言論スタジオ

消費税増税の延期で財政再建の道筋は描けるのか

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2014年12月10日(水)
出演者:
土居丈朗(慶應義塾大学経済学部教授)
西沢和彦(日本総合研究所上席主任研究員)
鈴木準(大和総研主席研究員)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)



工藤泰志工藤:12月14日の選挙まであと4日となりました。言論NPOは八夜連続で、争点になる様々な政策課題について安倍政権の実績を評価すると同時に、今回の選挙で問われるべき論点は何なのか議論してきました。最終日の今日は、今回の解散の引き金になった消費税の問題、そして財政の問題、その背景にある社会保障の問題について議論を深めていきます。

 ゲストは、慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗さん、日本総研上席主任研究員の西沢和彦さん、そして大和総研主席研究員の鈴木準さんです。

 今回の選挙は、盛り上がっていないと言われている中で、各党の主張も出揃っています。皆さんから見れば、「非常に不十分だ」という気持ちもあると思いますが、今回の選挙戦は、今の日本に問われている財政・社会保障という大きな観点から見て、皆さんの目にはどう映っているか、まずお聞きしたいと思います。土居先生からどうぞ。


覆い隠されたままの自民党内の消費税増税の賛否

土居:消費税再増税の先送りが引き金になったということですが、どの党もほとんど先送りに賛成しているという状況ですから、明らかにこれは争点になっていません。ただ、消費税増税の先送りを安倍首相が決断して選挙戦が始まり、あたかも、「財務省一派対先送りに賛成した反財務省」のようなことで、「これで安倍さんが勝ったら反財務省が勝つ」というようなことを煽っている人もいます。これは、明らかにナンセンスです。選挙戦は「政党対政党」という戦いが繰り広げられ、自民党の中にも、増税先送りに消極的だった人と、先送りすべきだと言っている人とがいますが、その二派は、選挙の中では全然、戦っていない。なぜなら、小選挙区では、自民党は一人の候補しか出さないわけですから、自民党としてその候補を出している。そうすると、増税先送りに賛成だったか反対だったかということは、結局、自民党の中でも選挙の過程では全然、議論されていません。

 自民党は「17年4月に引き上げをする」、さらには「2020年までの財政健全化目標について2015年夏までに具体的な計画を策定する」と言っていますが、それについてどのような進め方をするのか。別の言い方をすると、経済成長重視でいくのか、それとも、歳出削減と増税を組み合わせた財政収支改善でいくのかということが、本当は選挙の中で議論されればよかったのですが、選挙後に持ち越されたということになります。

工藤:衆議院選挙は政権を問う選挙なので、マニフェスト、政権公約は党内で一つにまとまるべきなのですが、自民党内ではまとまっていないということなのでしょうか。

土居:そうだと思います。特に、2020年までのプライマリーバランス黒字化目標達成は安倍首相も公言されましたし、マニフェストでも書いていますが、消費税を10%以上に上げることに対し「反対だ」と根っこでは思っている候補者も明らかにいるわけです。けれども、「やむなし」と思っている候補者もおそらくいるでしょう。ですが、それは選挙戦の中では表だって議論されず、覆い隠されているということではないかと思います。

鈴木:安倍政権では税収が多少増え、経済政策において一定の成果はあったと思います。消費税の判断と衆院解散については、私は最後まで「予定通り引き上げるべきだ」といろんな場面で申し上げていたのですが、今の統治機構のルールの中で、一国の首相が総合的に判断をしてそう決めたことですから、これは尊重すべきだと思います。ただ、安倍首相も、「10%への引き上げは必要だ」とお認めになったわけです。今回の10%への引き上げは、安倍政権ができた時には既に法律が施行されていて、安倍政権としては与件のものでした。今回先送りしましたが、「2017年4月に消費税を上げる」とおっしゃっているわけですから、安倍政権が財政再建、社会保障改革を丸ごと引き受けたことになります。総選挙後、現与党の政権が続くとすれば、財政再建は他人の政策ではなくて安倍首相ご自身の政策になったということだと思います。

 選挙戦の中では厳しいことをなかなか言わないというのが候補者にとっては合理的な行動ですから、そういう声は出てきにくい。しかし、経済成長によって税収が増えることで財政再建が達成できるとは毛頭思えませんので、どれくらい厳しいことを、少しだけでも言っているのかどうか。そこを比べて候補者の政策を評価するということではないかと思います。

西沢:私は、今回の選挙はまったくの肩すかしであったと思います。私たちのような財政・社会保障に関係している人間の間では、「財政破綻するのではないか」と真面目に心配しています。2015年10月に予定されていた消費税引き上げというのも、あくまで一里塚にすぎない。さらに、社会保障の改革、税負担の引き上げをしないと到底追いつきません。ですから、2015年10月に消費税を引き上げたら、本来、即座にポスト一体改革に進まなければいけない。その青写真を描いて、そこには当然、社会保障の厳しい内容や増税が含まれるので、そこで選挙で国民に信を問うていくというのが、私たちの通常考える常識的な相場観だったと思います。ですから、「2017年4月に引き延ばします」といった時に、「ポスト一体改革の議論はどうなるのか」、「スケジュールがタイトではないか」と思いました。自民党は「来年夏にシナリオを出す」と言っていますが、今回の一体改革は何年もかけてやってきたものであって、そんなに早々にできるはずがないのです。

