「金融緩和から2年、出口戦略をどう考えるか」有識者アンケート

2015年5月01日

議論「金融緩和から2年、出口戦略をどう考えるか」をみる
調査の概要

 言論NPOは、「金融緩和から2年、出口戦略をどう考えるか」と題して、有識者を対象にアンケート調査を行いました。調査は言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、4月30日から5月1日の期間でアンケートの回答を依頼し、回答のあった108人の回答内容を分析した。


回答者の属性

※各属性で示されている数値以外は無回答の割合。この頁以降、数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。


日銀の金融緩和2年について、プラスの評価が6割を超える

 日本銀行が黒田東彦総裁の下、「脱デフレ」を掲げて、大規模な金融緩和(異次元緩和)を導入してから、今年4月で2年が経過しました。そこで、この2年間を振り返って、日銀の金融政策運営をどのように評価しているか尋ねました。
 「とても評価している」(29.6%)、「やや評価している」(32.4%)を併せて、プラスに評価している回答が62.0%と6割を超える結果となりました。一方、マイナスの評価は「全く評価していない」(13.9%)、「あまり評価していない」(12.0%)と25.9%にとどまっています。


政府と日銀の連携に関して、
「歩調がとれている」、「歩調がずれ始めている」との回答が拮抗

 政府と日銀は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向け、2013年1月に共同声明を出しました。この2年間の金融政策運営を見て、日銀と政府が歩調の取れた連携をしてきたと思うかを尋ねたところ、「連携していると思う」との回答が43.5%と最多となりました。
 一方で、「連携しているとは思わない」(9.3%)、「当初はうまく連携していたが、最近は綻びが見られる」(31.5%)と政府と日銀の歩調がずれ始めていると感じている人も40.8%と4割を超えており、有識者の認識は拮抗しています。


2年程度で2%の物価目標について、
「期限を延長すれば達成できる」、「達成できない」との回答が拮抗している

 日銀は、「2年程度で2%の物価上昇」との目標を掲げていますが、この目標を達成できるかを尋ねたところ、「目標の期限内には達成できないが、期限を延長すれば達成できると思う」との回答が39.8%と最多となり、「達成できない」との回答が35.2%で続き、拮抗しています。
 一方、「目標通り達成できると思う」との回答は9.3%にとどまりました。


「追加緩和はせず、目標達成期限を見直すべきだと思う」との回答が最多に

 「2年程度で2%の物価上昇」の目標が達成できなかった場合、日銀は追加緩和に踏み切るべきだと思うかを尋ねたところ、「ただちに踏み切るべきだと思う」との回答は13.0%にとどまり、「追加緩和はせず、目標達成期限を見直すべきだと思う」との回答が45.4%と最多となりました。そもそも「『2%』という目標そのものを撤回すべきだと思う」との回答も31.5%となっています。


出口戦略に向けて様々な課題がある中、「出口」には向かえないとの回答も

 黒田総裁は4月1日の参院予算委員会で、巨額の国債購入を伴う異次元緩和は物価目標を達成するためで、漫然と継続するものではないと説明した一方、8日の金融政策決定会合後の記者会見では「出口戦略の議論は時期尚早だ」と語っています。
 そこで、日銀の金融緩和からの「出口戦略」を行うにあたっての課題は何かを尋ねたところ、「財政健全化のメドがついていない時点で国債の大量購入を停止すれば長期金利の高騰を招く恐れがあるため、財政再建を進めること」との回答が43.5%と最多となり、「金利水準の調整や膨れ上がった日銀のバランスシートの扱い」(29.6%)、「具体的な方法や手段、時間的な要素などは、その時の経済・物価情勢や市場の状況によって変わり得るため、現時点で議論するのは時期尚早である」(26.9%)で続きます。
 一方で、「そもそも『出口』には向かうことはできないと思う」との回答も17.6%存在し、このまま金融緩和を続けざるを得ないと考える有識者も一定程度見られます。