「2008年 日本の未来に何が問われるのか」 / 発言者:明石康氏

2008年1月01日

活発な議論で外向きの日本を

 あけましておめでとうございます。今年はわが国のアジアにおける、また世界における立場や抱負が問われる年になると思います。10年以上の停滞の時期がやっと終わって、これからはもっと積極的な外向きの日本というものが姿を見せるべきときだと思います。洞爺湖サミットがあり、第4回アフリカ開発会議が開かれる今年は日本にとって大きな要の年になるのではないかと思います。

 ここ数年の間、残念ながら我が国はすっかり内向きになり、低迷した感じがありました。ある意味で鎖国の時代に近かったと思います。経済的にも政治的にも鎖国というのは、もはや客観的にはありえないはずです。にもかかわらず、我が国は知的、精神的にすっかり自分の中に閉じこもってしまっています。若い人たちもそうです。治安も良く清潔で、ともかくも一定水準の消費生活を楽しめる国として自足してしまい、外への関心を失ってしまった感があります。政府の対外援助も減少を続ける一方で、現在まで来ています。地球環境問題への関心はかなりあるので、その点では勇気付けられるところもあります。しかし、様々な問題が国境を越えた脅威になっています。核をはじめ大量破壊兵器の問題、AIDSやSARDSなど新しい感染症の問題、テロリズム、民族紛争などが国境をやすやすと越えて、明日と言わず今日中にでも日本にとって脅威として現れる時代であるのに、そのことに関心を失ってしまって、日本だけが太平の世を謳歌できるかのような錯覚に陥っているのは、非常に残念だと思います。

 少子高齢化時代に入ったということで日本の将来を必要以上に悲観する動きもあります。しかし私は、ヨーロッパのいくつかの国々が少子化をある程度食い止めることができたように、高齢者の活用や婦人の社会進出、選別されたスキルを持った海外からの移民の導入、長期的に日本経済を活性化させる新しい投資の仕組みとか、そういうことを考えればわが国にとっての活路も必ずや見出だせるに違いないと思います。そう考えると、どこか暗い気持ちに浸りきっていることを、私は残念なことだと思います。言論NPOも含めて国民それぞれが独り言、モノローグを言うのではなく、もっと盛んに意見を交わして問答を行い、お互いに問題意識を交わしながら、これからのアジア、世界における日本のあり方を是非ともみんなで活発に話し合うことで、わが国の明るい未来は必ずや見出だされるに違いないと思っています。

発言者

明石康氏明石康(元国連事務次長)
あかし・やすし
profile
1954年東京大学教養学部卒業、同大学院を経てバージニア大学大学院修了(フルブライト奨学生)。1957年 日本人として初めて国連入り後、国連日本政府代表部参事官、公使、大使。国連事務次長(広報、軍縮担当)、事務総長特別代表(カンボジア暫定統治機構、旧ユーゴスラビア担当)、人道問題担当事務次長等を歴任。国連退職後、広島平和研究所初代所長を務め、現在 ジョイセフ(家族計画国際協力財団)会長など。

 あけましておめでとうございます。今年はわが国のアジアにおける、また世界における立場や抱負が問われる年になると思います。10年以上の停滞の時期がやっと終わって、これからはもっと積極的な外向きの日本というものが姿を見せるべきときだと思います。洞爺湖サミットが