 ですから、非常に肩すかしを食らっているわけで、今の選挙ではそこがまったく争点になっていないところが極めて不満です。これは財政・社会保障以外の分野でもそうかもしれませんが、マニフェストを見ますと従来通り供給者側の要望を羅列したものが多い。納税者側の立場にまったく立っていないし、有権者側の立場に立っていない。本来であれば、納税者・有権者を代表して、供給者に向き合うようなマニフェストでなければいけないのですが、向いている方向が違うという感じがしています。

工藤:私も同じ気持ちを持っています。今回の選挙は、肩すかしというか、何かズレているという感じです。税金を上げるかどうかというのは確かに大変な話ですが、2012年の総選挙の時も三党合意した増税を争点から外して、「社会保障のことも考えながら税率を上げなければいけない。そのタイミングは政権に任せます」という状況でした。その上で、財政再建なり社会保障のきちんとした体制をつくるということが、信を問うた後の政治の責任だと思っていたのですが、今回、また同じように「増税すべきかどうか」といった議論が出てくる。選挙だけはまったく別の空間という話になってしまうと、今の日本が抱えている課題という点で、かなり危険な状況に入っているのではないかと思っています。

 そこで、消費税引き上げの先送りが、日本の財政の今後の立て直しとか、厳しい高齢化の中で社会保障を持続可能なものにするという点から見ると、どのような影響があるのか、延期の影響は吸収できるのかということをお聞きしたい。


基礎的財政収支の11兆、16兆円の赤字にどう対処するのか ――2020年の政府試算

土居:非常に厳しい状況だと思います。安倍首相は、確かに2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を明言していますし、自民党のマニフェストにも書かれています。民主党のマニフェストにも書いてあって、彼らは「財政責任法を通す」を言っている。少なくとも、2020年までの基礎的財政収支黒字化については、「そこを外すと、財政健全化に不熱心な政党ではないかと思われる」というある種のコンセンサスがある。だから、さすがに、選挙が終わった後で、どこの政党も不真面目な態度を取ると、反対側の政党から「不真面目な態度を取ってけしからん」と言われる構造にはなると思います。

 ただ、内閣府が今年7月に出した試算でも、消費税率を10%に上げ、かつ名目経済成長率が3%強も続くという経済環境においても、基礎的財政収支は2020年に11兆円の赤字であり、さらには、2%台の名目成長率だとすると、16兆円の赤字だと認めています。相当厳しいということはもう今年7月の段階で分かっていたのに、消費税率引き上げを延期すると決めたのです。かろうじて「まだ何とかなる」ということであるとすれば、2017年4月に10%にするという今の公約に基づけば、2020年には少なくとも消費税は10%になっているだろうと思います。しかし、11兆円とか16兆円という赤字があるのですから、これをどうやって削減するのかということが厳しく問われます。

 ところが、これをすべて歳出削減によって実現するというのは、ほぼ絶望的だと思います。やはり、ある程度の歳入確保策、所得税を増税して取れるというのであれば、いくばくかはそれで賄ってもいいかもしれませんが、所得税も増税するには限りがあるし、法人税は、安倍内閣としては引き下げる方向だと言っているわけです。ですから、明らかに期待できる税収確保策ということになると、10%を超えた消費税の増税と言わざるを得ない。基礎的財政収支黒字化を、具体策として「来年夏までに決める」とおっしゃっている以上、来年夏までに、何か税のことを一言でも二言でも明言しないと、まともな2020年の財政健全化目標達成とは言えないと思います。所得税の増税によってやるなら、それも一つの方法かもしれませんが、必ずしも所得税だけで税を確保するのは難しい。それを考えると、社会保障の給付抑制も大事でしょうし、もっと別の無駄な支出を削るということもできると思いますが、それでもなお足らない部分をどうするかということをはっきり議論しないと、実現は難しいでしょう。

工藤:安倍さんは、解散の時に「2020年のプライマリーバランス黒字化目標を堅持する」、加えて、「来年夏に財政計画を出します」と言わざるを得なかった。自民党のマニフェストを見ると、はっきり言ってそれしかない。ほとんど中身はなくて、アベノミクスの「三本の矢」の数値目標も全部なくなっている。かなり追いつめられているような、ある意味では背水の陣のような状況に見えています。鈴木さんは、安倍さんの今までの行いを見ていても「それができるのか」とおっしゃっていますが、かなり厳しい領域に来ているということが言えるのではないでしょうか。


