世界が直面するグローバルアジェンダとは何か

2013年3月14日

今回の「工藤泰志 言論のNPO」は、世界のシンクタンクが一堂に会する国際会議に出席するためアメリカ・ワシントン入りした工藤が、会議直前の様子を自ら報告。世界がいま直面している課題とは何かを議論しました。

(JFN系列「ON THE WAY ジャーナル『言論のNPO』」で2013年3月13日に放送されたものです)
ラジオ番組詳細は、こちらをご覧ください。


世界が直面するグローバルアジェンダとは何か

工藤:おはようございます。言論NPOの工藤泰志です。毎朝、様々なジャンルで活躍するパーソナリティが、自分たちの視点で世の中を語るON THE WAYジャーナル。今日は、「言論のNPO」と題して、私、工藤泰志が担当します。

 さて、私は3月9日から15日までワシントンに行ってきます。というのも、『FOREIGN AFFAIRS』を発行している外交問題評議会(CFR)というアメリカの老舗のシンクタンクがあるのですが、そこが去年の3月に立ち上げた国際会議がワシントンで開かれ、その会議に参加するためです。冒頭の収録時は日本にいるのですが、ワシントンでの話をどうしても番組で紹介したいと思っていますので、ワシントンから会議の内容を紹介したいと思っています。

 今、世界には、気候変動や宇宙空間に関する問題、それから貿易の問題など様々なグローバルな問題があります。そうした問題について、私たちも色々と発言しなければいけないのですが、なかなかそういうチャンスがないのが現状です。しかし、こういう問題についても日本はもっと積極的に発言しなければいけない、という決意でこの会議に出席する予定です。ここでは会議の他にも、アメリカの政財界の人たちにも会う予定ですし、日米問題についても語ってきますので、ぜひ、みなさんに民間外交とはどういうものなのか、ということについて皆さんに知っていただきたいと思っています。

 今日のON THE WAYジャーナル、「言論のNPO」は、「世界が直面するグローバルアジェンダとは何か」と題してお送りします。

 では、早速、会議直前のワシントンから、私が報告をします。


 言論NPOの工藤です。今、ワシントンに着いたのですが、早速、ホワイトハウスに行ってきました。ホワイトハウスは観光名所で、凄い人が集まっています。私も記念写真を撮ろうと思ったのですが、なかなか場所がなくて大変でした。政治の舞台が観光名所になっているということに、日本とは違って羨ましいな、と感心しました。私は去年もワシントンを訪問し、今回2回目になるのですが、こちらはかなり暖かいです。また、桜のつぼみも大きくなっていたり、リスが駆け回っていて、一足先に春を感じながら、明日からの会議に備えているという状況です。では、ここでホワイトハウス前での様子をお聴きいただきます。


日本の存在感増大へ求められる民間の役割

 私が参加しているCoCという会議は、アメリカのCFRが主催して、世界23カ国のシンクタンクのトップがメンバーとして参加しています。私は日本のシンクタンクの代表というわけです。明日からCoCの会議が2日間にわたって行われます。そこで、気候変動を含めて、いろいろグローバルなガバナンスが機能していない中でどうすればいいか、ということを話し合うことになっています。

 その後、アメリカのシンクタンクの人達、アメリカの政府関係者と会うことになっています。日米、日中、東アジアが不安定になっている中で、どのように改善していけばいいのか、ということについてみんなと意見交換しようと思っています。

 ワシントンに来ると、この地が世界の中で非常に重要な役割を果たしているということを感じます。今日、早速、皆さんと議論しました。やはり、東アジアは単純に日本と中国というだけではなくて、ロシアやオーストラリア、韓国、ASEANなどのプレイヤーがいるわけです。やはり、皆、どうしたら地域のガバナンスを安定させられるのか、ということを非常に気にしていましたし、初日から、そういったことについてみんなと語り合いました。いろいろな問題があるのですが、アジアという地域は経済的に非常に大きなエネルギーがあって、平和的な、安定的なガバナンスをつくっていかないとマズイな、と思っています。

 日本では安倍政権が誕生し、経済の面では、かなり世界的な注目を浴びています。去年の3月にCoCが設立されたのですが、その頃の野田政権は、まだ公的な訪問ができない状況でした。しかし、安倍さんは2月に訪米しましたよね。日本という国が、少し関心を持たれている、ということです。しかし私は、経済的な関心だけではなく、日本が世界の直面するアジェンダに対して、どんどん発言していくという状況になっていかなければいけないかな、という風に思っています。そういう形で、日本が世界に発信して、発言していって存在感を増していくという状況も必要だと思っています。日本について言えば、本質的な変化が必要な局面になっていると思います。私は「民主主義」の日本が今後どんどん成長し、その存在感とともに、世界が抱えている問題についてどう考えているのか、ということを今回の会議を通じて、世界23カ国の主要なシンクタンクのトップに伝え、民間の役割を果たさなければいけないと思っています。


