言論スタジオ

陸前高田の復旧・復興への歩みと市、国、NPOの課題 ― 戸羽太市長に聞く

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2011年11月17日(木)収録
出演者:
戸羽 太氏(岩手県陸前高田市長)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)

インタビューは11月17日に行われました



第1部:陸前高田はどこまで復旧したのか

8ヵ月経ち、基本的に生活できる段階にたどり着いた

工藤:今日は陸前高田市(岩手県)の戸羽太市長に言論NPOの事務所に来ていただきました。陸前高田という場所は、3.11の地震・津波で街の多くが壊れてしまうという大変衝撃的な映像で、私達の記憶に残っています。それから8ヵ月たって、今の状況はどうなっているかをおうかがいしたい。

戸羽:基本的には瓦礫の片付けが9割以上終わりました。片付けと言っても、今、2次分別もやっていますけれど、処理が終わったのではなくて、寄せた、というところです。

工藤:瓦礫が山になっている状態ということですか。

戸羽:そうです。その山もだんだん崩れていって、ごちゃごちゃになっているところもありますので、その仕分けもやっていただいています。しかし基本的には、あとは何も進んでいません。

工藤:ライフライン、生活環境はどうなっていますか。

戸羽:基本的に生活環境は大分改善されてきています。信号灯も回復してきましたし、街灯も点き始めました。ライフラインのほうは、例えば一部の地域で水道の水が濁るということがありますから、まあまあ、としか言えないのですが、基本的には人が生活をしていける状況にはなっていると思います。

工藤:そうですか。私たちも何度か被災地を訪れていますが、瓦礫の撤去と、あと廃墟の構造物がありますよね。あれはもう、ほとんど整理されている状況なのですか。

戸羽:これはいろいろ問題があって、公共施設、例えば市の公共施設であれば、当初は市の単費で壊して下さいという話がありました。私たちは市街地がやられているので、計算してもらったら20億円以上かかる、これはとてもじゃないですが無理なので、国に、是非、国費でやっていただきたい、とお願いしました。これは後に、そういう方向に変わりまして、ちょうどこれから市役所や体育館といった大きな建物を解体していくところです。

工藤:瓦礫の処理に関しては、プラントを作りたいとおっしゃっていましたが、あれはその後どうなりましたか。

戸羽:今からプラントを作ったのではどうにもなりません。結局、県があって、国があっての話なので、スムーズに行きませんでした。国がやると言っても、真ん中に県がいたり、県と市でやろうと言っても国が許可しなかったり、今回のプラントの問題は両方が譲り合って、「言ってくれればやったのに」という感じでした。

工藤:たらい回しみたいじゃないですか。

戸羽:そうですね。それで時間が経ってしまったので、いまさら、それをやると言ってもどうしようもないかな、と思っています。


冬を迎える生活面での課題は何か

工藤:そうですか。では、生活の問題なのですが、かなりの方が被災されましたね。今、仮設住宅に皆さん入って、次はどういう段階になるのですか。仮設後の課題を教えて下さい。

戸羽:8月の14日で全ての避難所を閉じて、今、仮設住宅が約2200ありますけれど、満杯の状態で、これから冬に向かうわけです。

建設当時は夏に向かって作っていたものですから、冬仕様・寒冷地仕様ではないわけです。今、二重サッシの取り付け等の対策をとっています。ただ、水道管が浅いところに埋まっていたり、むき出しになっている所もあって、これからそういった水道管が凍るということがあるので、市の水道事業所にも話をしていて、何とか対処してくれるとは思っています。突貫工事的でしたので仕方ないのですが、冬本番になる前に対処しなければいけません。

工藤:最終的には、皆さんがきちんと暮らせる公営住宅を目指しているのですね。

戸羽:そうですね。うちの地域ではだいたい3千数百の家がなくなってしまっています。その方々が全て新しい家を建てられるかと言えば、それは違うと思いますので、しっかりニーズ調査をして、必要な戸数については公営住宅を作らなければいけないと考えています。

工藤:そうですか。震災から8ヵ月も経ってしまったのですが、復興の前の復旧レベルの段階を振り返ってみてどうだったのでしょうか。復旧にも非常に時間がかかってしまいました。市長として課題や教訓をどのように感じていますか。