避けられない負担と受益の議論

鈴木:相当厳しいと思います。2020年度が期限というのは、2020年代になると団塊世代が後期高齢者になるといった人口動態から来る要請で、そこが大きなポイントなのです。それから、今、アベノミクスが目指している一丁目一番地は、デフレからの脱却です。デフレからの脱却というのは、最終的には名目金利が上がっていく世界です。今は日銀が大量に国債を買っているので金利は上がっていませんが、国の負債の増え方よりも、日銀の資産としての国債の増え方の方がネットでは大きい。だから、今の日本国債の値段がどれくらい正しいのか、本当の値段がよく分からない。ひょっとしたら、本当はもっと値段が低い、つまり金利が高い資産かもしれないのですが、今は現状の政策のバランスによって低金利が維持されている。ですから、本当にデフレから脱却して民間投資が喚起されていくことを目指すのであれば、それと同時に財政をきちんとしておかないと大変なことになる。

 もちろん、今回、安倍首相は一応財政再建の旗を降ろさなかったわけですが、一つのメルクマールとしては、消費税を上げない一方で、それを財源に予定していた歳出を増やさないことができるかどうかです。例えば、今回、年金生活者支援給付金を支給できないという話をしています。他にもいくつかの施策は、消費税を上げないとできません。西沢さんから今回のマニフェストは「供給者側の話が多い」というお話しがありましたが、納税者側では、増税先送りが負担と受益のバランスを意識するきっかけになったと思います。基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げた財源は消費税を8%にしたときに先取りしてしまったので、元に戻すことは難しいのですが、場合によっては「消費税率を引き上げないのであれば、その分、年金が減ってしまうのだ」くらいの問題意識を持たないといけない。ですから、負担と受益とをきちんと結びつけるような議論を、2020年度に向けてできるのかどうか。

 それから、今回増税を遅らせてしまったことによって、遅延コストが発生していると思います。私たちが最終的に目指すのはプライマリーバランス(PB)黒字化にとどまらず、その先で債務残高GDP比を落とさないといけないということです。ややテクニカルですが、そのためにどれくらいPBを黒字化させなければいけないのかを考えると、増税を先延ばしすればするほど借金が積み上がるので、必要な黒字化の幅が大きくなる。ですから、そういう遅延コストも実は発生しているということです。増税先送りで生じたこういう難しさを考えると、財政健全化の計画を本当に今から半年でつくれるのか、容易ではないでしょう。

工藤:消費税引き上げは、あくまで税と社会保障の一体改革の中で出てきている話なのですが、安倍政権の社会保障の評価を見ると、ほとんど進んでいない状況です。今回の延期について、社会保障の専門家として西沢さん、どうお考えですか。

西沢:安倍政権の社会保障政策は、いくつか法改正はありましたが、三党合意のスケジュールの中で行われているだけです。三党合意は2015年くらいまでしか射程に入っていませんから、選挙が終わった後に彼らがどういう独自色を出していくのか注目しています。ですから、この二年の評価というのは、三党合意の中でできただけのものであって、大きくプラスともマイナスとも言いにくいという感じがあります。

工藤:次に安倍政権の二年間の評価と絡めながら、これからの問題も一緒に議論したいと思います。まず、自民党は「2015年にプライマリー赤字のGDP比の半減、2020年までに黒字化、その後は債務残高のGDP比を下げていく」と公約に掲げ、政府としても約束して動いていました。さて、今回の消費税引き上げの延期で、それを実現できるのでしょうか。ここをまずお聞きしたい、西沢さんからどうでしょうか。


医療、介護、配偶者控除・・・数字を付けた説得メニュー提示を
            ――財政再建へ待ち受けるしんどい作業

西沢:消費税引き上げの延期は、資金繰りという意味では、あまりに巨額な今の日本の債務残高に比べると大きくないと思うのですが、今後、社会保障制度改革と財政健全化を進めるにあたってはとても厳しいことになると思います。

 社会保障改革を進めるということは、医療、介護、あるいは保育、教育などのサービス提供者に対して「ここを削ります」と交渉しなければいけない。また、年金に関しては、年金受給者の人たちに対して「ここを削ります」と交渉して、のんでもらわなければいけない。社会保障を削るだけでは、2020年度で楽観的に見ても発生するプライマリー赤字の11兆円を埋めるためには足りないので、増税もしなければいけない。消費税だけに頼れないので所得税にも手をつけるとなれば、例えば、配偶者控除を削る時には専業主婦も説得をしなければいけない。

 そういったことで、あらゆる人たちに合理的に説明していかなければいけない、しんどい作業が付きまとうのです。ペーパープランであれば来年夏に出せるのかもしれませんが、そうしたいろいろな人たちへの説得メニューに数字をつけて出して、その説得もきちんと政権が担うといったプランは出てこないと思います。

工藤:鈴木さん、少なくとも今のままでは、消費税を仮に上げたとしても、2020年に11兆円とか16兆円のプライマリー赤字が残っているわけだから、安倍さんがおっしゃっている2020年の黒字化は実現できないわけですよね。それを実現できるようなプランが出せるのか。今、西沢さんは「ペーパープランであればある程度可能かもしれない。しかし、それを実行も含めたかたちでやるとなるとかなり難しい」とおっしゃいましたが、ペーパープランはできるのでしょうか。