気候変動など世界的課題におけるガバナンスの変化

 今、晩餐会が終わって、明日から会議に入りますが、気候変動の問題やWTOを含めた貿易の問題、ミレニアム開発など国家間の援助の問題、インターネットガバナンスの問題、宇宙の平和利用に関する問題など、地球に住む私たちからすると、ものすごく大きな問題がたくさんあります。こうした問題を、どのように解決すればいいのか、ということが非常に難しい。世界的問題のガバナンスは、今までアメリカを中心に先進国が主導してきた仕組みから大きく変わろうとしています。中国などの新興国が台頭してきたことが原因に挙げられます。そうした国々との対立が表面化し、何も決まらない状況になっているということを、多くの人たちが考える時期に来ているのではないか。合意が形成できない問題をどうすればいいのか、ということが今回のCoCでの大きな課題です。私は、単なる議論だけでは無理だと思っています。つまり、政府間での議論というのは、アメリカとか、中国という政府間の対立が表に出てしまうからです。私も議論に参加していて、そういう反発が大きいことを目の当たりにして、すごく気になります。国家間の対立を乗り越えるために、どういうことが必要なのだろうか、ということが私の目的意識になっています。国家間のフレームワークというのは何のためにあるのか。

 今回のCoCの会議もそうなのですが、世界のトップシンクタンクの研究者、専門家だけが議論しているという対話はそれだけではよくないと思っています。先ほども言いましたように、世界のガバナンス、つまりアメリカなど先進国主導の動きに対して、中国など新興国の反発、対立があって、世界はなかなか答えを出せない状況になっている。つまり、国家間でグローバル的な意思決定ができない。


巻き起こしたい民間対話による国際的世論

 僕はそういう時だからこそ、国民や市民をベースにした国際的な世論というものが非常に大事なのだと思うのですね。世界的な大きな問題に関して、市民がいろいろ考える。それが民主主義の一つのプロセスだと思っています。国民が日本の国内問題について、それを自分の問題として考えていく。そして、それ以外に世界の問題に関しても自分の問題として考えていく。そういう社会になった時に、市民をベースにした民主主義というのは本当に強いものになると思いますね。日本は、政党政治に関してはまだまだ脆い状況だと思っていますが、有権者の力が強いものになれば、日本も強い社会になれる、国際社会に対しても影響力の強い社会になれるかなと思っているのです。そういう社会を作るためにも、言論NPOによる議論作りというものが重要になっていくのではないかと、ワシントンにいても感じました。

 特に東アジアに関しては、中国との尖閣問題、北朝鮮との核の問題などを含めて、みんながバラバラになってしまった。東アジアを安定的に平和的に、紛争を回避していくためには、どうすべきか。私も日本国民としては、尖閣諸島は日本の領土ですし、この問題で引くということは絶対にできません。ただ、その問題は引けないにしても、日中の間で偶発的な事態がコミュニケーション不足によって引き起こされないか、非常に不安定な、危機的な状況にあるということを私は不安視しています。いろいろな議論がある領土問題ですが、それを道具に軍事衝突を起こさず、平和的に解決することを考えなければいけません。政府間の協議とは別に、民間が考えなければならないという局面に来ているような気がします。アメリカの主要なシンクタンクのトップ、アメリカの政府関係者に、そういう僕の気持ちをぶつけて、政府とは違う、民間との対話ということの意味を問い掛けていこうと思っています。


ワシントン→北京→ソウル  ――民間レベルの対話を追う

 ワシントンから帰国したら、次は北京に行きます。尖閣問題が軍事紛争にならないようにする仕組みを作るには、どうすればいいのか。民間レベルの対話で僕たちは考えていかなければいけない。日中の対話が終わったら、僕たちは日韓、日本と韓国の対話に取り組む準備を進めています。不安定な東アジアのリージョナルガバナンスを、なんとか安定化させる状況を民間で作っていかなければいけない。今回のワシントン訪問も、それに繋げられればいいかなと思っています。あと5日くらいここにいますが、帰ってから日本の議論作り、中国、韓国との議論作り、東アジアの議論に関して、真剣勝負で臨みたいと思っています。そういうことで、今日はワシントンからのご報告をONTHEWAYというかたちで言論NPOの工藤がやらせていただきました。ありがとうございました。

 そういうことで時間になりました。今日は世界が直面するグローバルアジェンダとは何か、についてワシントンから報告させてもらいました。シンクタンクのトップやアメリカ政府関係者らとの議論はポッドキャストでみなさんにご報告したいと思っています。今日はありがとうございました。

今回の「工藤泰志 言論のNPO」は、世界のシンクタンクが一堂に会する国際会議に出席するためアメリカ・ワシントン入りした工藤が、会議直前の様子を自ら報告。世界がいま直面している課題とは何かを議論しました。

(JFN系列「ON THE WAY ジャーナル『言論のNPO』」で2013年3月13日に放送されたものです)