アジア平和会議創設公開フォーラム 工藤挨拶

2020年1月21日

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 言論NPOの工藤です。今日は、私たちの取り組みにこのように大勢の方にお集まりいただき、感謝しています。

 今日午前、私たちは、日本と米国、中国、韓国の4か国から、17氏の有力者が集まり、「アジア平和会議」という多国間の、対話を立ち上げました。

 この会議が、この地域の未来に大きな意味を持つのは、北東アジアという世界でも最も不安定な地域に、
現在の平和だけでなく、将来に向けて持続的な平和を目指す、多国間の対話のメカニズムが、民間を舞台に初めて実現したからです。

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 この北東アジアには、中国と日米同盟との間で構造的な対立と緊張があり、様々なホットスポットが存在しています。また、多くの国が安定した関係を作り出していません。

 私たちが、今日、公表した日本の300人の有識者と30人の専門家が行った評価、2020年の北東アジアの平和を脅かす10のリスク、2では、北朝鮮の核問題とともに、米中対立の関する項目が上位を占めています。

 また台湾や香港の問題に加え、日本と韓国との対立や日米韓の協力関係、さらにはこの地域に危機管理の仕組みが未整備である、ことも、この10位内に入っています。

  北東アジアの平和を脅かす10のリスク
点数
1
米朝非核化交渉の展開と、核保有国・北朝鮮の行動
8.17
2
米中間の通商やデジタル覇権をめぐる対立
8.08
3
米国大統領選の行方
6.71
4
南シナ海での中国の行動と増大する中国の軍事力
6.25
5
香港の民主化運動の行方
5.33
6
蔡英文総統再選後の台湾と中国の関係
5.29
7
領土・領海や、宇宙・サイバーなど新領域における危機管理メカニズムの未整備
5.29
8
日本と韓国の対立
5.25
9
米韓同盟、あるいは日米韓協力関係
5.00
10
習近平主席の日本訪問と今後の日中関係
4.88
 
(次点)
11
異常気象と地球温暖化に伴う様々な現象
4.83
12
核不拡散や、INF失効後の今後
4.75


 ところが、この地域では、こうした課題の解決の取り組みは不十分であり、持続的な平和に向けた多国間の対話の枠組みすら存在していない状況です。

 その中で、私たちは、6年の準備を行い、日本と中国、日本と韓国、日本と米国と対話を重ね、この地域の平和のための、多国間の対話のメカニズムを作り出すことに、成功したのです。

 きょう発足したアジア平和会議で私たちは多くのことで合意しています。

 この会議がこの地域の多国間の信頼醸成の舞台を目指すと同時に、現在の危機管理のメカニズムをさらに向上させ、より拘束力が高い事故防止協定を二国間から将来は多国間に発展させること、さらにこの地域に目指すべき平和の原則を、不戦と反覇権などにすることなどを合意し、将来のこの北東アジアに安定的な平和のための仕組みを実現するための作業に継続的に取り組むことを、私たちは決めました。


 この北東アジアの平和に向けた取り組みは、2013年、私たち、言論NPOが、日本と中国とのハイレベルの民間対話、東京―北京フォーラムで合意した「不戦の誓い」から始まりました。

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 尖閣諸島を巡って緊張が高まり、紛争への不安が世界的にも広がっていた時の話です。政府間の外交はこの対立から、完全に停止していました。

 その時、私たちは、どのような困難にも、武力などでの解決を目指さないことを確認し、さらにこの誓いを、将来的には北東アジア全域に広げる努力を行うことを、申し合わせたのです。

 その実現は順調に進んだわけではありません。

 むしろ、この地域では、二国間関係は悪化し、北朝鮮の核保有などの様々な問題が表面化し、北東アジアの緊張は高まったからです。

 だからこそ、私たちは作業を急ぎました。
 そして今日を迎えたわけです。


 私は、民間の取り組みには特別の役割があると考えています。
 政府が本来行うべきことを、一歩、あるいは半歩前に進め、環境を作り出すことです。
 今回の私たちの取り組みは、この北東アジアの平和のための土台を作り出すための、確実な一歩だと考えています。

 しかし、それが実現するためには、多くの人の理解やサポートが必要です。

 私たちが毎年公表する、日本と中国、日本と韓国との世論調査では、日中韓の国民は毎年お互いに、軍事的な脅威感を高めていますが、半数以上はこの地域の平和と協力発展、そして、平和のために多国間の多国間の対話への取り組みを支持しているのです。

 こうした北東アジアの多くの人の声を取り入れながら、私たちは、この北東アジアの平和のための作業に、不退転の覚悟を持って、取り組むつもりです。


 今日は、私たちのスタートを記念して、会議に参加した4カ国の仲間と一緒に、公開の議論を、これから行いたいと思います。

 テーマは、北東アジアに持続的な平和をどう実現するかです。では、早速議論に入りたいと思います。
今日は、ありがとうございました。