鈴木:歳入側から申し上げると、今回、いわゆる弾力条項で「景気が悪いので先送りする」という判断をした。しかし、次回は弾力条項を置かないと言っている。「今回、景気が悪いから先送りするが、次回は景気が悪くてもやる」という言い方がどれくらい信用できるのかどうかが問題です。今回の弾力条項は、経済財政状況の激変に対応するために置かれたものですが、今が本当に上げられないほどの状況と言えるのか疑問です。リーマンショック並みの世界同時不況だとか東日本大震災並みの災害が起きた時には、もちろん法律を改正すれば先送りはできるわけです。ですから、今回も次回も、弾力条項があってもなくても判断で先送りができてしまう。私は、景気悪化が深刻な時は増税を避けるべきだと思いますので、次回、弾力条項がないのはむしろ問題だと思います。今回先送りしたという実績によって、まず「次回、上げられるのか」。さらに、10%では足りないわけですから、「その先にどのようなプランを描いて、場合によってはさらに上げられるのか」という信用の問題があると思います。この点は非常に重要な問題であって、「景気が悪いから今回はそう判断した」というあいまいなことが許されないような客観的・具体的な増税の条件に関する議論をどれだけ深められるかがポイントだと思います。

 それから、歳出側については、やはり社会保障が一番の課題です。2012年の社会保障・税一体改革の後は、西沢さんも尽力されて、社会保障制度改革国民会議の議論によってプログラム法(社会保障制度改革の全体像・進め方を明らかにする法律)ができた。今年の通常国会では、医療・介護の効率化を進めようということについても法律を通して、少しずつ進んでいる。現在は、土居先生が所属されている社会保障制度改革推進会議において、2025年までの改革について具体的に議論すると言っています。ただ、今の日本は、超高齢化の中ですから、やった方がいいことばかりで、請求書が積み上がっているわけです。その中で、「どれを払って、どれを少し遠慮してもらわなければいけないか」という仕分けをしないといけない。やった方がいいことは無限にある中で、「どこを増やさない」、「どこを削る」ということを具体的につくっていけるかどうかが、財政健全化計画では最も重要です。

工藤:歳入の問題で、今、鈴木さんは、「引き上げそのものができるかどうか分からない」とおっしゃいました。引き上げたとしても歳入が足りない。安倍さんは解散表明の時に「2020年の黒字化目標は堅持します」と言ったわけですが、どうなのでしょうか。


2020年の黒字化目標へ、出せるか「骨太の方針2015」
  ――問われる安倍首相の本気度 

土居:もし本気で「堅持します」と言ったならば、引き上げをやるべきです。やらないと責任問題になると、私は思います。ただ、残念ながら、「先送りした」という禍根が残っているわけです。鈴木さんがおっしゃったように、「一度、先送った人だから、二度目も先送るのではないか」と。普通の人間関係でいっても、「一度約束を破った人ともう一度約束を交わすとなると、本当に今度は破らないでしょうね」という気持ちは、どこかしら不安感として残る。それを払拭するために、本気で2020年の黒字化の具体策を「来年の夏まで」とおっしゃったのではないかと、私は評価しています。そういう意味では、おっしゃったからにはちゃんとやっていただかないといけない。

 問題は、その本気度です。安倍さんに、「それなりの具体策をこういう方向で、あとの細かいところは司、司でまとめてくれ」というくらいのリーダーシップを発揮する、という意気込みが感じられるかというと、残念ながら今のところ見出せません。

工藤:消費税10%への引き上げを実現したとしても、プライマリー赤字が11兆円とか16兆円あって、しかも、まさに時間がないわけです。この目標を堅持するということであれば、ペーパープランであっても実現するものが描けますか、それはどのようにするのですか、ということをお聞きしたいのです。社会保障費がどんどん増えている状況の中で、例えば歳出カットだけでできるかとなると、やはり増税をしなければいけない。この二年くらいの間で物理的にできるのでしょうか。

土居:増税を前面に出せば、実現できなくはない数字ではあるわけです。例えば、11兆円足りないというなら、消費税を5%上げれば十分おつりが来ます。けれど、さすがに、国民がそんなことに、「賛成です」と言ってくれるはずはないわけですから、当然、「どれだけ歳出削減を積み上げられるか」ということで信憑性が出てくる。国民が「そこまで歳出削減するのなら、少しの増税はやむを得ない」と言ってくれるのか、それとも「この程度の歳出削減では、増税なんてダメだ」と評価するのかという次元になってくると思います。

 あとは、歳出削減の実現可能性ですが、西沢さんもおっしゃったように、関係諸団体に納得してもらわない限り、そんなプランを「合意できた」と言って公表するのはまず難しい。そうすると、「ペーパープラン」と西沢さんがおっしゃったところで言えば、かつて、小泉内閣最後の骨太の方針として「骨太の方針2006」が、2011年のプライマリーバランス黒字化を目指す計画として出された。もちろん実現できなかったのですが、工程表のようなものは一応出ました。この次の機会には、安倍さんがおっしゃったならば、その通りのことを実現するために、少なくとも骨太2006以上のものが出ないと、まったく空手形だと言わざるを得ない。骨太2006もそれほど完成度の高いプランではなく、幅があったり、具体的に何をするかは先送って歳出削減幅だけ示していたり、「それでも、まだ足らないのでどの税を上げるか」は何も書いていなかったりと、いろいろ問題があったけれども、やはり、ないよりはあった方が良かった。そうすると、最低限、骨太2006の内容程度のものを「2020年の黒字化目標」ということで来年夏までに出せるかどうか、というところが問われると思います。

