言論外交の挑戦

第7回日韓共同世論調査記者会見 報告

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日韓関係に関する有識者アンケート(2017年5~6月)
⇒ 言論スタジオ「第7回日韓共同世論調査」をどう読み解くか
⇒ 第7回日韓共同世論調査 日韓世論比較結果


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 言論NPOと韓国のシンクタンク、東アジア研究院(EAI)は6月12日、日韓両国民を対象にした共同世論調査の結果を発表しました。この調査は2013年から行われ今年で7回目となり、日韓両国民の相手国に対する理解や認識の状況や、その変化を継続的に把握することで、両国民間に存在する多くの認識ギャップの解消や相互理解の促進に役立てることを目的にしています。今回の調査結果は、6月22日に東京都内の国連大学で開催される日韓の民間対話「第7回日韓未来対話」でも報告され、対話と連動する形となります。

 都内の言論NPO事務所で行われた記者会見には、当事国の日本と韓国のみならず、米国のメディアも参加するなど、国内外から高い関心を寄せられました。


日本人の対韓印象が悪化を続ける一方で、韓国人の対日印象は過去最高

kudo.png 調査結果はまず、言論NPO代表の工藤泰志が説明。調査の全体像から、この1年間で両国民の認識や理解が厳しいものになっている、と指摘しました。

 まず、相手国にどのような印象を持っているかで、日本は、韓国に対し悪い印象を持つ人が増えています。昨年(46.3%)は、その前年より2.3ポイント良化し、改善傾向を見せていたものの、今年は逆に49.9%と悪化しました。しかし、増えたといっても3.6ポイントで、大きな悪化ではありませんでした。日本人の印象を悪化させた理由としては、「歴史問題などで日本を批判し続けるから」(52.1%)が最も多く、今年、設問として新しく取り上げた「徴用工問題」、「レーダー照射問題」も合計すると24.2%の回答を集めました。

 対照的に、日本に悪い印象を抱く韓国人は、過去7回で最も低くなり49.9%で初めて半数を割りました。また、日本にプラスの印象を持つ韓国人も調査を始めた2013年から最高(31.7%)を記録しました。


印象改善のカギは渡航経験と情報源の多様化

 日韓の印象度のこの違いについて工藤は、渡航者数と情報源の差異を挙げます。これは昨年も指摘されたことですが、日韓双方とも相手国への渡航者が増え、特に韓国人の訪日数は昨年、753万9千人と2013年から約500万人も大幅に増加。こうした直接交流が相手国への印象の改善に大きく寄与しているのです。それを示すように、訪日経験のある韓国人は、経験のない韓国人に比べて30ポイント近く日本への印象が良くなっていました。

 また、年代別に見ると日韓ともに若い層で相手国への印象が良い人が、相対的に多くなっています。韓国の20代以下では、日本へ良い印象を持つ人の方が、悪い印象を上回る逆転現象を昨年同様見せていて、一つの傾向となっているようです。日本では、そこまで顕著ではないものの、40代以下の人は良い印象で全体の数値(20%)を上回っています。

 なぜ、日韓とも若い層の印象が高いのでしょうか。工藤は、「韓国の若い層ではっきりしているのは、日本に対する情報源が既成のマスメディアではなく、携帯電話やスマホの情報アプリで日本を知る人が多い」と話します。実際、携帯.スマホで日本の情報を知る人は、20代で64%、20代未満で71%とかなり高くなっています。こうした韓国の若い層に共通する意識として、他の層よりも、「日本の食文化やショッピングが魅力的だから」を、日本に良い印象を持つ理由に挙げる人が多く、その機材の手軽さが、日本の好感度に貢献しているようです。

 これに対し日本人は、情報源の違いが韓国の印象にそう大きな影響を与えていませんでしたが、20代未満には韓国に多少、話をする友人、知人がいる人が相対的に多く(20%)、それが印象の向上にもつながっている、と工藤は分析していました。


日韓関係の現状評価は両国で悪化。しかし、改善に向けた意志では日韓に温度差が見られる

8.png 一方、政府間の日韓関係の評価で「悪い」と感じる両国民は、どちらも昨年の調査より大きく増えています。昨年は一昨年より改善していましたが、両国民の意識は一昨年の「悪い」水準も上回ってしまいました。特に日本人の場合、昨年から23ポイントも一気に悪化しました。この点について、工藤は、「政府間関係に対する現状の評価は、将来への悲観的な見通しに繋がっている」と注意を促します。今後の日韓関係をどう見るかで、韓国人は現状のままで、「変わらない」が50%と最も多い回答になっていたのに対し、日本人は、「今後も悪くなっていく」が33.8%と最も多い回答になっていたからです。この政府間のあり方では、お互いの政府首脳の評価も質問していますが、文韓国大統領に「悪い印象」を持つ日本人は、昨年から倍増し50.8%と5割を超えています。韓国人も、安倍首相に「悪い印象」を持つ人は多く、昨年同様8割近くになっています。

