2014年、日本の課題を解決していく中で言論NPOが果たすべき役割とは / 宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)

2014年1月01日

宮本雄二氏宮本 雄二
(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)


言論NPOは、日本の将来を考える人たちの受け皿に


 2014年も、世界の変化は速いだろう。改革を果断に進め、変化することのできた国と社会だけが発言権のある国として生き残る。日本の社会も、これまで大きく変化してきたし、これからも変わる。日本社会の課題は、より多くの国民が、自分とのかかわりの中で社会のことをもっと考え、より快適で充実した生活環境を実現するには、何をなすべきか、なされるべきか、を自分自身で真剣に考えることで設定される。その課題を国民自身が実現のために行動し、具体的解決策を考え、政治と行政に解決を迫らなければならない。それは、最後は日本の平和と繁栄のためには、どのような対外関係が必要であるかという議論に行き着く。

 日本の市民社会に求められていることは、より広い長期的視野に立って、日本の国家と社会の課題を考察することだ。その考察は、身の回りの小さなことから始めるべきだが、それを次第に地域社会、国、そして国際社会に広げていくことにより、そのような視点は自然に身に着く。そのようにして得られた課題と対処方法を、今度は政治と行政に実施してもらう必要がある。だからわれわれは「政治への丸投げ」はしないのだ。だから政党改革や政治と行政の関係は自分たちの問題となるのだ。

 言論NPOがなすべきことは、そういう市民社会に対し、課題設定や対処方法について、専門知識を有する人たちの考え、それも多様な考えを深く伝えることだ。さらには市民と有識者との間の相互対話の場を設けるべきだ。その全てを公開し、細部に至るものごとの考え方、つまり事実認識とそれらを整理して判断する論理と思考回路を共有することだ。このプロセスを通じ、自分の専門外の事項であっても、ほぼ正しい判断を下すことができる。そうすることで「主権在民」という民主主義の理念を具現化し、国民が正確な最終判断を下すことができるようになる。言論NPOは、そういう場の設定にさらに尽力してほしい。

 言論NPOは、そういう風に日本の社会とその将来を真剣に考えている人たちの受け皿になるべきだ。その数が10万、50万、100万となれば、言論NPOの場でのわれわれの議論が、有力な輿論をつくりだし、日本の社会と政治を変える力になる。それが日本の市民社会を強め、民主主義を強靭なものとすることができる。そのためにも、会員の拡大を本年の重大目標とするべきである。



明石 康 (国際文化会館理事長、元国連事務次長)槍田 松瑩(三井物産株式会社 取締役会長)小倉 和夫(国際交流基金顧問)川口 順子(明治大学国際総合研究所特任教授、元外務大臣)武藤 敏郎 (大和総研 理事長)茂木 友三郎 (キッコーマン株式会社 取締役名誉会長 取締役会議長)宮内 義彦 (オリックス株式会社 取締役兼代表執行役会長グループCEO)アドバイザリーボード紹介