【論文】ガバナンス回復には強行手段が必要

2002年6月12日

shiga_t020607.jpg志賀敏宏 (三菱総合研究所ビジネスソリューション事業本部 シニアコンサルタント)
しが・としひろ

1956年生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒。日立製作所デジタルメディア開発本部を経て、85年三菱総合研究所入所。営構造研究室長等を経て、現在ビジネスソリューション事業本部 シニアコンサルタント。製造業、特にエレクトロニクス・IT関連企業の経営コンサルティングに携わる。専門は、エレクトロニクス関連企業、製造業の経営、ITの経営に与えるインパクト。

概要

みずほフィナンシャルグループの相次ぐシステム障害はなぜ起きたのか。その構造的な「ガバナンス」の問題について、三菱総合研究所シニアコンサルタントの志賀敏宏氏から寄稿をいただいた。製造業トップにも知己の多い志賀氏は、「みずほ」に見られるガバナンスの欠如は今やあらゆる企業においても同様だと指摘。とりわけ経営者の自己ガバナンスを機能させるためには、経営(陣)についての徹底した情報開示や「新しい血」の導入といった強行手段が必要だと主張する。

要約

相次ぐシステムトラブルを起こした、みずほフィナンシャルグループ。およそ金融機関にあるまじき大規模な混乱であったが、みずほホールディングスの前田晃伸社長は国会で「利用者に直接実害が出ていない」と言い放った。その発言からうかがわれるのは、トラブルの直接の原因がコンピューターシステムの欠陥にあるとはいえ、みずほ経営者の「自己ガバナンス」の欠如がそこに根差している、という深刻な事態である。

経営者に対する基本的な信頼なくして、効率的なコーポレート・ガバナンス(企業統治)はあり得ない。だからこそ経営者は自らをガバナンスする者でなければならないし、それが経営の大前提だ。ところが「みずほ」の場合、経営陣はコンピューターシステム統合の準備不足を十分に把握していなかった。その上に、ガバナンスの状況に必要な関心を払うことさえ怠った。これでは経営者の自律的ガバナンスが機能するはずがない。

だが、経営(者)のガバナンスの欠如という事態は、ひとり「みずほ」だけ、合併した金融機関だけに見られることであろうか。筆者は、それは今や製造業からあらゆる業種に至るまで、どの企業においても見られる事態ではないかと考える。そして、企業におけるガバナンスの欠如はオイルショック以降、徐々に顕著になったと指摘。その大きな原因は、戦後世代の経営者が戦前・戦中派の経営者の遺産にあぐらをかき、そのポストをたらい回しにしてきたことだとする。「みずほ」の惨状をかがみとして、多くの企業・経営者は自らのガバナンスに客観的な目を向ける必要があるだろうし、速やかにガバナンスの欠如を正していかなければならないだろう。では何をどう正すのか。株主主権の強化や社外取締役の活用といった「尋常な」手段だけでは不十分だ。経営陣の活動について徹底した情報開示、経営トップへの「新しい血」の導入、惰性・慣性の排除--筆者はそのような「強行手段」も必要だと主張する。


全文を閲覧する(会員限定)

みずほフィナンシャルグループの相次ぐシステム障害はなぜ起きたのか。その構造的な「ガバナンス」の問題について、三菱総合研究所シニアコンサルタントの志賀敏宏氏から寄稿をいただいた。