言論外交の挑戦

北朝鮮を核保有国として認めない点では一致するも、その具体策は各国で対応が分かれる
~「日米中韓4カ国対話」非公開会議 報告~

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⇒ 北朝鮮問題の解決に向けた環境づくりが民間でも始まった ~「日米中韓4カ国対話」を終えて
⇒ 北東アジアの平和構築に向けた多国間協議の第一歩が始まった
~「日米中韓4カ国対話」公開フォーラム 報告~

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 10月27日、言論NPOは東京都内のホテルオークラ東京にて、「北朝鮮の核脅威と北東アジアの平和を考える」をメインテーマとした「日米中韓4カ国対話」を開催しました。

 言論NPOは2013年に中国との間で合意した「不戦の誓い」以来、北東アジアに平和秩序を作るという目標を掲げ、周辺各国との対話に取り組んできました。

 今回の対話は、これまで中国と韓国と二国間対話に、米国というプレーヤーを巻き込んで北東アジアに平和秩序を構築するための一環として行うたいわです。

 まず午前中には非公式会議が行われ、北朝鮮の核脅威を解決するためにどのようなシナリオが考えられるのか、そのために4カ国はどのような協力をしていくべきなのかなどについて意見交換が行われました。

MHI_0251.jpg 冒頭、司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志は、「言論NPOは北東アジアに平和秩序を作るための作業を開始したが、そのためには北朝鮮問題の解決が不可欠だ」と今回の対話の背景を説明。その上で、出席者に対して「現在の北朝鮮を取り巻く状況をどのように見ているか。その状況を踏まえて各国は何をすべきか」と問いかけました。


圧力を高めると同時に、クライシスマネジメントが不可欠

 これに対し日本のパネリストは、1990年代以降の北朝鮮の核開発問題への国際社会の対応は、「トランプ米大統領が言うように、20年間失敗の連続だった」とし、そのように20年もの猶予を北朝鮮に与えた結果、核・ミサイルの技術レベルは「再突入の際の強度だけは不明だが、もうほとんど完成しているものだと想定すべき」としました。

MHI_0387.jpg 一方で、ここからさらに一段階上の技術、例えば多弾頭化などを獲得するためには時間がかかるとし、「今度は時間のメリットはこちら側(日米など)に来ている」と指摘。そして、中露も賛成した安保理制裁決議により、どこまで制裁をするかメルクマールが明確になったこと、米国が本腰を入れ始めたこと、中国も取り組まざるを得なくなったことなど、「国際社会として圧力をかけていくための態勢が整った」とし、「金正恩にも焦りが生じ始める中、どう圧力を高めていくか」が今後の課題になるとの見方を示しました。

 しかし同時に、「非常事態に備えるためのシナリオも考えていく必要がある」とクライシスマネジメントについても指摘しました。


安全保障のジレンマに陥らないように注意が必要

MHI_0291.jpg 米国のパネリストは、トランプ政権が外交・安全保障政策において、北朝鮮問題のプライオリティを上げたことを評価。そして、政権が想定している最悪のシナリオは、北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)によって米国の複数都市に対する直接攻撃が可能となることであり、朝鮮戦争は「最悪から2番目」の状況だという問題認識も明確になっていると解説しました。

 一方で、「危機を未然に防ぐための武力行使は可能なのか」という議論はまだ始まったばかりであり、「米ソ冷戦期のように、まだ説得による抑止も可能との議論もある」ため、まだ確固たる方針は定まっていないと説明しました。その上で、今後はミサイル防衛などで同盟国との連携を深めていくことになるが、中露との協力も重要であり「安全保障のジレンマに陥らないように注意が必要だ」と語りました。

 また、対話については、「米国が期待するレベル(核放棄に応じるなど)は難しいだろう」としつつ、「対話によってハードルを下げることも必要かもしれない」としました。


グローバルな協力の下、様々な手段を組み合わせていく

 朝鮮半島有事の際、最も大きな被害を受けると見られる韓国のパネリストは、北朝鮮の核・ミサイル開発が長足の進歩を遂げたことにより、「非核化のチャンスがどんどん遠のいている。そして、ソウルは大きな危機に直面している」と現状に対する強い懸念を表明。そして、トランプ大統領と金正恩の間ではすでに「言葉の戦争」になっているとし、そうした状況の中で不測の事態が起これば「容易に軍事衝突までエスカレートしてしまう。最悪の場合、ソウルでは70万人が死ぬことになる」と警鐘を鳴らしました。

MHI_0400.jpg そうした中で韓国としては、経済、外交を組み合わせつつ、圧力をかけたり封じ込めを図っていくしかないとしつつ、そこではグローバルな協力が不可欠と主張。11月に予定されているトランプ大統領のアジア歴訪で「関係諸国が安心できる材料が出てくれば」と期待を寄せました。そして、韓国自身の核武装や米国の戦術核の配備については、「一旦それをやってしまえば、恒久的な非核化はますます難しくなる」とし、オプションたり得ないとの見方を示しました。


国際社会が協力してコントロールしていくことがベストシナリオ

 次にパネリストの1人から、今後考えられる4つのシナリオが提示されました。まず、最悪のシナリオは「北朝鮮を核保有国として認めること」で、そうなった場合、世界の核不拡散体制が崩壊すると語りました。次に、「米国が軍事行動を展開する」シナリオは、それによって北朝鮮をどこまで抑えられるか分からないし、何よりも北東アジアの平和や協力発展が終わってしまうと述べました。3つ目のシナリオとして、「現状維持。世界が北朝鮮を無視、放置すること」を挙げましたが、そうなった場合、北朝鮮は孤立化することによって「何か新たな別の動きを見せるかもしれない」という不確定要素があるとしました。最後に、最も良いシナリオは、「国際社会が何らかの取り決めにより、北朝鮮の核・ミサイル開発をコントロールしていく」ことだとしました。

