言論NPOとは

今問われる設立時の決意

130919_kudo.jpg 私は2001年に、議論の力でこの国の閉塞した状況を変えようと、この言論NPOを立ち上げました。

 多くの課題が将来世代に先送りされ、既存メディアによる報道が批判のための議論に終始し、社会全体がこの国が抱えるより本質的で、長期的な課題に向き合っていないことに、危機感を覚えたからです。

 私の決意は、自由や民主主義、さらには国際協調、そして、平和はどんなことがあっても守り、発展させなくてはならない、ということです。

 それを政府にただ期待するだけではなく、私たち自身の問題として向かい合おうと考えました。そこに言論に携わる多くの人たちの責任があると考えました。私の言う自由とはルールや責任に基づく自由であり、私たちは自らが自己決定できる社会こそ守るべきなのです。

 それから20年が経ち、私たち言論NPOは今、再びこの原点に立ち返り、取り組みを開始しています。これまでにない困難に直面しているからです。

 世界で急速に進む変化は、これまで私たちが大事にしてきた自由や民主主義自体を自ら覆しかねない状況を招いています。私たちが取り組む北東アジアでも、紛争の危険が高まっています。今まさに創立の時の決意が問われる局面だと、私は考えたのです。

今回、言論NPOのウェブサイトをこの7月末から、全面的にリニューアルしたのもそのためです。


 世界は、コロナ感染で見られたように多くの国は内向きになり、米中の対立は世界を分断させかねない事態を招いています。世界の課題への多国間協力が不安定になり、民主主義の後退を多くの人が感じています。

 この状況に真剣に立ち向かい、新しい流れを作り出す努力を始めなければ、私たちの未来は、不安定でより困難なものになります。

 私たちの創立以来の主張は、市民が強くなれば社会を変えることができる、ということです。それは、私たち次第で、課題は乗り越えられるということです。

 まさに世界やこの日本でその将来が問われている時だからこそ、私たちはこの原点をより深く考え、そこに活動の基盤をしっかりと据えようと考えました。

 この20年間、私たちが取り組んだのが「言論外交」という考えです。そこに私たちは今回、「知見武装」という考えを加えました。

 より多くの人がこの世界やアジア、そして日本の困難に立つ向かうためには、その状況を自らが考え、その課題や変化を知り、学ばなくてはならないからです。

 「言論外交」とは、多くの有識者が自ら課題に取り組み、その全てを市民に公開することで課題解決の意志を持つ世論作りに貢献することです。

 当時から関係が緊張していた日本と、中国や韓国との二国間対話を民間の舞台で毎年行い、世界で最も危険な地域と言われる北東アジアの紛争回避と将来的な平和のために、米中が参加する歴史的な多国間対話を2020年に立ち上げたのも、そのためです。

 この地域は中国と台頭の中で日米との間の緊張が高まっています。

 だからこそ、この地域の紛争回避のために、私たち民間が動き、政府間外交の環境を作り出そうと考えたのです。

 この「言論外交」が期待しているのは、輿論(よろん)の役割です。

 そのためにも多くの人が、当事者として向き合い、議論を通じて解決の方法を模索し、声を上げることが大切です。それこそが、社会を動かす健全な輿論であり、この国を変える力となっていくからです。

 今回、私たちが新しく取り組むのは、そうした課題を理解するための議論を積極的に社会に発信することです。

 インターネットの発達で社会には感情や不安を利用する様々な言説が溢れています。その中で、私たちが直面する変化を理解するためには、私たち自身が自分で考える力を身につけなくてはならないのです。

 私たちが、「私たちは知見武装をすべき」と呼びかけを始めたのはそのためです。

 言論NPOは、世界や日本の課題を考える数多くのフォーラムを数多く展開していますが、それに加え、私たちは今の課題や変化を直接、考え、意見交換を行うための様々な議論発信も行います。

 私たち言論NPOの活動は今や、不安定化する世界の自由秩序や多国間協力やアジアの平和、そして、日本自体の民主統治の修復や未来に向かっています。

 このいずれもが、まさに私たちに突き付けられた課題だからです。

 現代経営学を作り上げたピータードラッカーは自著「経済人の終わり」で、かつてのドイツのナチス時代に経済人がとった対応を批判し、困難に傍観や無関心を装うこと自体が罪だと、主張しています。

 この無関心の罪は、今の世界やこの日本の状況にもそのまま当てはまります。

 多くの人がそれぞれの立場で挑まない限り、課題は解決できないからです。

 私たちの取り組みは設立後、一度のぶれもなく、進んでいます。ただ、私たちの努力は多くの皆さんのご理解とご協力がなければ、実現できません。

 私が、皆さんに、ご協力とご支援をお願いしたいのは、そのためです。
 よろしくお願いいたします。

2021年7月
言論NPO代表 工藤泰志
工藤泰志(くどう やすし) 1958年生まれ。横浜市立大学大学院経済学修士課程卒業。東洋経済新報社で『論争東洋経済』編集長を歴任。2001年11月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。その後、選挙時のマニフェスト評価や政権の実績評価、東アジアでの民間対話、世界の有識者層と連携した国際秩序の未来に向けた議論など、日本や世界が直面する課題に挑む議論を行っている。また、2012年3月には、米国の外交問題評議会(CFR)が設立した世界23カ国のシンクタンク会議「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」に日本から唯一参加している。
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