【対談】企業のガバナンスをどう構築するか

2002年7月11日

kitashiro_k020710.jpg北城恪太郎 (日本アイ・ビー・エム会長)
きたしろ・かくたろう

1944年生まれ。67年慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。72年カリフォルニア大学大学院バークレー校修士課程修了。93年同社代表取締役社長を経て、99年より現職。情報通信審議会委員、日本経済団体連合会常任理事、日本取締役協会副会長などを兼任。

yokoyama_y040316.jpg横山禎徳 (社会システムデザイナー)
よこやま・よしのり

1966年東京大学工学部建築学科卒業。設計事務所を経て、72年ハーバード大学大学院にて都市デザイン修士号取得。75年MITにて経営学修士号取得。 75年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、87年ディレクター、89年から94年に東京支社長就任。2002年退職。東北大学、一橋大学大学院で非常勤講師も務める。

概要

4月のみずほフィナンシャルグループの混乱の根底にあったのは、経営の意思疎通やリスク認識の欠如といった「ガバナンス」の問題だ。これは今や日本のあらゆる企業に共通する問題であるが、しかし現在の経営者の手にだけ委ねて解決ができるとは思えない。日本アイ・ビー・エム会長の北城恪太郎氏と元マッキンゼー・アンド・カンパニー・ディレクターの横山禎徳氏は対談で、「取締役会の構成を見直す」「トップ更迭・選任の仕組みをつくる」など具体的なガバナンス構築のシステムを提言する。

要約

リスク対応の甘さ、意思疎通の不足、厳しい経営姿勢の喪失ムム4月のシステム障害によって露呈した「みずほフィナンシャルグループ」の内実は、日本のコーポレート・ガバナンス(企業統治)のあり方をめぐる議論の引き金となった。みずほに見られたガバナンスの欠如は金融機関や合併企業だけの問題ではなく、「1930年代以降、日本の企業に見られるようになった状況」(横山)でもあるからだ。

今、日本の企業にガバナンス体制を構築するためには何が必要か。それは現在の経営者の手で行うことは可能だろうか。「企業は本来、株主のものであり、経営者は株主から経営を委託されている」(北城)はずだが、逆に経営者が企業の持ち主のごとくなっている現状を見るにつけ、経営者による経営の改革には限界があるのではないかと思ってしまう。今の企業は、判断ミスを犯した経営トップを更迭する仕組みさえ実上もたないのである。

むしろガバナンス構築のためには、企業は個々の経営者の資質に頼るよりも、「経営の仕組みから見直していく」(北城)ことが重要ではないか。例えば、具体的には「経営に対するチェック・アンド・バランスの機能を働かせるために取締役会の過半数を社外取締役とする」(北城)「経営者に対する訓練プログラムをつくる」(横山)などだ。そのようにして生まれる経営者へのプレッシャーがガバナンス構築の誘因となり、今の企業の抱える株主と経営者の関係性の矛盾、あるいは取締役会と経営者の関係性の矛盾も正していくのではないか。

戦後、連綿と続いてきたガバナンス不在という企業の経営体制が、そうした処方箋によって一朝一夕によくなるとは考えられない。ただ、時間はかかっても「成功例」が1つ、2つと現れ、マスコミがそれを評価するような動きも出てくれば、ガバナンス構築と真剣に向き合う企業は増えるはずである。


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 4月のみずほフィナンシャルグループの混乱の根底にあったのは、経営の意思疎通やリスク認識の欠如といった「ガバナンス」の問題だ。これは今や日本のあらゆる企業に共通する問題であるが、しかし現在の経営者の手にだけ委ねて解決ができるとは思えない。