工藤:西沢さん、社会保障の持続可能性、つまり、これから社会保障の足りないところを埋めながら持続的なものができるかどうかが問われています。今年6月に発表された年金の財政検証も含めて、年金制度や医療保険制度などいろんなところに本質的な構造問題がけっこうあります。それに対してきちんとしたことをやらなければいけないというのが、西沢さんがこの間ずっと主張していた点だと思います。その視点から見て、追加の増税がない中で、歳出を本当に11兆円削減することはできるのでしょうか

西沢:追加の増税がないとできません。歳出削減といっても、おそらく11兆円のうち半分にもいかない。今、国の一般会計だけで社会保障関係費が約30兆円ですが、社会保障給付費全体で110兆円近くに達しています。ですから、110兆円のうち例えば給付を10兆円減らしても、国庫の歳出が減るのはその3分の1の3兆円くらいになります。社会保障給付費を10兆円減らすのは、間違いなくできないでしょう。

工藤:10兆円減らすというのは、どういうことを想定すればいいのですか。


歳出削減しながら増税、の議論を

西沢:例えば年金を減らすなどといったことです。それは一朝一夕にはできないし、高齢化も一段と進むので所要額は増えていきます。

 また、財政健全化はとても重要ですが、一方で、高齢者人口が増え、現在、年間120万人の人が亡くなっています。これがこれから160万人に増えていくわけです。その人たちの亡くなる場所をどのように確保するのかといった問題もありますし、あるいは、確かに年金を削れば帳尻は合いますが、貧困高齢者が大量に発生したときにどう対応するかといった問題もあります。確かに、給付を切れば財政は良くなりますが、一方で国民生活が脅かされることになりますから、私は、歳出削減をしつつも増税を中心に議論していくしかないと思っています。

工藤:鈴木さん、増税を延期するとあまり時間がない中で、黒字化の目標設定を堅持すると言っているのですが、この目標の意味とは何なのでしょうか。日銀の国債買い入れを含めて、日本の経済・財政がかなり危うい均衡の中に立っている中で、市場に何度もコミットメントしている。しかも、今回、解散表明の時ですらそれを言った。これを堅持できなくなる状況になれば、どういう事態になるのでしょうか。

鈴木:「成長するので大丈夫だ」という漠然とした議論が、市場などにもあると思います。実際、税収は少し増えています。しかし、やや専門的になりますが、私たちが減らさなければいけない給付は何かというと、賃金対比の給付水準です。なぜなら、賦課方式でやっている制度だからです。保険数理の公正さとか所得分配の正しさを持続可能なものにすることが目的ですが、それを経済成長というダイナミズムとのバランスの中で構想しなければいけない。所得分配のあり方、あるいは公正な保険という問題なので、成長してもしなくても制度を直さないといけないわけです。成長すればみんなでそれなりに豊かになるし、成長しなければみんなで貧しくなる。ただし、いずれのケースであっても、現在の仕組みは持続不可能だから今の問題があるわけですので、賃金対比の給付水準を引き下げていかないといけない。

 そういう改革によって財政健全化を進めていくということを信じてもらうためには、骨太2006やその前の1997~98年に作った財政構造改革法のような、きちんと数字を伴った計画をつくらないといけない。日本はこの20年の間に、財政構造改革に数回失敗しているわけです。そこには、社会保障制度改革とうまくリンクしていなかったとか、地方財政の改革とうまくリンクしていなかったとか、あるいは景気弾力条項のようなものをうまく考えていなかったなどの教訓がたくさんあります。その教訓を活かした新しい財政再建プランを、歳出削減や増税に関する数字を持ったものとしてつくっていけるかどうかが課題です。

工藤:それが絶対に実行可能で、しかも実行を担保させないといけない。

鈴木:さらに申し上げると、2020年に黒字化すればいいという問題ではないわけです。高齢化はその後さらに進んでいくので、我々が目指したいのは、2020年代、30年代を乗り越えていけるような方向性を2020年ごろにつくれるかどうかという話なのです。もちろん、2020年度時点でどのくらい調整が必要かということは重要なのですが、そこで終わりではないのですね。

工藤:これは本質的な話になってくるのですが、「それを本当に実行できるか」、少なくとも安倍政権は、財政構造改革なり財政の再建に熱心だったのでしょうか。

土居:私は、それほど熱心だとは思いません。消費税を増税するという旗を掲げて補正予算を組んだのですね。それが誤って「消費税増税は公共事業に回されたではないか」のようにも取られたりするということは、財政に対しては全然熱心ではないと言わざるを得ません。

