言論外交の挑戦

北朝鮮問題の解決を日米の両国民はどう考えているのか
ー言論NPOと米・メリーランド大学の第1回日米共同世論調査

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 今回の調査は、北朝鮮の核兵器問題の解決や有効な対策、さらには米国の軍事行動の是非や今後の日米の対応などをめぐって、日本と米国の国民に尋ねたものである。

 今回の調査でまず明らかになったのは、米国が軍事行動を起こすことについて米国内でも32.5%が支持するなど日米両国民間にもある程度の支持があるが、最も有効な手段は外交努力であり、軍事行動は最後の手段として理解されているということである。

 さらに現時点で、両国民はこの数年で北朝鮮の核兵器開発問題が解決に向かうとは考えておらず、こうした先行きの不透明さを反映して、米国内には北朝鮮の核保有自体を認めるべきと考える人や、日本と韓国の核武装を認める人がそれぞれ4割も存在するなど、日本国民との意識のズレも浮かび上がっている。

 この調査は、日本側では全国の18歳以上の男女を対象に今年の10月21日から11月5日にかけて訪問留置回収法で実施し、有効回収標本数は1000。
米国側は、今年の11月1日から6日にかけて米調査会社のパネル標本を基に米国の国勢調査に沿う形でランダムにサンプルを抽出し、メール及び電話にて調査を実施。有効回収標本数は2000。

 以下、調査で明らかになった、日本と米国の北朝鮮問題に対する意識を説明する。

 まず、米国のトランプ大統領の北朝鮮に対する対応については、日本では62.9%、米国は58.9%と、それぞれ約6割が「適切な対応をしているとは思えない(「全く」と「あまり」の合計)」と考えている。

 そうした不満を特に強く感じているのは米国人で、41.2%が「全く適切に対応していると思わない」と判断している。日本人では50.7%と半数が「あまり適切に対応していると思わない」と感じている程度である。

 これに対して、トランプ大統領の行動を、「適切な対応をしている(「どちらかというと」を含める)」と考える人は米国40%、日本35.9%と4割程度になっており、国内的には評価が分かれていることには留意が必要である。

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米国の軍事行動に関しては「反対」の声が支配的なわけではない

 北朝鮮への米国の軍事行動の是非では、日本では48.3%と半数近くが、米国でも44.2%が「反対」だとし、それが最も多い回答となっている。ただし、米国では32.5%が軍事行動に「賛成」と支持しているほか、22.7%が「わからない」としており、反対の声が国内で支配的なわけではない。日本でも「賛成」は20.6%も存在し、30.8%が「わからない」とその判断を避けている。

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ただ、最も有効な方法は「外交努力」で、軍事行動は最後の手段との意識が強い

 北朝鮮の核兵器開発を止めるための最も有効な方法に関して、米国で最も多い回答は、「六者会合など関係する周辺国による多国間での外交努力を続ける」の35.3%で、4割近くが多国間による外交努力の継続を支持している。これに「中国がより強い姿勢を示すこと」が21.6%で続いており、「アメリカによる軍事行動」を最も有効だと見る人は10.8%にすぎない。軍事行動はあくまでも最後の手段との意識が米国人に強いことがわかる。

 これに対して、日本では「北朝鮮の核兵器開発を止めることができるとは思わない」と今後の展開を悲観視する見方が27.2%で最も多い。

 ただ、これに「北朝鮮とアメリカの間での直接対話」が20.6%、「中国がより強い姿勢を示すこと」が16.5%、さらには「六者会合など関係する周辺国による多国間での外交努力を続ける」が15.5%で続いており、半数を超える日本人が外交努力を期待している。

 「アメリカによる軍事行動」を最も有効とする日本人は8.4%にすぎない。

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日米ともに、この1、2年で北朝鮮の核兵器問題の解決はできないと見ている

米国では、北朝鮮の核兵器開発問題は解決できるか、という問いに「わからない」と回答する人が41.6%で最も多く、それに「解決は難しいと思う」と考える人が32.6%で続いており、7割を超える人が北朝鮮の核兵器開発問題の解決に向けた展望を持てていない。

米国では、「今年中」や「来年」に解決するという見方も合わせて9.5%にすぎず、「5年後には解決すると思う」と見ている人も15.6%と2割に満たない。

日本では「解決は難しいと思う」が67.4%と7割近く存在し、これに「わからない」の21.9%を加えると9割近くの人が、解決自体に確信を持つことができていない。

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 これに関連して、10年後の朝鮮半島の状況に対しても厳しい見方が高まっている。