 こうした日韓の困難な状況に対し、双方はどう対応すべきでしょうか。両国民で最も多い回答は、「改善に向けた努力を行うべき」でしたが、日本では40.2%だったのに対し、韓国では70.8%もありました。「両政府間に、関係改善に向けての努力、意思がなかなか見られない中で、国民レベルでこうした改善への努力の支持があることは、注目されます」と語る工藤でした。しかし、日本の場合、「今のところ無視をする」、「何もする必要はない」、「日韓関係に関心はない」を合わせると31%にもなっていて、相手を突き放すような態度は懸念すべきではないでしょうか。


友好国ではなくとも日本との関係を重要視する韓国人は8割超。対照的に対韓関係を重要視する日本人は過去最低

 続いて、日本と韓国はそもそも友好国なのか、という根源的な質問に日本人は、「どちらともいえない」が35%と最も多く、どう判断すべきか戸惑っている人が多いように見えます。しかし、「以前は友好国だったが、今はそう思えない」と意識が変わったと答えた人が21.4%あり、これに「以前から友好国だと思ったことがない」の22.5%を加えると、43.9%と4割を超える人が、今は韓国を友好国だとは思っていないことがわかりました。

 韓国でも、もともと日本を友好国だと思ったことがない、が52.9%と半数を超えています。さらに、「以前は友好国だったが、今はそう思えない」が12.7%あり、合わせると65.6%もの人が、日本を今は友好国と見ていないことになります。日韓正常化から54年、両国はどこへ行こうとしているのでしょうか。

 こうした危うい関係にある日韓関係ですが、その重要性についてお互いはどのように見ているのでしょう。日韓関係が、「重要である」と考える人は、韓国では今年も84.4%と8割を超えていますが、日本では50.9%で、世論調査開始以降で最も低い水準となりました。「重要である」と思う理由で日本人に多いのは、「隣国」や「同じアジアの国」だからという一般的な認識にとどまっています。韓国人ではこれに加えて、経済、産業面での相互依存や貿易面から日韓関係の重要性を見ている人が多いのが特徴になっています。


「徴用工」、「レーダー照射」では、両国の見方は真っ向から対立している

 また、日韓で最近、問題になった「徴用工」、「レーダー照射」については、日韓それぞれ未だに全く正反対の見方を持っています。日本企業に対し、元徴用工へ強制労働の賠償を行うよう命じた韓国最高裁の判決について、韓国人の75.5%が、「評価する」と回答しているのに対し、日本人の58.7%は、「評価しない」と答えているのです。この問題を解決するためには、韓国人の6割近くは判決に従って、「日本企業が賠償を行う」と考えていますが、日本人で判決に従うべきと考えている人は1.2%にすぎず、「仲裁委員会、国際司法裁判所」や「韓国政府による補償」によって解決を図るべきだと考えている人がそれぞれ2割となっていて、その解決策についても食い違いが明らかになっています。

 「レーダー照射問題」では、未だに日本政府と韓国政府の言い分が違う形になっていますが、現時点でも日本人の62.9%が、「日本政府の主張が正しいと思う」と回答し、韓国人も、「韓国政府の主張が正しいと思う」との回答が61.9%となり、双方とも6割の人がそれぞれ自国政府の主張が正しいと見ていました。

 最後に、北朝鮮の金正恩委員長の非核化への意思については、日本人の8割、韓国人でも7割が信頼しておらず、昨年の米朝首脳会談で展望が開けたように見えた勢いは、過去のものになってしまったようです。


韓国の対日姿勢には変化の兆しが見える。日本もその変化を読み取ることが日韓関係改善のためには必要

5.png 工藤の調査結果説明の後、東アジア研究院の孫洌院長は、「日本人は親切で、誠実な国民性、生活レベルの高い先進国という韓国人の認識は、そう変わるものではない」としつつ、「しかし、日韓関係の悪化には構造的な要因があるし、関係悪化が長引き、疲労感が蓄積している」と、日韓関係の先行きを心配。

 その一方で、「韓国も、いつまでも反日感情を持っていると限界がある。韓国の反日姿勢も変化を見せていて方向性が変わりつつある」とした上で、「韓国は安全保障と経済でも日本との良い関係を望んでいるので、日本も韓国へのステレオタイプではなく、韓国社会の変化を読み取って分析し、対韓政策を進めてほしい」と、日本側に期待を寄せました。「双方の国民世論を、政治に反映させる政治であるべきだ」、孫院長は学者としての信念を述べるようでした。

 その後、報道陣から様々な質問がありましたが、日韓基本条約のプロセスについて工藤は、「日本側の資金負担とか、若い人たちは知らないのだと思う。また政府間外交というものは、それぞれの政府の立場があるから、あいまいな形で条約化する。徴用工の問題は、外交ではなく、国内問題として判断すべきで、それを踏まえて政府間協議をすべきだ」と語りました。

 今回の調査結果も踏まえながら、言論NPOとEAIは6月22日に「第7回日韓未来対話」を開催いたします。この対話の模様は、13時からインターネットにて中継いたします。ぜひご覧ください。

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