工藤:あと、リーマンショック後も歳出が非常に多い。この前のアベノミクスの評価の時も言ったのですが、戦後、どんなに成長しても、入ってきた税収は60兆円くらいです。今、90兆円くらいの歳出が高止まりして、それを減らそうという動きがない。そもそも、財政の余剰をつくる構造ではないわけです。日本の政治や政権はそれを何も考えていないという状況の中で、「どうやって財政再建ができるのだろう」か。安倍政権が「2020年までのプライマリーバランス黒字化目標を堅持する」と明言したということは、ある意味で目標に対してかなり追い込まれてきているのだなと思います。逆に、「それほど財政が厳しいのではないか」と感じてしまうこともある。黒字化を成り立たせる計画をつくるのがかなり厳しいということなのですが、鈴木さんにもう一度聞きたいのは、この目標が達成できなかった場合、どんな状況になるのでしょうか。


財政破綻の姿とは ――インフレ、円安で落ちていく国民生活の水準

鈴木:そのご質問は、要するに財政破綻を想像するということになります。よく「財政破綻すると金利が上がる」と言われますが、デフレから脱却してくれば、それでなくとも名目金利が上がってきて政府の利払い費が増大します。日本政府はこれだけの負債を抱えたにもかかわらず、1985年から2004~05年くらいまでずっと政府の利払い負担のGDP比が下がってきていました。しかし、その後はそこから徐々に上昇しています。つまり、債務の増え方の圧力と、金利がうまく抑えられている圧力とが逆転したわけです。ですから、財政健全化が進まないことによって金利が上がり出すと、利払い負担がかなり増えてくる。今は「プライマリーバランス赤字」と言っているのですが、PBを多少改善させたとしても、今度は利払い負担が増えて「財政赤字」全体がかなり大きくなっていく。利払い負担も立派な赤字です。今までPBしか考えていなかったけれども、トータルの財政赤字が非常に大きくなるという現象が生じて、いわば利払いのために国債を発行するという状況が生まれるリスクがあります。

 ただ、今、日銀が2%の物価目標で金融緩和をやっていますから、日銀が金融政策の一環として、資産としての国債を買い入れることをずっと続けるとすれば、間接的に財政を支えることになります。そうすると、金利は上がらないことも十分起きうるわけで、そのときに何が起きうるかといえば、インフレや円安の加速ということになります。インフレや円安で、結局、実質的な所得が下がって国民生活の水準をどんどん落とすことになる。財政破綻の姿というのは、そういうことだと思います。

工藤:2020年のPB黒字化は途中の一里塚であって、最終的には、これからの急激な高齢化対応をするだけでなく、今の国債累増の構造を直していかなければいけない。土居さんは政府のいろんな審議会にも入っていますが、本当に財政再建をやるという覚悟が、日本の政治にあるのでしょうか。

土居:残念ながら、政治にはないというべきだと思います。結局、予算は収入と支出の尻を締めなくてはいけなくて、もちろんそれは内閣としてその責任を取るということなのですが、実務的な作業は、結局財務大臣が責任を取って、財務省がやるということになります。結局、予算を要求する側は、ただひたすら要求するだけに終わってしまう。それで認められたら「勝った」、認められなければ「負けた」という雰囲気でやっているというのが実態だと思います。

 本来、政治家は、財務大臣だけでなく、政調会長でも総務会長でもどなたでもいいのですが、収支の尻を締めるということに対して猛烈に熱心な人がいないといけない。ところが、ただひたすら利己的な要求を言うだけの人か、ないしは、かなり空理空論だけれども「こうやったらうまくいくのではないか」と実現できないようなことを言う人か、どちらかのタイプの政治家が多いということが非常に残念です。具体的に財源も意識しながら、それでいて国民の要望も聞き入れながら、「どうやって収入と支出をマッチングさせていくのか」というところにものすごく神経を使う、そういう政治家があまりにも足らなさすぎると思います。


工藤:社会保障という点ではどうでしょうか。これも国民にとって非常に大きな、自分たちの人生を決める話になるのですが。


高齢化の時代に沿った社会保障財政モデルへの抜本改革を

西沢:今の社会保障の財政構造は、赤字がどんどん増えていく構造になってしまっています。というのも、各社会保険法の法律の前の方に「国庫負担」という項目があって、それは「支出の一定割合を国庫負担にします」という義務的経費の法律になっているのです。

 これは、高齢化率が低くて、税収の自然増が見込めたころの過去のモデルだと思います。ですから、高齢化と人口減少が進むなかで、社会保障給付は自然に増えますが税収は減っていくので、赤字は拡大するに決まっている。

 本当は、こうした社会保障財政の過去のモデルを新しいモデルに改める―これはまさに税と社会保障の抜本改革なのですが、これに取り組む発想がない限り、今の社会保障財政の構造のまま削ったり増やしたりしていっても、高齢化のスピードに追い付かないと思います。

 政治家の資質ももちろん重要ですが、政治家自身も制度が複雑すぎて、ガバナンスができていないですし、国民も理解できていない。そうではなくて、高齢化が進む中でのこれからの時代に合った社会保障財政構造に改めない限り、難しいと思います。