 その上で、中国も最後のシナリオがベストだと考えているとし、「力で解決しようとすればするほど北朝鮮も反発する。米中露が中心となって関係諸国が猜疑心なく協力を進め、対話による解決を図るべき」と語り、韓国のパネリストと同様にトランプ大統領のアジア歴訪がそのための重要な好機になると期待を寄せました。


北朝鮮を核保有国として認めたら、核不拡散体制は終わる

 日本の別のパネリストは、1994年以降、ずっと対話が失敗し続けてきたことから「『対話による解決』という言葉は美しいが、24年間失敗続きだったことをどう考えるべきか」とし、これまでと同様の対話スタイルを続けることには懐疑的な見方を示しました。また、北朝鮮が核・ミサイルを自国の生存のための戦略と位置付けることを止めない限り、米国が対話でハードルを下げることにも意味はないとしました。

MHI_0084.jpg さらに、中東、南米にも核保有志向がある国が複数あることを紹介した上で、北朝鮮を核保有国として認めた場合、「それらの国々も続き、世界に核が拡散していく」と指摘。そうした状況になると、「偶発的ではなく、意図的な核戦争もあり得る」とし、そうならないためにも北朝鮮に対しては、「最終手段のオプションとして、軍事行動を念頭に置きながら議論すべき」と主張しました。


圧力にはまだ大きな余地がある

 米国の別のパネリストは、ワシントンは決して北朝鮮の核・ミサイル能力を過小評価していないとしつつ、米朝の軍事衝突については、「未然に防ぐための攻撃に議論が吸い込まれていってしまう」状況なので、政策の戦略的選択が有意義にできない状況になっていると解説。その様々な政策オプションについては、「外交」はむしろ北朝鮮の方が否定的であるし、「対話」も6カ国協議の失敗を考えるとどこまできるか、と疑問を呈した上で、現在やるべきこととして「『圧力』はまだ十分に余地がある。経済制裁はもっとできることがある」としました。また、同盟国が米国に対して抱いている心配を取り除くことや、米国自体の防衛力を高めるための取り組みも必要であると語りました。


核を持つメリットを感じさせないような状況を長期的に作り出していくべき

 韓国の別のパネリストは、「金正恩が自分に危機が迫っている、追い込まれていると感じさせる状況に追い込むには相当な時間がかかる」との見立てを示しつつ、短期的な解決を志向して軍事オプションを取ればソウルの被害は甚大であるため、「それは米国も使いにくいだろう」と述べました。その上で、金正恩総書記が論理的に計算しながら動く人間であるとすれば、圧力をかけつつ「核を持ち出しても米国が交渉に応じない、言い換えれば核を持つメリットを感じさせないような状況を長期的に作り出していくべきだ」と主張しました。

 続いて、ディスカッションに入りました。


北朝鮮を核保有国として認めない点では一致するも、その先の対応は様々

 まず、北朝鮮を核保有国として認めるか否かについては、現行の核不拡散体制崩壊の引き金を引くことになるため、各氏は一様に否定。

 次に、中国の役割については、軍事行動参加の可能性についてはこれを否定する見通しが相次ぎました。一方、経済制裁など圧力強化については、中国国内にも朝鮮族が多数存在していたり、制裁の抜け穴もあるため、その本気度を疑問視する声が寄せられると、中国のパネリストも一定の難しさがあることがあることを説明。

MHI_0079.jpg その一方で、「米国独自の制裁はともかく、安保理の制裁には取り組んでいるし、『制裁をもっときちんとやっていこう』という議論も中国国内には台頭してきている」と反論しました。同時に、中国には南シナ海問題など他にも外交・安全保障上の懸案事項があるため、国際社会と協力を進めながら役割を果たしていくためには、北朝鮮問題に優先的に取り組めるようになる「良い環境」が必要と主張しました。

 対話については、米国のパネリストから「韓国は戦時体制から移行して、南北対話に取り組む意志はあるのか」との質問が寄せられると、韓国のパネリストは、「文在寅政権中枢にその意志はあるかもしれないが、保守派の反発は大きい。そして実は『左』側からの批判も多い。そもそも北朝鮮が対話に否定的だ」と回答。

 別の韓国のパネリストも、「仮に『朝鮮半島の未来のための対話をしよう』と持ちかけても、それは金体制の崩壊につながりかねないため、乗ってくることはないだろう」と解説しました。


 最後に、北朝鮮の核・ミサイル能力の実戦配備まで時間的余裕がない中、工藤が「米国はどうするのか」と尋ねました。


北朝鮮問題に関して同盟国は米国を信じて安心してほしい

MHI_0110.jpg これに対し、米国のパネリストは、現在、同盟諸国が米国に対してコミットメントへの本気度を疑ったり、「米国はロサンゼルスを危機に晒して東京やソウルを守るのか。北朝鮮からの核攻撃を恐れ、同盟国である日本や韓国に対する防衛を躊躇するのではないか」という「デカップリング(切り離し)」に対する懸念が高まっていることに対して、「米国は朝鮮戦争で多くの血を流してきた。また、韓国国内には2万5000人、日本国内には4万人を超える米兵・軍属がいる。これ以上のコミットメントがあるのか」、「同盟国のため、また自由と平和を守るために米軍を展開しているし、トランプ大統領も就任以降、伝統的コミットメントに沿うように発言を修正してきている。安心してほしい」などと語りました。

 午前の非公開会議では率直な意見交換が行われ、議論は午後の公開フォーラムに移りました。

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