【座談会】「特別座談会」 危機共存で腰をすえた議論を

2002年2月22日

utsumi_m020222.jpg内海孚 (国際金融情報センター理事長)
うつみ・まこと

1934年生まれ。57年東京大学法学部卒業、同年大蔵省入省。在ベルギー日本大使館、国税庁、在米日本国大使館、国際金融局長を経て、財務官就任。91 年大蔵省退官後、92年より慶応大学教授、2001年より財団法人国際金融情報センター理事長。89年にポリシーメーカー・オブ・ザ・イヤー受賞。

tsugawa_k020222.jpg津川清 (リーマン・ブラザーズ証券会社会長)
つがわ・きよし

大阪府生まれ。東京大学法学部卒、東京銀行に入行。取締役資本市場第一部長、エス・ジー・ウォーバーグ証券会社社長などを経て、現在はリーマン・ブラザーズ証券会社会長。また、証券投資者保護基金理事長、東証正会員協会理事などを歴任し、在日は米国商工会議所理事、大阪証券取引所取締役を兼務。著作は「我々は外資に負けなかった―旧東京銀行の挑戦―」。また、金融ビジネス、週間東洋経済など数多くの雑誌にも寄稿している。

wakatsuki_m020222.jpg若月三喜雄 (日本総研理事長)  
わかつき・みきお

1933年生まれ。56年東京大学法学部卒業後、日本銀行入行。IMF(国際通貨基金)出向、ニューヨーク駐在、調査統計局長などを経て、89年日銀理事。93年日本総合研究所理事長、2000年より現職

概要

目前に迫っている日本の経済危機とその対策について、元大蔵省財務官の内海氏、元日銀理事の若月氏、そして外資系証券トップの津川氏の3名に語ってもらった。株価急落が一番の懸念材料という点で3者の見解は一致したが、マーケットの不安を解消する明確なメッセージを政府と銀行はいち早く出すべきだとする津川氏に対して、内海・若月の両氏は2月危機、3月危機で日本経済が崩壊することはない、危機と共存しながらも腰をすえた構造改革を進める必要があると主張する。

要約

外資系証券トップとして日々マーケットに関わっている津川氏は、米政府高官の話などを引用しながら、海外と日本国内では現在の経済状況に対して大きなパーセプション・ギャップ(認識の格差)があり、一刻も早くそのギャップを解消する必要があると説く。そのためには、不良債権処理、さらには構造改革のスピードアップに対して、政府および銀行経営者が明確なメッセージを市場に発するべきだとする。これに対し、内海・若月の両氏は市場に対するメッセージは必要だとしながらも、マーケットの判断基準に簡単に迎合することはないという立場だ。株のオーバーシュートの危険性はあるものの、円と国債の暴落やキャピタル・フライト(資本逃避)については、日本ではその危険性は低いと見る。不良債権処理についても現在のスキームを活用するなかで最大限の努力を進めるべきだが、不良債権問題だけで構造改革が終わるわけではないというのが両氏の共通見解。構造改革にはそれ相当の時間を要するから、常に危機と共存しながらも、一歩一歩それを進め、不効率分野から効率分野、成長分野へのリソース(資源)移転を促していくことが日本の産業構造改革につながると若月氏は語る。内海氏も同様の見解を示しながら、政府の役割として企業のリストラクチャリングをサポートするセーフティネット整備を一番に挙げる。そして政治不安が経済不安へと波及することを懸念し、小泉改革に多少の異論はあっても、大同小異の姿勢で現政権を支えることが自民党のとるべき姿勢だとする。

三氏は当面の株価下落はなんとしても食い止めたいという考えで一致したが、津川氏は市場の不安心理を鎮めるために首相や銀行が強いメッセージを発信すべきだと主張、若月氏は銀行が悪循環を断つ姿勢を打ち出し、金融庁は公的資金の投入などを決断すること、また政府保証枠の拡大や日銀資金も活用し銀行等保有株式取得機構を早期に始動させること、また内海氏はRCCの活用について言及し、体制の拡大などを提案した。


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 目前に迫っている日本の経済危機とその対策について、元大蔵省財務官の内海氏、元日銀理事の若月氏、そして外資系証券トップの津川氏の3名に語ってもらった。株価急落が一番の懸念材料という点で3者の見解は一致したが、マーケットの不安を解消する明確なメッセージを政府と