本会開催に先立って行われたパネルディスカッションでは、「日本の未来と日本の言論」をテーマに、高橋進氏(株式会社日本総合研究所理事長)、宮内義彦氏(オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長、グループCEO)、宮本雄二氏(前駐中国特命全権大使)がパネリストとして講演を行いました。
まず、創立以来言論NPOの活動への支援を続けている宮内氏は、「言論NPOは日本の言論を影響力のあるものにし、あるべき方向を世に問うていきたいという高い志をもって設立された」と述べる一方で、「10年が経ち、その考えがどこまで受け入れられてきたのかが今こそ問われている」としました。
宮本氏は、自らが関わってきた東京‐北京フォーラムの活動を振り返り、「このフォーラムは日中関係が厳しいほど率直で深みのある対話をしようと始められたものであり、チャネルの設立という大きな仕事を成し遂げた」と述べると共に、「それ以上に、言論の果たす役割を熱く語ってこられたことに感動を覚えた」として、言論NPO本体の活動への強い共感を示しました。
そして、高橋氏は、「日本に『総合研究所』はあるがシンクタンクはないと思っており、きちんとした政策提言があってこそシンクタンクであるという考えが工藤さんと一致していた」として、言論NPOの活動と自身の関わりについて触れながら、「これだけ各界の論客が集まるというのは、『志』のつながりと思うが、あとはこれをどう世の中に浸透させていくかが課題だ」と述べました。
また、「日本の言論に問われていること」にテーマが移ると、宮本氏は、「我々は民主主義を当たり前のものと受け取ってきたが、我々は民主主義をどれだけ自覚を持ってとらえ、自分のものにしてきたのか」と問いかけ、「民主主義の根本は議論。それがなければ民主主義は健全なものにならない。課題を深く掘り下げ、研究や議論をして主権者国民に提供できていただろうかと深く感じている」と述べました。
また、「いまの議論は前提が合わないままに進められ、結局既定路線に進んでしまっている」(高橋氏)、「民主主義は一人一人が自立した人間として自分で考え行動できることが基本だが、今の言論は社会に対して迎合しており、結果として社会の基盤である民主主義を正すことができず、国民による政府依存の意識が高められてしまった」(宮内氏)と、ともに現在の言論空間の問題を指摘。宮内氏は「動きを察知して、国民を誘導していくというリードがないと、社会が劣化していくと危惧している」と警鐘を鳴らしました。
最後に、言論NPOへの期待について、高橋氏は「言論NPOはインターネットでも既存メディアでもない第三の存在として、議論の出発点や土台を提供できる存在になってほしい」と述べ、また、宮本氏は、「国の最大のリソースは国民であるが、日本国民の水準は高い。様々な困難はあろうが、国民の中で特に意識の高い人を集める存在になってほしい」と述べると共に、「どういう根拠にもとづき結論が出たのかという議論のプロセスが大事」として、今後の課題を語りました。最後に宮内氏は、「今の政治は大衆迎合が強く、既得権益に切り込むことはできないばかりか、弱者を増やし、追い込んでいく怖さを感じる。そこに対抗する力が言論であり、指導層の正しい言論が社会を動かすことが必要」と述べ、10年前の志を持ち続けると同時に、大きなムーブメントにとつなげるよう、期待感を表明しました。
司会:今井義典氏(前 日本放送協会副会長)
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