年の開始から5回目となる2019年版のグローバルイシューに対する国際協調進展の通信簿(レポートカード)が発表されました。

 CoCは、米国外交問題評議会が各国の有力シンクタンクに呼びかけて設立したネットワークで、各国の外交政策や世論形成に影響力を持つ世界25カ国のシンクタンクが横断的につながり、課題解決に挑む取り組みとして注目されています。国際協調進展の通信簿は、世界が直面する10分野の課題について、加盟各シンクタンクのトップが今年1月にそれぞれ評価を実施したものです。言論NPOは、日本の代表として、10分野の評価を実施しました。


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国際協調の総合評価は、2017年よりやや改善し「C」に

 今回のレポートカードの総合評価は、昨年から少し改善し、「C」という結果になりました。2018年も引き続き国際秩序は不安定化し、大国間の地政学程緊張が高まる一方、アジア、ヨーロッパ、中東で地域的な対立構造が続きました。グローバリゼーションやリベラル・デモクラシーへの不満は、多くの国々で、ナショナリスト、ポピュリスト、保護貿易主義者の台頭を促した一方、トランプ政権の自国第一主義にみられるように、国際秩序や公共財を担ってきた米国の指導力の低下から、グローバル課題への国際協力がより困難化。米国外交問題評議会(CFR)会長のリチャード・ハース氏は、今回の結果について、「トランプ政権の下、国際秩序を守るというアメリカの伝統的な役割が放棄され、一部の分野においてはライバル勢力が指導力を持ち、秩序の維持のために同盟国と協力することも無くなった。その結果、国際的課題とその対応に大きな溝が広がっている」と問題点を指摘しました。

 ただ、CoCは昨年2018年の国際協力の評価を、2017年のC-から、1ランク上げてCと上方修正しました。これは、一つには、世界秩序は危機に面してはいるが、まだ進歩は可能であるという認識に基づいています。さらに、米国の不参加にもかかわらず、気候変動といった地球規模の課題に積極的に対応しようとする国々が出てきたことへの期待もあります。

 加えて、CoCは2018年、国際社会は核拡散防止やテロとの戦いにおいて国際協力は前進したと評価しています。まず、核不拡散防止の点では、2017年、一年間にわたる敵対的な応酬の末、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が、詳細については意見の不一致が残るものの、非核化に向けて協力する合意書に署名しました。さらに、2018年は、国際的な包囲網により、『イスラム国』が実行支配する領土の奪還が進んだことも前向きに評価しました。

世界25ヵ国のトップシンクタンクが評価した「グローバルイシューに対する国際協調の通信簿」
:10分野の評価(2018年)

10分野のグローバルイシュー
2018年評価
2017年評価(参照)
グローバルヘルスの促進
B-
B-
国際開発の促進
C+
C+
国際テロ対策
C+
B-
国際経済システムの管理
C+
B-
国際的暴力紛争の防止と対応
C+
C
国際貿易の拡大
C
C
サイバーガバナンスの管理
C
C-
気候変動抑止及び気候変動による変化への適応
C
C+
核拡散防止
C
D+
国内暴力紛争の防止と対応
C-
D+
総 合 評 価
C
C-

 

2019年に最も優先すべき課題は、「気候変動への対応」

 CoCは気候変動軽減と適応に向けた国際対応について、2017年のC+ に対し、2018年はCと下方評価しました。

 パリ協定の目標を各国が達成できる見込みは少ない一方で、今世紀、世界の気温は3℃から5℃上昇するとも予測されています。国連の「気候変動に関する政府間パネル」によれば、1.5℃の上昇でさえ、重大な環境への悪影響につながると言われているがなかなか進まない国際協調に世界のシンクタンクが警鐘を鳴らしました。

 ポーランドで開催された第24回気候変動枠組条約締結国会議における交渉は、地球温暖化が加速しているという現実に関する共同記述を避けようとする国がある一方で、より強力な軽減措置を求める国もあり、激しく緊張しました。多くの国や準国レベル、企業などは、気候変動対策を強化する一方で、地球温暖化防止のためにやらなけれならないことと、実際に各国が行っている対策の間のギャップがより明らかになってきたことから、COCでは気候変動を2019年の最優先課題と指定。一方で、世界が実効性のある共同行動をとることが難しくなってきていることを受け、この分野で現状を打開できるチャンスは2番目に低いとしています。


世界25ヵ国のトップシンクタンクが評価した「グローバルイシューに対する国際協調の通信簿」
:2019年における重要度

重要度ランキング 10分野のグローバルイシュー
1
気候変動抑止及び気候変動による変化への適応
2
国際経済システムの管理
3
核拡散防止
4
国際的暴力紛争の防止と対応
5
国内暴力紛争の防止と対応
6
サイバーガバナンスの管理
7
国際貿易の拡大
8
国際テロ対策
9
国際開発の促進
10
グローバルヘルスの促進


世界25ヵ国のトップシンクタンクが評価した「グローバルイシューに対する国際協調の通信簿」
:2019年に解決に向かう可能性

2019年に
解決に向かう可能性
10分野のグローバルイシュー
1
グローバルヘルスの促進
2
国際経済システムの管理
3
国際テロ対策
4
国際開発の促進
5
核拡散防止
6
国際貿易の拡大
7
サイバーガバナンスの管理
8
国際的暴力紛争の防止と対応
9
気候変動抑止及び気候変動による変化への適応
10
国内暴力紛争の防止と対応


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一番評価が高いのは、「グローバルヘルスへの対応(B-)」

 2018年の実績として、CoCが一番高く評価したのは、グローバルヘルスへの国際的な対応であり、2017年と同じくB-と評価しました。評価の内容は以下の通りです。

 「コンゴ民主共和国は、2018年にエボラ出血熱のアウトブレークを2回経験し、最初のアウトブレークについては、発生から3ヶ月後に封じ込めに成功したが、2回目の流行では2018年末までに、史上2番目となる、350人の死者を出してしまった。武力紛争の影響を受ける地域では封じ込め作戦が困難を極めているため、国連安全保障理事会が即時停戦を求める決議を採択した。引き続き困難は残るものの、同年末までに世界保健機関(WHO)は封じ込めに楽観的な予測をしている。2018年はまた、スペインかぜ大流行から100年を迎えた年でもあり、世界は未だこのような大流行に対応できる体制が出来ていない。ワクチン接種が最も安価で効果的な健康増進手段であるにもかかわらず、反ワクチン運動が拡大しており、予防できる病気の罹患率や死亡率が増加している。」

 「国連は従来から資金不足となっていた疾病対策のため、結核のための第1回ハイレベル会合、及び非伝染性疾病のための第3回ハイレベル会合を開催した。しかし、結果的に新たな資金供与を得ることはできなかった。結核による死亡者は減少しているが、未だ世界で130万人の死者を出しており、HIV/AIDSとマラリアによる死亡者より多い数となっている。さらに、WHOの世界結核終息戦略への資金は13億ドル不足している。」

 「非伝染性疾病のためのハイレベル会合では、アメリカの反対により、不健康食品やアルコール、たばこなどの健康への悪影響問題への対応について、参加国から有効なコミットメントを得ることができなかった。」

⇒ COCの総合評価を詳しく読む(COCサイトへのリンク)
⇒言論NPOの評価(総論)を読む  /  ⇒言論NPOの評価(各論)を読む

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