 日本人は46.7%が「わからない」とし、「現状の不安定な状況のまま」が28.2%で続いている。7割を超える日本人は状況の進展自体を判断できていない。

 米国人は「戦争や北朝鮮の崩壊による不安定と暴力の連鎖が続く」が44.6%で最も多く、「現状の不安定な状況のまま」が32%で続いている。半数近い米国人は北朝鮮で何らかの行動があること、さらにその結果、朝鮮半島が長期にわたって混乱し、安定化への道筋が10年後を視野に入れても見えないと感じている。


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米国民の約4割が日本の核武装に「賛成」し、「北朝鮮を核保有国と認めるべき」と回答

 こうした北朝鮮問題への解決の困難さは、両国民の安全保障の意識に深刻なズレをもたらし始めている。

 まず、北朝鮮を核保有国として認めるべきか、という質問に対して、日本では70%の人が「認めるべきではない」と判断している。

 これに対して、米国では「認めるべき」が37.6%もあり、「認めるべきではない」の36.5%と意見が分かれている。「わからない」も25.3%存在する。

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 また、北朝鮮がこのまま核兵器保有や開発を止めない場合に、日本と韓国が核武装を行うことの是非についても、日本と米国民の認識は異なっている。

 日本人で、日本が核武装をすることに「賛成」なのは12.3%にすぎず、68.7%と7割近くが「反対」している。

 日本人では、韓国の核武装に対しても批判的な見方が圧倒的である。韓国が核武装をすることに「賛成」する日本人はわずかに9.3%しかなく、68%と7割近くが「反対」している。

 これに対して米国人は、日本の核武装に「賛成」が40%で、「反対」の33%を上回っている。「わからない」も26.4%ある。

 また、韓国の核武装に対しても米国人は40.6%が「賛成」しており、「反対」の32.6%よりも多い。「わからない」も25.9%ある。

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 さらに、北朝鮮が核兵器を廃絶しない場合、米国の持つ核兵器を日本や韓国に持ち込むことに対しても、日本人と米国人の意識は逆の傾向を示している。

 日本では50.5%と半数が米国の核の持ち込みに「反対」し、「賛成」は21.1%である。「わからない」は27.7%である。

 これに対して、米国人は日本人と全く逆の傾向を示し、「賛成」が51.6%と半数を超えているが、「反対」は21.3%である。「わからない」は26.6%だった。

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北朝鮮問題は、「日米関係を逆に弱くした」が米国内で20.2%、存在する

 北朝鮮の核脅威が、日米関係にどのような影響をもたらしているかを尋ねた設問では、「日米関係をより強くした」と考える人は、日本で45.8%、米国で41.2%とそれぞれ最も多い。

 ここでは米国に「日米関係を逆に弱くした」と考える人が20.2%も存在することに留意が必要である。北朝鮮が米本土を対象として、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進めていること、さらに北朝鮮の核問題解決に向けての展望のなさが米国内の内向きの意識を招いており、それが日米関係を懸念する見方につながっている。

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 ただ、米国内では48.5%と半数が、アジアの安全保障のためには「アメリカは現状の軍事力を今後も維持すべきである」と考えており、「今まで以上にアジアでの軍事力を強化すべきである」の28.8%を合わせると8割近くの米国人が、米国のアジアへの軍事力の現状以上の投入を支持している。

 日本では、41.8%が「アメリカは現状の軍事力を今後も維持すべきである」と考えているが、「わからない」が32.6%もあり、今後のアジアの安全保障環境とその中での米軍の必要性について判断できていない。

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北朝鮮が核開発を進める理由は「体制」と「権力」維持のため

北朝鮮が、核開発を続ける理由・動機については、「主に北朝鮮の国内的な統治体制と権力の維持のため」との見方が、米国人では45.9%、日本人では35.2%となり、両国で最も多い。

米国人ではそのあとに「主に北朝鮮の野心や侵略のため」が25.1%(日本人は23.8%)で続いている。日本人で二番目に多い回答は「主に国際的に北朝鮮が正式に国家承認され、国際社会の一員として正当な権利を得たいという欲求のため」が24.8%(米国人は12.3%)である。

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 最後に、北東アジア地域に安定的な平和を実現する手段として、多国間の対話メカニズムを作る場合、どのような構成にすべきかを両国民に聞いた。

 両国民で最も多かったのは、「日中米韓露」の5カ国の枠組みで、米国人では35.5%、日本人でも35.9%がそれを選択した。米国人で次に多かったのは、「日中米韓」の枠組みで25.4%である。日本で二番目に多かったのは「わからない」の29.6%である。

 「日中米」の枠組みは日本では11.7%と三番目に多かったが、米国人は4.7%しかこれを選択していない。

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