工藤:しかし、今、皆さんが言われた話は、選挙の場ではほとんど語られない。今回の選挙は、消費税引き上げを延期するということが非常に大きな問題提起になっているのですが、選挙は昔と同じような構造が続いている。こういう局面を、有権者はどのように考えなければいけないのでしょうか。

鈴木:「消費税の税収は社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化対策)に充てる」と、現在の消費税法には書いてあります。一体改革とはまさにそういうことだったわけです。ですから、社会保障給付を増やしたい、あるいは減らしたくないということであれば、もちろん消費税以外の財源でもいいのですが、消費税率をきちんと上げて持続可能な状況をつくらないといけない。それをまず認識する必要があるということです。ところが、実際には、景気回復で税収が少し増えると「税率を上げずに、それを社会保障に回そう」とか「法人税減税の財源に使うことにしよう」とか、循環的に増えたに過ぎない税収を使ってしまいがちなわけです。税収が減るときには歳出を減らしたり税率を上げたりせずに国債を発行するわけですから、この税収と歳出の非対称性をずっと続けてきている。「将来世代、あるいは日本という国の将来を考え、さすがにここで何とか歯を食いしばろう」という決断をしたのが2012年の一体改革だったはずです。

 社会保障というのは、病気になった方とか長生きした方への給付ですから、元来、広い意味での弱者対策なのですが、消費税率を引き上げようというときには、それはそれで軽減税率や簡素な給付措置、一時的な公共投資のような対策が必要だという話になっています。8%に上げる時にもいろいろなことをやりました。工藤さんがおっしゃったように、リーマンショック以降、高止まった歳出水準をなかなか下げられないでいるというのはその通りです。

 目の前の利害だけを考えればこれでいいかもしれないけれども、全体として長期的に見て持続性があるのかどうかを考えなければなりません。一票の格差をきちんと是正しないと非常にゆがんだ判断になるという問題もありますが、有権者が長い視野も持ってこういう問題を考えるべき局面に、いよいよ来ているのだと思います。

工藤:こういう構造問題に、日本が本気になって取り組まなければいけない時に、政党はどのような約束をすべきなのでしょうか。


成熟した政党政治とは

土居:もちろん、投票率が高いからといって、高齢者の方ばかりを向いて、結局は財源のしわ寄せを若い世代ばかりにさせているという構図ではない、きちんと老若合わせて、ないしはまだ見ぬ将来世代にもツケを回さないようなかたちで、どうやって社会保障なり今の行政サービスの財源を支えていくのかということを、きちんと明らかにしていく。何かのスケープゴートを、例えば「公務員人件費さえ削れば何とかなるのだ」と逃げ道にしないようなパッケージをきちんと示せるようにしなければいけない。

 私は、小選挙区制は良いと思っているのですが、本来の政党本位の小選挙区制であれば、まずは政党として「何が国民に対する約束なのか」ということを打ち出す。アメリカの政党もイギリスの政党も、きちんと候補者を束ねているような大企業的な組織になっていて、そこで小選挙区がある。そういうことであれば、辻褄が合うと思うのですが、「お山の大将」のような小選挙区のそれぞれの候補者がいて、極端に言えば「党中央は私の気に入らないことも言っている。それには私は従わないつもりで、私は私なりに有権者に訴えていくのだ」というような、それぞれの選挙区で自分の言いたいことを言って当選していくというやり方だと、なかなか政党政治が成熟していかないのかなという感じがします。

工藤:政党政治が機能していないという惨憺たる光景が今の日本の政治だ、ということでしょうか。西沢さん、これを将来に向けて動かすためには、政党はどのような手法で国民に約束することが問われているのでしょうか。例えば、財政規律を法律で縛っていくとかいろいろな話があります。

西沢:先ほど土居先生から政党のガバナンスの話がありましたが、政党というのは今、社長の集まりのような感じになっています。本当は、スタッフとか組織が重要だと思うのです。ですから、選挙のときにドタバタでマニフェストをつくるのではなく、日ごろから政党も情報発信して、私たちがウォッチする必要があります。

 また、これは政治家だけの問題ではないのですが、政策に関する労働市場の流動性が低くて、本当は言論NPOのスタッフが政治家になってもいいし、私たちがなってもいいし、終わったらまたここに戻ってきてもいいということになるといいのですが、硬直的なかたちになっているのが非常に問題だと思います。

 もう一つは、これから高齢化が進んでいく中で、政治家が増税を訴えて選挙に勝てるかといえば、よほどのスーパースターでない限り勝ちにくい。それを訴えても、国民が理解できるようにシステムをシンプルに変えて、また情報公開をシンプルにしていくような制度をつくっていかないと、政治家がいくら蛮勇を振るえど、うまくいかない。そのシステムの中でサポートしていく必要があると思います。

