【座談会】ビッグバンの建て直しをどう進めるか

2002年7月11日

saito_a020710.jpg斉藤惇 (株式会社産業再生機構代表取締役社長)
さいとう・あつし

1939年生まれ。63年慶應義塾大学商学部卒業後、野村證券株式会社入社。同社副社長、スミセイ投資顧問顧問を経て、99年住友ライフ・インターナショナル・インベストメント・マネジメント代表取締役兼CEOに就任。2003年より現職。主な著書に『兜町からウォール街─汗と涙のグローバリゼーション』『夢を託す』等。

sano_s020710.jpg佐野角夫 (ソニー顧問)
さの・すみお

1961年早稲田大学法学部卒業。ソニー株式会社常務取締役、ソニー・プレジョン・テクノロジー代表取締役社長等を経て2002年現職に就任。環境省独立行政法人評価委員会委員、環境省政策評価委員会委員等兼任。

tsugawa_k020710.jpg津川清 (リーマン・ブラザーズ証券会長)
つがわ・きよし

大阪府生まれ。東京大学法学部卒業後、東京銀行に入行。取締役資本市場第一部長、エス・ジー・ウォーバーグ証券会社社長などを経て、現在はリーマン・ブラザーズ証券会社会長。また、証券投資者保護基金理事長、東証正会員協会理事などを歴任し、現在は在日米国商工会議所理事、大阪証券取引所取締役を兼務。

mastui_m020710.jpg松井道夫 (松井証券代表取締役社長)
まつい・みちお

1953年長野県生まれ。76年一橋大学経済学部卒業後、日本郵船を経て87年義父の経営する松井証券に入社。98年より現職。経済同友会幹事、東証取引参加者協会理事、国際IT財団理事を兼任。著書に「おやんなさい でもつまんないよ」。

概要

金融ビッグバンが進めた証券市場改革は十分な効果がないまま昨年、最終年度を終えた。なぜ、当初の目的を達成できなかったのか。証券市場に携わる4 氏がその原因に迫り、ビッグバンを立て直すために何が必要かの議論を行った。4氏は「新しい枠組みはできたが受けて立つ民間側に動きがなかった」こと、「計画自体に理念を具体化するビジョンや顧客に目を向けたものがなかった」ことを指摘し、「新しい取り組みを開始すべきだ」と主張した。

要約

金融ビッグバンは十分な効果がないまま昨年、計画最終年度となった。なぜ、期待は失望に変わったのか。証券市場に関わる松井道夫松井証券株式会社社長、斉藤惇住友ライフ・インベストメント株式会社会長、津川清リーマンブラザーズ証券会長、佐野角夫ソニー株式会社顧問の4氏が「ビッグバンを立て直すために何が必要か」の議論を行った。4氏の共通した認識は、「ビッグバンは当初目的の大部分が実現しておらず、証券市場をいまだに厚みのない活性化しないものにしている」ということである。「日本の資本市場は本当に死んでしまう」という意見もあった。

その原因について松井、津川両氏は「フリー、フェア、グローバルの理念や間接金融から直接金融への大変化を実行するためのビジョンや政策的な誘導がなかった」と、斉藤氏は「証券市場の抜本改革は進んだが、民間側の動きがなかったこ」と、佐野氏は「議論自体が業界の発想からなされ、顧客に目を向けたものでなかった」と指摘した。

こうした状況を打開するためには、「もう一度本来の目的に戻って取り組みを開始すべきだ」、「顧客側に立ったルール、監視体制の構築で信頼を回復することなどが大切だが、何よりも民間のプレーヤーが資本市場の担い手として覚悟を決めて動き出さないと状況は変われない」という点で意見は共通した。また、佐野氏からは「一般の企業はすでに国際競争の中で外資などのアイデアも取り入れ経営を強化している。金融業だけが取り残されて内向きの動きに終始していた」という厳しい指摘があった。この点でコーポレート・ガバナンスの問題に議論は発展し、松井氏は「キャピタリズムがあってコーポレート・ガバナンスは発揮できる。間接金融から直接金融へのシフトが進まなくては経営や日本は本質的に変わらない」と主張した。金融業が立ち直れないのは、結局、本格的な競争が始まっていないからだが、「これから銀行業の保護を政府が続けていくのかがそのメルクマールになるのではないか」と4氏は疑問を呈した。


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 金融ビッグバンが進めた証券市場改革は十分な効果がないまま昨年、最終年度を終えた。なぜ、当初の目的を達成できなかったのか。証券市場に携わる4 氏がその原因に迫り、ビッグバンを立て直すために何が必要かの議論を行った。4氏は「新しい枠組みはできたが受けて立つ