戸羽:復旧というと、どうしてもライフラインの所が出てきますが、私たちのような田舎の街は姉妹都市があるわけでもないし、どこにどうやってヘルプを求めていくかという術も持っていませんでした。例えば、水道に関して言えば、かなりの範囲でやられていて、当初、うちの水道事業所ではだいたい9月か10月にしか水道がつながらない、という話だったものですから、私もちょっと、いい加減にしろ、と。そんなことは言っていられない、少なくとも夏の前にはつながなければ、シャワーぐらい浴びられなければダメだ、という話をしました。そういった中で、神戸とか大阪とか東京とか、先進的な技術を持っている自治体の方に来ていただいて、復旧作業をやっていただいたわけです。そういうところのつなぎを、本当であれば、県なり国なりにしっかりやっていただけるとスムーズなのです。皆さん、現場を持っていて、被災者の方々の対応をしながらの仕事なものですから。

教訓といえば、そういう復旧に関するシステムをしっかり作っておかなければいけない、ということがあります。ボランティアの問題もあります。一日に500人と来ていただくこともありましたが、コーディネーターがいなくて、結局お帰りいただいたりしたこともあります。ボランティア経験者の方は、特に阪神・淡路大震災で活躍された方々がいましたが、壊れた家から家具を出す経験はあるよ、と言われても、我々の場合、津波被害ですから、家自体が無いわけです。自分の思ったボランティア活動が出来ない、そういうときに我々が代わりにこれをやって下さいと言ってあげられれば良いのですが。

工藤:余裕が無い?

戸羽:余裕というより、我々自体がそういうアイデアを持ち合わせていませんでした。これも、国として、地域として、平常時にそういうコーディネーターの育成も含めてやっておかないと、大変なのだと思います。

工藤:県と国との規制の問題についてお聞きしたい。有事なのに平時対応してしまうので、たらい回しになってしまう、ということが、いろいろなところで出てきています。それが発展して、地方自治のあり方にまで議論が発展しかねない状況になっているのですね。つまり、現場の市町村が中心になって動くべきなのが、なかなか機能できない、と。この点はどうですか。


被災自治体に権限を移してくれないと前に進めない

戸羽:これは私の持論ですが、日本の国には非常事態宣言というのはないわけで、それでは規制緩和は特区でやりましょう、特区で、特区でと言われて、もう8ヵ月も経っているわけですよ。その間、我々は何も出来ないのか、という話になりますから、少なくとも緊急事態なのだということを一国の総理大臣が発表して、では、岩手県に全ての権限を、例えば土地利用などを移しましょう、あるいは被災した市町村長にその権限は一時的に預けましょう、ということがないと、当然、前に進めない。私もかなり苦労しましたけれど、最終的に国の考え方を変えさせるのは世論でしかなくて、議員や大臣にいくら話してもダメです。結果的には、いろいろなマスコミを通じて情報を出していって、「国は何をやっているんだ、被災地の人たちは可哀想じゃないか」という世論を起こして、初めてそこでルールが変わる、ということはこの間いくつも経験しています。

工藤:そうですか。政治的には時間がかかりすぎた、と。時間がかかりすぎると、本当は改善できることがどんどん深刻になっていくのですが、それに関してやはり苦労されているという感じがしました。戸羽市長は著書『被災地の本当の話をしよう』で、8年間で復興させたいと計画を説明しています。今、どういう段階に来ているのでしょうか?


被災者が一番気にしているのは「自分たちがどこに住むか」

戸羽:今は復興計画の素案を作って、住民の皆様に説明をさせていただいています。ただこの復興計画の素案というのは基本的な考え方であって、こういう方向でやっていきますよ、という部分ですから、これから1つ1つの事業計画あるいは推進計画を作らないといけません。被災者の皆さんが一番気にしているのは「自分たちがどこに住むか」なので、計画全体の議論にはなかなかならないですね。

工藤:市長の本は、津波に襲われて被災したところに対しても、ちゃんと医療と福祉をコアにする街をつくるという話で、賑わいを戻して街をちゃんと取り戻そうという発想ですよね。でも、一般の人たちは津波の恐怖があるから高台に移りたいとなっていると、聞いています。

戸羽:まさにそういう議論になっています。過去に津波被害を受けているところを見てもそうなのですが、結局、お金をかけて直しはしました、人が住める状況を作りました、でも現実には人がどんどん減って、賑わいどころか過疎に向かっている、と。そうすると、大きなお金をかけて、みんなで苦労して、そこまでやる必要はあるのか、と。やっぱり、確かに津波は怖いし、命は大事で、これは当然ですけれど、でも、いつ来るかわからない津波にビクビクしているだけなのはダメだと思います。やはり街として、将来ある子供たちがそこにちゃんと生活できる環境を作ってあげて、町として発展しながら、ただ、万が一来るかもしれない津波に対しては、ハードとソフトの面を含めて備えるということでないと。高台にバラバラに皆さんが住んで、同じ市民ですと言っても、これはあまり意味がないと思います。

