「議論の力」で強い民主主義をつくり出す
2017 / 07 / 13
[ 日米対話| 北朝鮮の核ミサイル問題 ]
言論NPOは、2017年1月20日に発足したトランプ政権が半年の節目(7月20日)を迎えるのを前に、トランプ政権や日米関係に関する緊急世論調査を行い、その結果を公表します。今回の調査は、日本全国の18歳以上の男女を対象に6月17日から7月2日まで、訪問留置回収法により実施し、1000人の回答を分析したものです。
まず、アメリカのトランプ大統領のこの半年の発言や行動を見て、同盟国であるアメリカに対する信頼が、どのように変化したかを尋ねました。
最も多い回答は「信頼が減少した」の50.8%で、半数を超えました。信頼関係は「変わらない」と回答したのは22.5%で、2割程度でした。
「信頼が減少した」と回答したのは女性や50歳代(50~59)が最も多く、特に女性の50歳代は65.3%が、「信頼が減少した」と回答しています。
一方で、「信頼が向上した」との回答は2.0%に過ぎませんでした。
「もともとアメリカに対する信頼はない」(9.2%)との回答も1割ほど存在しました。
次に、トランプ大統領の登場が、今後の日米関係にどのような影響を及ぼすかを尋ねました。56.9%と6割近くの人が「今後の日米関係に不安が高まっている」と回答しています。これに対して、「日米関係に影響があるとは思わない」は13.5%、「より強い日米関係を構築できるチャンスである」は7.4%に過ぎませんでした。
こうした日米関係への不安は、前問と同様に女性層や40歳代、50歳代で相対的に高く、特に女性の40歳代(40~49)は63.5%、男性の50歳代(50~59)は63%が、「今後の日米関係に不安が高まっている」と回答しています。
ただし、「わからない」との回答が22.0%存在しており、判断を決めかねている層が一定程度存在しています。
次の質問は、トランプ大統領の行動が、アメリカがこれまで主導してきた国際秩序に対する影響力にどのような変化をもたらすか、ということです。
回答で最も多かったのは「アメリカが主導した国際秩序自体を壊しかねない」の44.1%で、「アメリカの影響力を弱めることになる」(14.4%)も含めると、6割近い人がアメリカの国際社会での影響力の低下を危惧しています。
一方で、「わからない」(24.3%)との回答も2割強存在しており、トランプ政権の行動が、今後の国際秩序へのアメリカの影響にどのような変化をもたらすのか、判断を決めかねている人も一定程度いることが分かります。
次に、トランプ大統領の登場によって、世界の課題の8分野において今後アメリカに国際的なリーダーシップを期待できるかを尋ねました。
アメリカに今後の国際課題でリーダーシップを「期待できる」分野で最も回答が多かったのは「国際テロ対策」の41.8%(「期待できる」と「ある程度期待できる」の合計)ですが、それでも4割に過ぎません。次に多いのは、「アメリカの世界的な軍事同盟関係の強化」ですが、これを期待する人は35.8%(同)で、逆に「期待できない」の43.5%(「あまり期待できない」と「全く期待できない」の合計)の方が多くなっています。
残りの6分野では、「期待できない」との回答が6割を超えており、特に、「国際的な貧富の格差や不平等の是正」(75.3%)や「気候変動への対応」(73.5%)については、7割を超える人が、アメリカのリーダーシップは「期待できない」と回答しています。
安倍政権の外交は、これまで日米関係を重視して、世界の課題に関しても積極的な対応をしています。こうした安倍政権の外交政策については「評価している」(25.4%)との回答が「評価していない」(16.2%)との回答を上回りました。
しかし、「どちらでもない」(39.7%)と「わからない」(18.5%)との回答を併せると半数を超えており、判断を保留している人が多数を占めています。
次の質問は、トランプ政権誕生後の日米関係をどのように考えるのか、です。
ここでは4つの選択肢から選んでもらいましたが、回答で最も多かったのは、「アメリカとの関係は今後も大事だが、アメリカとの関係だけを重視するのは危険である」の41.3%でした。また、「アメリカの行動は問題が多く、よく注意して付き合うべきだと思う」も10.3%あり、半数を超える日本人が、今後の日米関係に注意が必要だと考えています。
これに対して、今後の日米関係の発展を重視する回答も3割あります。
その中では、「大統領にかかわらず、アメリカとの関係は日本の外交政策の基軸であり、今後も特別な関係として発展させるべきである」は22.0%と2割あり、また「アメリカとの関係は大事であるが、まだぜい弱な面もあり、より強いものにする努力が必要だということがわかった」も10.6%あります。
安倍政権の外交政策を評価する人には、今後の日米関係の発展を期待する回答が多いですが、安倍外交を評価する人の中でも37.4%が、アメリカとの関係だけを重視するのは危険だと答えています。
最後に、今、世界で求められている日本外交の役割について、質問をぶつけました。
これに対しては、「日本は過度にアメリカとの同盟関係にこだわるべきではなく、中国も含め様々な大国との関係正常化や協力を考える時期である」(38.1%)との回答が最多となり、アメリカ一辺倒の動きに警鐘を鳴らしています。
その中で、国際秩序が不安定化する中で、自由や多国間主義に基づく国際協調など、戦後の世界を支えてきた規範や仕組みを発展させるために、日本の役割やリーダーシップを求める声も3割存在しています。
回答では、「日本は、不安定な国際秩序下だからこそ、自由や民主主義、多国間主義に基づく国際協力など、戦後世界を主導した規範を守り、先進民主国間でリーダーシップを発揮すべき」が17.0%あるほか、「日本は、この状況下でアメリカ以外の先進国との連携を強化し、多国間の枠組みを軸とした共同のリーダーシップを発揮すべき」が9.7%と1割程度あります。
一方で、「アメリカとの協力関係をこれまで通り、一層強化し、アメリカを軸にした2国間での国際的なリーダーシップを強化すべき」(12.3%)と日米関係の強化を支持する声も、1割程度存在しています。
言論NPOは、不安定な状況が続く東アジア地域の紛争を回避し、また国民相互の信頼関係を生み出すため、多くの人が当事者として課題を共有し、その解決に乗り出し、世論を動かす「新しい外交」に取り組んでいます。私たちはこれを「言論外交」と呼んでいます。
政府間外交が十分な機能を発揮しないなかで、言論NPOは、中国や韓国との間で民間レベルでの二国間対話を毎年実施するとともに、米国などを巻き込んだ多国間の民間対話を実現しています。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中)
また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。
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