土居:「増税を訴えてもなかなか選挙で勝てない」というのは、確かに、一人一人の候補者が自分の選挙区で勝てるかというレベルの話をする時にはそうかもしれません。しかし、実は、1996年の衆議院選挙もそうだし、2012年の衆議院選挙で自民党が勝った時も、一応、増税を党として認めていた。極端に言えば、もちろん個々の政治家が「もうこういう財政状況なのだから私は増税を訴えます」と蛮勇を振るってくれてもいいのだけれど、いきなりそうはならないのであれば、まずは政党が党として「それをやります」と訴える。個々の政治家は、それに属している政党の候補者だということで、政党を看板というか防風壁としてやるという手も、日本の政治にはあるのではないかと思います。

工藤:確かに、三党合意の前は、増税ということに関して政党が問われたわけです。その中で、確かにマニフェストに書かれていた。今回の事態はどうかというと、安倍さんは別に増税から逃げたわけではない。延期して次にやると言っている。ただ、安倍さんが首相として本当にそれをやれるかどうか、という話ですね。今の話ですと、政治的な構造にしても、社会保障のいろいろな現行の構造にしても、かなり厳しい状況で、今まであまり取り組んでいなかった、ということになっています。そういう中での選挙ですが、これを有権者はどう考えればいいのでしょうか、鈴木さん、どうでしょう。

鈴木:安倍首相がもし給付を減らさなければいけないと本気でお考えなのであれば、それだけでは国民にとっては生活水準を落としてしまうことになるわけです。この点は、給付を減らさなければならないことを、成長戦略とうまく組み合わせる必要があって、「医療・介護は成長戦略ではない」とおっしゃる方もいますが、私はそんなことはないと思います。いわゆる官製市場で、資源配分を政策的・政治的にやっていますから、もっと工夫することによって、潜在的な、あるいは既に行列になっている需要を顕在化することができるはずです。年金にしても医療・介護にしても、成長戦略といかに結びつけるかの戦略をもつ政党が必要です。それで新しい市場ができて民間側の投資が起きないと、増税と歳出削減だけでは財政健全化は達成できないと思います。

工藤:分かりました。ただ、成長戦略は時間軸がない目標です。そのプロセスの中で税収がそれによって大きく変わるという、構造的な問題なのですね。

鈴木:負担増と給付削減を強いるだけでは絶対に成功しない問題だと思います。

工藤:4日後の選挙を前に、多くの人は悩んでいると思います。つまり、有権者の中には、何となく感じ始めている人がいるのではないでしょうか。昔と同じように「税金は嫌だ」というよりも、「この国が持続可能なのか」という状況をきちんと見なければいけない局面です。有権者は今、何を考えればいけないのか、最後に一言ずつ頂きたい。


投票率の低下は民主主義の後退

土居:少し逆説的ですが、「誰を勝たせるか」ということで票を入れるというのが投票行動だと思うのですが、「誰を負けさせるか」ということも、一つの考え方だと思います。与党を負けさせたいというのであれば、野党に票を入れればいいし、「野党は抜き打ち解散で候補者を立てられない、解散権は首相にあるのだけれど、なぜ臥薪嘗胆でちゃんと候補者を準備してこなかったのか。こんな体たらくの野党ではダメじゃないか」という意味での与党への投票というのもある。もちろん、どういう思いが一票になるのかというのは人によって違うので、集計した結果をどう評価するかという悩ましい問題があるのですが、一有権者としての思いというのは、「誰を勝たせるか」という判断で入れるもよし、「誰を負けさせるか」という判断で入れるもよし、ということなのかなという感じがします。

西沢:与党が勝とうが野党が勝とうが、より重要なのは投票率だと思います。有権者が各政党からきちんと情報を得て、判断して、投票所に足を運ぶという数字が前回よりもさらに落ちるとなれば、それは民主主義の後退といえるのであって、選挙を決断した人の責任は極めて重いと思います。

 ですから、投票率にも注目したいし、今回、安倍さんたちが言っている来年夏の計画策定も含めて約束をきちんと覚えておいて、それまで我々がウォッチして、注文していかないといけないと思います。

鈴木:候補者が言っていることを見極めるということについて、私たちは有権者としてこれまでより進歩しないといけないと思います。今、西沢さんがおっしゃった「投票しない」というのは、結果について消極的に支持したということになるので、候補者の主張を見極めて、きちんと投票行動を起こすということだと思います。

工藤:これまで八夜連続で、評価の会議を公開してきました。基本的に、今、日本はかなり重大な局面を迎えている。ということは、今回の選挙は、極めて大事な選挙で、まさに将来に向けての選択を問われるものにならなければいけない。それが、そういうかたちに、なかなかなり切れないという状況は非常に残念です。

 ただ、皆さんが口を揃えていたように、これからは絶えず政治をウォッチしていかないとダメだと思います。次の選挙までゆっくりしているわけにはいかない。それくらい、政治の責任は重くなるし、私たちも、本当に誠実に今の課題に取り組む人を選ばなければいけないとなると、私たちの目も問われてきます。そこへの一歩で、思ったこと、考えたことを実現するために投票所に足を運ばなければいけないと思いました。有権者の皆さんは、この八夜の議論をぜひ参考にしていただければと思います。皆さん、ありがとうございました。

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