工藤:それほど、恐怖を伴う体験が凄かったのだと思います。住民が自分たちの未来に関してきちっと話し合っていくのは、民主主義から見れば非常に大事なプロセスです。話し合ってみて、どうですか。


復興計画は住民の話を聞いて修正するところは修正する

戸羽:いろいろな動きが出てきていて、民間の経済界の方々も、自分たちから立ち上がろうという動きをしていただいていますが、いずれ高齢化が進む地域なので、住民は自分の将来に非常に不安を持っているわけです。家も流された、どこに住んだらいいのだろう、どうやって食べていったらいいのだろう、と。個人個人の思いが、今どうしても強く出る状況ですから、全体として将来の陸前高田市をこうしていこうよ、という意見は出にくいのかなと思っています。ただ、これは焦らないで、計画の中で、みんなでしっかり話をしながら、修正するところは修正しますし、今回、復興計画が出来たから何がなんでもこれで100%行きますよ、ということはしませんという話はしています。

工藤:なるほど。もし高台に移る場合は土地を買って造成するのは市で、家を建てるのは個人になるのですか。

戸羽:防災集団移転というやり方ですが、5軒以上がまとまって高台に行くとなると、元々住んでいたところは危険地域として、もう人が住むことができなくなりますし、上の高台については市が造成しますけれども、造成にかかった費用を戸数で割って分譲するような格好なのですよ。

道路とかは別ですけれど、人が住む家を建てる部分の土地については、買っていただくということになっています。もちろん住む建物も自分で負担する。

工藤:お金の無い人は出来ないですね。
戸羽:もちろん出来ません。
工藤:これは政府として、そういうルールでやりましょうということが決まっている、と。

戸羽:決まっています。そして、問題は元々住んでいた土地にも出てきます。津波をかぶってしまっていて、この間、新聞等で発表された路線価では大体被災前の3割と言われているのです。

1000万円の価値があった土地が300万円になってしまう。ではその300万円を持って高台の土地が買えるかといったら買えないわけです。この間、参議院の国土交通委員会の皆さんに来ていただいた時、その話もしたのですが、いや、それは税を今回被災した人から取らないための話であって、もっと買い取りの値段は高くなるはずですよ、という言い方をされました。ですが、その目安がどれくらいという話には全然なりません。なので、市民の皆さんも非常に不安に思っていますね。

工藤:不安ですよね。私たちの中にも映像として焼き付いていますが、津波に遭ったところは土地を盛って高くしようと言う考え方ですね。

戸羽:一部ですけど。

工藤:一部ですか。そこを高くして、そこにちゃんとした商業施設を作るというような計画があるのですか。

戸羽:そうですね、山に近いほうですけれど。当初、今回の津波に対応できる防潮堤を、ということで15メートルのものをお願いしていたのですが、結果的には12.5メートルになり、2.5メートル足りなくなってしまいました。ですから、この足りない分をほかで補わなければならない、ということになりますと、水が越えてきた時に低いところを残しておいて、プールを作っておく。
そうすれば、嵩上げした部分にはぶつかって勢いがなくなりますが、2.5m低くなったことでプールを広くしなければいけなくなったので、使えない土地がかなり増えてしまいました。

工藤:なるほど。そこのお金というのは今度の3次補正で付いているのですか?

戸羽:3次補正はかなり色々なものが付いていて、高台移転、土地の嵩上げは、3次補正の中で対応できることになっています。

工藤:そうですか。そうしますと、高台は仕組みの問題があるようですが、インフラや被災された土地の問題は政府のお金で対応できているということですか。

戸羽:その部分はできています。ただ、被災地にはそれぞれ事情があって、被災の度合いも違います。例えば今回3次補正でもらえている中でも、学校の再建費用というものがあります。学校の再建もできますよ、と。今までは、移転する場合には土地の費用は出なかったのですが、今度は出せます、と。ところが、うちみたいに全部やられてしまっていると、移転する土地さえも探さなければいけない、作らなければいけない。今度の3次補正で、その予算は目の前にあっても手が出せません。

工藤:使えない、と?

戸羽:昨日も国会議員の先生方と話をさせていただきましたが、今度の3次補正に関わらず、国の制度として取っておいて下さいとお願いしました。そうしないと、たぶん我々は3年後とかでないと手が着けられない事業ですので、今回の3次補正に盛り込んでいただいても我々にとっては意味がないのです。

  

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