「2008年 日本の未来に何が問われるのか」 / 発言者:安斎隆氏

2008年1月01日

まともに議論ができる社会にしたい

 国内では、政治の世界は衆参のねじれ現象で、もっぱら、いつ解散・総選挙するのか、次はどうなるのかとか、そういうことだけが問われていて、まさに言論不況みたいな状況です。そこでは、筋論というか自分の主張だけ言っていて、ねじれ解消どころか本当に実りのある議論にならないような感じになってきています。

 世界を見ると、いま政治的に大きく変わってきました。アメリカも大統領が変わる。中国も胡錦濤政権が第二期目を迎えて、今までの市場経済の一本槍からどうやらそれの行き過ぎの部分を是正するという動きになってきています。

 外交面からみると、国がある限りは絶えず外交的な問題は起こってきますが、世界の流れの中で、本当に中東がどう落ち着くか、イスラエルがパレスチナをどうするかですけれども、そういう意味でも、日本は自分たちでやるべきチャンスをずっと外交の部分で失ってきています。

 したがって、私は自分たちの外交のあり方も含めて、政治も含めて、あるいは民間も含めてどんどん議論して欲しいと思います。国民全体でこんなに知識レベルの高い国はないわけですから、議論すれば皆分かるわけです。だから、外交が両極に行って、話がまとまらないという状態はどうにかして回避する方向にあって欲しい。さもないと、日本は人口減少で世界の中での経済的地位が落ちてくることが避けられず、アメリカもまたおそらくウェイト的には落ちてくるでしょう、そのアメリカの後塵を拝しながらどんどん落ちていくことになりかねません。

 ところが、かつて日本が高度成長を味わい、経済大国世界第2位になったという過去の栄光の記憶にとらわれ、国民が欲求不満だけをずっと積み重ねていくというのは民族としては非常に不幸なことです。是非、言論NPOがそういう意味での問題意識に目覚めるような刺激を世の中に与えて欲しい。また、まともな議論をまともに議論しあえるように国全体を持っていくこと、それが私の期待です。

発言者

安斎隆氏安斎隆(株式会社セブン銀行 代表取締役社長)
あんざい・たかし
profile
1941年生まれ。63年東北大学法学部卒業。同年日本銀行入行。94年同行理事、98年日本長期信用銀行(現・新生銀行)頭取、2000年イトーヨーカ堂顧問などを歴任。01年株式会社アイワイバンク銀行(現・株式会社セブン銀行)代表取締役に就任。

 国内では、政治の世界は衆参のねじれ現象で、もっぱら、いつ解散・総選挙するのか、次はどうなるのかとか、そういうことだけが問われていて、まさに言論不況みたいな状況です。そこでは、筋論というか自分の主張だけ言っていて、ねじれ解消どころか本当に実りのある議論に